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2006年12月10日

失われた週末 1945年/アメリカ【DVD#139】

LOST WEEKEND.jpg
”THE LOST WEEKEND”

監督:ビリー・ワイルダー
製作:チャールズ・ブラケット
原作:チャールズ・ジャクソン
脚本:チャールズ・ブラケット/ビリー・ワイルダー
撮影:ジョン・サイツ
特殊効果:ゴードン・ジェニングス
音楽:ミクロス・ローザ
 
出演:レイ・ミランド
   ジェーン・ワイマン
   フィリップ・テリー
   ドリス・ダウリング
   ハワード・ダ・シルヴァ
   フランク・フェイレン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


2〜3日前に観終わっていて、ずっと記事内容を考えているのですが、なかなか書けないのですよ。面白くなかったわけではありません。その逆。この作品は最高に面白いですよ。

このブログで取り上げたビリー・ワイルダーの作品は5本目で、サスペンス系の『情婦』『サンセット大通り』の方が、コメディ系のものよりも気に入りました。この作品も、犯罪ものではありませんがサスペンス系に入れてよいと思います。

ストーリーは、アルコール中毒のドン・バーナム(レイ・ミランド)の物語。彼の面倒を見る兄の計らいで週末を酒から離れて過ごすために田舎の実家に行くことになる。ところがどうしても酒を断つことができないドンは兄と恋人ヘレン(ジェーン・ワイマン)を騙し、酒を求めて町に出て行ってしまう。

なぜそれだけ面白いのに感想を書く筆が進まないのかというと、レイ・ミランドの演技のみに関心が集中してしまったから。ビリー・ワイルダーのこれまで見た作品は、シナリオの面白さが良かったのだが、今回は1にも2にもレイ・ミランドの演技力。

アル中の実態というのも初めて見ましたが麻薬中毒と同じですね。酷いというか惨いというか。私は酒はなくても全然平気な方で、いざ飲むときはかなり飲むけれども二日酔いにもなりません。ということなのでアルコール中毒というのは身近な話ではないのです。しかし、それでもアル中の悲惨さは身に迫る迫力がありますね。それを演じるレイ・ミランドの演技力ですよ。

酒が欲しくてしょうがないときのあの表情や、酒が飲めるときのあの表情。大体目つきが普通じゃない。飲みたくて飲みたくて飲みたくて飲みたくて、いつか作家として立ち直ることが出来るはずだと、そう信じる心の支えのはずのタイプライターを質屋に入れてでも酒が飲みたくて、でも質屋が開いてなくて、行きつけのバーでツケも断られて、「なら、一杯だけおごってくれ・・・頼む」とバーテンに哀願するときのレイ・ミランドの演技ね。

自分で天井の電気のかさに隠したボトルを忘れてしまって、気が狂ったように部屋中探し回るドン、あっちも探してこっちも探して、見つからずに絶望の表情でベッドに倒れこんで、天井に写ったボトルの影を見つけた時のレイ・ミランドの演技ですよ。

当然シナリオも抜群、映像的にも面白いところが多々ありましたが、今回はレイ・ミランドの壮絶なアル中演技、それ一本で★5つ。

★★★★★

失われた週末
失われた週末ビリー・ワイルダー レイ・ミランド ジェーン・ワイマン

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2006年12月05日

仕組まれた罠 1954年/アメリカ【DVD#138】

fritz_lang_human_desire.jpg
 ”HUMAN DESIRE”

 監督:フリッツ・ラング
 製作:ルイス・J・ラックミル
 原作:エミール・ゾラ
 脚本:アルフレッド・ヘイズ
 撮影:バーネット・ガフィ
 音楽:ダニエル・アンフィシアトロフ
 出演:グレン・フォード
    グロリア・グレアム
    ブロデリック・クロフォード
    エドガー・ブキャナン



詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

ドイツの名監督フリッツ・ラングがハリウッドで製作したサスペンス映画で、日本未公開作品。フリッツ・ラング監督の作品は今回が初めてです。

主人公のジェフ・ウォーレン(グレン・フォード)は、朝鮮戦争から帰還し鉄道機関士に復職します。映画の冒頭にジェフが電気機関車を走らせますが、このシーンがなんともいえず良いですねえ。運転席から見える景色の臨場感と、ジェフのプロフェッショナルな風情や、ジェフと同僚が手振りだけでタバコの火のやり取りをする様がリアル。また音楽がシーンにとても良く合っています。冒頭からちょっと目を見張りました。

ストーリーは、”仕組まれた罠”というより、原題のHuman Desire(人間の欲望)の方がピンとくる内容。

ジェフは、昔の同僚カール(ブロデリック・クロフォード)と再会します。カールは副操車場長に出世し美しい妻ヴィッキー(グロリア・グレアム)と結婚したばかり。ところが再会直後にカールは上司と揉め事を起こしてクビを言い渡されてしまいます。困りきったカールはヴィッキーが昔”世話になった”という大荷主オーウェンズに仲裁してもらうことを思いつき、嫌がる妻を説得してオーウェンズのもとに頼みに行かせるんですねぇ。

さあ、ところがヴィッキーはオーウェンズのもとに向かったまま5時間たっても帰ってきません。ようやく戻ってきたヴィッキーを問い詰めたカールは、妻の様子からオーウェンズとの関係を疑い嫉妬に我を忘れて狂います。町に戻るオーウェンズと同じ汽車に乗り込んだカールは、妻を伴ってオーウェンズの個室に乗り込み、ついに彼を刺し殺してしまうのです。二人は自分たちの客車に戻ろうとしますが、デッキに同乗していたジェフがタバコをふかしているのに気づきます。カールはヴィッキーにジェフを誘い出すように命じますが・・・。

さて、本題はここからです。主役の三人はそれぞれ”人間の欲望”に取り付かれてしまうんですね。カールはすでに嫉妬に狂いオーウェンズを殺害していますが、それでもまだヴィッキーを愛しており、彼女を脅して自分のもとに縛りつけようとします。デッキでヴィッキーと出会ったジェフは怪しいと思いつつも美しい彼女を愛してしまい、次第に友人カールが疎ましくなってきます。そして、ヴィッキーは・・。三人の中で一番”業”に取り付かれているのは、実はヴィッキーなのでしょうか。美しさを武器に男に取り入り自分のために利用しようとします。

次第に酒におぼれていくカールと、夫に見切りをつけて冷たく接するヴィッキーの夫婦が壊れていく様子はかなり悲惨ですねぇ。そして、ヴィッキーは愛するジェフをも、自分のために利用しようとします。カールを殺すようにジェフをそそのかすヴィッキー。ついに意を決して酔ったカールの後をつけるジェフ・・・。

ドロドロですわ。三つ巴ですね。三人の俳優はそれぞれ素晴らしい演技。ブロデリック・クロフォードの鬼気迫る狂い方も、美しく涙をこぼしながら夫殺しをそそのかすグロリア・グレアムも、まっとうな理性を持ちながら愛した女のために殺しを決意するグレン・フォードも良いと思います。

ラストに向けて展開が少し簡単になりすぎたところが玉にキズなんですよね。そのために全体的にもこじんまりした作品になってしまっているのが残念です。それでもラストで三人が乗り合せる汽車のシーンは実に皮肉で印象的。欲望に取り付かれたものは、欲望に殺されるというまっとうなエンディング。

そういえば、ジェフが居候している家に娘(キャサリン・ケース)がいるんですが、ヴィッキーへの恋に盲目になっているジェフに、涙をポロポロ流しながら訴えかけるんですよ。ドロドロの中にすごく清らかなものを見たようで感動いたしました。

★★★☆☆

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2006年11月30日

日曜日には鼠を殺せ 1964年/アメリカ【DVD#137】

BEHOLD A PALE HORSE.jpg
”BEHOLD A PALE HORSE”

監督:フレッド・ジンネマン
製作:フレッド・ジンネマン
原作:エメリック・プレスバーガー
脚本:J・P・ミラー
撮影:ジャン・バダル
音楽:モーリス・ジャール
出演:グレゴリー・ペック
   アンソニー・クイン/オマー・シャリフ
   パオロ・ストッパ/レイモン・ペルグラン
   ミルドレッド・ダンノック/ペレット・プラディエ
   クリスチャン・マルカン/ミシェル・ロンズデール
   ダニエラ・ロッカ/ロザリー・クラッチェリー
   ロランス・バディ/マーティン・ベンソン


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少しネタバレ

『真昼の決闘』がとても気に入ったフレッド・ジンネマン監督の作品。『真昼〜』の何が良かったかと言えば、それはもうゲイリー・クーパーが誰の助けも得られず徐々に一人ぼっちに追いつめられていく姿。時間の経過をリアルに織り交ぜながら、実に見事なストーリー運びでした。

この作品でも同じく、ぐぐっと迫りこんでくるようなストーリーが良いですねぇ。グレゴリー・ペックとアンソニー・クィンの演技もかなり重厚で名演。夜や日の射さない室内のシーンが多く、スクリーンには重苦しい雰囲気が立ち込めていますが、これはまちがいなく良い映画です。

スペイン内戦が終結し、人民戦線側で戦った英雄マヌエル・アルティゲス(グレゴリー・ペック)は終戦後フランスに亡命。ゲリラ活動を続けていたが、終戦後20年を経た現在ではその情熱もなくしてしまい日々衰えていくのみ。ある日彼のもとに母が入院したと言う知らせが届く。故郷サン・マルティンの病院では内戦以来の宿敵警察署長ヴィニョラス(アンソニー・クィン)がマヌエルを捕らえるために万全の包囲網を敷いていた。

