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2006年10月22日

荒野の七人 1960年/アメリカ【DVD#128】

MAGNIFICENT SEVEN.bmp
”THE MAGNIFICENT SEVEN”

監督/製作:ジョン・スタージェス
共同製作:ルー・モーハイム
製作総指揮:ウォルター・ミリッシュ
原作:黒澤明/橋本忍/小国英雄
脚本:ウィリアム・ロバーツ/ウォルター・バーンスタイン
撮影:チャールズ・ラング・Jr
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:ユル・ブリンナー/スティーヴ・マックィーン
   チャールズ・ブロンソン/ジェームズ・コバーン
   ロバート・ヴォーン/ホルスト・ブッフホルツ
   ブラッド・デクスター/イーライ・ウォラック

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレでございます

しかし、あれですね、映画って何回も観ないとダメですね。『荒野の七人』も、今まで何度か観た作品ですが、今回はじめてガンマンたちの生き様が伝わってきました。

後半のカルヴェラ(イーライ・ウォラック)一味との戦いは文句なしの見せ場ではあるのですが、前半の人集めの部分もこの作品の魅力の一つ。しかし、なぜそもそもクリス(ユル・ブリンナー)たちはこの儲からない仕事を引き受けたんだろうかということが疑問ではありました。

『荒野の七人』には特に回想シーンもありませんから、彼らの過去は定かでないのですが、それぞれ用心棒や賞金稼ぎなど銃と腕っぷしで生き抜いてきたことはわかります。しかし、集まった彼らはガンマンとして人生の転機に差し掛かっているようです。

ヴィン(スティーブ・マックィーン)は、「なじみになったバーテンやディーラーは山ほどいるが、女房や子供や家はない」と言い、それを受けてクリスも「ゆっくり落ち着く場所もなければ、腹を割って話せる相手もいない」と語ります。アクション中心の後半にあって、しんみりとする名シーンです。

前半の人集めの段階では、彼らのこういう思いはほとんど描かれておらず、冒頭の棺桶護送におけるユル・ブリンナーとマックィーンの凄腕ぶりやジェームズ・コバーンのクールなナイフ技などがクローズアップされているため、選りすぐりのプロフェッショナルが徐々に集結する魅力だけを観てしまいます。彼らが一列に連なって村に向かうシーンは、まー、かっこいいですよ。

後半、カルヴェラとの激しい戦闘を中心において、それぞれのガンマンの人間的な部分をチラ見せするシナリオは、いかにもではありますが彼らの強さの中に意外な一面を発見する形になって、個人的には好きです。

オライリー(チャールズ・ブロンソン)は、農民の子供たちに家族を守る父親の勇気を説き、自分にはとてもそんな勇気はないと告白。リー(ロバート・ヴォーン)は、力の衰えに気づき恐れを感じ夢にうなされています。一瞬自信を取り戻した直後のリーの死はひときわ印象に残ります。一番若いチコ(ホルスト・ブッフホルツ)ですら、農民からガンマンになったことに本当は後悔の気持ちがあるようです。七人の中で一見そういうジレンマを感じさせないのがジェームズ・コバーン扮するブリットですが、ヴィンが語るときにツーショットでブリットの姿が映っていましたね。自ら言葉にはしませんが、やはりそういう思いを抱いているような表情がありありと見えます。

彼らは、その場その時がすべての根無し草のようなガンマン生活がむなしくてたまらないんですねぇ。7人の中で唯一の例外はブラッド・デクスター扮するハリーでしょうか。彼は最後まで隠された儲け話を信じて死んでいきます。死に際のハリーに、50万ドルの金鉱が隠されていると嘘をつくクリス。笑いながら死んでいくハリー。ハリーの存在と死はガンマンたちが感じているむなしさを引き立てる役割を担っていました。

農民たちのためにカルヴェラと闘うことは、彼らにとってそういうむなしさとの戦いだったんですね。心身に染み付いてしまったガンマンという生き方から足を洗えるわけではなくても、自分には農民たちのような大地に根ざした生活は出来なくても、そういうむなしさに対してなにか一矢報いたいという思いが損得抜きで彼らをこの仕事に赴かせたのではないでしょうか。

