新ブログ『川越名画座』に引っ越しました。さらに充実した内容で運営していますので、ぜひご訪問ください。

2007年04月06日

#0160『狂へる悪魔』ジョン・S・ロバートソン 監督 1920年アメリカ

jykillHyde.JPG
”DR. JEKYLL AND MR. HYDE”

監督:ジョン・S・ロバートソン
製作:アドルフ・ズーカー
原作:ロバート・ルイス・スティーヴンソン
脚本:クララ・S・ベレンジャー
撮影:ロイ・オーヴァーボウ
出演:ジョン・バリモア/ニタ・ナルディ
    ブランドン・ハースト/ルイス・ウォルハイム
    チャールズ・レイン/ジョージ・スティーヴンス
    マーサ・マンスフィールド

詳しい作品情報はこちら
    ⇒狂へる悪魔 - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)

有名な「ジキル博士とハイド氏」の映画化。この作品、IMDbで引くとTV版を含めて20作品出てきますね。1920年にはこれを含めて3本作られています。一番たくさん映画化された小説?

”ジャーン”とか”ビャーン”とかの効果音がなくても立派にホラー映画は成り立ちますね。ちなみに血まみれの残酷シーンもありませんが、それでも十分成り立ちます。

お話はよく知られていますが、ざっとご紹介すると。。。
研究熱心でまじめ一徹なジキル博士(ジョン・バリモア)は、愛するミリセントの父カルウ卿(ブランドン・ハースト)からその生真面目な性格をからかわれて動揺する。カルウ卿に連れられて訪れたミュージックホールのダンサージーナ(ニタ・ナルディ)への欲望から、彼は自分の中に潜む別の性格に気づきます。思い余ったジキルは二つの精神を分離して別の身体に移す研究を始めます。やがて研究は実を結びますが、薬を自らの身体で試したジキル博士は、醜く変身してしまいます。元に戻るための薬も無事発明したジキル博士は、醜く変貌した自分をハイドと名づけて友人と称し、自らの欲望を満たすための二重生活を始めます。しかし、徐々にジキルはハイドをコントロールできなくなっていき、カルウ卿にハイドとの関係を揶揄されたことからついにハイドは暴走を始めます。

変身のシーンは二重露出やメイクもありますが、基本的にはジョン・バリモアの表情と演技の変化。知的で端整なジキルから、醜く悪魔的な表情のハイドへ。これが怖いですねぇ。

怖いといってもヴィジュアル的には大した事はないんです。なにが怖いのかと言うと、人間の二面性とそれが本人の意図に逆らってコントロールできなくなっていく、このことが怖いんですね。初めて自分の悪の性質に気づいたジキルはそれを分離して安全に(って言い方も変ですが)扱おうとするわけですが、結局自らが悪魔のようなハイドに変身してしまいます。しかし、ジキルは最初この状況をうまく利用して自分の欲望を果たそうとします。ジキルとして果たせなかった酒場の女ジーナ(艶然と笑うニタ・ナルディの色っぽいこと)への欲望を果たし、だんだん自信満々の悪党に変貌していくところが見事です。しかし、やがてその自信にもかかわらずコントロールが効かなくなってきて薬がなくても変身してしまうようになり、ついには逆に薬がないと善良な心を保てなくなります。これほど人間の愚かで哀しい本質を端的に寓話化した作品もないかもしれません。

そしてジキルはとうとう、愛するミリセントさえ手にかけようとしますよね。ドア越しに、中に入ろうとするミリセントと入れまいとするジキル。徐々にジキルはハイドに変身していきます。このままではハイドとして彼女に危害を加えてしまう。わずかな正気が残っているうちにジキルは毒薬をあおります。指輪に隠した毒を飲んで、髪を振り乱して、もう一度顔を上げたときに・・・、彼は完全にハイドになってますね。これが怖いんですよ。嬉々としてドアを開けに行きます。そして何も知らないミリセントが入ってくる。ドアの陰に隠れていたハイドが彼女の後ろでドアを閉める。そのときのハイドの表情が冒頭の写真です。

もうそこには、ミリセントを愛する善良なジキルの姿はかけらもありません。これ、残酷でしょ?恐ろしいじゃないですか。これほどまでに人間性が否定された救いのない表情はないと思うんですね。これが”怖い”と言うことじゃないかと思うんですよ。ジョン・バリモアはそれを表現するだけの過不足のない見事な演技でした。