一度見て、マヌエルの行動が今ひとつ良くわからなかったのでスペイン内戦の情報を少し調べて再度鑑賞。キーポイントはオマー・シャリフの演じる神父でした。フランシスコ神父は、死の床にある母親から警察の罠を警告する伝言を頼まれてマヌエルのもとにやってきます。スペイン内戦ではローマ教皇庁がフランコ政権を認めたことがとどめとなった経緯もあり、人民戦線の闘士であったマヌエルからするとカトリック教会と神父は悪の権化。母が死の間際に神父と接したことも信じたくないし、神父が告げる母の死も信じられない。

はじめは神父に対して憎悪をあらわにするマヌエル。分け与えたパンを取り上げて、「このパンを与えたのは神ではない、俺だ。」とすごみますが、神父は無言でパンをつき返します。しかし、神父の伝言が決め手となって密告者を暴き出せたことで二人の距離は縮まり、実は同郷であったことからスペイン内戦での神父の悲惨な体験を知ることになります。それは人民側がしたことではないというマヌエルに、そんなことにどんな違いがあるのかと神父は聞き返します。

マヌエルは、人民のためにファシストと戦った正義の戦士という自分の存在意義を神父に否定されたのでした。そして、彼自身もそのことを自己否定するのですが、その心の葛藤がこの映画のテーマであるようです。神父と別れた後、暗い部屋の中で歩き周り思い悩むマヌエル。窓からボールを投げ落とします。窓外の石畳を転々とボールが転がっていくショットはまるでよくできたフランス映画のようなすばらしさですが、このボールはマヌエルが大事にしてきた自尊心の象徴でしょうねぇ。それを窓から投げ捨てたわけです。

ラストで「ビニョラスに一泡吹かせてやるのさ」と言いながらマヌエルがとる行動は自殺行為のようにめちゃくちゃですが、すでに自分の存在を否定してしまったマヌエルにとってはそんなことはどうでも良かったのかもしれません。

グレゴリー・ペックは、今ひとつ入りこめない俳優なんですが、この作品のペックは良いと思います。品行方正なヒーローのイメージがありますが、今回の落ちぶれた英雄や『白昼の決闘』のときのような悪役のほうが味が出ていて個人的には好きですね。

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大体において感想は大甘になってしまうのです。前回の『アパートの鍵貸します』以来、「良いものは良い、良くないものは良くないとはっきり書こう、★も厳しくつけよう」と思っているのですが、思った矢先からこういう良い映画に当たってしまいます・笑。


日曜日には鼠を殺せ
日曜日には鼠を殺せグレゴリー・ペック フレッド・ジンネマン アンソニー・クイン

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2006年11月26日

アパートの鍵貸します 1960年/アメリカ【DVD#136】

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”THE APARTMENT”

監督:ビリー・ワイルダー
製作:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
撮影:ジョセフ・ラシェル
音楽:アドルフ・ドイッチ
出演:ジャック・レモン
   シャーリー・マクレーン
   フレッド・マクマレイ
   レイ・ウォルストン
   デヴィッド・ルイス
   ジャック・クラスチェン

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    ⇒IMDb(英語)


ビリー・ワイルダーの傑作コメディということで有名な作品。開巻から一度も笑えなかったので自分にはコメディセンスがないのかといささか心配になりました。が、ワイルダーはこの作品をコメディではないと言っているらしく一安心。

主人公のバクスター(ジャック・レモン)はあまりにもプライドがないため見ていて痛々しい。自分の部屋を複数の上司の情事に提供しながら、その見返りを昇進という形で期待している、そのあたりがなにかこう、とっても皮肉にフンとさげすんでやりたい気分になります。

部長が”顧客”になったとたんにそれまで部屋を利用していた4人の課長たちには手のひらを返したように冷たくなります。いそいそと部長のために部屋の段取りをとる姿は、組織人のものすごくいやな部分をあまりにも見事に見せつけられているようで、見事すぎていたたまれない。バクスターが係長になったときのあの帽子、本人はエグゼクティブの帽子と言っていますがどう見ても道化の帽子にしか見えません(チャップリンの帽子に似てますね)。

かたやフラン(シャーリー・マクレーン)の方も、自分勝手で遊び人の部長に遊ばれているとわかっていながら離れられない、そのあたりの優柔不断さが全くじれったい。シャーリー・マクレーン独特のあの表情が余計にじれったさを掻き立てます。彼女がバクスターに「今まで何人と付き合ってきたのか?」と聞かれて「3人」と答えたときに、指は4本立てていましたね。現在の部長との交際を無意識に拒否したいが、それでも別れることができない、どうしようもない気持ちが現れているのかもしれません。

隣の医者がバクスターにいみじくも「人間らしくなれ」と言います。医者は「人でなしの女たらしをやめてまっとうになれ」という意味で忠告するのですが、観客が受け取るのは”自分をせこく切り売りしてわずかな昇進を喜ぶようなむなしいことはやめろ”というメッセージであり、一つのメッセージに二重の意味を持たせているところは面白いですね。

そういう風に見るとこの映画、どんよりとした曇り空のように実に不愉快極まりない。物語のラスト5分までその不愉快さが付きまといます。ところが、ため息つきつきラストを迎えると、そこで一気にさーっと雲が晴れます。そこにのぞいた青空はあまりに気持ちよくて、それまでの不快感が吹き飛んでしまいました。ああやっぱりビリー・ワイルダーはうまいなと感心することしきり。一度もキスすることもない二人ですが、まことに見事なラブストーリーでした。

★★★★☆

アパートの鍵貸しますアパートの鍵貸します
ビリー・ワイルダー ジャック・レモン I.A.L.ダイアモンド

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2006年11月23日

キー・ラーゴ 1948年/アメリカ【DVD#135】

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 ”KEY LARGO ”

 監督:ジョン・ヒューストン
 製作:ジェリー・ウォルド
 原作:マックスウェル・アンダーソン
 脚本:リチャード・ブルックス/ジョン・ヒューストン
 撮影:カール・フロイント
 音楽:マックス・スタイナー
 出演:ハンフリー・ボガート/ローレン・バコール
    クレア・トレヴァー/エドワード・G・ロビンソン
    ライオネル・バリモア/モンテ・ブルー
    トーマス・ゴメス/ハリー・ルイス
    ジョン・ロドニー/マーク・ローレンス


詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ちょいとネタバレ

舞台はフロリダ、キー・ラーゴのホテル。一夜のハリケーンに閉じ込められた悪党とヒーロー。悪党はやりたい放題。ヒーローは我慢に我慢。やりたい放題と我慢の振幅がだんだん大きくなって限界点を迎えたところでヒーローの大逆転。

そういうことですねぇ。悪党のボスジョニー・ロッコにエドワード・G・ロビンソン、ロッコの情婦クレア・トレバー。ホテル・ラーゴの主人ライオネル・バリモア、その娘ローレン・バコール、そしてバコールの戦死した夫の戦友でロッコと対決するヒーロー、フランク・マクラウドにハンフリー・ボガート。

人物に迫力があります。主役クラスの5人はもちろん、ロッコの手下たちも含めて画面映りに味があるというかくせのある俳優がそろっていますね。その上、冒頭のバスの中のボギーの横顔から始まって、ボート小屋に向かって歩くボギーとバコールのツーショットや、ロビンソンの登場場面などクローズアップや鏡に映る人物像をうまくつかって非常に”人”のインパクトを出すような撮り方をしています。

犯罪映画では悪役が重要ですが、名優エドワード・G・ロビンソンの悪役ぶりはすばらしく、ふてぶてしさ憎々しさは秀逸。彼の悪意は直接ボガートではなくホテルの主人親子と情婦に向けられていて、バコールなども散々いたぶられます(あの野村のささやき戦術みたいなのはなにを言ってたんだろう・・・?)。ホテルの主人バリモアは車椅子に乗っているため、いくらロビンソンにやられても反撃することが出来ません。バリモアの悔しそうな言動がまた悪党ロビンソンを引き立てます。

観客としては「おいおい、何とかしてやれよ、ボギー!」ということで、ヒーロー・マクラウドの反撃への期待が盛り上がっていきます。この辺の期待感の盛り上げには、落ちぶれた歌手でアル中の情婦ゲイも一役買っており、酒欲しさにみんなの前で衰えた歌を歌わされるシーンは痛々しく、ロッコへの怒りの指数がさらにアップ。ゲイを演じたクレア・トレバーはアカデミー助演女優賞を獲得しました。

ロッコへの怒りを盛り上げ反撃の期待感をあおる部分は状況設定、ストーリー、人物描写ともに文句なし。意外なほどにハリケーンにうろたえるロッコやあまりゴタゴタに関わりたくない風情のマクラウドの描き方も良かった。しかし、個人的にはクライマックスのボギーの反撃シーンにもう少し迫力とギリギリ感が欲しかったかなと感じます。船室へのドアをはさんでお互いに姿の見えないロッコとマクラウドの対峙などサスペンスを盛り上げる工夫はありますが。

ボギーとベティ(ローレン・バコール)、やっぱり絵になりますね。顔が似てるかも・笑★★★☆☆

キー・ラーゴキー・ラーゴ
ジョン・ヒューストン リチャード・ブルックス ハンフリー・ボガート

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2006年11月17日

大脱走 1963年/アメリカ【DVD#134】

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”THE GREAT ESCAPE”

