新ブログ『川越名画座』に引っ越しました。さらに充実した内容で運営していますので、ぜひご訪問ください。

2007年03月10日

#152『復讐は俺に任せろ』フリッツ・ラング監督 1953年アメリカ

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”THE BIG HEAT”

監督:フリッツ・ラング
製作:ロバート・アーサー
原作:ウィリアム・マッギヴァーン
脚本:シドニー・ボーム
撮影:チャールズ・ラング
音楽:ミッシャ・バカライニコフ
出演:グレン・フォード/リー・マーヴィン
   グロリア・グレアム/ジョスリン・ブランド
   キャロリン・ジョーンズ /ジャネット・ノーラン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒復讐は俺に任せろ(1953) - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)


フリッツ・ラング監督による1953年のフィルム・ノワール作品。明るく優しい妻とかわいい娘を持つ正義漢バニオン刑事(グレン・フォード)は、同僚刑事の自殺事件の真相を追い、大物ギャングラガーナを追うが、ラガーナに先手を打たれて。。。。

グレン・フォードとグロリア・グレアムのコンビは、『仕組まれた罠』に続いて2度目。どの作品でも演技にあまり変化のないフォードに比べて、今回のグロリア・グレアムはちょっと尻軽女風の前半の風情が良いですねぇ。『仕組まれた罠』では業の深い暗い女、ハンフリー・ボガートと競演した『孤独な場所で』では、聡明で機転の利く女、と色々な魅力を見せてくれます。お気に入りの女優さんです。ただ、この作品ではあまりグッとくるシーンはなく、鼻歌歌いながらステップ踏む場面くらいでしょうか。

後半の、怒りをみなぎらせてがむしゃらに敵を追うバニオンは、今まで見た中で一番グレン・フォードの魅力が出ているかなとは思いました。が、この作品、正義は正義、悪は悪、それぞれの範疇できちんと役割をこなしているあたり、フィルム・ノワールというよりも刑事ドラマといった感じか。

主人公バニオン一家の描写が、”これぞアメリカ人の幸せな家庭”と言う感じであまりノワールチックではないのですが、その幸福を無くしたバニオンが、結局最後まで刑事としての倫理の範疇で行動するあたり、フィルム・ノワール特有のアブノーマル感が匂ってきません。

グロリア・グレアムの役どころはラガーナの凶悪な用心棒ヴィンス(リー・マーヴィン)の情婦デヴィー。バニオンにちょっとなびいたために、ヴィンスに熱湯を浴びせられ、顔の左半分に大きな絆創膏を貼った状態で登場します。クライマックスには焼け爛れた顔を見せますが、当時の映画事情からすると結構思い切った演出だったのではないでしょうかね。グロリア・グレアムはアカデミー女優ですし。

全体的には、可もなく不可もなくという感じでグレン・フォードファンにとってはなかなかの作品かもしれません。

ところで、バニオンとヴィンスが顔を会わせるバーで流れている曲は、どこかで聞いたことがあると思えば、『ギルダ』に使われていた曲でした。★★★☆☆
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2007年03月05日

#151『黒い罠』オーソン・ウェルズ監督 1958年アメリカ

touvh of evil.jpg
”TOUCH OF EVIL”

監督:オーソン・ウェルズ
製作:アルバート・ザグスミス
原作:ホイット・マスターソン
脚本:オーソン・ウェルズ
撮影:ラッセル・メティ
音楽:ヘンリー・マンシーニ/ジョセフ・ガーシェンソン
出演:オーソン・ウェルズ/チャールトン・ヘストン/ジャネット・リー
    ジョセフ・カレイア/エイキム・タミロフ/マレーネ・ディートリッヒ
    デニス・ウィーヴァー/ヴァレンティン・デ・ヴァルガス/モート・ミルズ
    ヴィクター・ミリアン/ジョアンナ・ムーア/ザ・ザ・ガボール
    ジョセフ・コットン

オーソン・ウェルズ1958年の監督作品にして、フィルム・ノワール最後を飾ると言われる『黒い罠』。アメリカとメキシコの国境で起きた爆殺事件をめぐり、メキシコの麻薬調査官バーガス(チャールトン・ヘストン)とアメリカの刑事ハンク・クインラン(オーソン・ウェルズ)の暗闘を描くサスペンス。