思えば、私が映画好きになるきっかけとなった『エクソシスト』にもこういう意味の怖さがありましたね。そりゃ、首が回転したり緑色の嘔吐する画もコワイんですが、あの映画には神と悪魔の戦いのすさまじさと、そこに巻き込まれてしまった人間の無力さという怖さがありましたね。

その後、山ほど出てきたスプラッターやショッキングホラーを、私は見ましたよ。かなり見ました。中学高校くらいの恐いもの見たさの盛りでしたしね。で、そういう映画も確かにコワかった。でもすぐ飽きた。そういう見た目コワイレベルのものは飽きるんです。もう一生見なくても平気です。

だから、最近の見た目コワイだけのホラー映画(全部否定しているわけではありませんよ、当然)よりも、この『狂へる悪魔』の方がよっぼど恐ろしい。こういうホラー映画は何度でもいくつでも見たいと思いますな。
★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

世界名作映画全集98 狂へる悪魔世界名作映画全集98 狂へる悪魔
ジョン・バリモア ロバート・ルイス・スティーブンソン ジョン・S・ロバートソン

GPミュージアムソフト 2006-05-25
売り上げランキング : 126487

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 00:00| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月05日

#0159『國民の創生』D.W.グリフィス監督 1915年アメリカ

birthofnation_.jpg
”THE BIRTH OF A NATION”

監督:D・W・グリフィス
原作:トーマス・ディクソン
脚本:フランク・ウッズ
撮影:G・W・ビッツァー
音楽:ジョセフ・カール・ブレイル
 
出演:リリアン・ギッシュ/メエ・マーシュ
   エルマー・クリフトン/ロバート・ハロン
   ヘンリー・B・ウォルソール/ミリアム・クーパー
   ベッシー・ラヴ/モンテ・ブルー
   ドナルド・クリスプ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒国民の創生(1915) - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)

1910年代の映画というのはこれが初めて。もうそろそろ100年前になろうかというのですからすごいことですが、映画についていろいろ勉強することのできた作品でした。

何の根拠もありゃしませんが、「サイレントは短い」と思い込んでいました。チャップリンの短編映画などのイメージが原因ですね。なので、まず2時間半以上という尺に驚き。でも作品公開当時の人たちも同様に驚いたんじゃないでしょうかね。それまでは一巻もの(十数分)の"動く写真”が映画の主流で長くてもせいぜい4・50分だったらしいし。しかしもっと驚きだったのは2時間半という長時間わたって”映画が物語を語ることができた”ということでしょう。しかも、題材は60万人以上の死者を出した南北戦争です。迫真の戦闘シーンを交えて南北戦争を語ったわけですから、当時の人々の映画に関する認識を根底から変えてしまうくらいのインパクトがあってもおかしくありません。

そういう歴史的意義のあるこの作品ですが、そりゃ現在の何でも満載映画の感覚で観れば面白くはないですよ。シナリオも演技も映像も稚拙で雑なものに映るかもしれません。しかし約1世紀も前に、この壮大な物語のために、グリフィスは現代の映画の基礎になる手法を体系化し駆使していたわけですから、やはりそれは驚きの目を持ってみるべきだと思います。

その手法がどういうものかは、映画学に詳しい皆さんのブログやサイト(例えばこちら⇒"映画学メモ by タカさん")を参考にしていただくとして、ああなるほどと思ったのはカメラによる映像が、それ独自の機能を果たし始めた作品の一つだということです。人が目で見るのと同様に映像を撮って見せていたものが、次第にカメラ映像ならではのカット割りがされていき、映像をつなぐことそれ自体が意味を作り出すようになってきます。これは、対象をそのまま撮影することとも、奇抜なトリックであっと驚く映像を作り出すこととも異なる、”物語を語るため”のまったく新しい方法の発見であったということです。このあたりの事は、前々から本などで読み知ってはいたことなのですが、今回初めてああそういうことなのかとわかってきました。一つ前に『戦艦ポチョムキン』を観ていたのも良かったかもしれません。カットに対する考え方が全然違います。

この作品のころ、編集はなるべく観客に気づかれないようにすべきである(Continuity Editing)とされていたそうです。したがって前回見た『戦艦ポチョムキン』と比較すると、まったくおとなしいというかごく普通の画面が続き(特に前半)、”衝撃”にかけます。それでもきちんきちんとストーリーが語られていく様子はまったく違和感はありません。また、元北軍兵士の小屋に立てこもるキャメロン一家を巡って、襲い掛かる黒人暴徒と救出に駆けつけるKKKをクロスカッティングで見せる後半のクライマックスシーンはスリル十分な場面です。