監督:ジョン・スタージェス
製作:ジョン・スタージェス
原作:ポール・ブリックヒル
脚本:ジェームズ・クラヴェル/W・R・バーネット
撮影:ダニエル・ファップ
編集:フェリス・ウェブスター
音楽:エルマー・バーンスタイン    
出演:スティーヴ・マックィーン/ジェームズ・ガーナー
    リチャード・アッテンボロー/ジェームズ・コバーン
    チャールズ・ブロンソン/デヴィッド・マッカラム
    ハンネス・メッセマー/ドナルド・プレザンス
    トム・アダムス/ジェームズ・ドナルド
    ジョン・レイトン/ゴードン・ジャクソン
    ナイジェル・ストック/アンガス・レニー
    ロバート・グラフ/ジャド・テイラー

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

もう、『大脱走』については、いまさら何にも言うことはないでしょうねぇ。★★★★★
でも、ちょっとだけいいですか・笑

エルマー・バーンスタインのテーマ曲が響いてくるだけで大興奮でしょう。脱出不可能なドイツ軍の刑務所から、なんと250人を同時脱出させようという大プロジェクト。

こういう映画は、前半で着々と準備が行われて後半で目的達成に向けて一気に集中というのがパターンですね。同じくスタージェス監督の『荒野の七人』でもそうでしたが、前半の準備段階が意外と面白い。というか、前半の準備プロセスが丹念に練りこまれているほど、後半のアクションが生きてくるということになります。クルーゾー監督の『恐怖の報酬』などもちょっと違いますが同じようなタイプと言って良いかもしれませんね。

さて、『大脱走』の前半部分は、丹念どころではありません。映画が始まってからトンネルを抜けて脱走するシーンまでなんと1時間50分以上。映画一本分の時間をかけて脱走準備を描きこみます。

トンネルキング、偽造屋、調達屋などその道のプロフェッショナルの活躍や、一糸乱れぬ連携プレーで敵の目を欺く工夫がサスペンスを引き出し、そこにマックィーン扮する脱走常習犯ヒルツのヒーロー的キャラクタが加わり、前半だけでも十分そこらの映画をしのぐ面白さを味わうことができます。

しかし、この”大脱走計画”は”大失敗”ですから後半は大変ですね。本来前半で準備に準備を重ねたプロジェクトが成功に向かって走り出すところ、この映画の場合はトンネルが短かった時点ですでに失敗決定。あとは、敗戦処理です。なので、あっちでもこっちでも志半ばで倒れていく仲間達の姿を目撃することになります。

そもそも、捕虜が脱走するのは敵軍の後方かく乱というひとつの任務ということからすると、多くの仲間達が命を賭けてその使命を果たしたということにはなります。最後に司令官が”この脱走に価値はあったか”と聞かれて、”考え方次第だ”と答えるのがむなしくて悲しい。

しかし、捕らえられ戻ってきたヒルツ(マックイーン)がわずかな会話で仲間の死を悟った後、独房で壁相手にキャッチボールをはじめるラストシーン。むなしさを乗り越えてすでに次への挑戦の意志を固めている、不屈の闘志を余韻とした幕切れはさすが名作。見事なラストシーンを見せてくれました。やっぱり何回観ても素晴らしい名作であります。

大脱走
大脱走ポール・ブリックヒル ジョン・スタージェス スティーブ・マックイーン

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2006年11月14日

昼下りの情事 1957年/アメリカ【DVD#133】

loveintheafternoon.JPG
”LOVE IN THE AFTERNOON”


監督:ビリー・ワイルダー
製作:ビリー・ワイルダー
原作:クロード・アネ
脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
撮影:ウィリアム・C・メラー
音楽:フランツ・ワックスマン
出演:オードリー・ヘプバーン
    ゲイリー・クーパー
    モーリス・シュヴァリエ
    ジョン・マッギーヴァー
    ヴァン・ドード



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ちょいとネタバレ

前回の『イヴの総て』その前の『サンセット大通り』と、いろんな意味でスーパーヘビー級の作品が続いていましたが、今回はビリー・ワイルダーの傑作ラブコメディ『昼下りの情事』を鑑賞しました。ほっと一息という感じでしょうか・笑

ストーリーの面白さは相変わらず抜群のワイルダー作品、今回は大富豪であり百戦錬磨のプレイボーイ・フランク・フラナガン(ゲイリー・クーパー)とパリに住む初心な音楽学生アリアーヌ(オードリー・ヘップバーン)の恋の物語。このカップルは父親と娘以上に年が離れていますが、そんな違和感は全く感じさせないほど軽やかにに二人のやり取りは進んでいきます。

”愛して逃げる(Love and Run)”がモットーだというフラナガンは絶対恋に深入りしない自信があります。恋愛経験のないアリアーヌは、フラナガンの気を惹きたくて、名前も住んでいるところも彼に明かさず、恋多き女のように見せかけ、フラナガンに会うのも夕方の一時だけ。彼女の焦らし作戦はまんまと成功しフラナガンはだんだん彼女のことが頭から離れなくなっていきます。

いくつになっても恋愛とはこういうものなのでしょうね。追われると逃げたくなる。じらされると追いたくなる。天下の大富豪と少女のそういう心模様の変化をいかに映像化するかというのが監督の腕の見せ所。そういう意味で特に目を惹くのが室内楽団の四人ですねぇ。

フラナガンがパリに来たときにいつも連れている楽団は、フラナガンがリッツホテルのスィートルームで女性たちと過ごすときに部屋で”魅惑のワルツ”をはじめとする優雅な音楽を奏でます。フラナガンと女性がいよいよということになると、彼らは役目を終えていそいそと帰っていくのですが、つまりはフラナガンの恋のプロセスに応じてプロフェッショナルに役割を果たしているわけです。特にセリフがあるわけでも芝居をするわけでもありません。

そういう彼らの演奏は、フラナガンの気持ちの変化に応じて曲調が変わったり、掛け声に元気があったりなかったり。また、フラナガンの心持が平静でなくなるといつものプロセスから外れて酒を飲んだりします(ワゴンに乗せた酒をフラナガンとやり取りする場面は傑作)。室内楽団の様子で観客は目と耳からフラナガンの気持ちの変化を受け取れるわけで、映画作りとして面白いなぁと感心することしきりです。

ところで、このブログのご紹介作品はどれも名作ぞろいですので、おすすめ度を5段階でつけても、みんな4つ星5つ星になってしまいます(甘すぎなんですけどね)。それでも最近一応5つをつけるのは特に感動したものだけにしようとしています。4つでも傑作レベルですが5つはそれに加えてかーっとくるような感動があったものだけ。

正直なところ、この作品はラストシーンまで星4つだなと思っていたのですが、最後の駅のシーンでやられましたね。アリアーヌの強がりはもうすべてフラナガンにお見通しになっています。そのことを観客もすでに知っているわけですが、それでも彼女が涙をこらえて強がり続ける姿はなんと言えばいいのでしょう。実はオードリー・ヘップバーンにはあまり入れ込んでいないのですが、このシーンをあれだけ演じきることができるオードリーはやはり素晴らしい女優なんでしょうねぇ。全く素晴らしい!。感動しました。気の利いた表現方法が思い浮かばないのでせめてしつこく書いておきますが、すごい。

チェロの大きなケースを抱えて娘を見送る父親ジャヴィス(モーリス・シュヴァリエ)の笑顔も絶品。エンディングは今までこのブログで紹介した作品の中でもかなり上位に入りますね。

ますます、ビリー・ワイルダーの作品に魅了されてきました。『アパートの鍵貸します』もうちにあるんですよねぇ^^

★★★★★

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昼下りの情事 (ニューマスター仕様)オードリー・ヘプバーン ビリー・ワイルダー ゲイリー・クーパー

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2006年11月12日

イヴの総て 1950年/アメリカ【DVD#132】

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”ALL ABOUT EVE”

監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
製作:ダリル・F・ザナック
脚本:ジョセフ・L・マンキウィッツ
撮影:ミルトン・クラスナー
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:ベティ・デイヴィス/アン・バクスター
   ジョージ・サンダース/ゲイリー・メリル
   マリリン・モンロー/ヒュー・マーロウ
   グレゴリー・ラトフ/ランディ・スチュアート
   セレステ・ホルム/セルマ・リッター
   バーバラ・ベイツ/クレイグ・ヒル


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ネタバレですよ

前回感想をアップした『サンセット大通り』と同じ1950年の作品。アカデミー賞延べ14部門にノミネートされ、作品賞・監督賞・助演男優賞(ジョージ・サンダース)・脚色賞など6部門受賞。ちなみに『サンセット大通り』は12部門にノミネートされて、脚本賞など4部門受賞ですね。しかし、意外にも主演女優賞/男優賞はどちらの作品も獲得できなかったようです。本作で激突したベティ・デイヴィスとアン・バクスターはともに主演女優賞にノミネートされていました。

一番印象的だったのは、俳優、特に女優陣の演技合戦ですね。新進女優イブ・ハリントンを演じるアン・バクスターはクールな表情を大きく変えることなく従順さや、計算高さ、傲慢さなど全く違う感情を見せるところは素晴らしい。アン・バクスターがこの役に向かう意気込みがうかがえます。

映画を見て俳優の演技が良いと思うときには、当然シナリオや演出や撮影の巧さも大きく影響しているのですが、やはり演じる本人の”気合い”が伝わってこないと感動できません。その気合がビンビンと伝わってくる名演技です。

一方のベティ・デイヴィスもさすが。女優として成り上がるという野望を秘めて、冷静に着実に計算づくで手を打ってくるイヴに対して、彼女の演じるマーゴは自分勝手で感情的ですが”女の勘”でイブの本性を感じ取ります。女優としての危機を感じて平静を失うマーゴが恋人のビルと喧嘩別れする場面は、大女優ベティ・デイヴィスの実力発揮の名シーンですね。