前々回、『上海から来た女』でウェルズのノワールと一線を画す映像について云々とコメントしましたが、ついにここにいたってノワールだとかなんだとか言うのもはばかられるような作品になってきましたね。もはや、”ウェルズ作品”というひとつのジャンルで語るべきなんじゃないかと言うくらい独特の世界観が漂います。

開巻するといきなり時限爆弾のクローズアップ。爆殺犯はタイマーをセットすると標的の笑い声が聞こえてくる。男は車に爆弾を仕掛けます。車に駆け寄る男の影がワンテンポ遅れて壁を伝う・・・ウェルズ的だぁ。そこから車が爆発するまでの約5分ほどは圧巻の長回し。

そうと知らず車に乗り込んだ町の顔役リネカー。愛人と楽しそうに車を流します。角を曲がり、信号で交通警官の止まれの合図。車のすぐ近くを行きかう人々(爆弾が・・)。そこを主人公バーガスと妻のスージー(ジャネット・リー)が横切ります。ゆっくり流す車と早足の二人が近づいたり遠のいたり・・・。ああ、爆発するかも、また近づいてきた!今度はダメかも!。。。はじめっからえらいスリリングですわ。しかも、場面の緊張感とは全くそぐわない明るいラテン音楽。参りましたな。

ウェルズ流の上下からの人物ショットやクローズアップもふんだんですが、登場するオーソン・ウェルズ自身が”これが?”と言うくらいの変貌ぶり(これ、地?メイク?)。肥満体型に肉に埋もれた顔、生気のない眼。これまで観てきたウェルズとは全く別人かと言うくらいの奇怪さ。この存在感には誰もかないませんよ。チャールトン・へストンがどれだけ脂ぎった男の魅力を発散しようと、マレーネ・ディートリッヒがまたまた年齢不詳の妖しい魅力を振りまこうと、無理。ムリムリ。独特のリズム感で繰り出されるウェルズ流映像美の中をこの奇怪なウェルズ自身が徘徊するわけで・・・。これね、『上海から来た女』の時も痛感したんですが、いくら書いても素晴らしさが伝わらないんですよ。ああ、もどかしい。とにかく一回観ましょう。絶対に損はしませんて。

ちなみに、カメラはラッセル・メティ。ウェルズとは『ストレンジャー』でも一緒でした。『ストレンジャー』はシナリオがちょっとダメなんで今ひとつですが、時計塔のシーンをはじめ映像面では影を生かして素晴らしく、さすがと思わせていました。

この作品、1958年に公開されるとゴダールやトリュフォーなどにも絶賛されたそうで、翌年発表される彼らの処女作に大きく影響を与えたらしい。また、ヒッチコックの『サイコ』('60)に登場するモーテルの主人ノーマン・ベイツは、この作品でデニス・ウィーヴァーが演じたミラドール・ホテルの夜間責任者がモデルだという話があるそうです。

ちなみに、ストーリーは相変わらず良くわかりませんが、例のごとくウェルズの映画はストーリーと関係のないところで強烈な印象を残してくれるのでありました。★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

黒い罠
黒い罠オーソン・ウェルズ チャールトン・ヘストン ジャネット・リー

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2007年02月25日

#150『オール・ザ・キングスメン』ロバート・ロッセン監督 1949年アメリカ

ALL THE KING'S MEN.jpg
”ALL THE KING'S MEN”

監督:ロバート・ロッセン
製作:ロバート・ロッセン
原作:ロバート・ペン・ウォーレン
脚本:ロバート・ロッセン
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:モリス・W・ストロフ
出演:ブロデリック・クロフォード/ジョーン・ドルー
   ジョン・アイアランド/ジャック・バーデン
   ジョン・デレク/ポール・フォード
   アン・セイモア/マーセデス・マッケンブリッジ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒オール・ザ・キングスメン(1949) - goo 映画
    ⇒オール・ザ・キングスメン@映画生活
    ⇒IMDb(英語)