グリフィスが体系付けた映画の手法は、物語を語るための新しい方法として完成し一般化していきます。それに対する挑戦として、エイゼンシュテインなどの斬新な理論と手法による作品が登場してくるわけで、”まず世界を作った”という意味ではやはり素晴らしい作品、素晴らしい歴史であると思います。

なんか、コムツカシイ知ったかぶりっ子になっちゃいました。そういう話はさておいて、ごく素直に見惚れてしまったのはやはりリリアン・ギッシュの可憐さ。ちょっと虚ろな表情で目線を上に持っていくと、誰でも一度は見かけたことがある(だろう)リリアン・ギッシュの表情になります。後々のイラストやマンガなんかでこの表情をモチーフにして描いているものが結構あるんじゃないかと思われますね。

『白昼の決闘』('46)で、ジョセフ・コットン&グレゴリー・ペック兄弟の母親(父ちゃんはライオネル・バリモア)を演じていた老年のリリアン・ギッシュを観た事がありました。死に際の演技が素晴らしかったですねぇ。でも本領のサイレントで彼女を観るのははじめて。まるで、フランス人形みたいですな。それだけでも十分満足なんですけど、ちょっと鼻にしわを寄せて見たり、ぴょんぴょんはねてみたり、いかにもかわいらしい仕草も結構するので、これもなんか目からうろこな思いでした。

余談ですが、KKKが正義の味方の映画は初めて(これまた驚き)。グリフィスのバイオグラフィを読んでみて納得ですけどね。リリアン・ギッシュをはじめ白人女性に迫る黒人男の役は、”黒人メイクした白人”が演じていたそうで、筋金入りだったようです。

歴史を目撃した!と言う感じ。自宅でコーヒー飲みながら気楽に歴史を目撃できてしまう今の世の中はすごいですね。★★★★☆(こういう映画に★をつけるのもどうかとは思いますが)
にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

D・W・グリフィス傑作選
D・W・グリフィス傑作選リリアン・ギッシュ メイ・マーシュ リチャード・バーセルメス

ジェネオン エンタテインメント 2002-10-25
売り上げランキング : 90873
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 14:46| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月23日

#157『暗黒街の弾痕』フリッツ・ラング監督 1937年アメリカ

youonlyliveonce.jpg
”YOU ONLY LIVE ONCE”

監督:フリッツ・ラング
製作:ウォルター・ウェンジャー
原作・脚本:ジーン・タウン/グレアム・ベイカー
撮影:レオン・シャムロイ
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:ヘンリー・フォンダ/シルヴィア・シドニー
   ウィリアム・ガーガン/バートン・マクレーン
   ジーン・ディクソン/ジェローム・コーワン
   マーガレット・ハミルトン/ウォード・ボンド
   グイン・ウィリアムズ/ジャック・カーソン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレ注意!ラストまで語ってますので、知りたくない人は読まないでください。

フリッツ・ラングがナチスの台頭を嫌って渡米したのは1934年。『激怒』に続くハリウッド二本目の作品がこの『暗黒外の弾痕』。戦前戦後の暗い世相をヨーロッパ出身の監督がハリウッドに持ち込んだことがフィルム・ノワールというジャンルが生まれたきっかけと言われていますが、フリッツ・ラングはまさにその中心人物。それなのに、これまであんまり面白い作品観てなかったんですよ!

これまでこのブログでは、『復讐は俺に任せろ』('53)『仕組まれた罠』('54)という二本のラング作品について感想をアップしましたが、どちらも★3つ。可もなく不可もなし。『仕組まれた罠』では、グロリア・グレアムという今まで知らなかった魅力的な女優を発見し、ブロデリック・クロフォードの駄目になっていく人間の演技も良かったのですが、映画全体としてはこじんまりとした感じ。『復讐は俺に任せろ』も同様でした。なんかこう、キューってくる感動とか、おお!という驚きとか、感情の振幅を広げてくれないんですよね。整ってるけど。さて、この作品はどうでしょう。