カルヴェラには、彼らのそういう思いが理解できなかったんですね。立場こそ違っても、金目当てで銃に頼って生きる同類だと信じて疑わなかった。だから、農民たちが七人を裏切ったとき、カルヴェラは銃すら奪わずに彼らを村から追い払います。わずかな報酬すら期待できなくなった彼らに戦い続ける意味などない。戦いは終わったのだと思ったはずです。カルヴェラが「なぜだ?なぜだ?」と問いながら死んでいく姿は、ついに人間の本質を理解できなかった男の悲しい最後の姿でした。

「農民だけが勝ち、土地と同じように永遠に残っていく」と語る長老の言葉が感動的。ただ一人農民に戻っていくチコを見送り、「俺たちはいつも負けだ」と言い残して荒野に去っていくクリスとヴィンの姿が素晴らしいラストシーンでした。★★★★★

荒野の七人 アルティメット・コレクション荒野の七人 アルティメット・コレクション
黒沢明 橋本忍 小国英雄

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2006年10月19日

時計じかけのオレンジ 1971年/イギリス【DVD#127】

Clockwork Orange.jpg
”A CLOCKWORK ORANGE”

監督:スタンリー・キューブリック
製作:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ジョン・オルコット
音楽:ウォルター・カーロス
出演:マルコム・マクダウェル
   パトリック・マギー
   エイドリアン・コリ
   オーブリー・スミス
   マイケル・ベイツ
   スティーヴン・バーコフ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


これも、よく見た作品。前回記事から”雨に唄えば”つながりで再鑑賞しました。

はじめて見た頃はずいぶん昔の平和な時代だったので過激な暴力描写に驚きましたが、最近ではこういうことも珍しくもなくなってしまいましたね。

主人公アレックス(マルコム・マクドウェル)をリーダーとする不良少年グループが仲間割れし、メンバーの裏切りにあったアレックスは過失致死で14年の刑に処されます。模範囚として早期出所を目指すアレックスは、犯罪者を更生させる”ルドヴィコ治療法”の実験に協力し2週間で出所しますが、犯罪者を精神的に矯正する非人間的な治療が問題となり。。。。

過激な暴力描写やルドヴィコ治療の洗脳シーンなどショッキングな場面が多く見られますが、この作品の殺伐とした雰囲気の根本原因は、登場人物の誰にも人を思いやる心がないということに尽きます。一人残らず徹底的に利己的な行動をとるということではこれほど首尾一貫した作品もありません。

浮浪者や行きずりの一般市民に暴力の限りを尽くす若者たちはもちろんですが、その仲間内でさえ信頼関係はなく、メンバーは常にアレックスの首を狙っています。

暴走する若者たちと対峙する体制側も「殴られたら殴り返すだろ。国家だって同じことだ。」と言い放ちます。政府高官は新任大臣の更生治療政策をやり方が甘いと批判していますが、大臣とて若い犯罪者の社会復帰などさらさら考えていません。犯罪率の低下とパンク寸前の刑務所問題だけが関心事項であって、それも公的使命感ではなく、重要なのは自分の手柄。したがって、アレックスの存在が不利になるとさっさと自己保身に走り、アレックスを元に戻してしまいます。

刑務所の神父だけは、「ルドヴィコ治療は自ら何の選択もできない壊れた精神の人間を作り出すだけだ」と主張します。しかし、こんな主張に賛同する人間は誰もおらす、神父の言葉はむなしく宙に消えてしまいます。

アレックスは、ルドヴィコ治療によって、暴力やレイプという衝動が起きると激しい嘔吐感に襲われるようになってしまいます。この物語に登場する唯一の善人が非人道的に作り出された被洗脳者だというブラックさは強烈。アレックスを「理想的なクリスチャン」だという大臣の言葉に、キューブリックの毒気紛々たる皮肉を感じますね。

大臣とアレックスがにこやかに握手し写真に納まる場面などを見ていると、表はきれいでも中身は得体の知れない仕掛けがきりきりと蠢いている、『時計じかけのオレンジ』とは良く名づけたものだと感心することしきり。オレンジが時計じかけでも全く意味のないところがまた結構でした。★★★★☆