一介の役人ながら正義漢と理想にあふれるウィリー・スターク(ブロデリック・クロフォード)。かませ犬として出馬した州知事戦で、民衆に思いをぶつける術を学び、予想外の接戦まで持ち込むが惜しくも本命候補に敗れる。4年後の知事戦に再出馬した彼は、明確な政策アピールと巧みな裏工作でついに知事に当選する。知事となった彼は、次々と公共事業を行い州の近代化を進めて絶大な権力を手中にする。しかし、権力を握るほどに彼は当初の理想を忘れ、贈賄・恐喝で政敵を排除する独裁者へと堕落していく・・・。

と言うことで、ドラマ内容としては結構いやーな感じ。ピューリッツァ賞を獲得した原作『すべては王の臣』を、共産党活動もしていたロッセン監督が演出したかなりハードな作品。政治の裏側をリアルに描いているため、日本への輸入にストップがかかり、初公開されたのは27年後の1976年といういわく付き。

どんどん権力の虜になっていくスタークもいやですが、彼の周りにいる人間たちは敵か僕(しもべ)のみという、その人間関係がすごくいやですね。スタークの人間性が変わっていくと共に心が離れていく妻ルーシーや息子トムさえも、反発しつつも決別することができない。『すべて王の臣』とは良く言ったものですな。

これだけいやなドラマをきちんと見せてくれるロッセンの演出とブロデリック・クロフォード(アカデミー主演男優賞獲得)の演技力は素晴らしい。ブロデリック・クロフォードは以前記事アップした『仕組まれた罠』で、妻グロリア・グレアムへの嫉妬に狂って人殺しまでする男を演じていました。両方の作品に共通して、人が変貌していく様を演じるのが実に達者ですね。特に、やつれてボロボロの男を演じると天下一品。

マーセデス・マッケンブリッジ(女秘書役)と元新聞記者ジャック役ジョン・アイアランドもそれぞれアカデミー助演賞にノミネートされて、マッケンブリッジが助演女優賞を受賞していますね。ほー、彼女はこれがデビュー作ですか。しかし、個人的にはジョーン・ドルーも含めてブロデリック以外の役者さんたちにあまりピンとくるものはなし。

ジョーン・ドルーはハワード・ホークス監督の『赤い河』で、肩に矢が刺さりながらも、モンゴメリー・クリフトにビンタ食らわせてから気を失うという勝気な女を演じて大ファンなのです。が、今回のクロフォードと不倫の仲となるアンの実に女らしい姿は今ひとつ魅力を感じませんでした。男っぽい方が似合いかな。

ロバート・ロッセン監督は、アカデミー監督賞と脚本賞にノミネートされていながら、授賞式直前に赤狩りの告発にあってオスカー獲得ならず。その後の彼の苦悩は深く、ハリウッドでは二度と映画を作らなかったらしい。残念なことです。

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オール・ザ・キングスメン
オール・ザ・キングスメンブロドリック・クロフォード ジョン・アイアランド ジョーン・ドリュー

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2007年02月20日

#149『上海から来た女』オーソン・ウェルズ監督 1947年アメリカ

LadyfromSh.jpg
”THE LADY FROM SHANGHAI”

監督:オーソン・ウェルズ
製作:オーソン・ウェルズ
原作:シャーウッド・キング
脚本:オーソン・ウェルズ
撮影:チャールズ・ロートン・Jr
音楽:ハインツ・ロームヘルド
出演:リタ・ヘイワース/オーソン・ウェルズ/エヴェレット・スローン/
    テッド・デ・コルシア/グレン・アンダース

詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)
    ⇒上海から来た女(1947) - goo 映画
    ⇒上海から来た女@映画生活

ネタバレですよ

厄介な作品ですねぇ。なにがって、レビューネタが多すぎる。フィルム・ノワールの中でも一風変わった(というかかなり変わった)雰囲気の作品で、作品自体はもちろん、60分もカットされてしまったという製作にまつわるエピソード、『市民ケーン』『ストレンジャー』『上海から来た女』『第三の男』そして『黒い罠』と続くオーソン・ウェルズのキャリアの変遷。リタ・ヘイワースとの仲と本作の関係など実にネタ沢山。