マーゴは最終的にビルの愛を得て立ち直りますが、イブとマーゴの二人の在りようはそれぞれ女性の特質を極端に示した姿ですね。それに比べて、男たちは単純というかなんというか。人を見下す態度が天下一品のジョージ・サンダース演じる評論家アディスンのような悪魔的なワルはいるとしても、それ以外は実に他愛ないもんです。

気合十分の俳優の名演技を、画面の真ん中に人物をすえて小細工なしでぶつけてくる横綱相撲の名作でした。

★★★★☆


イヴの総て
イヴの総てメリー・オア ジョセフ・L・マンキーウィッツ ベティ・デイビス

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2006年11月05日

サンセット大通り 1950年/アメリカ【DVD#131】

sunset.jpeg
”SUNSET BOULEVARD”

監督:ビリー・ワイルダー
製作:チャールズ・ブラケット
脚本:ビリー・ワイルダー/チャールズ・ブラケット/D・M・マーシュマン・Jr
撮影:ジョン・サイツ
特殊効果:ゴードン・ジェニングス
音楽:フランツ・ワックスマン
出演:グロリア・スワンソン/ウィリアム・ホールデン
   エリッヒ・フォン・シュトロハイム/ナンシー・オルソン
   フレッド・クラーク/ジャック・ウェッブ
   ヘッダ・ホッパー/バスター・キートン
   セシル・B・デミル

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレしてます

最初からショッキングなシーンで始まりますねぇ。死んだ男のナレーションでストーリーが語られるというのも面白い。ラストに向けての狂気の盛り上がりもさすが。シナリオの面白さは天下一品であります。

売れない脚本家ギリス(ウィリアム・ホールデン)が、借金取りに追われて逃げ込んだ大豪邸に暮らしているのは、サイレント時代の大女優ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンスン)と執事マックス(フリッツ・フォン・シュトロハイム)。ノーマは、すでに世間から忘れ去られた存在ですが、今だに自分はスターだと信じ込んでいます。彼女のために復帰作のシナリオを書きはじめることになったギリス。ノーマは半ば無理やりギリスを邸宅に住まわせて仕事をさせます。徐々に彼女はギリスを愛しはじめ、仕事だけではなくギリスの私生活にまで干渉をはじめ、二人の関係は悲劇に向かいます。

売れなくなった大女優の妄想というと、ベティ・デイビスの怪演がすさまじかった『何がジェーンに起こったか?』を思い出しますが、本作のグロリア・スワンスンも負けていませんね。スワンスン自身トーキー化の波にうまく乗り切れなかったらしく16年ぶりの映画出演。実像と役柄がオーバーラップするため、ノーマがチャップリンの真似などをする場面などおかしいけど笑えない。リアリティというんですかね、観るのがつらい。

他にも、彼女のカード仲間がみんなサイレンと時代の老俳優たちだったり(バスター・キートンが出てますよ)、ノーマとギリスがホームシアターで観る映画が、グロリア・スワンスン全盛のころの映画『Queen Kelly』だったり(監督は共演のシュトロハイム!)。ワイルダー監督は、ちょっと残酷なほどに”過去の栄光”を盛り込んでいきます。

妄想に取り付かれた人間が破滅を迎える物語では、主人公がはっきりと狂気に陥る瞬間の描写に興味があります。『何がジェーンに起こったか?』では、ピアノマンを雇って少女時代の大ヒット曲を歌い踊る醜くすぎるジェーンの姿が、完全な狂気を見せた瞬間でした。恍惚とした彼女の表情と、ピアノマンの狂人を見る冷たい目のコントラストが本当に怖かったですよ。まだ観ていない人はぜひ一度。去年公開された『蝋人形の館』にもこのシーンが登場したらしいので、それで見た方もいらっしゃると思いますが。

本作の場合、ノーマが完全に狂気を見せるのは映画もほとんどラスト近くですかね。取り囲む警察にも気づかず映画出演のためのメークに執着する姿が痛々しい。もっと早い段階かなと思っていたのですが、ノーマに仕えるマックスの献身的奉仕のため、彼女が完全に狂ってしまっているのか、単に思い込みとプライドが激しいだけなのかわからないんですよね。何回か見直せば、「ああここだな」というポイントが見つけられるかもしれませんが。

すでに狂ってしまっている彼女にマックスが一縷の望みを与えてしまうため、ノーマは完全な狂気に逃げ込むこともできず、中途半端に狂気と正気の間を漂っているのかもしれません。そう考えるとマックスのノーマに対する愛情こそが最も残酷。ノーマの狂気とマックスの狂気とが悲しく交差して、『何がジェーンに起こったか?』よりも複雑な悲劇を描き出しています。シュトロハイムの演技に脱帽。

★★★★★

サンセット大通り(1950) - goo 映画
サンセット大通り@映画生活


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2006年10月31日

情婦 1957年/アメリカ【DVD#130】

Witness-for-the-Prosecution.jpeg
”WITNESS FOR THE PROSECUTION”

監督:ビリー・ワイルダー
製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr
原作:アガサ・クリスティ
脚本:ビリー・ワイルダー/ハリー・カーニッツ
撮影:ラッセル・ハーラン
音楽:マティ・マルネック/ラルフ・アーサー・ロバーツ
出演:タイロン・パワー
   マレーネ・ディートリッヒ
   チャールズ・ロートン
   エルザ・ランチェスター
   トリン・サッチャー


詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


『必死の逃亡者』のコメントでマレーネ・ディートリヒのことを少し書いたら無性に彼女を見たくなったので、未見のままおいてあった『情婦』のDVDを鑑賞しました。

1957年というと、ディートリヒはなんと56歳。もうじき還暦ですよ。共演のチャールズ・ロートンとは二歳しか違いませんから。孫もいたんじゃなかったかな。それでこの魅力ですから。すごいですねぇ。酒場の舞台でアコーディオンを弾きながら歌うシーンがありますが、やっぱり彼女の歌は良いです。ちょっと低めの歌声でね、たまりません。黒のパンツ姿ですが、酔った兵士にパンツのすそを破られて左足だけ披露してくれます。いやー、素晴らしい。

今回のディートリッヒの役回りは、殺人容疑で裁判にかけられるボール(タイロン・パワー)の妻クリスチーネ。イギリス軍に所属していたボールが占領下のドイツに駐留していたときに知り合い結婚。しかし、その結婚には裏があります。ボールのアリバイを唯一証言できる立場の彼女が検察側証人に立ちますが、その証言内容は意外なもので・・・。

マレーネ・ディートリッヒの魅力は一見冷たいほど無表情に見える中に、実は女性らしい感情が渦巻いていて、ある瞬間にそれがほとばしりでる。そのギャップにあると思います。前回の『必死の逃亡者』のコメントで、「ハッとさせるシーンを見せてくれる女優が好き」というようなことを書きましたが、この作品にもありましたよ。ボールの評決が出るのを証人控え室のガラス戸のところで見ているディートリッヒの心配そうな姿ですね。実に女らしいでしょう。証言台に立っていたときの氷の女王のような風情とは対照的です。こういうところにぐっと来ますねぇ。

エンディングに、「このストーリーの結末を誰にも話さないで下さい」とありました。『悪魔のような女』でも出てましたね。わざわざ断り書きを出すだけあって、ストーリーはラストに向けて二転三転。『悪魔のような女』みたいなショッキングなサプライズはありませんが非常に良く出来たストーリーです。話すなといわれている限り書けませんが、これは間違いなく面白い。

ビリー・ワイルダーは自ら脚本も書いていますが、脚本を厳選する監督ということで有名なんですってね。今回のシナリオはストーリーとしての出来のよさに加えて、会話のテンポがすこぶる良い。特に、はじめのウィルフリッド卿の事務所でボールから一通り老婦人殺害事件の話を聞くシーンの三人のやり取りが非常に軽快でずいぶん楽しめました。事件の話をしながらも、一歩部屋を出ると看護婦がいろいろと口を挟んだり、看護婦の目を掠めて葉巻が欲しいチャールズ・ロートンの悪戦苦闘があったり、いろんな小細工を含めて見かけ以上に複雑なシナリオだと思うのですが、抜群のパス回しを見ているようで気持ちが良いですねぇ。おまけにチャールズ・ロートンは顔にあんなに肉がついているのに、細かい目線とか表情の変化ですごくよい演技をしますよね。彼も好きな俳優の一人です。

絶妙のストーリーテラーと名優の共演で実に楽しい作品でした。★★★★☆

情婦(1957) - goo 映画
情婦@映画生活


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情婦ビリー・ワイルダー タイロン・パワー マレーネ・ディートリッヒ

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2006年10月27日

必死の逃亡者 1955年/アメリカ【DVD#129】

the desperate hours.jpg
”THE DESPERATE HOURS”

監督/製作:ウィリアム・ワイラー
原作/脚本:ジョゼフ・ヘイズ
撮影:リー・ガームス
音楽:ゲイル・クビク
出演:フレデリック・マーチ/ハンフリー・ボガート
   マーサ・スコット/メアリー・マーフィ
   デューイ・マーティン/アーサー・ケネディ
   ロバート・ミドルトン/ギグ・ヤング
   ビヴァリー・ガーランド

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)



悪役。ですねぇ。今回のボギーは堂々たる悪役です。沈着冷静な脱獄囚グリフィン。弟のハルと巨漢コルビッシュを従えてヒリアード(フレデリック・マーチ)邸に押し入ります。決して過剰な演技をするわけでも表情豊かなわけでもないのに、徐々に追い詰められていく様の演技はひきつけられるものがありますねぇ。

