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2006年10月19日

時計じかけのオレンジ 1971年/イギリス【DVD#127】

Clockwork Orange.jpg
”A CLOCKWORK ORANGE”

監督:スタンリー・キューブリック
製作:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ジョン・オルコット
音楽:ウォルター・カーロス
出演:マルコム・マクダウェル
   パトリック・マギー
   エイドリアン・コリ
   オーブリー・スミス
   マイケル・ベイツ
   スティーヴン・バーコフ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


これも、よく見た作品。前回記事から”雨に唄えば”つながりで再鑑賞しました。

はじめて見た頃はずいぶん昔の平和な時代だったので過激な暴力描写に驚きましたが、最近ではこういうことも珍しくもなくなってしまいましたね。

主人公アレックス(マルコム・マクドウェル)をリーダーとする不良少年グループが仲間割れし、メンバーの裏切りにあったアレックスは過失致死で14年の刑に処されます。模範囚として早期出所を目指すアレックスは、犯罪者を更生させる”ルドヴィコ治療法”の実験に協力し2週間で出所しますが、犯罪者を精神的に矯正する非人間的な治療が問題となり。。。。

過激な暴力描写やルドヴィコ治療の洗脳シーンなどショッキングな場面が多く見られますが、この作品の殺伐とした雰囲気の根本原因は、登場人物の誰にも人を思いやる心がないということに尽きます。一人残らず徹底的に利己的な行動をとるということではこれほど首尾一貫した作品もありません。

浮浪者や行きずりの一般市民に暴力の限りを尽くす若者たちはもちろんですが、その仲間内でさえ信頼関係はなく、メンバーは常にアレックスの首を狙っています。

暴走する若者たちと対峙する体制側も「殴られたら殴り返すだろ。国家だって同じことだ。」と言い放ちます。政府高官は新任大臣の更生治療政策をやり方が甘いと批判していますが、大臣とて若い犯罪者の社会復帰などさらさら考えていません。犯罪率の低下とパンク寸前の刑務所問題だけが関心事項であって、それも公的使命感ではなく、重要なのは自分の手柄。したがって、アレックスの存在が不利になるとさっさと自己保身に走り、アレックスを元に戻してしまいます。

刑務所の神父だけは、「ルドヴィコ治療は自ら何の選択もできない壊れた精神の人間を作り出すだけだ」と主張します。しかし、こんな主張に賛同する人間は誰もおらす、神父の言葉はむなしく宙に消えてしまいます。

アレックスは、ルドヴィコ治療によって、暴力やレイプという衝動が起きると激しい嘔吐感に襲われるようになってしまいます。この物語に登場する唯一の善人が非人道的に作り出された被洗脳者だというブラックさは強烈。アレックスを「理想的なクリスチャン」だという大臣の言葉に、キューブリックの毒気紛々たる皮肉を感じますね。

大臣とアレックスがにこやかに握手し写真に納まる場面などを見ていると、表はきれいでも中身は得体の知れない仕掛けがきりきりと蠢いている、『時計じかけのオレンジ』とは良く名づけたものだと感心することしきり。オレンジが時計じかけでも全く意味のないところがまた結構でした。★★★★☆

時計じかけのオレンジ
時計じかけのオレンジアンソニー・バージェス スタンリー・キューブリック マルコム・マクドウェル

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時計じかけのオレンジ@映画生活
時計じかけのオレンジ(1971) - goo 映画


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2006年01月29日

#0050『第三の男』キャロル・リード監督 1949年イギリス

third-man.jpg
”THE THIRD MAN”

監督: キャロル・リード Carol Reed
製作: キャロル・リード Carol Reed
    デヴィッド・O・セルズニック David O. Selznick
    アレクサンダー・コルダ Alexander Korda
原作: グレアム・グリーン[作家] Graham Greene
脚本: グレアム・グリーン[作家] Graham Greene
撮影: ロバート・クラスカー Robert Krasker
音楽: アントン・カラス Anton Karas
 
出演: ジョセフ・コットン Joseph Cotten
    オーソン・ウェルズ Orson Welles
    アリダ・ヴァリ Alida Valli
    トレヴァー・ハワード Trevor Howard
    バーナード・リー Bernard Lee
    ジェフリー・キーン Geoffrey Keen
    エルンスト・ドイッチュ Ernst Deutsch



あらすじ
アメリカの三流小説家ホリーは、友人ハリー・ライムを頼ってウィーンにやってくるが、到着早々ハリーが事故死したことを告げられる。しかし事故にはどうも不審な点があり、ホリーは独自に真相を追う。やがてハリーの事故死の現場に正体不明の第三の男がいたことを突き止めるのだが・・・。

みどころ
ストーリー、カメラワーク、音楽、俳優、演技・・・どれをとっても見所聴き所満載。映像の美しさについてはすでによく語られているのですが、それでもやっぱり映像とカメラワークがすばらしい、と書かざるを得ませんね。撮影のロバート・クラスカーがオスカーを受賞しています。私自身は映画のカメラワークに関する技術的な知識はほとんどなく、映画自体のよしあしはストーリの出来具合(自分自身の経験や感性と照らし合わせて共感・感動できるかどうか)と俳優と演技で判断しているところがありますが、本作では戦後のウィーンの町並みを生かした映像の美しさにまず目を奪われました。素人でもこれだけはっきりとわかるんですから、映画における撮影や映像のことがわかる人にとってはたまらない魅力があるでしょうね。

舞台は第二次大戦後は英米仏ソ4カ国に共同統治された暗い時代のウィーン。見上げる視線の先の部屋の窓や見下ろす先の石畳の舗道、そういう何気ないショットからでも街の暗い重苦しさが実に良く漂ってきます。そこにさす光と影の美しさはすばらしく、闇の中から窓の明かりに照らし出されるオーソン・ウェルズや走り去っていく彼の影などは思わずため息が漏れるくらいの映像美。

”白黒映画はカラー作品とはまったく異なるジャンルの映画である”といわれることがありますが、カラーでは絶対に撮れない美しさがあるものだと改めて思い知らされました。白黒映画を観たことがないとか、なんとなく苦手だという人にぜひ見て欲しい作品です。