強盗常習犯で服役中のエディ(暗いぞ!ヘンリー・フォンダ)は、晴れて釈放となり弁護士事務所で働く婚約者ジョー(シルヴィア・シドニー)と結婚。意気揚々と新婚旅行に向かうが、前科者であるという理由で旅先の宿から追い出されてしまう。その後、彼は運送屋でトラック運転手として働き始めるが、二人で新居を物色していて仕事が遅れ、一方的に解雇される。何度も謝罪するが許されず、逆上した彼は上司を殴り倒して出ていく。そうと知らないジョーは、まだ前金しか払っていない新居に移り住み、いそいそと新婚生活の準備を始める。週末までに残金を払わなければいけないエディは、またしても悪の道に誘惑されはじめる。やがて起きた凶悪な銀行強盗、ジョーのもとに逃れてきたエディは、犯人は自分ではないと主張する。ジョーは、無実ならば自首するべきだと説得し、彼は裁判を受けるのだが、ここでも前科のあることが災いし死刑を宣告されてしまう。。。

物語後半は刑務所を脱走したエディとジョーの逃避行になるのですが、二人の姿に目頭が熱くなるんだなぁ。前科者エディに対する世間の目はどこまでも冷たくて、疑心暗鬼から助かるチャンスもフイにし、逃避行を続けるうちにやってもいない罪まで彼らのせいにされ、もうどこにもエディの行くべき道はない。彼らに押し入られたガソリンスタンドの店員が盗られてもいない現金を被害申告するときのうすら笑い。エディに対する世間の冷たさが凝縮されています。ワン・ショットを実にたくみに語らせます。ヘンリー・フォンダの異様に暗い表情(目線が特に暗い)、登場シーンからいきなり暗いオーラを放っていましたが、後半になるとその異常なくらいの暗さがまさにぴったりのストーリー展開になってきます。

そして、ジョー。シルヴィア・シドニー。一度は彼女のせいでどん底に落ちてしまったエディを二度と見捨てないと誓った彼女は、とことん彼と一緒にいようとします。身重なのに、車の中には雨風が吹き込む・・・泣。どことも知れない朽ち果てた炭焼き小屋で子どもを生み、ボロ毛布に包まって・・・。エディが彼女にできることは野に咲く花を摘んで小さな花束を作ることくらいしかない。それでも、ジョーはエディに微笑みかけます。生まれたばかりの赤ん坊にも微笑みかけます。なんてやさしくて、幸せそうで、いい笑顔なんだ・・・大泣。幸せだった頃の屈託のない笑顔も良いが、後半の彼女の笑顔は女神の笑顔ですな。もう人のものではない。

シルヴィア・シドニーはヒッチコックの『サボタージュ』(前年の'36)で観かけて以来。その時は「え?子ども?」って感じでユニークな(変な)女優という印象だったのですが、この作品では、無邪気で世間知らずなお嬢さんから一人の男をとことん愛し抜く女神のような女への変貌を見事に演じています。ファンになってしまいましたあ。こっち向いて笑ってほしい!(ちなみに、前半の舌足らずなしゃべり方もマニアックに良いが・・。)

映画の後半になると、もう二人の運命は容易に想像することが出来ます。この流れは『俺たちに明日はない』につながっていくんだろうなぁ・・・と思っていたら、このストーリー自体がボニー&クライドの事件を下敷きにしてるんですか?ほんとに?うーん、さもありなん。うまく逃げおおせたかに見えた二人は、ジョーの何気ない行動(ああ、またしても運命が・・・)が元で一気に破滅へと向かいます。この時のタバコ屋の看板の見せ方が面白い。バリケードを突破して、二人とも警官にマシンガンで撃たれているのに、お互い相手を心配させまいと撃たれたことを言わない・・・・。ここに来て、ついに涙あふれましたよ。このラストシーンは、『俺たちに明日はない』のショッキングなラストよりもジーンと内側から響いてきますね。神父の声もまた良い。

フィルム・ノワールは、1941年の『マルタの鷹』が始まりと言われているので、37年のこの作品は含めないのかもしれませんが、まあ、そんな細かい話はどうでも良い。刑務所の霧とサーチライトのイメージやヘンリー・フォンダの暗さとどんどん追い詰められていく閉塞感、ラストシーンのむなしさなどは間違いなくノワールの香り。その後の作品に大きく影響していることはまちがいないでしょう。しかも、これまで観てきた中でも1・2を争う素晴らしさでありました。

前回、『消された証人』がコケたおかげで思わず良い作品にめぐり合って良かった。ありがとうジンジャー・ロジャース!大満足しましたので1940・50年代フィルム・ノワール特集はいったん終了にしたいと思います。まだまだ未見の傑作はたくさんあるのですが(特に40年代のラング作品を一つもラインナップしていないのはあまりにも間抜け・・・)、それはまた今後のお楽しみということにいたしましょう。★★★★★

で、次回からですが・・・・サイレント映画・・?

にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

暗黒街の弾痕(トールケース仕様)暗黒街の弾痕(トールケース仕様)
アルフレッド・ニューマン レオン・シャムロイ ヘンリー・フォンダ

アイ・ヴィー・シー 2003-04-25
売り上げランキング : 99397

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 16:50| 埼玉 ☀| Comment(6) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月20日

#156『消された証人』フィル・カールソン監督 1955年アメリカ

tightspot.jpg
”TIGHT SPOT”

監督:フィル・カールソン
製作:ルイス・J・ラックミル
脚本:ウィリアム・バワーズ
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:ジョージ・ダニング
出演:ジンジャー・ロジャース/エドワード・G・ロビンソン
ブライアン・キース
詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)

暗黒街のボスを国外追放に出来る事実を知るシェリー・コンレイ(ジンジャー・ロジャース)を、法廷で証言させるべく悪戦苦闘の検事ロイド(エドワード・G・ロビンソン)と護衛刑事ヴィンス(ブライアン・キース)。服役中の刑務所から高級ホテルの一室に移されたシェリーは、頑なに証言を拒否。ロイドは手を変え品を変え彼女を説得するが一向に事態は進展しない。護衛の警官でいっぱいのホテルにも組織の刺客は襲いかかり、間一髪ヴィンスに救われたシェリーは、次第に彼と心を通わせていくが、そこには意外な真相が・・・。

ジンジャー・ロジャースとエドワード・G・ロビンソン主演のフィルム・ノワール作品ということで楽しみにしていたのですが、、、あんまり面白くなかったなぁ。証人をめぐるサスペンス、ギャングの殺し屋、裏切りあり、適度などんでん返しもあってストーリーとしては使い古されているものの、面白くなる題材だと思うんですけどね。なんでかなぁ。

一つは、シナリオとしてジンジャー・ロジャース扮するシェリーを前面に押し出しすぎたことじゃないでしょうか。検事/刑事・ギャング・証人の三つ巴が良いところと思いますが、大半がホテル室内でのジンジャー・ロジャースの芝居。彼女の過去に絡む姉とのやり取りなんぞもシェリーが勝手にキレて勝手にぶち壊して勝手に落ち込んで、はい終わり、という感じ。「君のせいじゃない」と慰めるロビンソンが馬鹿に見えるほどの一人芝居でした。

そして、その一人芝居を演じるジンジャー・ロジャースの演技ですけど、、、なんかこう、いただけないんですよねぇ。いかにも内面に葛藤がありながらも気の強い女性を強調しましたという演技で、フィルム・ノワール作品の雰囲気にはそぐわない大げさな演技だと思うんですよ。彼女がこの役を演じるのに年をとりすぎていた(44歳)という見方もあるようですが、決して年の問題ではなくて、演技の性質が作品の性質にマッチしてないと思うんですよね。台詞回し・表情の作り方・目の使い方(とにかく、目がよくモノを言う)など芸としてはうまいのかもしれません。大作系のラブロマンスなんかだと効いてくるのかも。

で、もうひとつはジンジャー・ロジャース以外の役者に精彩がないこと。期待の検事役ロビンソンは途中どこで何してるんだかわからない。行動としてつながりがないから、後半彼女に怒りを爆発させても唐突な感じで説得力がない。役の検事としても鈍感(最期は普通裏があるって気がつくだろ!ってとこを素通り・・・)。前回ロビンソンを見かけた『深夜の告白』のカミソリのように鋭い保険調査員キーズとは月とスッポン。役どころと演じ方が似てるので、ついつい比べてしまうのです(意味ないけど)。刑事役ブライアン・キースはなかなかいい味を出していますが、ロジャースに付き合うのが精一杯と言う感じ。

うーん、そろそろフィルム・ノワール特集終わりにしようかと思っていたのですが、ちょっとこの作品では終われない。もう一本二本観てみることにしましょうか。他に何があったかな。。。

★★☆☆☆
にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

消された証人消された証人
ジンジャー・ロジャース

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2006-12-20
売り上げランキング : 86652
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 13:25| 埼玉 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月19日