ヒリアード邸に目をつけるシーンはちょっと気に入っています。ゆっくりと走る車の窓から見える家並み。車に乗っているグリフィンの腕だけが見えています。やがて窓の中にヒリアード邸が現れ、子供用の自転車が窓越しにフォーカスされ車が停車します。

グリフィンがヒリアード邸を選んだのは、”小さな子供のいる家は危険を冒さない”から。その目印になってしまった自転車は、長男ラルフィが母親の注意をなおざりにしてほったらかしにしてあったものです。そのほんのちょっとしたことが原因でヒリアード一家は恐怖の体験をするんですねぇ。車窓に自転車をとらえて、ぐるーっと車が庭に乗り入れゆっくり停車するところにそういう運命的な偶然が良く表現されています。

その後は、家族を必死に守ろうとするヒリアードと居座るするグリフィン、それにグリフィンを必死で追う刑事ジェス・バード(アーサー・ケネディ)の三人をポイントに緊迫したドラマが展開されます。

一番の見所は、ヒリアードとグリフィンの”死闘”。この作品は男二人の対決のドラマ。序盤、暴力で圧倒的優位に立つグリフィン。ヒリアードはなす術もなく、ひたすら家族の無事を心配しグリフィンの言いなりになっています。

息子ラルフィがいい感じで絡んでますね。生意気盛りのラルフィは、ヒリアードを強盗なんか簡単にやっつけちゃう強い父親だと信じているのに、父親はグリフィンの言いなりになっている。その姿にショックを受け、自分には勇気があるとばかりに、助けを求めるメモを家庭訪問に来た先生に渡そうとしたり、二階の窓から飛び降りて逃げようとしたりします。当然そのたびに状況は悪くなるのですが、ヒリアードはそんな息子からのプレッシャーと家族を守る責任の板ばさみになります。父親の辛い立場がひしひしと・・・・。

しかし、グリフィンに届くはずの金が届かず、いらつくハルやコルビッシュのコントロールが効かなくなってくると共に、ヒリアードも覚悟を決て反撃に転じます。余裕しゃくしゃくだったグリフィンがじわじわ追い詰められて狼狽しだし、ヒリアードは決意をにじませてグリフィンに迫る。二人の立場が徐々に逆転していく様子は見ごたえ十分。

”籠城”というシチュエーションのサスペンスもよく描かれていましたね。長女シンディのボーイフレンドがドアのところで彼女に話しかける。そのドアの裏側には拳銃を握り締めたコルヴィッシュが身を潜めている。両側から二人ともの手がドアにかかる。すごいサスペンス描写。こういうドア一枚隔てた内と外のギャップや、建物内の1階と2階で強盗たちと人質たちの動きを同時に見せる構成などすばらしい工夫が数多く見られます。

悪役ボギーは拳銃片手に葉巻をふかします。相変わらずかっこいい。でも、そんなに葉巻すうなよ、ボギー・・・。ハンフリー・ボガードはこの映画を撮った翌々年には過度の喫煙による咽頭癌で死んでしまうのですよ。

動作の微妙なところがちょっと年寄りっぽくなってたりして、身体の不調も感じてたかもしれないのに。。。そんなことも考えて観ていると、ラストシーンにチラッとうつるボギーの横顔にものすごくショックを受けてしまうのです。
★★★★☆

必死の逃亡者(1955) - goo 映画
必死の逃亡者@映画生活

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必死の逃亡者ジョセフ・ヘイズ ウィリアム・ワイラー ハンフリー・ボガート

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2006年10月22日

荒野の七人 1960年/アメリカ【DVD#128】

MAGNIFICENT SEVEN.bmp
”THE MAGNIFICENT SEVEN”

監督/製作:ジョン・スタージェス
共同製作:ルー・モーハイム
製作総指揮:ウォルター・ミリッシュ
原作:黒澤明/橋本忍/小国英雄
脚本:ウィリアム・ロバーツ/ウォルター・バーンスタイン
撮影:チャールズ・ラング・Jr
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:ユル・ブリンナー/スティーヴ・マックィーン
   チャールズ・ブロンソン/ジェームズ・コバーン
   ロバート・ヴォーン/ホルスト・ブッフホルツ
   ブラッド・デクスター/イーライ・ウォラック

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレでございます

しかし、あれですね、映画って何回も観ないとダメですね。『荒野の七人』も、今まで何度か観た作品ですが、今回はじめてガンマンたちの生き様が伝わってきました。

後半のカルヴェラ(イーライ・ウォラック)一味との戦いは文句なしの見せ場ではあるのですが、前半の人集めの部分もこの作品の魅力の一つ。しかし、なぜそもそもクリス(ユル・ブリンナー)たちはこの儲からない仕事を引き受けたんだろうかということが疑問ではありました。

『荒野の七人』には特に回想シーンもありませんから、彼らの過去は定かでないのですが、それぞれ用心棒や賞金稼ぎなど銃と腕っぷしで生き抜いてきたことはわかります。しかし、集まった彼らはガンマンとして人生の転機に差し掛かっているようです。

ヴィン(スティーブ・マックィーン)は、「なじみになったバーテンやディーラーは山ほどいるが、女房や子供や家はない」と言い、それを受けてクリスも「ゆっくり落ち着く場所もなければ、腹を割って話せる相手もいない」と語ります。アクション中心の後半にあって、しんみりとする名シーンです。

前半の人集めの段階では、彼らのこういう思いはほとんど描かれておらず、冒頭の棺桶護送におけるユル・ブリンナーとマックィーンの凄腕ぶりやジェームズ・コバーンのクールなナイフ技などがクローズアップされているため、選りすぐりのプロフェッショナルが徐々に集結する魅力だけを観てしまいます。彼らが一列に連なって村に向かうシーンは、まー、かっこいいですよ。

後半、カルヴェラとの激しい戦闘を中心において、それぞれのガンマンの人間的な部分をチラ見せするシナリオは、いかにもではありますが彼らの強さの中に意外な一面を発見する形になって、個人的には好きです。

オライリー(チャールズ・ブロンソン)は、農民の子供たちに家族を守る父親の勇気を説き、自分にはとてもそんな勇気はないと告白。リー(ロバート・ヴォーン)は、力の衰えに気づき恐れを感じ夢にうなされています。一瞬自信を取り戻した直後のリーの死はひときわ印象に残ります。一番若いチコ(ホルスト・ブッフホルツ)ですら、農民からガンマンになったことに本当は後悔の気持ちがあるようです。七人の中で一見そういうジレンマを感じさせないのがジェームズ・コバーン扮するブリットですが、ヴィンが語るときにツーショットでブリットの姿が映っていましたね。自ら言葉にはしませんが、やはりそういう思いを抱いているような表情がありありと見えます。

彼らは、その場その時がすべての根無し草のようなガンマン生活がむなしくてたまらないんですねぇ。7人の中で唯一の例外はブラッド・デクスター扮するハリーでしょうか。彼は最後まで隠された儲け話を信じて死んでいきます。死に際のハリーに、50万ドルの金鉱が隠されていると嘘をつくクリス。笑いながら死んでいくハリー。ハリーの存在と死はガンマンたちが感じているむなしさを引き立てる役割を担っていました。

農民たちのためにカルヴェラと闘うことは、彼らにとってそういうむなしさとの戦いだったんですね。心身に染み付いてしまったガンマンという生き方から足を洗えるわけではなくても、自分には農民たちのような大地に根ざした生活は出来なくても、そういうむなしさに対してなにか一矢報いたいという思いが損得抜きで彼らをこの仕事に赴かせたのではないでしょうか。

カルヴェラには、彼らのそういう思いが理解できなかったんですね。立場こそ違っても、金目当てで銃に頼って生きる同類だと信じて疑わなかった。だから、農民たちが七人を裏切ったとき、カルヴェラは銃すら奪わずに彼らを村から追い払います。わずかな報酬すら期待できなくなった彼らに戦い続ける意味などない。戦いは終わったのだと思ったはずです。カルヴェラが「なぜだ?なぜだ?」と問いながら死んでいく姿は、ついに人間の本質を理解できなかった男の悲しい最後の姿でした。

「農民だけが勝ち、土地と同じように永遠に残っていく」と語る長老の言葉が感動的。ただ一人農民に戻っていくチコを見送り、「俺たちはいつも負けだ」と言い残して荒野に去っていくクリスとヴィンの姿が素晴らしいラストシーンでした。★★★★★

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2006年10月17日

雨に唄えば 1952年/アメリカ【DVD#126】

singin in the rain.jpg
”SINGIN' IN THE RAIN”↑この時、ジーン・ケリー39度の発熱中↑

監督:ジーン・ケリー/スタンリー・ドーネン
製作:アーサー・フリード
脚本:アドルフ・グリーン/ベティ・コムデン
撮影:ハロルド・ロッソン
作詞:アーサー・フリード
作曲:ナシオ・ハーブ・ブラウン
音楽:レニー・ヘイトン
出演:ジーン・ケリー/デビー・レイノルズ/ドナルド・オコナー
   シド・チャリシー /ジーン・ヘイゲン/ミラード・ミッチェル
   ダグラス・フォーリー/リタ・モレノ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


好きで良く見た映画の感想を意外とアップしてないんですよね。誰でも名前を知っている有名な作品ばかりですが、ボツボツとアップしていこうかと思います。ということで今回は『雨に唄えば』。