個人的には・・
中盤くらいまでしか観ていないのかと思ったら、ラスト近くの指のシーンや有名なラストシーンも記憶にありましたね。ストーリーはほとんど抜け落ちて忘れたましたが^^; 

オーソン・ウェルズばかりに目が行きがちですが、ヒッチコックの”疑惑の影”以来のジョセフ・コットンのうまさも印象的でした。疑惑の影では全身から静かな異常さ・怖さを発散していましたが、一転して少しお人よしでかつ強情な役柄を見事に演じていました。ラストシーン、ああなるのはわかっていてそれでもアリダ・ヴァリを待つジョセフ・コットンの姿と1本のタバコが。。。

おすすめ度
文句なく★★★★★
上にも書きましたが、白黒でなければ絶対に表現できない映像の美しさをぜひご覧ください。

次回は、趣向を変えて久しぶりの日本映画で黒澤明の”生きる”。




第三の男第三の男
オーソン・ウェルズ キャロル・リード ジョセフ・コットン

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※500円DVDも出ていますが、キープ社のDVDはアリダ・ヴァリが国際警察に連行されるシーンで字幕と音声がずれます。


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2006年01月22日

#0048『第3逃亡者』アルフレッド・ヒッチコック監督 1937年イギリス

youngandinnocent.jpg”YOUNG AND INNOCENT”
(ポスターは米国公開時の題名)

監督: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
原作: ジョセフィン・ティー
脚本: チャールズ・ベネット Charles Bennett
    エドウィン・グリーンウッド
    アンソニー・アームストロング Anthony Armstrong
撮影: バーナード・ノールズ Bernard Knowles
音楽: ルイス・レヴィ Louis Levy
 
出演: デリック・デ・マーニイ Derrick de Marney
    ノヴァ・ピルビーム
    パーシー・マーモント Percy Marmont


海岸に打ち上げられた絞殺死体は女優のクリスティーン。第一発見者のロバートは助けを呼びに行く姿を目撃され、現場から逃亡した容疑者として逮捕される。裁判の直前に逃亡したロバートは、偶然行動を共にすることになった警察署長の娘エリカとともに、彼の無実の証拠となるコートを探す。

ふとしたきっかけで事件に巻き込まれた主人公が、ヒロインと一緒に逃亡しながら真実を追う。と、ヒッチコックお得意中の得意技。やっぱり面白いです。あの名作”三十九夜”でも冴え渡ったプロットですが、今回は題名も示すとおり若い女性(エリカ=ピルブーム)の視点で描こうとしているようです。”三十九夜”よりものんびり感が漂ってますかね。私にとっては”三十九夜”の超スピーディな展開よりもなじめました。

今回の主人公ノヴァ・ピルビームは、”暗殺者の家”で一人娘ベティを演じていた名子役。前作のときは、ガリガリの女の子でお転婆ぶりを発揮していましたが、3年ちょっとで立派にロマンスを演じられるようになっているのには驚きました。女の子の成長は早いなぁ。ヒッチコックも才能を認めていた女優ですが、本作の二年後、”三十九夜”や”暗殺者の家”のアシスタント・ディレクターを務めたペン・テニスンと結婚してスクリーンから遠ざかっていましたが、第二次大戦で夫が戦死したことを契機に復帰。しかし、出演作は少なく、1950年に再婚するとともに完全に映画の世界から身を引いてしまったということです。セルズニックが”レベッカ”の主役に推薦したものの、ヒッチコックのイメージに合わず話は流れてしまったようですが、もしこの時”レベッカ”に主演していれば、もっと多くの作品に出演するメジャーな女優になっていたかもしれませんね。残念。

ところで、冒頭の海岸にクリスティーンの死体が打ち上げられるシーンは、後期60年代くらいのヒッチコックの映像を見ているようですね。死体が波にもまれて手足を水面に突き出しながら流れ着いてくるカットとその後にワンカットだけ挿入されるかもめの映像に妙にゾッとさせられました。あんまりうまく文章で描写できませんが、このあとに撮られる”バルカン超特急”や”レベッカ”などにもなかった雰囲気のカットだと思います。後のヒッチコックらしさを表す映像表現がフッと出てきたのかなとか想像すると結構楽しくなってきます。同じ監督の作品を見続ける楽しさのひとつかもしれませんね。

前年の、”間諜最後の日”がプロットという点から見るとヒッチコックらしくない作品で入り込めなかったのですが、本作は一転してそのあたりはヒッチコックらしさ満々。イギリストーキー時代の傑作のひとつの言ってよいのではないかと思います。しかし、邦題”第3逃亡者”の”第3”って何ですかね?どなたかご存知ですか?

ということで、評価は星5つ★★★★★

さて適当に他の監督の作品も入れながらと思っているのですが、次回もう一本くらいヒッチコックでいっときましょうか。1941年に飛んで”断崖”。”レベッカ”でノヴァ・ピルビームを押さえて主演したジョーン・フォンティン、アカデミー主演女優賞を獲得しています。

第3逃亡者
B0007TKPZYノヴァ・ピルビーム アルフレッド・ヒッチコック デリック・ド・マーニー

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通常のDVDはなかなか手に入らないようですが、ファーストトレーディング社のクラシック・ムービーズ・コレクションで500円DVDが販売されています。


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2006年01月21日

#0047『間諜最後の日』アルフレッド・ヒッチコック監督 1936年イギリス

secret agent.jpg”Secret Agent"

監督: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
原作: サマセット・モーム Somerset Maugham
脚本: チャールズ・ベネット Charles Bennett
撮影: バーナード・ノールズ Bernard Knowles
音楽: ルイス・レヴィ Louis Levy
 
出演: ジョン・ギールグッド John Gielgud
    パーシー・マーモント Percy Marmont
    ピーター・ローレ Peter Lorre
    マデリーン・キャロル Madeleine Carroll
    ロバート・ヤング Robert Young
    リリー・パルマー Lilli


第一次大戦下、ドイツとアラブの接近を阻止するため敵のスパイ暗殺指令を受けたブロディ。腕利き保険調査員のアシェンデンとして助手”モンテズマ将軍”とともにスイスに向かうが、ターゲットについての具体的情報は何もない。もう一人の女スパイエルサと合流して調査を続け、何とか探し出したターゲットを登山に連れ出して始末する。ところがこれは人違いであり関係のない民間人を殺してしまったことが判明する。