時計じかけのオレンジ
時計じかけのオレンジアンソニー・バージェス スタンリー・キューブリック マルコム・マクドウェル

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2006年10月17日

雨に唄えば 1952年/アメリカ【DVD#126】

singin in the rain.jpg
”SINGIN' IN THE RAIN”↑この時、ジーン・ケリー39度の発熱中↑

監督:ジーン・ケリー/スタンリー・ドーネン
製作:アーサー・フリード
脚本:アドルフ・グリーン/ベティ・コムデン
撮影:ハロルド・ロッソン
作詞:アーサー・フリード
作曲:ナシオ・ハーブ・ブラウン
音楽:レニー・ヘイトン
出演:ジーン・ケリー/デビー・レイノルズ/ドナルド・オコナー
   シド・チャリシー /ジーン・ヘイゲン/ミラード・ミッチェル
   ダグラス・フォーリー/リタ・モレノ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


好きで良く見た映画の感想を意外とアップしてないんですよね。誰でも名前を知っている有名な作品ばかりですが、ボツボツとアップしていこうかと思います。ということで今回は『雨に唄えば』。

この映画は、個人的に非常にツボにはまっていて、DVDを買ったときは3回連続で見ました。歌もダンスもストーリーも素晴らしいですよね。2年ぶりくらいの鑑賞になりますが、その間にこのブログをはじめて古い映画に親しみが深まっているため、今回はストーリーも大変興味深く見直しました。

『雨に唄えば』は、第一級のミュージカル作品ですが、同時にトーキー誕生時のハリウッドの様子を垣間見ることができる貴重な映画でもあります。

この作品は初のトーキー作品『ジャズ・シンガー』が公開された年の話ですから1927年ということになります。冒頭、サイレント映画のスター、ドン・ロックウッド(ジーン・ケリー)が、聴衆に嘘八百の経歴を披露する場面がありますが、当時の映画作りはスターの人気に依存していたため(現在でも変わりませんが)、スターのイメージは映画スタジオの収入に直結。映画スタジオは大事なスターを専属化し公私に渡ってイメージコントロールしていたそうです(本格的なスター・システムはもう少し後からになりますが。。)。ドンの演説も映画スタジオの宣伝部がすべてシナリオを考え、作り上げられたイメージを世の中に伝えていたわけですね。

ドンは、その演説で語られる華々しいエリートイメージとは正反対で、もともとは貧しい家に育ったボードヴィル芸人。しかし、子供のころから鍛え上げられて歌も踊りも抜群です。それに対して、モニュメンタル映画社の二枚看板のもう一人リナ・ラモント(ジーン・ヘイゲン)はサイレントの大仰な芝居と見た目の美しさ以外は、演技も台詞も歌もだめな "Triple Thread"。

映画がトーキーになった時に、”しゃべれない、歌えない”ためにイメージが崩れて姿を消した俳優もたくさんいたはずです。劇中、”ハリウッドでしゃべり方教室が大流行”というくだりがありますが、役者たちはキャリアをかけて必死に特訓したのでしょう。おかしいのと同時に当時の彼らの苦労がしのばれて大変興味深いシーンです。

物語の核になる”吹き替え”は、リナの悪声とひどいなまりを隠すために考えついた苦肉の策ということになっています。

実際のケースでも、イギリス初のトーキー映画「恐喝(ゆすり)」(ヒッチコック)では、主役のドイツ人女優アニー・オンドラが英語を全く話せなかったために、英語吹き替えが行われています。アフレコ技術がなかったため、アニーの演技と当時にイギリス女優に台詞をしゃべらせていたそうです。本作のリナの場合とは事情が違いますが、吹き替えが用いられるようになった経緯には、こういう”トーキーに出せない俳優をどうするんだ?”という問題が深く関わっていたのかもしれません。

モニュメンタル映画社のパーティー席上でトーキーの宣伝フィルムが披露された時の関係者の反応は冷ややかなもので、”子供だましの悪趣味なおもちゃだ”とバッサリ。ところが、”ジャズ・シンガー”が大ヒットすると映画界はなだれのようにトーキー化にまっしぐら。製作途中のサイレント映画までトーキーに変更となり、トーキー化が予想外の急激な変化だったために関係者が右往左往した様子が良くわかり、ここも大変面白いシーンです。

さらに興味深いのは、映画に音声が入ったことでサイレントの演技が全く通用しなくなってしまったことです。プレミア試写でドン&リナの『闘う騎士』が大コケした理由は。。。

・サイレントの大仰な演技に音声がついたときに、あまりに日常的な動作からかけ離れた芝居になってしまったこと。
・セリフ自体にも自然さがなく、大時代でこっけいな台詞回しになってしまったこと。
・録音機材や技術が未熟で、均質な録音が出来なかったこと。
・映写機と蓄音機の同期が取れず、映像と音がずれてしまったこと。