DVD特典映像には、ピーター・ボグダノビッチの詳細な解説が入っており、へぇぇっと身を乗り出すような話が満載なので、裏話的な部分はそれを観てもらうとして、ここでは作品を観た感想中心にしましょうかね、やっぱり。

ストーリーは裕福な人妻エルザ・バニスター(リタ・ヘイワース)に一目惚れした船乗りマイケル(オーソン・ウェルズ)の話。マイケルは、彼女とその夫の敏腕弁護士アーサー・バニスター(エヴェレット・スローン)に乞われて、彼らの豪華ヨットに船員として雇われる。ヨットにはアーサーの共同経営者グリズビーも同乗しているが、ある日彼はマイケルに自分を殺すように依頼してくる。。。

ストーリーが良くわからないんですよね。もともと複雑な話ではありますが細部がかなり矛盾だらけ。これは編集段階でのウェルズの意図に反する大幅なカットによる改悪の可能性も多々あると思われるのでなんとも評価しようがありませんが。

しかし、よくわからんストーリーにも関わらずかなりこの作品の印象は良かっですそれはひとえにこの作品のなんともいえない雰囲気がかもし出す満足感ですねぇ。。ボグダノビッチも”奇怪”という言葉を使っていますが、まさに奇怪。映像の端々までウェルズの非凡なセンスが光っています。

『燃えよドラゴン』にも引用されたと言うラストのクレイジーハウスのシーンはもちろんのこと、水族館のグロテスクな魚をバックにしたキスシーンもインパクト抜群。蛸やウツボを怪物みたいに大写しにして、その前でリタ・ヘイワースに芝居させるなんて、異常ですな。

うさんくさいグリズビーの汗だくクローズアップや素っ頓狂なしゃべり方、両足が不自由なアーサーがひょこひょこと歩き回る姿、至近距離で会話しているのにかみ合わない登場人物の視線、ストーリーと関係なく入るくしゃみやくすくす笑い、かぶりまくる台詞など、とても普通の感覚とは思えない演出の数々。そういうものが積み重なってひとつの”ワールド”を作り上げており、同時代のノワール作品とは間違いなく一線を画しています。

コロムビア映画のボス、ハリー・コーンもこれを観て驚いたのでしょう。あまりに独創的な内容に試写会では散々な評判だったこともあり、コーンはばっさりとこの作品に手を入れてしまいます。でも、1時間もカットされたにも関わらずこの奇怪さですからねぇ、オリジナルはどれだけ不気味だったんでしょう。現在はもうオリジナルを観ることは出来ないそうですが、全く残念至極。

ウェルズのことですから、主人公はあくまで自分。リタ・ヘイワースの魅力だけで客を呼ぼうなどとはさらさら考えていなかったらしく、彼女もこの奇怪な世界の登場人物の一人として位置づいており、そういう意味では、彼女のセクシーな魅力を真っ先にアピールしようとしたらしい『ギルダ』よりも、私にとっては好ましい。逆に、リタの魅力だけを比較すると『ギルダ』の圧勝ですけどね。ウェルズは、リタの赤毛の長い髪をショートに切らせてなおかつブロンドにしてしまったわけですが、顔立ちがちょっと老けて見えるような気がします。

この作品、ユニークさでは抜群ですが、結局当時の一般大衆には受け入れられず興行的には大失敗。オーソン・ウェルズは、監督業をやめてヨーロッパに渡って俳優に専念するわけですが、その結果、大傑作『第三の男』が生まれたと思えば、結果オーライということなんでしょうかね。
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上海から来た女
上海から来た女オーソン・ウェルズ リタ・ヘイワース

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2007年02月13日

#148『郵便配達は二度ベルを鳴らす』テイ・ガーネット監督 1946年アメリカ

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”THE POSTMAN ALWAYS RINGS TWICE"

監督:テイ・ガーネット
製作:ケイリー・ウィルソン
原作:ジェームズ・M・ケイン
脚本:ハリー・ラスキン/ニーヴェン・ブッシュ
撮影:シドニー・ワグナー
音楽:ジョージ・バスマン 
出演:ジョン・ガーフィールド/ラナ・ターナー
セシル・ケラウェイ/ヒューム・クローニン
レオン・エイムズ/オードリー・トッター
アラン・リード/ジェフ・ヨーク