ヒッチコックがプロのスパイを主人公にするのは結構珍しいですね。大体は、事件にまったく関係のない民間人がちょっとしたきっかけで巻き込まれるパターンですが。

主役のアシェンデンを演じているジョン・ギールグッドは、イギリスで主に舞台を中心に活躍した俳優。”炎のランナー”の校長やってた人ですね。本作のころはまだ30歳そこそこですが絵に描いたような二枚目。このころはすでにシェイクスピア劇で高い評価を得ており、同じ36年には「ハムレット」の名演がありました。

調べてみるとギールグッドは、エミー賞(TV)、グラミー賞(音楽)、アカデミー賞(映画)、トニー賞(演劇・ミュージカル)のすべてを受賞した数少ない俳優でした。プロデューサーや作曲家なども含めて今までに9人しかいない4章受賞で、その中にはオードリー・ヘップバーンやバーブラ・ストライサンド(合計16回受賞!)、ライザ・ミネリ、ウーピー・ゴールドバーグなどの名前が見えますが、純粋に演者として4賞を受賞したのは彼を含めて3名ほどしかいないようです。

4年後にハリウッドに渡ったヒッチコックは、アメリカ社会におけるサスペンス映画の地位の低さに悩まされ、一流の俳優から出演を断られて四苦八苦することになりますが、1930年代のイギリスではすでにかなりの地位を得ていたのでしょうか。若いヒッチコック監督がギールグッドのような舞台の一流役者を起用できたことに感心しました。

そして今回のピーター・ローレは、スパイ助手の怪人モンテズマ将軍。別名”ハゲのメキシコ人”。ショートアフロ(パンチパーマ?)にドーランを塗って変な英語をしゃべります。女と見ると誰でも口説く軽いノリですが、実は暗殺などのダーティな仕事を一手に引き受ける凄腕スパイ。にわかスパイのアシェンデンをリードして任務遂行を助けます。

もともと、芸達者で作品ごとにまったく異なる雰囲気を漂わせるピーター・ローレですが、今回の役柄はひときわ愉快でした。軽くおどけた表情の合間に時々見せる暗殺者の凄みの効いた表情が絶品。

この作品、多少ストーリーの盛り上がり感に欠けるのですが、ギールグッドとローレの名演技に大いに助けられているなと感じました。(ラストシーンのローレの扱いはあんまりだ)

ということで、評価は星4つ★★★★☆(二人の演技に★ひとつ追加して4つ)

次回は、1937年の”第3逃亡者”。”暗殺者の家”の子役ノヴァ・ピルビーム主演。


間諜最後の日
B0007TKQE4マデリン・キャロル アルフレッド・ヒッチコック ジョン・ギールグッド

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2006年01月20日

#0046『サボタージュ』アルフレッド・ヒッチコック監督 1936年/イギリス

Sabotage_1.gif”Sabotage"

監督: アルフレッド・ヒッチコック
     Alfred Hitchcock
製作: マイケル・バルコン
     Michael Balcon
原作: ジョセフ・コンラッド
     Joseph Conrad
脚本: チャールズ・ベネット Charles Bennett
    イアン・ヘイ Ian Hay
撮影: バーナード・ノールズ Bernard Knowles
音楽: ルイス・レヴィ Louis Levy
 
出演: シルヴィア・シドニー Sylvia Sidney
    オスカー・ホモルカ Oskar Homolka
    ジョン・ローダー John Loder
    デズモンド・テスター
    ジョイス・バーバー



街のしがない映画館主ヴァーロックは、実は破壊工作員。同居している妻も義弟もその正体を知らない。うすうすその事実に感づいているスコットランド・ヤードは近所の青果店に店員として刑事を送り込み、何かと監視を続けている。ある日、ピカデリーサーカスでの爆弾テロを請け負ったヴァーロックだが、刑事の目が厳しく時限爆弾を運ぶことができない。年端も行かない義弟に爆弾を運ばせることを思いつくのだが・・・

この映画、テロリスト・ヴァーロックの造形がかなり好きです。ヴァーロックを演じたオスカー・ホモルカは、この作品が映画デビューですか?1898年生まれとありますから製作時は38歳ですね。後にはマリリン・モンローの”七年目の浮気”や”戦争と平和”などに出演しています。

こわもてながら意外と意気地なしで、後半に見せるいかにももっともらしいが責任逃れ以外の何ものでもない妻への言い訳が、小物のテロリストという感じをよく表現していていいですねぇ。

同時期の”三十九夜”や”バルカン超特急”などに比べると、ヒッチコックらしいシャレが少なくちょっと重い感じがします。毎度のことながら、このテロリスト集団が何者で、何を目的として活動しているのかなど背景は明らかにされていないので、観ている者は完全に”あれの成り行き”がどうなるのかに集中するのですが、その部分のストーリー作りにヒッチコックの大きな後悔の原因があったようです。・・・なんて書いても観ていない人には全然何のことかわかりませんよね。困ったな。

要は、この映画でヒッチコックは自分自身のサスペンス映画哲学のタブーを破ってしまい、そのことで当時の映画ファンからもかなりたたかれたらしいということなんですが、私の筆力ではネタバレしないと書けませんので、別ページに完全ネタバレで書かせていただきます(以下参照)。とはいっても、allcinemaの解説で全部ネタばらしちゃってますけど、しかも解釈がなんか変だし^^;。

ともかく、そこそこの佳作であることは間違いません。星は4つ★★★★☆
ヒッチコックが後々まで失敗を悔やんだ映画として興味のある方はぜひご覧ください・笑

次回は、年代順で・・・・・あれ?同じ1936年ですが、サボタージュより間諜最後の日の方が先だったんですね?失礼しました。

前後してしまいましたが、次回は”間諜最後の日”。またまたピーター・ローレの登場です^^


サボタージュ
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画像がありませんが、DVDはIVCから出てますね。ほとんど品切れ同然ですが。ファーストトレーディングの500円DVDシリーズで発売されています。


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以下、完全ネタバレ。取扱注意!!
posted by FROST at 11:35| 埼玉 ☀| Comment(5) | TrackBack(2) | OLD:イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月18日