などなど。映画ですからかなり誇張されているとは思いますが、実際にもこのようなことは十分起こりえたでしょう。サイレントとトーキーは完全に異なる芸術だというようなことを言っていたのは誰だか忘れてしまいましたが、演技の方法論から根本的に変わってしまったということのようです。

とりとめなくだらだらと書いてしまいましたが、この作品、当然歌とダンスも名作ぞろい。ミュージカルとしても記録映画としても楽しめる一粒で二度おいしい(古)素晴らしい作品でした。★★★★★

(参考:ヒッチコック/トリュフォー 定本映画術)

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2006年10月13日

嵐が丘 1939年/アメリカ【DVD#125】

WUTHERING HEIGHTS.jpg”WUTHERING HEIGHTS ”

 監督:ウィリアム・ワイラー
 製作:サミュエル・ゴールドウィン
 原作:エミリー・ブロンテ
 脚本:ベン・ヘクト/チャールズ・マッカーサー
 撮影:グレッグ・トーランド
 音楽:アルフレッド・ニューマン
 出演:ローレンス・オリヴィエ
    マール・オベロン
    デヴィッド・ニーヴン
    ジェラルディン・フィッツジェラルド
    フローラ・ロブソン
    レオ・G・キャロル
    ドナルド・クリスプ


詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


キャスト&スタッフが豪華ですね。ハリウッドを挙げてローレンス・オリヴィエをお出迎えしたという事なのでしょうか。さて、淀川長治さんも大好きだったゴールドウィン&ワイラー。名作も数々あるだけに期待し・て・い・た・の・で・す・が・・・・・

すいません、心に響いてきませんでした・涙

嵐が丘の原作を読んだのは確か高校の頃でした。詳細は覚えていませんが、ヒースクリフの執念と悲しいストーリーに感動して、しばらく他の本が読めなかった記憶があります。

その記憶を元にこの作品を観ると、あっれー?・・こんなんでしたっけ?いやいや、良いところはたくさんあるんですよ、もちろん。嵐が丘と荒野の情景はイメージどおりだし、オリヴィエはさすがの貫禄だと思います。マール・オベロンは可もなく不可もなくと感じましたが、女中役のフローラ・ロブソンなんかもいい味が出てます(レオ・G・キャロルも出てる!)。

なぜキャシーはヒースクリフを愛しながらエドガーと結婚してしまったのかもっと掘り下げて見せてよ!というのがひとつ。

オリヴィエのヒースクリフに狂ったような執念が見えない!というのが二つ。

主役の二人以外のキャラクターは全部ほったらかしのまま終わってしまった。というのが三つ目。

響いてこなかった理由はその3つですね。高校の時、本を持つ手も心も震えたのは、まさにこのうちの上二つが原因だったと思うんですが。なんか、allcinemaの解説と観点が同じで面白くもなんともないんですが、上記正直な感想でした。ということで★★★☆☆


吉田喜重版『嵐が丘』の感想もアップしました(カルトでも、インディーズでも、アートでも(C.I.A))


嵐が丘
嵐が丘サミュエル・ゴールドウィン アルフレッド・ニューマン エミリー・ブロンテ

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2006年10月12日

ガス燈 1944年/アメリカ【DVD#124】

gaslight.jpg”GASLIGHT”

 監督:ジョージ・キューカー
 製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr
 原作:パトリック・ハミルトン
 脚本:ジョン・ヴァン・ドルーテン/ウォルター・ライシュ/
    ジョン・L・ボルダーストン
 撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
 音楽:ブロニスラウ・ケイパー
 
 出演:シャルル・ボワイエ/イングリッド・バーグマン/
    ジョセフ・コットン/メイ・ウィッティ/
    アンジェラ・ランズベリー/テリー・ムーア






詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

質の良いサスペンス映画を見たときの満足感はホントたまらんですね。

舞台になっているロンドン/ソーントン・スクェアのセットがまずはすばらしい。重厚な建物や石畳の舗道、グレゴリーが夜毎身を潜める路地の暗がり。そして、ぼんやりとあたりを照らすガス燈。イングリッド・バーグマンの演技は若干芝居がかかる傾向がありますが、この重厚な雰囲気の中ではかえってそのほうが違和感がありません。シャルル・ボワイエの尊大な悪役ぶりもさらに映えるというものです。