#155『白熱』ラオール・ウォルシュ監督 1949年アメリカ

White Heat.jpg
”WHITE HEAT”

監督:ラオール・ウォルシュ
製作:ルイス・F・エデルマン
原案:ヴァージニア・ケロッグ
脚本:アイヴァン・ゴッフ/ベン・ロバーツ
撮影:シド・ヒコックス
作曲:マックス・スタイナー
出演:ジェームズ・キャグニー/ヴァージニア・メイヨ
   スティーヴ・コクラン/エドモンド・オブライエン
   マーガレット・ワイチャーリイ/フレッド・クラーク

詳しい作品情報はこちら
    ⇒白熱(1949)(1949) - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)

ネタバレです。

ジェームズ・キャグニー扮するギャングのボス、コーディ・ジャレットの常軌を逸したキャラクターは、もう、なんと表現すればいいんでしょう・・・。特典映像を見ると、キャグニー自身、このキャラクターにはかなりのこだわりと思い入れがあったらしく、「完璧な性格異常者を演じる」と言っていたらしい。

この映画ビリっと映像が緊張してるでしょ。いや、本当は映像を見ている自分が緊張しているんですけどね。その緊張感がどこから来るかというと、この”性格異常者”ジャレットの類まれなキャラに尽きますね。冒頭の列車強盗からラストシーンの化学工場までアブノーマルな魅力十分。コーディ・ジャレットが映画の中心で、彼を取り巻くものは全て緊張しています。

とにかく邪魔者は全て殺す。ジャレットの服役中に裏切ろうとしたビッグ・エドをためらいなく射殺し、階段から転がり落ちた死体を見下ろして自慢げな満足顔。ビッグ・エドの命令でジャレットを殺そうとした男を、わざわざ一緒に脱獄させておいて車のトランクに詰め込んで、出かけるついでに思い出したように射殺。鳥の肢を食いながら眉一つ動かしません。列車強盗で自分の名前を知られた機関士も躊躇なく射殺。列車強盗で機関車の蒸気を浴びて包帯グルグルになり、医者の助けを請う仲間にも射殺命令。ラストの化学工場で警官隊に追い詰められても最後の一人になるまで暴れまくり、撃ちまくる。何人警官が死んだことか。おまけに最期のなんと派手なこと。

妻バーナ(ヴァージニア・メイヨ)のことも信頼していません。ちなみに、バーナは下品で姑息で、エドと結託してジャレットを裏切るも、彼が戻ったと知るやさっさとエドを見捨ててジャレットに尻尾を振るという現金さ。別の意味でジャレットとの関係は緊張がみなぎっています。

彼が信頼していたのは二人だけで、一人は母親(マーガレット・ワイチャーリイ)。信じる母との関係は多少まともかと思いきや、今度は典型的なマザコンときました。“子どものころに母親の気を引こうとして頭痛のまねをしていたら、本当に頭痛の発作を起こすようになった”らしく(ホントですか??)、突然ぶっ倒れて七転八倒する姿もますますアブナイ。血も涙もなく敵を撃ち殺す冷血漢のくせに母親のひざに乗って抱きしめられて安心する息子も息子ならば、そんな悪鬼のような息子に「いいかい、世界一になるんだよ」と言い聞かせる母も母。ゆがんでる。

そしてもう一人は、刑務所内で知り合ったパード、実は警察の潜入捜査官ファロン(エドモンド・オブライエン)。腹心のビッグ・エドすら信用しなかったジャレットですが、命を救われたパードには次第に心を許し、まさに全幅の信頼をおきますね。それはもう仲の良い兄弟のようで髪の毛一筋ほどの疑いも抱きません。この落差がまたまた狂気を匂いたたせるんですよね。

結局、母親は死に、ファロンの正体も知ることになりますが、この信頼していた二人との決別シーンは秀逸。刑務所の昼食時に母の死を知ったジャレットは気が狂ったように泣き喚き、暴れます。撮影時には詳しい演技内容を知らなかった囚人役のエキストラ数十名が思わずすさまじさに凍りついたそうです。そして、ファロンの正体を知ったとき、ジャレットは泣き笑いしながら裏切られた悔しさをぶつけます。これがまた・・・キャグニー、取り付かれたような名演技でした。