#0044『暗殺者の家』アルフレッド・ヒッチコック監督 1934年イギリス

”THE MAN WHO KNEW TOO MUCH”
ansatsusyanoie2.jpg

監督: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
脚本: エドウィン・グリーンウッド
     A・R・ローリン
     D・B・ウィンダム
 
出演: レスリー・バンクス Leslie Banks
     エドナ・ベスト Edna Best
     ピーター・ローレ Peter Lorre
     ノヴァ・ピルブーム

ネタバレ気味です。

スイス・サンモリッツで休暇を楽しむローレンス夫妻と一人娘のベティ。友人ルイ・ベルナールとホテルのダンスパーティに出席するが、突然ルイは何者かに射殺されてしまう。実は英国の情報局員であったルイは、死ぬ間際に大物政治家暗殺の情報をローレンスに託すが、すぐに暗殺者集団の知るところとなり、口封じのためにベティが誘拐されてしまう。情報を当局に伝えることも助けを求めることもできないローレンスは自分の手で娘を取り返そうとするが・・・・

1934年、イギリス時代のヒッチコック最大のヒット作となった典型的巻き込まれ型サスペンスの傑作。

情報局員ルイ・ベルナールの死から、娘を誘拐されたローレンスの追跡劇、アルバート・ホールの暗殺劇、その後の暗殺者集団と警官隊の銃撃戦と80分弱の短かい時間の中で見所満載の本作ですが、ヒッチコックは特に最後の銃撃戦を撮りたかったようですね。実際にあった「シドニー街の銃撃戦」をモチーフに作られたシーンですが、ロンドンの警察隊は銃を携行していないため警察と犯人の銃撃戦が検閲で認められず、わざわざ犯人から撃たれた後にトラックでライフルを調達して応戦するというストーリーでしのいだというエピソードが残っています。

暗殺者集団のボス・アボットを演じているピーター・ローレが結構気に入ってます。今までに紹介したレビューでも”カサブランカ”と”マルタの鷹”に登場しています。このニ作のハンフリー・ボガートとの共演では、主役のボギーを引き立たせるためなのか小悪党的な役柄が多いのですが、本作では堂々とボスキャラを演じてますね。「良いサスペンス映画の条件は良い悪役がいること」というヒッチコックのメガネにもかなっているらしく、ヒッチコックのエッセイでは彼に関する記述をよく見かけます。ピーター・ローレはちょうどこの作品の最中に結婚したらしく、撮影の合間を縫って30分で撮影現場と式場を往復したという逸話があります。しかも、右眉の上にある傷口の特殊メークを取る暇もなく、前髪で隠してそのまま式を挙げたということです。


そこまで、仕事熱心なピーター・ローレの悪役ぶりはすばらしく、妙に丁寧な物腰とふてぶてしい笑い顔(目に愛嬌がある)が強く印象に残ります。「定本・映画術」によるとヒチコックの悪役ベスト3は、ジョセフ・コットン(疑惑の影)、クロード・レインズ(汚名)、ロバート・ウォーカー(見知らぬ乗客)ということですが、個人的には本作のピーター・ローレも含めて悪役四天王としたいところですね。最後の死にっぷりも、悪党らしくてGOOD。


ということで久々のヒッチコック、評価は星5つ★★★★★


今回も年代順で観ていこうと思っていたのですが、どうにも”知りすぎていた男”が気になってきました。よく知られている通り”暗殺者の家”をヒッチコック自身が20年以上を経てリメイクした作品。ジェームズ・スチュアートとドリス・デイの主演です。イギリスからアメリカへと環境が変わり熟年に達したヒッチコック監督がこの傑作をどのように味付け直すか、ぜひ楽しみたいと思います。


暗殺者の家
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2006年01月16日

#0043『アフリカの女王』ジョン・ヒューストン監督 1951年イギリス

african-queen.jpg”THE AFRICAN QUEEN”

監督: ジョン・ヒューストン John Huston
原作: C・S・フォレスター C.S. Forester
脚本: ジョン・ヒューストン John Huston
    ジェームズ・アギー James Agee
撮影: ジャック・カーディフ Jack Cardiff
音楽: アラン・グレイ Allan Gray
 
出演: ハンフリー・ボガート Humphrey Bogart
    キャサリン・ヘプバーン Katharine Hepburn
    ロバート・モーレイ Robert Morley
    ピーター・ブル Peter Bull
    セオドア・バイケル Theodore Bikel
    ウォルター・ゴテル Walter Gotell


第一次大戦下の東アフリカ、ドイツ軍に焼き払われた原住民の村。原住民を導く為に尽力していた宣教師はショックで命を落としてしまう。その村に物資や郵便を届ける蒸気船”アフリカの女王”号の船長チャーリーは、一人残されて茫然自失の宣教師の妹ローズをつれて川を下り始める。意見の食い違いでいがみ合う二人だが、険しい川の流れやドイツ軍の要塞をくぐりぬけ、湖を制圧するドイツ戦艦の撃沈を図る。

ようやくトラブル解決でレビューがかけるようになりました。

1951年のアカデミー主演男優賞を獲得したハンフリー・ボガート主演の冒険映画。原作は”海の男ホーンブロワーシリーズ”で有名なC・S・フォレスター。ドラマはほとんどが川を下るボートの上。登場人物もほとんどボガートとキャサリン・ヘップバーンの二人だけ。

日本では有名な映画ではないと思いますがよくできてます。

戦争→極悪非道なドイツ軍→悲劇のヒロイン→彼女を助けるヒーロー→ラブロマンス→敵討ち

設定が非常に単純明快なので、難しいことを考えずに船で川を下る二人に集中することができます。この映画のレビューを見るとドイツ軍を一方的に悪者にしすぎだとか、アフリカの原住民は未開で非文明的と決め付けているとか難しい評価も見かけますが、そんな難しいことはさておいて主人公二人の冒険とロマンスを楽しめばそれでよい映画だと思います。

二人の関係の変化もよく描けています。危機を乗り越えることで二人は恋に落ちるわけですが、その前後で主人公チャーリーは自分勝手でだらしない大酒飲みから、勇敢に苦難を乗り越えるヒーローに変身。また、ローズは強圧的で愛想のない頑固者から、彼をいたわるやさしい女性に変身。この時代の男らしさ、女らしさを正しく表現する二人が力をあわせて敵討ちを狙うあたり、やっぱりとてもわかりやすい展開で微笑ましい限りです。