以前、ルキノ・ヴィスコンティ監督による『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1942年)の感想をアップしましたが、今回は1946年のテイ・ガーネット版。ジェームズ・M・ケインの原作本を巻頭と巻末に映して見せるあたり、かなり原作に入れ込んで忠実につくったんじゃないかと思わせます。ヴィスコンティ版では省略されていた、ニック(ヴィスコンティ版ではブラガーノ)の一度目の殺人未遂や、フランク(同じくジーノ)が最後に裁かれるシーンもきちんと盛り込まれてるし。これまたヴィスコンティが無視した『二度ベルを鳴らす』ことの意味についても触れています。

しかーし!なんか深みがない。そう思いませんか?悪くはない。けど今ひとつという感じ。当時のフィルム・ノワールの流儀にのっとって、ジョン・ガーフィールドのモノローグも渋いし、ラナ・ターナーも悪女として魅力はあります。犯罪と主人公の破滅に力点を置いているように思われ、その軸で観る限り決して悪くない作品だとは思いますが、”悪くない”というレベル止まり。うーん、残念。

ところで深みって何を言っているのだと。”登場人物がしっかりと描きこまれていて、彼らの言動が引き起こす現象に説得力がある”。当然これで全てとは言いませんが、こういう要素も大事だと思います。そして、まさにこの点において、テイ・ガーネット版はヴィスコンティ版に及ばんのですよね。ということは、登場人物たちのやることに首尾一貫したリアリティがなく、ややもするとご都合主義的に見えるということになりますか。

例えば、フランクとコーラがはじめて出会う時のコーラの衣装はいかにも変・・・ていうか、ドライブインの女房がそんな格好してるはずないだろ!って感じだし。ヴィスコンティ版では、最後まで二人の間に影を落とす、『安定と放浪』という価値観の違いがかなり表面的に描かれていると感じます。コーラのフランクに対する感情の変化もわかりにくいし、最後の事故もおいおいって感じだし・・・・。いちいち目に付くんですよね。。。

私にしては珍しく文句ばっかり言ってますが、星はとりあえず三つ★★★☆☆にしておきます。というのも、この作品だけを見たときには”ごく普通”と言う判断になりそうだから。さっきから、くどくどと文句言っているのは、全てヴィスコンティ版と比較してと言うことなんですよ。ということに気がつきました。

ラナ・ターナーも決して悪くないですよ。でも、クララ・カラマーイが演じた人生に疲れきったジョヴァンナの方が、このドラマのヒロインとしては断然魅力的です。日常を生きることにぼろぼろに疲れきった彼女が、駆け落ちにも踏み切れずついに旦那を殺すという大勝負に出るでしょ。事を遂げて盛大なパーティを開く。でも、結局彼女の価値観と行動が彼を怖気づかせてしまう。その結果、殺しまでしてようやく手に入れたと思った愛と安定が、早くも幻のように自分の手から逃げていくことに気づくんですよ。その時にね、ジョヴァンナは一人っきりで、パーティの残り物で食事をして、テーブルに突っ伏すじゃないですか。ね、これが深みってもんですよ。

ということで、他の作品と比較してどうのこうの言いたおすのもどうかと思いますが、今回だけはヴィスコンティ版があるがために、テイ・ガーネット版は影薄し。この作品を気に入っている皆様、悪意はございませんのでごめんなさい。
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郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946年版)特別版ジョン・ガーフィールド ジェームズ・M・ケイン テイ・ガーネット

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2007年02月12日

ご無沙汰しております

皆様、ご無沙汰しております。
1週間ほどベトナムに行っておりまして(仕事ですよ)、更新が滞りましたが、再開いたします。といっても、帰国してからまだオールド作品は見ていないので、レビューはもう少し後になりますが。『カルト〜』の方で、シドニー・ルメットの秀作『デストラップ・死の罠』をアップしておりますので、そちらも是非ご覧ください^^;。

しかし、ベトナムっちゅう国はすごかった。。。「生きる」ということが熱気として伝わってくる国ですな。日本に帰ってきたときに「日本てなんて静かな国なんだろう」と思いましたよ。