この映画、フィルム・ノワール作品にぜひ香っていて欲しい狂った匂いをキャグニーが思う存分に発散させていて迫力満点。ウォルシュもよく演出しており、ドラマも面白いし映像も迫力ありますよ。でも、今回はキャグニー一点買いでしょう。40年代フィルム・ノワールの最後を飾るにふさわしい、“狂気の名作”でありました。満足です。

★★★★☆
にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

白熱 特別版
白熱 特別版アイヴァン・ゴッフ ベン・ロバーツ ラオール・ウォルシュ

ワーナー・ホーム・ビデオ 2005-02-04
売り上げランキング : 35567
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools




アクセス解析
posted by FROST at 18:57| 埼玉 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月15日

#154『探偵物語』ウィリアム・ワイラー監督 1951年アメリカ

detectivestory.jpg
”Detective Story”

監督・製作:ウィリアム・ワイラー
原作:シドニー・キングスレー
脚本:フィリップ・ヨーダン/ロバート・ワイラー
撮影:リー・ガームス
出演:カーク・ダグラス/エリノア・パーカー
    リー・グラント/ウィリアム・ベンディックス
    キャシー・オドネル/バート・フリード
    ジョージ・マクレディ/ジョセフ・ワイズマン
    グラディス・ジョージ/フランク・フェイレン
    ルイス・ヴァン・ルーテン/クレイグ・ヒル
    ホレイス・マクマホン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒探偵物語(1951) - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)

ネタバレ!内容を知りたくない人は読まないほうが無難です。

シドニー・キングスレー原作による舞台劇の映画化。舞台劇の映画化といえば、最近観たものでは”カルト〜”の方に感想を載せた『デストラップ・死の罠』などがありましたが、場所が限定されているため、うまく作ると非常に密度の濃い面白い作品になるようです。

今回の『探偵物語』もその一例で、ニューヨーク21分署の刑事部屋を舞台とした刑事と犯罪者たちの一日の出来事。カメラはほとんどそこから出ることはありません。刑事部屋には万引き女や会社の金を横領した青年、強盗コンビなどさまざまな面々が連行されてきて、それを捌く刑事たちも実に個性的。それぞれの犯人と刑事たちにドラマがあって、同時並行するわけですが、カンヌ映画祭女優賞を獲得した万引き女役のリー・グラントや、クレイジーな強盗役ジョセフ・ワイズマン(個人的にはチャーリー&ルイスの強盗コンビがイタク気に入りました)、息子を戦争でなくしたベテラン刑事役ウィリアム・ベンディックスなどの演技が秀逸。しかも、彼らの演技が狭い刑事部屋の中でもつれ合うように進行するので観ていて面白いことこの上ない。それぞれの犯人たちがわざとらしく絡んだりすることはありませんが、あっちの犯人がこっちのやり取りを眺めていたり、そういうちょっとしたところの工夫が刑事部屋のリアリティを高めています。

その中に主人公の刑事ジョージ・マクラウド(カーク・ダグラス)がいるわけですが、彼は妻を愛し子どもを望む良き夫でありながら、一切の罪を頑なに許さない鬼刑事。マクラウドが現在追っているのは、もぐりの堕胎医カール・シュナイダー。彼は自分の農場で密かに堕胎手術を行っており、手術の失敗が原因で患者を死なせてしまっています。犯罪者に対する憎悪をみなぎらせて執拗に追求するマクラウドですが、シュナイダーはなかなか尻尾を出さず、ついマクラウドはシュナイダーに暴行を加え病院送りにしてしまいます。

マクラウドが罪を許せないのは、自分の父が犯罪者でありそれが原因でやさしかった母親が死んでしまったから。「犯罪者は臭いがする」と言います。同時に扱っている横領犯の青年に対しても、同僚刑事(ベンディックス)が良かれと思って口をきき、被害者が告訴を取り下げることに同意し、駆けつけた幼馴染(キャシー・オドネル)が泣いてすがってもマクラウドは許しません。

そういう、マクラウドの性格をうまく見せながら、物語の後半でその矛先が愛する妻(エリノア・パーカー)に向かっていく様は観ていて思わず嘆息してしまいます。この映画は、犯罪者と刑事でごったがえす刑事部屋の一日を描きながら、実はジョージ・マクラウドという一人の男の心の葛藤とその決着をテーマにしてるんですね。