ということで、背景設定が単純なので、いやでも注意は主人公ふたりの演技に向けられるわけです。そもそも私が今回この映画を観た目的はアカデミー賞を撮ったハンフリー・ボガートの演技ですが、まあ、決してハードボイルドではありません。髭ぼうぼうでやたら汚いし。らくだのシャツにステテコみたいな姿もあられもなく出てきます。なにより、ドイツ戦艦襲撃を主張するローズに対して、無理だいやだとぼやくぼやく。前半はかっこいいところなしです。

ハンフリー・ボガートという人はどうしても”カサブランカ”や”マルタの鷹”に代表されるハード・ボイルドな役柄から”格好よい”という印象が強いのですが、よく見るとどの役柄でもかなり人間として弱い部分や汚い部分をうまく演じているようです(同じジョン・ヒューストン監督の”黄金”はその最たる作品)。このあたりの弱さ、汚さを克服して男らしさを見せるあたりが共感や憧れを呼ぶ理由なのでしょうか。だとすればこの映画でもボガートらしい定番キャラをきっちりと演じきっていますね(今回の主人公はあんまりハードではないですけど)。

ただ、この主人公役が”欲望という名の電車”のマーロン・ブランドを押さえてオスカーを獲得するほどだったかどうかは疑問が残ります。好感か嫌悪感かはともかくどちらがインパクトがあったかといえば、やはりブランドに軍配上がりませんかね。

1951年のアカデミー賞では、主演助演男女優賞のうち3つを”欲望という名の電車”が独占。主演男優賞のみ本作のボガートが獲得したわけですが、台頭するブロードウェイ/アクターズスタジオ俳優陣に危機感を感じたハリウッド首脳陣がハリウッドの大物ボガートに男優賞をとらせたのではないかしらんとか、ちょっと勘ぐってみたり・笑。

どちらにしても、冒険映画としてなかなかの出来。機会があれば一度ご覧ください。
評価は星4つ★★★★☆(キャサリン・ヘップバーンは好きになれない〜)

好きになれないヘップバーンですが、”「アフリカの女王」と私”という本を書いています。この映画のアフリカロケの内幕のもですが、これがまた壮絶なロケだったらしく、”奇跡の8週間”と言われているそうです。絶版なのですが、中古を探してネット古書店で購入してみました。結構楽しみにしています。

次回は、久しぶりにヒッチコックに戻って1934年の”暗殺者の家”。こちらも大好きなピーター・ローレが出てますね。たのしみましょう。

ヒッチコックはその後も増えて20枚近くDVDが手元にありますので、またしばらくヒッチコックメインでいってみたいと思います。



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2006年01月07日

#0041『美女ありき』アレクサンダー・コルダ監督 1941年イギリス

That Hamilton Woman.JPG”That Hamilton Woman”

監督: アレクサンダー・コルダ Alexander Korda
製作: アレクサンダー・コルダ Alexander Korda
脚本: ウォルター・ライシュ Walter Reisch
R・C・シェリフ R.C. Sherriff
撮影: ルドルフ・マテ Rudolph Mate
音楽: ミクロス・ローザ Miklos Rozsa
 
出演: ローレンス・オリヴィエ Laurence Olivier
ヴィヴィアン・リー Vivien Leigh
アラン・モーブレイ Alan Mowbray
サラ・オールグッド Sara Allgood
グラディス・クーパー Gladys Cooper,Dame
ヘンリー・ウィルコクソン Henry Wilcoxon
ヘザー・エンジェル Heather Angel
ハリウェル・ホッブス Halliwell Hobbs
ギルバート・エメリー Gilbert Emery
マイルズ・マンダー Miles Mander
ロナルド・シンクレア Ronald Sinclair
ルイス・アルバーニ Luis Alberni


ネタバレ注意

「私たちは間違っている。早く気づくべきだった。幸せにはなれないことを」

ナポリの英国大使ハミルトンの甥チャールズと結婚するためにナポリを訪れたエマ・ハート。実はチャールズに騙され、借金のかたに大使に売られていたことを知り愕然とするが、大使の求めに応じてその妻となり、ナポリ社交界の実力者にのし上がる。世はまさにナポレオン台頭の時代、英国海軍士官ネルソンと知り合ったエマは、社交界での人脈を駆使して公私にわたりネルソンを助け、やがて激しい恋に落ちる。国家の英雄ネルソンとの恋はイギリス社会では受け入れられず、やがてネルソンは英国の運命を賭けてトラファルガーの海戦に赴いていくが・・・。

メロドラマの傑作中の傑作”哀愁”の翌年1941年に製作された本作(哀愁のレビューの最後に”1940年製作”と書きましたが、正しくは1941年です)は、イギリスの英雄ネルソン提督とエマ・ハミルトン夫人の恋愛に関する実話を映画化したものです。哀愁におとらずすばらしい悲恋の物語ですね。

ネルソン提督にローレンス・オリヴィエ、エマにヴィヴィアン・リーが扮しているのですが、二人は前年の1940年に結婚しています。二人とも家庭がある身の不倫関係で、’37年の”無敵艦隊”での共演がきっかけとなって交際がはじまり、”嵐が丘”撮影のためハリウッドに渡ったローレンス・オリヴィエを追いかけてヴィヴィアンも渡米。映画における役柄と同様に激しい恋の末の結婚だったようです。

1939年の”風と共に去りぬ”、40年の”哀愁”、41年の”美女ありき”とこの三年間は彼女にとって最高の年だったのでしょう。その美しさは輝くばかりで、演技も年々成熟していきます(”風と共に去りぬ”のときはどちらかというといけいけどんどん風)。

トラファルガーの海戦でネルソンが戦死したことを伝令仕官から知らされるヴィヴァン・リーの表情が印象的。一言も発せず、眉一つ動かさず。半ばうつろになった表情でじっと報せを聞き、夢遊病者のようにカーテンを閉めその場に倒れる。