その見事な舞台設定で繰り広げられるのは迫真の心理サスペンス。有名な歌手であったポーラ(バーグマン)の叔母を、宝石欲しさに殺したのは実はポーラが結婚した相手グレゴリー(シャルル・ボワイエ)。まんまと叔母が残した家に住み始めたグレゴリーは、叔母殺しのときに手に入れることができなかった宝石を探しはじめます。彼は真相に近づいたポーラを始末するために、彼女を精神病に仕立て上げようとします。自分ではたしかに見えたり聞こえたりしていることを幻だと言われ、身に覚えのない盗癖を責められて彼女は徐々に追い詰められていきます。。。

正常な人間を異常者に仕立て上げていくグレゴリーの陰湿さと巧妙な手口の積み重ね。だんだんポーラの明るさが消え、表情がおびえと狂気に染まっていくのにつれて、一方のグレゴリーは正体を現し、酷薄残忍さがあらわになり始めます。

このじわじわねちねち感が、私個人的にはサスペンスの必須条件。スピーディーに次々襲い掛かられるよりは、ねちねち真綿で首を絞めるようにせめて欲しい(ちょっと危ないですね・・)。また、当時のロンドンのガス供給システムや建物のつくりなどを利用したネタ仕込みがサスペンス映画のお手本のよう。

それに加えて、ゴシック調ねちねちサスペンスを盛り上げるスーパーアイテム”女中”がまた素晴らしい。あくまで慇懃でありながら人を蔑むあの視線。女中ナンシー役は、この作品でデビューしたアンジェラ・ランズベリー。その後、映画・舞台・テレビの世界をまたにかけた大女優となりました。『レベッカ』のダンヴァース夫人に匹敵する”名女中”ナンシーがさらにポーラを追い詰めていきます。

いかにもの雰囲気あふれる舞台セットで極上のストーリーを積み上げてきたこの作品ですが、本当の魅力はラストシーンにありました。散々、グレゴリーにいたぶられたポーラが、その状況を利用した渾身の反撃を見せます。グレゴリーがたくらんだ悪巧みのすべてが返す刀となって彼にトドメを刺します。それまでの鬱積した息苦しさを吹き飛ばすこの爽快な切れ味。ジョージ・キューカー監督、お見事でございました。★★★★★

ガス燈 コレクターズ・エディション
ガス燈 コレクターズ・エディションジョージ・キューカー ソロルド・ディキンソン シャルル・ボワイエ

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2006年10月10日

都会の牙 1950年/アメリカ【DVD#123】

doa_2.jpg

”D.O.A.”

監督:ルドルフ・マテ/製作:レオ・C・ポプキン
原作・脚本/ラッセル・ローズ/クラレンス・グリーン
撮影:アーネスト・ラズロ/音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演:エドモンド・オブライエン/パメラ・ブリットン
   ルーサー・アドラー/ネヴィル・ブランド
   ヘンリー・ハート/ヴァージニア・リー
   ビヴァリー・キャンベル

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

さて、ヨーロッパ編の次はどんなテーマにしようかなと考えたのですが、しばらくノンテーマで気ままにいってみたいと思います。

ということで、DVD棚を見渡して目に付いたのがこの作品。ルドルフ・マテ監督のフィルム・ノワール『都会の牙』。ルドルフ・マテ?なんとなく聞いたことが・・check・check・・、おお、『海外特派員』とか『美女ありき』の撮影監督を務めた人ですね。この作品が監督デビュー作とのことです。

原題の「D.O.A.」はDead on arrivalの略で、”到着時死亡”という意味の警察用語。つまりは、”死体で担ぎ込まれた”ということ。

物語は会計士フランク・ビグロ(エドモンド・オブライエン)がロス市警に”自分の足で”駆け込むところからはじまります。ある殺人事件について話したいというビグロ。「殺されたのは誰か?」という刑事の質問に「自分だ」と答えます。いったいなぜ?