この映画は、個人的に非常にツボにはまっていて、DVDを買ったときは3回連続で見ました。歌もダンスもストーリーも素晴らしいですよね。2年ぶりくらいの鑑賞になりますが、その間にこのブログをはじめて古い映画に親しみが深まっているため、今回はストーリーも大変興味深く見直しました。

『雨に唄えば』は、第一級のミュージカル作品ですが、同時にトーキー誕生時のハリウッドの様子を垣間見ることができる貴重な映画でもあります。

この作品は初のトーキー作品『ジャズ・シンガー』が公開された年の話ですから1927年ということになります。冒頭、サイレント映画のスター、ドン・ロックウッド(ジーン・ケリー)が、聴衆に嘘八百の経歴を披露する場面がありますが、当時の映画作りはスターの人気に依存していたため(現在でも変わりませんが)、スターのイメージは映画スタジオの収入に直結。映画スタジオは大事なスターを専属化し公私に渡ってイメージコントロールしていたそうです(本格的なスター・システムはもう少し後からになりますが。。)。ドンの演説も映画スタジオの宣伝部がすべてシナリオを考え、作り上げられたイメージを世の中に伝えていたわけですね。

ドンは、その演説で語られる華々しいエリートイメージとは正反対で、もともとは貧しい家に育ったボードヴィル芸人。しかし、子供のころから鍛え上げられて歌も踊りも抜群です。それに対して、モニュメンタル映画社の二枚看板のもう一人リナ・ラモント(ジーン・ヘイゲン)はサイレントの大仰な芝居と見た目の美しさ以外は、演技も台詞も歌もだめな "Triple Thread"。

映画がトーキーになった時に、”しゃべれない、歌えない”ためにイメージが崩れて姿を消した俳優もたくさんいたはずです。劇中、”ハリウッドでしゃべり方教室が大流行”というくだりがありますが、役者たちはキャリアをかけて必死に特訓したのでしょう。おかしいのと同時に当時の彼らの苦労がしのばれて大変興味深いシーンです。

物語の核になる”吹き替え”は、リナの悪声とひどいなまりを隠すために考えついた苦肉の策ということになっています。

実際のケースでも、イギリス初のトーキー映画「恐喝(ゆすり)」(ヒッチコック)では、主役のドイツ人女優アニー・オンドラが英語を全く話せなかったために、英語吹き替えが行われています。アフレコ技術がなかったため、アニーの演技と当時にイギリス女優に台詞をしゃべらせていたそうです。本作のリナの場合とは事情が違いますが、吹き替えが用いられるようになった経緯には、こういう”トーキーに出せない俳優をどうするんだ?”という問題が深く関わっていたのかもしれません。

モニュメンタル映画社のパーティー席上でトーキーの宣伝フィルムが披露された時の関係者の反応は冷ややかなもので、”子供だましの悪趣味なおもちゃだ”とバッサリ。ところが、”ジャズ・シンガー”が大ヒットすると映画界はなだれのようにトーキー化にまっしぐら。製作途中のサイレント映画までトーキーに変更となり、トーキー化が予想外の急激な変化だったために関係者が右往左往した様子が良くわかり、ここも大変面白いシーンです。

さらに興味深いのは、映画に音声が入ったことでサイレントの演技が全く通用しなくなってしまったことです。プレミア試写でドン&リナの『闘う騎士』が大コケした理由は。。。

・サイレントの大仰な演技に音声がついたときに、あまりに日常的な動作からかけ離れた芝居になってしまったこと。
・セリフ自体にも自然さがなく、大時代でこっけいな台詞回しになってしまったこと。
・録音機材や技術が未熟で、均質な録音が出来なかったこと。
・映写機と蓄音機の同期が取れず、映像と音がずれてしまったこと。

などなど。映画ですからかなり誇張されているとは思いますが、実際にもこのようなことは十分起こりえたでしょう。サイレントとトーキーは完全に異なる芸術だというようなことを言っていたのは誰だか忘れてしまいましたが、演技の方法論から根本的に変わってしまったということのようです。

とりとめなくだらだらと書いてしまいましたが、この作品、当然歌とダンスも名作ぞろい。ミュージカルとしても記録映画としても楽しめる一粒で二度おいしい(古)素晴らしい作品でした。★★★★★

(参考:ヒッチコック/トリュフォー 定本映画術)

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2006年10月13日

嵐が丘 1939年/アメリカ【DVD#125】

WUTHERING HEIGHTS.jpg”WUTHERING HEIGHTS ”

 監督:ウィリアム・ワイラー
 製作:サミュエル・ゴールドウィン
 原作:エミリー・ブロンテ
 脚本:ベン・ヘクト/チャールズ・マッカーサー
 撮影:グレッグ・トーランド
 音楽:アルフレッド・ニューマン
 出演:ローレンス・オリヴィエ
    マール・オベロン
    デヴィッド・ニーヴン
    ジェラルディン・フィッツジェラルド
    フローラ・ロブソン
    レオ・G・キャロル
    ドナルド・クリスプ


詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


キャスト&スタッフが豪華ですね。ハリウッドを挙げてローレンス・オリヴィエをお出迎えしたという事なのでしょうか。さて、淀川長治さんも大好きだったゴールドウィン&ワイラー。名作も数々あるだけに期待し・て・い・た・の・で・す・が・・・・・

すいません、心に響いてきませんでした・涙

嵐が丘の原作を読んだのは確か高校の頃でした。詳細は覚えていませんが、ヒースクリフの執念と悲しいストーリーに感動して、しばらく他の本が読めなかった記憶があります。

その記憶を元にこの作品を観ると、あっれー?・・こんなんでしたっけ?いやいや、良いところはたくさんあるんですよ、もちろん。嵐が丘と荒野の情景はイメージどおりだし、オリヴィエはさすがの貫禄だと思います。マール・オベロンは可もなく不可もなくと感じましたが、女中役のフローラ・ロブソンなんかもいい味が出てます(レオ・G・キャロルも出てる!)。

なぜキャシーはヒースクリフを愛しながらエドガーと結婚してしまったのかもっと掘り下げて見せてよ!というのがひとつ。

オリヴィエのヒースクリフに狂ったような執念が見えない!というのが二つ。

主役の二人以外のキャラクターは全部ほったらかしのまま終わってしまった。というのが三つ目。

響いてこなかった理由はその3つですね。高校の時、本を持つ手も心も震えたのは、まさにこのうちの上二つが原因だったと思うんですが。なんか、allcinemaの解説と観点が同じで面白くもなんともないんですが、上記正直な感想でした。ということで★★★☆☆


吉田喜重版『嵐が丘』の感想もアップしました(カルトでも、インディーズでも、アートでも(C.I.A))


嵐が丘
嵐が丘サミュエル・ゴールドウィン アルフレッド・ニューマン エミリー・ブロンテ

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2006年10月12日

ガス燈 1944年/アメリカ【DVD#124】

gaslight.jpg”GASLIGHT”

 監督:ジョージ・キューカー
 製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr
 原作:パトリック・ハミルトン
 脚本:ジョン・ヴァン・ドルーテン/ウォルター・ライシュ/
    ジョン・L・ボルダーストン
 撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
 音楽:ブロニスラウ・ケイパー
 
 出演:シャルル・ボワイエ/イングリッド・バーグマン/
    ジョセフ・コットン/メイ・ウィッティ/
    アンジェラ・ランズベリー/テリー・ムーア






詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

質の良いサスペンス映画を見たときの満足感はホントたまらんですね。

舞台になっているロンドン/ソーントン・スクェアのセットがまずはすばらしい。重厚な建物や石畳の舗道、グレゴリーが夜毎身を潜める路地の暗がり。そして、ぼんやりとあたりを照らすガス燈。イングリッド・バーグマンの演技は若干芝居がかかる傾向がありますが、この重厚な雰囲気の中ではかえってそのほうが違和感がありません。シャルル・ボワイエの尊大な悪役ぶりもさらに映えるというものです。

その見事な舞台設定で繰り広げられるのは迫真の心理サスペンス。有名な歌手であったポーラ(バーグマン)の叔母を、宝石欲しさに殺したのは実はポーラが結婚した相手グレゴリー(シャルル・ボワイエ)。まんまと叔母が残した家に住み始めたグレゴリーは、叔母殺しのときに手に入れることができなかった宝石を探しはじめます。彼は真相に近づいたポーラを始末するために、彼女を精神病に仕立て上げようとします。自分ではたしかに見えたり聞こえたりしていることを幻だと言われ、身に覚えのない盗癖を責められて彼女は徐々に追い詰められていきます。。。

正常な人間を異常者に仕立て上げていくグレゴリーの陰湿さと巧妙な手口の積み重ね。だんだんポーラの明るさが消え、表情がおびえと狂気に染まっていくのにつれて、一方のグレゴリーは正体を現し、酷薄残忍さがあらわになり始めます。

このじわじわねちねち感が、私個人的にはサスペンスの必須条件。スピーディーに次々襲い掛かられるよりは、ねちねち真綿で首を絞めるようにせめて欲しい(ちょっと危ないですね・・)。また、当時のロンドンのガス供給システムや建物のつくりなどを利用したネタ仕込みがサスペンス映画のお手本のよう。

それに加えて、ゴシック調ねちねちサスペンスを盛り上げるスーパーアイテム”女中”がまた素晴らしい。あくまで慇懃でありながら人を蔑むあの視線。女中ナンシー役は、この作品でデビューしたアンジェラ・ランズベリー。その後、映画・舞台・テレビの世界をまたにかけた大女優となりました。『レベッカ』のダンヴァース夫人に匹敵する”名女中”ナンシーがさらにポーラを追い詰めていきます。

いかにもの雰囲気あふれる舞台セットで極上のストーリーを積み上げてきたこの作品ですが、本当の魅力はラストシーンにありました。散々、グレゴリーにいたぶられたポーラが、その状況を利用した渾身の反撃を見せます。グレゴリーがたくらんだ悪巧みのすべてが返す刀となって彼にトドメを刺します。それまでの鬱積した息苦しさを吹き飛ばすこの爽快な切れ味。ジョージ・キューカー監督、お見事でございました。★★★★★

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2006年10月10日

都会の牙 1950年/アメリカ【DVD#123】

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”D.O.A.”