あまりの悲しみに魂が抜けたような表情を見せるときの彼女の演技は他の誰にも真似ができなませんが、その中でもすばらしい場面、必見の演技だったと思います。

その後、彼女の人生は過労による流産、結核、躁うつ病、裁判、そして最後オリヴィエとの離婚、孤独な死と暗い色彩を帯びていきます。前にレビューした”アンナ・カレニナ”が撮られた1948年は結核と躁うつ病をオリヴィエと二人で乗り越えてきた時期にあたり、悲劇のヒロインを演ずる卓越した演技力は健在ながらやはり容貌からは華やかさが消えて暗い翳りが見えます。無理もありませんが、やはりファンとしては悲しい気持ちになりますね。

やっぱり次はこれを観ないといけませんかね。6年位前に見たときにちょっとショックだった(いろんな意味で)ので、しばらく見るつもりはなかったのですが、、”欲望という名の電車”。ヴィヴィアン・リーの悲しい人生の最終章に撮られた作品ですね。この作品で二度目のアカデミー賞を獲得しています。

その後2本出演作があるものの、一本は落ちぶれたかつての人気女優の役、もう一本はついに助演の立場になっているようで、ちょっとつらくて見れないと思います。

ということで、美しさにあふれた幸せ絶頂の時の彼女を観た直後にもってくるのは非常に厳しいのですが、次回は”欲望という名の電車”。マーロン・ブランドのいやな奴ぶりも見ものです。(ちなみに”風と共に去りぬ”はロードショーを狙っているのでDVDでは観ません”)

あ、”美女ありき”の評価は星4つ★★★★☆(史実を追うということもありエピソードひとつひとつの掘り下げが浅めかなと)




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なんと、無敵艦隊とセットが出てましたね。買おっと^^


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2005年12月28日

#0039『アンナ・カレニナ』ジュリアン・デュヴィヴィエ監督 1948年イギリス

ANNA KARENINA.jpg”ANNA KARENINA”

監督: ジュリアン・デュヴィヴィエ Julien Duvivier
製作: アレクサンダー・コルダ Alexander Korda
原作: L・N・トルストイ L.N. Tolstoy
脚本: ジャン・アヌイ Jean Anouilh
    ガイ・モーガン Guy Morgan
    ジュリアン・デュヴィヴィエ Julien Duvivier
撮影: アンリ・アルカン Henri Alekan
 
出演: ヴィヴィアン・リー Vivien Leigh
    ラルフ・リチャードソン Ralph Richardson
    キーロン・ムーア Kieron Moore
    サリー・アン・ハウズ Sally Ann Howes
    ニオール・マッギニス Niall MacGinnis
    マーティタ・ハント Martita Hunt


「男の人は、心の中では不倫するような女を軽蔑して、家族とは区別して考えているものよ」

官僚カレーニンの妻アンナは才気あふれる魅力的な女性であるが、仕事一辺倒の夫との中は今ひとつうまくいっていない。モスクワの兄を訪れたアンナは、駅で義理の妹キティの婚約者ヴロンスキー大尉と出会う。ヴロンスキーの必死の求愛は、夫との仲に不満を持つアンナの心を徐々に引き寄せ、ついには家族を捨てて駆け落ちするに至る。幸せをつかんだかに見えたアンナだが、罪の意識と世間の中傷が徐々にアンナを押しつぶしていく・・・。

トルストイ原作のアンナ・カレニナ、7回映画化されているそうです。古くはグレタ・ガルボ(1927年サイレント、1935年トーキー)、新しくはソフィー・マルソー、ショーン・ビーン(1997年)。今回は1948年のジュリアン・デュヴィヴィエがヴィヴィアン・リーを主演に撮った作品です。

ヴィヴィアン・リーは当Blogでは初登場ですが、実はかなり思い入れのある女優です。中学生の頃深夜テレビで放映されていた”哀愁”(マーヴィン・ルロイ監督1940年)をビデオ録画して何回も観ましたね。親に隠れてこっそり観てはラストシーンに感動してよく泣いてたものです。

ということで、オールド・ムーヴィーの原体験はヴィヴィアン・リーにあるといってもいいくらいなのですが、本作のアンナも”哀愁”のマイラにかぶりますねぇ。ともに主人公として同じ結末を迎えるわけですが、徐々に追い詰められていって、もう我が身に救いは何もないのだと悟る瞬間の喪失感というか絶望感というか、ヴィヴィアン・リー以外にこれほどの感情表現ができる女優はいないだろうと思います。

ヴィヴィアン・リーは51年に”欲望という名の電車”で二度目のオスカー(一回目は39年の風と共に去りぬ)を獲得するなど女優として活躍しましたが、私生活においては結核に苦しんだり、熱愛の末結婚したローレンス・オリヴィエとの離婚など波乱も多く、67年に必ずしも幸せではない末期を迎えたようです。本作や”哀愁”で演じた悲劇のヒロインたちと通ずる人生を送ったことに感慨を覚えます。

さて、ヴィヴィアン・リーの演技には一もニもなく大感動なのですが、ストーリーの方は残念ながらかなり中盤が辛いです。アンナがヴロンスキーの愛を受け入れる決心をしてから、ヴェネチアでの駆け落ち生活を経てモスクワに戻ってくるまでの間にさまざまなイベントが起こります。アンナの病気やヴロンスキーのピストル事故(自殺未遂??)、義理の妹の結婚などなど。盛りだくさんなのですがそれぞれのつながりが良くないため観ているほうは若干おいていかれ気味です。このあたりのエピソードを整理して1時間半くらいの作品にしたほうがよっぽどすっきりしてよかったと思いますね。

ジュリアン・デュヴィヴィエは前回の”舞踏会の手帳”に続いて二作目の鑑賞ですが、前回はストーリー作りと演出に大いに満足しました。このあたりに秀でた監督かと思ったのですが、本作ではヴィヴィアン・リーの名演が目立つのみでストーリー面でも、演出面でも今ひとつぴんとくるものがなかったように思えます。物語の前半でアンナの最後を暗示する出来事やセリフがいくつか出てきて、ラストシーンではその暗示がいかにも効いてきます。このあたりはトルストイの原作もさることながら、デュヴィヴィエ監督の冴えなのかなと感じたのは確かですが、全体的にはもうひとがんばりという感じでしょうか。


ということで、評価は星4つ★★★★☆(本来星3つにヴィヴィアン・リーへの思い入れでひとつ追加)


さて次回は、デュヴィヴィエ監督を掘り下げたいのですが、手元に作品ストックがないので手に入り次第鑑賞するということで、ヴィヴィアン・リーを追いかけてみたいと思います。うちにあるのは彼女の二大オスカー作品ですが、うーむ・・・。”風と共に去りぬ”は年末忙しい中4時間もDVD見てると奥さんに追い出されそうだし、、”欲望という名の電車”は正月気分では観たくない映画・・。 ”哀愁”買って帰ることにします。

ということで、次回は実に久々の”哀愁”!