KIF_1057.JPG
バイクと自転車で埋まってます。横断は命がけ。

KIF_0987.JPG
お料理中。いただきましたですよ^^

映画事情も探ろうとしたのですが、まだまだ生活優先なのか街に目立った映画館も見かけず、DVD屋は外国作品ばかり。これからに期待ということでしょうね。

それでは、近々レビューアップしますのでしばらくお待ちくださいませ(ちなみに、次回はテイ・ガーネット版『郵便配達は二度ベルを鳴らす』)。
posted by FROST at 00:48| 埼玉 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月30日

#147『ギルダ』チャールズ・ヴィダー監督 1946年アメリカ

gilda.jpg
”GILDA"

監督:チャールズ・ヴィダー
製作:ヴァージニア・ヴァン・アップ
原作:E・A・エリントン/ジョー・アイシンガー
脚本:マリオン・パーソネット
撮影:ルドルフ・マテ
音楽:モリス・W・ストロフ
音楽監督:マーリン・スカイルズ
 
出演:リタ・ヘイワース
    グレン・フォード
    ジョージ・マクレディ
    ジョセフ・カレイア
    ジョー・ソーヤー
    ルース・ローマン


コロムビア映画の”愛の女神”リタ・ヘイワースをヒロインに据えたフィルム・ノワール作品・・・というか、個人的にはノワールというより、ちょっと屈折したラブ・ロマンスかなと思いましたが、この映画の一番の売り物は間違いなくリタ・ヘイワースその人のようですから、フィルム・ノワール的な特徴がどうとか、そのあたりは大した問題ではありません。ちなみに、『ショーシャンクの空に』の刑務所慰問で上映されたのはこの作品なのだそうです(刑務所のリタ・ヘイワースね)。

ブエノスアイレスの賭博場。トラブルが縁でオーナー・バリンに見込まれたジョニー(グレン・フォード)。バリンの右腕として頭角を現していきます。ある日、バリンに妻ギルダ(リタ・ヘイワース)を紹介されますが、初対面から二人の間にはなぜかギクシャクした空気が流れます。実はギルダとジョニーは過去に愛し合った仲。ギルダはジョニーに捨てられた寂しさを紛らわせるためにバリンと結婚しています。

リタ・ヘイワースの本格的なダンスは見れないものの、歌のシーンは3回。ステージで歌うシーンが二回あり、二回目のステージは黒いドレスにロングの手袋。その手袋を脱ぎながら歌うシーンはフェロモン大量炸裂でまことに素晴らしいのですが、個人的には下僕のピオを相手にギターの弾き語りをするシーンの情感のこもった歌声にぐっと来ました。

アメリカ人はこういう大ぶりでつくりのはっきりしたセックスシンボルな女性好きなんでしょうねぇ。日本人的には好みの分かれるところかもしれませんけど。1939年の『コンドル』(ハワード・ホークス監督)で、敵役の妻として端役出演していましたが、そのころはまだ清純さも残るお人形さんのようなイメージだったんじゃないかと記憶しています。その後7年間でこの成長・・と言うか変身。すごいですねぇ。。。

ストーリーの方は、ちょっと良くわかりにくいのですがね。主役の三人(ギルダ、ジョニー、バリン)を含めて登場人物がどう関わって、その関係がどう変わっていくのか不明確。心理的な経緯も含めて連続性がないため説得力に欠けるようです。主人公のグレン・フォードも、ピシッとしたタキシード姿はいいのですが今ひとつ乗り切れていないような・・。前回見た『仕組まれた罠』の労働者風な役柄の方があっているのではないかと感じます。(顔が若手芸人みたいじゃない・・・?)。

ドラマのキレが今ひとつで、男優の冴えも今ひとつということになると女神リタ・ヘイワースの一人舞台と言う感じでしょうか。彼女に対する思い入れがストレートに作品の評価になりそうですが、私の場合は可もなく不可もなく。それでも、一人で一作品を支えるだけの華やかさがある大した女優だと思いました。★★★☆☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

ギルダ
ギルダリタ・ヘイワース

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