監督:ルドルフ・マテ/製作:レオ・C・ポプキン
原作・脚本/ラッセル・ローズ/クラレンス・グリーン
撮影:アーネスト・ラズロ/音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演:エドモンド・オブライエン/パメラ・ブリットン
   ルーサー・アドラー/ネヴィル・ブランド
   ヘンリー・ハート/ヴァージニア・リー
   ビヴァリー・キャンベル

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

さて、ヨーロッパ編の次はどんなテーマにしようかなと考えたのですが、しばらくノンテーマで気ままにいってみたいと思います。

ということで、DVD棚を見渡して目に付いたのがこの作品。ルドルフ・マテ監督のフィルム・ノワール『都会の牙』。ルドルフ・マテ?なんとなく聞いたことが・・check・check・・、おお、『海外特派員』とか『美女ありき』の撮影監督を務めた人ですね。この作品が監督デビュー作とのことです。

原題の「D.O.A.」はDead on arrivalの略で、”到着時死亡”という意味の警察用語。つまりは、”死体で担ぎ込まれた”ということ。

物語は会計士フランク・ビグロ(エドモンド・オブライエン)がロス市警に”自分の足で”駆け込むところからはじまります。ある殺人事件について話したいというビグロ。「殺されたのは誰か?」という刑事の質問に「自分だ」と答えます。いったいなぜ?

オープニングから、このシーンまでぽんぽんとテンポよく来て、ビグロの回想シーンに入ります(回想シーンの導入にグルグル渦巻きが!・笑)。ビグロは、やきもち焼きの恋人ポーラ(パメラ・ブリットン)の詮索を振り切って、一人でバケーションに出かけますが、行き先のホテル近くのバーで毒を盛られます。解毒の術もないこの毒薬、体内に入るとしばらくして全身衰弱して死に至る。その期間は、1日か2日か1週間・・・・(ずいぶん誤差大きいね)。

とにかくわかっているのは間違いなく死ぬということ。ビグロに死の宣告をする医者が、毒薬のサンプルを試験管に入れて持ってきます。名づけて”ルミナス毒”。医者:「ほら、暗くすると光るっ!」って、・・・・なぜ、光る??? ・・・とりあえず光ることには何の意味もないようですが、とにかく暗いところで光る猛毒にやられてしまったビグロ。

変な毒薬に犯されていると知った瞬間から、ビグロ走ります。全速力で街中を駆け抜け(毒回るよー)、なんとか真相を究明しようとサンフランシスコからロスに飛び、わずかな手がかりを手繰って警察顔負けの捜査を展開。ついに犯人を追い詰めます。元気な人間でも滅多にできない大活躍!。

この作品、B級ということでいいんですよね。B級の定義もいろいろあるとは思いますけど、別にネガティブな意味ではありません。この”ルミナス毒”を筆頭に、犯人が着ている「お客さんるお客さん、俺が犯人だからよーく覚えといてよっ!」と念押ししているごとくに派手なコートとか、おかしなキレ方の悪役チェスターとか、なんかこう洗練されてない、駄菓子みたいな素朴な味わい深さを感じるんですよね、この映画(あー、グルグル渦巻きも)。

服毒後一定時間後に死ぬというのは、MI:2に出てきた新型ウィルス”キメラ”と同じ様なもんです。『MI:2』は正確に残り時間がわかっていてカウントダウンしていきますが、こちらは余命1日から1週間までの間にいつ死ぬかわからない。なんという安直さ!。結局主人公ビグロが、やるべきことを全部やってしまうのに必要十分なだけのぴったりな時間があって。。。このご都合主義ぶりがまた、いかにもでいいじゃないですか。これぞB級テイスト。

エンドマーク後に、わざわざ

”この映画は医学的な真実に基づいています。ルミナス毒は実在します。”

なんて字幕を挿入したり、徹底しているというか、遊び心があるというのか、とにかく肩肘張らず気軽に見れて面白い、よくできた娯楽作品であります。★★★☆☆


都会の牙【字幕版】
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2006年07月14日

#0081『ファミリー・プロット』 1976年アメリカ

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   ”Family Plot”


   監督: アルフレッド・ヒッチコック
   出演: カレン・ブラック
        ブルース・ダーン


   詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

50作を超える映画を撮ったヒッチコック最後の劇場用長編。監督76歳の作品であり、亡くなる4年前ということになる。

1976年といえば、中学三年生のころ。結構、映画館にも足を運び出していた頃で、この作品はロードショーを観た記憶がある。今から考えると、ヒッチコック監督の作品をひとつでもロードショーで観れたというのは幸せなことである。だが、内容はというと、中学生に満足に理解できる作品でもなく、シャンデリアに貼り付けたダイヤモンドと黒尽くめのカレン・ブラックが記憶に残っているくらいのものである。

この映画は二組の男女の物語だ。

一組は、インチキ霊媒師ブランチ(バーバラ・ハリス)とその恋人でタクシー運転手ジョージ(ブルース・ダーン)。金持ち相手のインチキ霊媒で小金を稼いでいるチンピラカップルである。 ジョージはインチキのための情報収集役を務めている。

もう一組は、表向きは宝石商ながら裏では誘拐を生業としているアーサー(ウィリアム・ディヴェイン)とその愛人フラン(カレン・ブラック)。 こちらは、筋金入りの大悪党だ。

実はある大富豪の老婆が遺産相続人として、昔手放した息子であるアーサーを探している。ブランチが1万ドルの謝礼目当てに人探しを請け負っているのだ。ところが、アーサーコンビは実業家や司教を誘拐し、身代金として高価な宝石をせしめるている真っ最中。 当然、自分たちをかぎまわるジョージとブランチは邪魔であり、危険を感じる。

観客は両方のカップルを同様に見ているが実際に二組が直接関係を持つのは後半、ほとんど映画も終わりにかかる頃。ブランチとアーサーが直接合間見えると、一気にドラマは盛り上がる。このあたり、実にテンポが良い。

この作品、ラストシーンは、かなり変わっている。あれれ?ヒッチコック監督にしては露骨にご都合主義?という感じだし、ブランチがカメラ目線でてウィンクまでする。 しかし、このウィンクを見て初めて気がついた・・・

この作品って、コメディ・・・なのね。

「ずいぶんとコメディ”タッチ”の作品だなあ」と思いながら観ていたのだが、”タッチ”ではなくこれはコメディそのものだ。
「ヒッチコックのコメディ」というつながりが頭の中になかったため、ラストシーンを見るまで気がつかなかったとは、先入観は怖い。。。というより単なる大間抜けだ。すみません。(改めて、IMDbみるとちゃんとComedyって書いてあった・泣)

そういえば、コメディ要素がいっぱいじゃないか。

そもそも、インチキ霊媒コンビのチンピラぶりと誘拐犯コンビのシリアスな大悪党ぶりのコントラストがかなりおかしい。たかだか、1万ドルのために必死に追いかけるインチキ霊媒コンビを、誘拐犯コンビが追っ手と勘違いしてこれまた必死で始末しようとするというシチュエーションも抜群。緊迫したカーアクションの最中もしっかりとドタバタアクションで笑わせてくれるし、ブランチとジョージの会話はちょっとセクシーで粋なやり取りが満載だ。

そうすると、ラストカットのウィンクは

「どうだケッサクだっただろ?」

というヒッチコック自身からのメッセージだな。

これが最後と本人が考えていたかどうかは知らないが、ウィンクひとつ残して我々の前から去っていくなんて、いかにもヒッチコックらしくて素敵ではないか。



今夜はスタンディング・オベーションだぜ!★★★★★

次回はどうしよう?ちょっと考え中。。。

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2006年07月11日

#0080『フレンジー』アルフレッドヒッチコック監督 1972年アメリカ

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”FRENZY”

監督: アルフレッド・ヒッチコック
製作: アルフレッド・ヒッチコック
原作: アーサー・ラバーン
脚本: アンソニー・シェイファー
撮影: ギル・テイラー
音楽: ロン・グッドウィン
 
出演: ジョン・フィンチ/バリー・フォスター/ビリー・ホワイトロー/バーナード・クリビンス/ジーン・マーシュ/アンナ・マッセイ/アレック・マッコーエン/バーバラ・リー=ハント


詳しい作品情報はこちら
allcinemaIMDb(英語)(予告編あり)



「父はこの映画で復活を果たしました。」

DVD特典映像の冒頭でパトリシア・ヒッチコック(娘)が語っている。 間違いなくヒッチコックは復活した。 1963年の「鳥」をピークに下降していたヒッチコック の評価は、この作品で最後の頂点を迎える。

「フレンジー」はヒッチコックの伝家の宝刀、”巻込まれ型”サスペンスである。 前作「トパーズ」で、脚本に恵まれなかったヒッチコックはもっとも得意な分野で名誉回復を図ったのだろう。 しかも、1960年の名作「サイコ」を思わせるようなサイコスリラー仕立てでもある。 3年をかけて周到に準備を重ねたヒッチコックは最強のシナリオで今作に臨んだ。