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2005年10月27日

#0009『三十九夜』アルフレッド・ヒッチコック監督 1935年イギリス

39steps.jpg
”The 39 Steps”

監督: アルフレッド・ヒッチコック
原作: ジョン・バカン
脚本: チャールズ・ベネット/アルマ・レヴィル/イアン・ヘイ
撮影: バーナード・ノールズ
音楽: ルイス・レヴィ
 
出演: ロバート・ドーナット
    マデリーン・キャロル
    R.マンハイム
    ペギー・アシュクロフト
    マイルズ・メイルソン

「これでやっと忘れられる・・・やっと」

劇場で知り合った女性に頼まれ、自宅につれてきたカナダ人外交官ハネイ。話を聞いてみると、女性はイギリスのスパイで、ある国家機密をめぐって命を狙われているという。確かに、窓の外には怪しい人影。そして、あろうことか彼女はその夜、背中にナイフをつきたてられて死んでしまいます。疑われたハネイは辛くも自宅を脱出し彼女の代わりにスコットランドに行こうとします。警察とスパイ両方の執拗な追跡はどんどん彼を追い詰めていき・・・。最後の秘密の隠し方は奇抜。

イギリス時代後半の作品ですね。前年に、「暗殺者の家」があります。暗殺者の家は、イギリス時代におけるヒッチコック最高のヒット作となりましたが、その実績により、本作以降は自由にテーマを選べる立場になったということです。本作はヒッチコックが名監督として世に認められた第一作ということですね。その記念すべき第一作に選んだのが、崇拝するジョン・バカンの「39階段」。

ちなみに、主人公のハネイはバカンの原作「39階段」では鉱山技師ですが、この事件を機にイギリス情報部のスパイとなり、その後一流のスパイとして立派に5つの長編の主人公を務めたということです。本作のハネイの艱難辛苦を見ているとさもありなんと納得しますね。

”どこかで見たシーン”が満載ですよ。典型的な卒き込まれ型サスペンス。逃亡につぐ逃亡、危機一髪の脱出、手錠につながれた主人公とヒロイン、逃亡の中で徐々に形成逆転し犯人を追い詰めていくスリル。ヒッチコック自身が「北北西に進路を取れ」の下敷きに用いたばかりでなく、最近でも同様の趣向をいろいろな映画・ドラマで見かけます。そういう意味では、現在のサスペンスドラマ(映画も含めて)の源流となった映画であるといえますね。

また、ドラマの密度が濃いのが特徴です。枝葉(経緯や背景説明)をばっさり省いて、サスペンスフルな場面のみを次々と見せていくという感じで、ワンシーンも見逃すことができません。ヒッチコック自身が「(もっとも)らしさなんて追求しても時間の無駄だ」と言い切っていますが、このあたりがヌーヴェル・ヴァーグに大きな影響を与えたコアの部分なんですね、きっと。

個人的にはほんのちょっとだけ息継ぎのできるシーンも混ぜてくれてもいいかなと感じたのは事実ですが、どこまで逃げても現れる追っ手の影と次々繰り広げられるイベントにぐぐっと引き込まれていく感覚はさすがヒッチコックです。後に続くヒッチコック・スタイルはこの映画ですでに力強く形になっております。

評価は星4つ★★★★☆

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2005年10月21日

#0007『恐喝(ゆすり)』アルフレッドヒッチコック監督 1929年イギリス

blackmail2.gif
”Blackmail” 
監督: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
製作総指揮: ジョン・マクスウェル
脚本: ベン・レヴィ
撮影: ジャック・コックス Jack E. Cox
音楽: キャンベル・コネリー
 
出演: アニー・オンドラ
    サラ・オールグッド Sara Allgood
    チャールズ・ペイトン
    ジョン・ロングデン John Longden
    ドナルド・カルスロップ Donald Calthrop
    シリル・リチャード Cyril Ritchard


「まだ知り合いではないんです。これから親密になるんですよ」

ロンドン警視庁のフランクとの関係が倦怠気味のアリスは、ふとしたきっかけで知り合った男性の家で襲われそうになり、自分の身を守るために男をナイフで刺殺。思い悩んだあげく、フランクに相談します。現場検証でアリスの犯行とうすうす気づいていたフランクは、彼女を守ろうとしますが、彼女の犯行に気づいた男がアリスの家にやってきて・・・。

1929年、ヒッチコック30歳のときの作品です。サイレントとして撮影されていた作品が途中でトーキーに変更され、イギリス映画界のトーキー第一号作品となりました。出だしは完全なサイレント映画ですから。途中で突然役者が話し出したのには少し驚きました(笑)。

ドナルド・カルスロップ扮する恐喝者が実に憎憎しく好演ですね。彼が前科者であることから状況は急展開し、ラストシーンはアリスにとってかなり残酷だなと。

アリスを演じるアニー・オンドラはビスク・ドールのように可憐。殺害直後の茫然自失ぶりや、その後街をさ迷い歩くシーンでの焦燥感の演技は秀逸です。結構好みな感じだと思ったんですが、フィルモグラフィを調べてみると同年にもう1本出てるだけでした(寂し・・・)。

30歳と若くてもヒッチコックらしさが随所に見られ、事件の噂話をするおしゃべりのおばさんの会話の中から凶器の”ナイフ”という単語だけが強調されることで、アリスの罪悪感を表現する趣向や、要所要所で登場する指をさして人を嘲り笑うピエロの絵など、十分楽しめる演出がありました。

後々のヒッチコック映画に見られるようなマニアックな要素は少なく、その分単純な展開にも感じられますが、はじめてのトーキーでこれだけの作品が作れたのは、やはりヒッチコックの才能ゆえだなと感じました。

評価は星三つ★★★☆☆(ちょっと厳しいかも)