オープニングから、このシーンまでぽんぽんとテンポよく来て、ビグロの回想シーンに入ります(回想シーンの導入にグルグル渦巻きが!・笑)。ビグロは、やきもち焼きの恋人ポーラ(パメラ・ブリットン)の詮索を振り切って、一人でバケーションに出かけますが、行き先のホテル近くのバーで毒を盛られます。解毒の術もないこの毒薬、体内に入るとしばらくして全身衰弱して死に至る。その期間は、1日か2日か1週間・・・・(ずいぶん誤差大きいね)。

とにかくわかっているのは間違いなく死ぬということ。ビグロに死の宣告をする医者が、毒薬のサンプルを試験管に入れて持ってきます。名づけて”ルミナス毒”。医者:「ほら、暗くすると光るっ!」って、・・・・なぜ、光る??? ・・・とりあえず光ることには何の意味もないようですが、とにかく暗いところで光る猛毒にやられてしまったビグロ。

変な毒薬に犯されていると知った瞬間から、ビグロ走ります。全速力で街中を駆け抜け(毒回るよー)、なんとか真相を究明しようとサンフランシスコからロスに飛び、わずかな手がかりを手繰って警察顔負けの捜査を展開。ついに犯人を追い詰めます。元気な人間でも滅多にできない大活躍!。

この作品、B級ということでいいんですよね。B級の定義もいろいろあるとは思いますけど、別にネガティブな意味ではありません。この”ルミナス毒”を筆頭に、犯人が着ている「お客さんるお客さん、俺が犯人だからよーく覚えといてよっ!」と念押ししているごとくに派手なコートとか、おかしなキレ方の悪役チェスターとか、なんかこう洗練されてない、駄菓子みたいな素朴な味わい深さを感じるんですよね、この映画(あー、グルグル渦巻きも)。

服毒後一定時間後に死ぬというのは、MI:2に出てきた新型ウィルス”キメラ”と同じ様なもんです。『MI:2』は正確に残り時間がわかっていてカウントダウンしていきますが、こちらは余命1日から1週間までの間にいつ死ぬかわからない。なんという安直さ!。結局主人公ビグロが、やるべきことを全部やってしまうのに必要十分なだけのぴったりな時間があって。。。このご都合主義ぶりがまた、いかにもでいいじゃないですか。これぞB級テイスト。

エンドマーク後に、わざわざ

”この映画は医学的な真実に基づいています。ルミナス毒は実在します。”

なんて字幕を挿入したり、徹底しているというか、遊び心があるというのか、とにかく肩肘張らず気軽に見れて面白い、よくできた娯楽作品であります。★★★☆☆


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posted by FROST at 21:55| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月09日

欧州編ひとまず終了+新規ブログ開設のお知らせ^^

ここしばらく、ヨーロッパの古典映画を中心に記事をアップしてきましたが、先日の『ゲームの規則』でいったん終了しようと思います。

今まで、アメリカ以外のクラシック作品はあまり観たことがなかったのですが、ルノワールやデュヴィヴィエ、クルーゾーなど名監督の作品を観ることが出来ました。なかでも、クルーゾーの『恐怖の報酬』やルノワールの『素晴らしき放浪者』は良かったですねぇ。

ペシミスティックな作品も多く、あまりに悲惨なストーリーに絶句したりもしましたが、アメリカ映画とは一味違う雰囲気にも少し慣れてきました。

まだまだ観賞作品数は微々たるものですから、フランス映画にしてもイタリア映画にしても表面をなでたくらいです。ドイツ映画をはじめほかの国については触れてすらいませんからね。もっともっとたくさん素晴らしい作品を観ていきたいと思います。

さて、もうひとつ。新しいブログ、

カルトでも、インディーズでも、アートでも。(C.I.A)

を作りました。

実はここ最近、

「新しい映画も見たいぞ!」

という、願望がムクムクと頭をもたげまして困っているのです。(困るこたぁないんですけどね)

というのも、うちにいろいろなDVDが集まってくるからでもあるんですが、80年以降の映画で「これは面白そうだなぁ」というのが50枚以上たまってしまいました。

このくらいの数が手元にあるとやっぱり見たいわけで、見るからにはレビューをご紹介したいし、こちらのブログは極力オールドの狭い間口を保っておきたい・・・。

ということで、新規開設。C.I.Aでは、新旧問いませんがメジャーな映画はあんまり扱いません。単館上映のものとか日本未公開とか、同じ出来具合なら珍しい方を紹介するというポリシーで行きたいと思います。

みなさまC.I.Aの方もぜひのぞいてやってください。よろしくお願いしますm(_ _)m

(ぼちぼちとオールド・ムービー・パラダイス!に載せていた”ショート・コメント”は、C.I.Aの方に移していきたいと思います。)
posted by FROST at 19:31| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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