この作品の見所は、なんといっても圧倒的なリアリティで描かれる殺しのシーン。主人公の元妻ブレンダ(バーバラ・リー・ハント)と恋人バーバラ(アンナ・マッセイ)、この二人の殺害シーンは実に対照的で印象に残る。

主人公ブレイニー(ジョン・フィンチ)が”巻き込まれる原因となるブレンダ殺害は実にリアルに描かれている。

1930年代から1960年代のアメリカ映画界には、”ヘイズ・コード”と呼ばれる倫理規定があり、殺人シーンやセックスシーンなどはきびしく制限されていた。 ヘイズ・コード健在の間は、もちろんこのような過激なシーンはご法度だった。 しかし、ヒッチコックはかなり以前から、殺人シーンをリアルに映像化することを望んでいたにちがいない。1968年のヘイズ・コード廃止後、表現の自由を得たヒッチコックは長年切望してきたイメージを大胆に映像化した。積もり積もった欲求をすべてぶつけ、「サイコ」では実現できなかった圧倒的なリアリティで殺人シーンを描き出した。

一方、バーバラ殺害シーンは一切現場を見せない 。

カメラは犯人とバーバラの後を追うように階段上の犯人の部屋に向かう。二人が部屋に入りドアが閉まるとあきらめたように上ってきた階段を戻り始める。そして、カメラがアパートの入り口を出ると、街の生活音が聞こえ始める。 さらにカメラは引き、街角の日常の様子と殺人が行われて いるはずの二階の窓を同じフレームに映し出す。 アパートの小さな入り口が、平穏な日常空間にぽっかりと開いた異常世界への入り口に見えてゾクリとする。

まさに、鳥肌モノのシーンである。

バーバラ殺しのシーンは、観客のイマジネーションを最大限に引っ張りだす。このシーンだけでもすごいのに、きわめてリアルに描かれたブレンダ殺しのシーンの記憶があるため、我々のイマジネーションは爆発寸前まで膨張する。あれだけ完成度の高いブレンダ殺しのシーンが、実はバーバラ殺しのイマジネーションを高めるための”前ふり”だったのかもしれない 。やはりヒッチコック恐るべし。

殺し殺しとばかり書き連ねるといかにもおどろおどろしいが、 この作品はヒッチコック的な洒落っ気にも富んでいる。ゾッとするような体験の中にも、どこかちょっとユーモアがある。 ヒッチコックが目指した映画体験に一番近いのはこの作品なのかもしれない。

ラブリー!★★★★★

次回はヒッチコック最後の作品「ファミリー・プロット」

フレンジー
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2006年07月04日

#0079『トパーズ』アルフレッド・ヒッチコック監督 1969年アメリカ

TOPAZ.bmp

”TOPAZ"

監督/製作:アルフレッド・ヒッチコック
原作:レオン・ユリス/脚本:サミュエル・テイラー
撮影:ジャック・ヒルデヤード/特殊効果:アルバート・ホイットロック
美術:ヘンリー・バムステッド/音楽:モーリス・ジャール
 
出演:フレデリック・スタフォード/ダニー・ロバン/カリン・ドール
ジョン・ヴァーノン/ミシェル・ピッコリ/フィリップ・ノワレ
ジョン・フォーサイス/クロード・ジャド/ロスコー・リー・ブラウン  

詳しい作品解説はこちら
    ⇒allcinema IMDb(英語)




この作品は、よくわからない。大体ストーリーが複雑すぎる。
ヒッチコックはこの作品で何かをしようとしたのか。それとも何もしなかったのだろうか。

まったくの駄作というわけではない。
他のヒッチコック作品と同じように、「ほう」と思わせるシーンはいくつかある。

特に、ファニータ(カリン・ドール)が倒れるときに、市松模様の床に彼女の紺のドレスがパッと広がる映像は息を呑むほどすばらしい。

スパイ夫婦が丘の上から港の様子を探っている。はじめのショットで二人の足だけをとらえているこのシーンもヒッチコックらしい(「ハリーの災難」をちょっと思い出させる感じ)。その後、この二人が捕らえられ拷問の末に自白するシーンの描写はピカソかなにかの絵画を見るようだ。これまたすばらしい。

しかし、ヒッチコックらしく楽しませてくれる熟練の細工は他の作品と比べるとずいぶん少ない。細工として不十分なものも見受けられる。

たとえば、秘書ユリベを抱き込むシーン。黒人スパイが彼を説得する場面を会話無しで見せている。我々は主人公と共に道路の反対側に立ち、スパイ工作を遠目から観ている。聞こえてくるのは街の騒音だけである。

果たしてこの細工はヒッチコックらしいのか?

「北北西に進路を取れ」に同じような会話を消したシーンがあった。確かにこのシーンではヒッチコックの手腕が賞賛された。「北北西〜」では、会話を消すことにより時間を短縮し、作品のテンポを損なわずに観客に状況を理解させることに成功している。だからこそ”会話を消す”という細工は効いたのだ。

翻って、「トパーズ」では時間は短縮されない。あるべき会話が必要とする時間だけ、会話のないシーンが続く。そうであるなら、我々は単に聞こえるべき会話が聞こえないというもどかしさしか感じられないのではないだろうか。

一般的に知られている有名スターが一人も出演していないのも気になる。それも含めてこの作品、あまりにも中途半端すぎる。いくつかのすばらしい細工も全体の魅力につながっていない。半端な細工も散見される。必死につくろったような感じがするのだ。過去、失敗といわれた作品もいくつかあるが、少なくとも何をしたかったのかという意図は想像ができた。

ヒッチコックがこの作品で描きたかったものはなんだったのだ?なにか大きなスタイルチェンジでも目論んでいたのだろうか。しかし、それにしても・・・。

ああ、わからない。「ヒッチコックの意図はなんだったのか?」これが、この作品最大の謎かもしれない。

(と、ここまでは文献等を調べずに自分が作品を観て感じたことを書いたのですが、さすがに気になったので「映画術」でチェックしてみました。追記参照)

星はみっつ★★★☆☆
次回は「フレンジー」

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追記
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2006年07月01日

#0078『引き裂かれたカーテン』アルフレッド・ヒッチコック監督 1966年アメリカ

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”TORN CURTAIN”

監督: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
製作: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
脚本: ブライアン・ムーア
撮影: ジョン・F・ウォーレン John F. Warren
音楽: ジョン・アディソン John Addison
 
出演: ポール・ニューマン Paul Newman
ジュリー・アンドリュース Julie Andrews
リラ・ケドロヴァ Lila Kedrova
デヴィッド・オパトッシュ David Opatoshu
ルドウィッグ・ドナス Ludwig Donath
アンナ・リー Anna Lee
ハンスイェルク・フェルミー Hansjorg Felmy


あらすじ
東西冷戦時代、アメリカの物理学者アームストロング教授(ポール。ニューマン)は、コペンハーゲンの学会から突如東ドイツに亡命してしまう。会議に同行していた彼の婚約者(同じく物理学博士)のサラ(ジュリー・アンドリュース)は、アームストロングの心を疑いながらも彼の後を追って東ドイツへ。助手として研究を手伝うことになるが・・・。

みどころ&感想
東西冷戦下で、新型ミサイルの技術をめぐるスパイの活躍を描く・・ということで、ヒッチコックのスパイものとしては、”間諜最後の日””海外特派員”以来四半世紀ぶりということになるだろうか。

highlight.jpgヒッチコック自慢のグロメクとの対決シーンは秀逸。女スパイを襲おうとするグロメクを後ろからスリーパーにしたまま、絞めるアームストロングも絞められるグロメクも動きが取れない。このあたりが実にリアルで、(今シュワちゃんの”イレイザー”テレビでやってるけど)パンチ一発キック一発で敵をなぎ倒すのとは全く異なる質感の重苦しい格闘シーンを見せてくれる。しかも長い。(こうしてみると、”K1”より”プライド”の方が格闘技としてはリアルなのだなとつくづく思うが、そんなこたぁどうでもよい。)

もうひとつ観ていて楽しいのは、バスによる逃亡シーンで主人公たちがガレージに案内されたときに、すでに乗客役のスパイたちで満員になっている黄色いバスが待機しているシーンは妙におかしくて大いに喜ばせてもらった。後ろから距離を縮めてくる本物の路線バスや、途中で乗り込んでくる老婆などハプニングも小細工が利いていて、ほどよく手に汗握る逃亡劇に仕上がっている。

が、観終って1週間ほどたつ本日時点で鮮明に記憶に残っているのはこの二つくらいで、他にどんな面白いシーンがあったか良く思い出せない。かなり狙ったであろう衣装ケースのくだりも個人的には「ふんふん、なるほど」くらいで終わってしまった。

ヒッチコック若き日の”海外特派員”はスパイ活劇として、全編アイデアとチャレンジの集大成であったが、さすがに26年たってヒッチコックもちょっと老いてきたかという思いがチラリと脳裏をよぎる。

ちなみに、主演女優ジュリー・アンドリュースは、私的にベスト3に入る名作「サウンド・オブ・ミュージック」以外では初めて観たかもしれない(あ、メリー・ポピンズはあるね)。どうも、「サウンド〜」のイメージが強烈すぎ(20回以上は観てるし)、緊迫のスパイドラマの中に彼女をうまく位置づけられなくて、うーんと腕を組むばかりであった。


総じてこじんまりとしているが、そこそこの感じで★★★★☆




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