恐喝(ゆすり)
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2005年10月15日

#0005『バルカン超特急』アルフレッド・ヒッチコック監督 1938年イギリス

Lady Vanishes.jpg”The Lady Vanishes”

監督: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
製作: エドワード・ブラック Edward Black
原作: エセル・リナ・ホワイト Ethel Lina White
脚本: シドニー・ギリアット Sidney Gilliat
撮影: ジャック・コックス Jack E. Cox
音楽: ルイス・レヴィ Louis Levy
 
出演: マーガレット・ロックウッド Margaret Lockwood
   マイケル・レッドグレーヴ Michael Redgrave
   ポール・ルーカス Paul Lukas
   グーギー・ウィザース Googie Withers
   リンデン・トラヴァース Linden Travers
   メイ・ウィッティ May Whitty



「英国人のご婦人なんていなかったわ。はじめから誰もいなかった。」

バルカンのリゾート地からロンドンに向かう特急列車のコンパートメントの中。乗車前に頭をぶつけ、気分がすぐれず仮眠をとった主人公アイリス(マーガレット・ロックウッド)が目覚めると、昨晩ホテルで知り合い一緒に列車に乗ったはずの英国の老婦人フロイが忽然と姿を消してしまっています。

乗り合わせた乗客や車掌に尋ねてもだれも老婦人のことを覚えていません。一緒にお茶を飲んだはずの食堂車に残されている注文伝票も一人分だけ。でも、自分はフロイの着ていたものまで詳しく覚えているのに・・。

やがて、戻ってきた老婦人は着ているものだけが同じの全くの別人。この列車では何かとんでもないことが起きている。やがて明かされるその真相とは・・・・。

さて、自分の記憶を周囲の人間すべてに否定されてしまったら・・・。自分の記憶は本当に正しいのだろうか。ひょっとしたら自分が間違っているのだろうか。

見ているものは、アイリスの不安を体感しつつ、かたや起こっていることの裏側にはどんな真相が隠れているのだろうか、”うーんどうなってるんだよ”と思い悩むことになります。

一見すると平凡きわまりない映像の中に、ひょっとすると何かが潜んでいるんじゃないか。それが重大な鍵になっているんじゃないか、と目を見開きながら映像を凝視することになります。

  ・繰り返し流れるセレナーデ
  ・オートミール色のツイードジャケットと青いリボン
  ・笑顔を絶やさないイタリア人の夫とにこりとも笑わないその妻
  ・人目を避ける不倫の弁護士
  ・クリケットに夢中のイギリス紳士
  ・メキシコで人気のハリマン・ハーブティの包み紙
  ・包帯でぐるぐる巻きの重症患者と脳外科の権威
  ・ハイヒールを履いた尼僧
  ・少し大きなブランデーグラス
  ・角砂糖、警笛、窓に指で書いた名前・・・・


すべての鍵が、絶妙に配置され、これぞサスペンス!これぞヒッチコック映画!はぁ、良かったぁ。。。500円だし。

90フィートというから27メートル。学校のプールくらいのセットですべての列車内のシーンは撮られたそうです。後のヒッチコック映画でも頻繁に使われたキーアイテムのクローズアップ手法など数々の実験を行ったということです。二年後のアメリカ行きに備えて意欲満々だったのでしょうか。

しかし1938年ですよ。70年近く前の映画です。トーキーが生まれて10年。だからでしょうか、ホテルの支配人の演技などはサイレント並みのオーバーアクションが笑えます。でも、プロットの秀逸さをとっても、サスペンスのワクワク感をとっても、最近の映画に勝るとも劣りません。ヒッチコック映画の中でもすぐれた一本といえると思います。評価は星5つ★★★★★

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バルカン超特急シドニー・ギリアット アルフレッド・ヒッチコック マーガレット・ロックウッド

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2005年10月09日

#0002『悲しみよこんにちは』オットー・プレミンジャー監督 1958年イギリス・アメリカ

BONJOUR TRISTESSE.jpg

監督: オットー・プレミンジャー Otto Preminger
製作: オットー・プレミンジャー Otto Preminger
原作: フランソワーズ・サガン Francois Sagan
脚本: アーサー・ローレンツ Arthur Laurents
撮影: ジョルジュ・ペリナール Georges Perinal
音楽: ジョルジュ・オーリック Georges Auric
タイトルデザイン: ソウル・バス Saul Bass
 
出演: ジーン・セバーグ Jean Seberg
    デボラ・カー Deborah Kerr
    デヴィッド・ニーヴン David Niven
    ミレーヌ・ドモンジョ Mylene Demongeot
    ジェフリー・ホーン Geoffrey Horne
    ジュリエット・グレコ Juliette Greco
    ワルテル・キアーリ Walter Chiari


「私は父と一緒に暗黒の世界に住んでいる」

モノクロ画面の中で黒いドレスのジーン・セバーグ。もうあの色彩あふれる溌剌とした世界には戻れない・・・だろうなぁ。

心に絶対消えない罪悪感を背負った現在のシーンはモノクロ。屈託なく人生を楽しんでいた1年前の過去のシーンはカラー。回想シーンとモノローグを多用した二重ドラマ構成はその後の映画にも影響を与えたということです。

いわずと知れたサガンの原作。原作は未読ですが、かなりわかりやすい脚本になっているそうです。親と子の対立でもあり、生き方の違いもあるのでしょう。プレイボーイの父と奔放に生きてきたセバーグ扮する17歳のセシルにしてみれば、理性的な父の婚約者(デボラ・カー)の母親面した干渉に耐え切れない。なんとか追い出そうと企んだ挙句、事態は取り返しのつかない方向へ・・。

個人的にはですね。うーん・・・今ひとつかなぁ。基本的に映画はストーリーの明快ほうが好きなんですが、モノローグとかが行き届きすぎというか。いや、そんなに全部説明してくれなくてもって。脚本自体筋立てがすっきりしてることもあだになり物語に自分なりの解釈入れる余地があんまりないですよね。

でもジーン・セバーグは素晴らしい。天下の名女優デボラ・カーが霞んでます。モノクロとカラーでセバーグの姿を見れるだけで十分。(モノクロのほうがきれいな気もしますね)
全体的には星みっつ★★★☆☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

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悲しみよこんにちはジーン・セバーグ

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