彼の妻には重大な過去の過ちがあり、それが現在の事件に関係しているわけですが、妻を深く愛しながらもやはり過ち(犯罪ではないものの)を頑なに許せないマクラウドが哀れです。しかも、彼は父をめぐるトラウマが原因で、その過酷さが理不尽だと自覚していながらどうしてもそこから脱することが出来ない、心の地獄を味わっているわけです。自分が最も憎み消して許さないと思ってきた父親と同じ、人としての寛容さのかけらもない人間だと、こともあろうに一番愛していた妻から指摘されて心の地獄にどっぶりと頭まで浸かってしまった彼がその後とった行動は・・・。覚悟の上だったんでしょうね。★★★★☆
にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

探偵物語探偵物語
カーク・ダグラス ウィリアム・ワイラー エリノア・パーカー

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン 2005-11-25
売り上げランキング : 44782
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 19:54| 埼玉 ☔| Comment(4) | TrackBack(2) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月11日

#153『深夜復讐便』ジュールス・ダッシン監督 1949年アメリカ

thieves highway.jpg
”THIEVES' HIGHWAY”

監督:ジュールス・ダッシン
製作:ロバート・バスラー
製作総指揮:ダリル・F・ザナック
原作・脚本:A・I・ベゼリデス
撮影:ノーバート・ブロダイン
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:リチャード・コンテ/ヴァレンティナ・コルテーゼ
   リー・J・コッブ/バーバラ・ローレンス
   ジャック・オーキー /ミラード・ミッチェル
   ジョセフ・ペヴニー/モリス・カルノフスキー
   タマラ・シェイン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒goo 映画
    ⇒IMDb(英語)


ジュールス・ダッシンが赤狩りでヨーロッパへ移る前の作品。実はダッシン監督の作品は始めて観るのです。『男の争い』見たいなぁ。DISCASには、監督作品ひとつしか登録されてないんですよね。そのひとつが、なんで日本未公開のこの作品なのかは謎。

ということはともかく、この作品小粒ながらなかなか面白かった。リンゴの商売をめぐる悪徳仲買人フィグリア(リー・J・コッブ)と主人公ニック(リチャード・コンテ)の闘い。ニックの父親がフィグリアに騙されて両足切断の憂き目を見ているため、この闘いは父親の復讐劇でもあります。

フィルム・ノワールって、これという定義がなかなか難しいらしい。いろんな参考文献を読んでみても確たるジャンル定義はないようで、ややもすると”こんな感じの作品”という、漠然とした特徴論でしかくくれなくなってしまいます。

まあ、ブログを書く上で厳密なジャンル定義を試みようとしているわけではありませんから、特徴論でも構わんのですが、少なくとも自分なりに納得できる基準は持っておきたいものです。で、ひとつ尺度にしているのが”どっか狂ってる”かどうか。ストーリーにしろ映像にしろ演出にしろ、どこかで狂ってしまった人間の行いを見せてほしいのです。雰囲気ですよ、雰囲気。ああ、漠然。

そういうことから見ると、前回の『復讐は俺に任せろ』はノワールっぽく出来ていますが、実は全く真っ当な内容であり対象外。説の分かれるビリー・ワイルダーの『失われた週末』なんかは犯罪には無縁でも、あの異常な閉塞感はまちがいなくフィルム・ノワール。オーソン・ウェルズの一連の作品なんかはまさにフィルム・ノワールですよ。狂いまくってる。

で、翻ってこの『深夜復讐便』。ノワールであります。

父親の復讐というプロットはあるものの、リンゴの売買ってのはちょっとあまりに身近すぎて緊張感に欠けるなぁとはじめは思ってました。トラックでサンフランシスコまでリンゴを届けるくだりも、ニトロをつんで突っ走ったかの『恐怖の報酬』に比べればほんの子供だまし程度・・・。

ところが、ニックが市場についてからが俄然面白かった(トラック輸送をめぐるトラブルがメインではなくて、本番もここからだったのだが)。売買の駆け引きや、ワケありの女リカ(ヴァレンティナ・コルテーゼ)とのやり取りも面白く、リンゴ代金をめぐる二転三転もよく出来ている。ニックは、おいおいってくらい馬鹿正直というかひねりが無かったりするものの、ラストのフィグリアとの対決シーンでのキレぶりに狂気があってなかなか良い(表情変えずに手の骨を砕くあたりね)。

また、遅れてサンフランシスコをめざすニックの相棒エドのトラックにチンケな同業者二人組みがハイエナのようにくっついているのがおかしいが、結局事故って爆発炎上するトラックの背景で大量のリンゴが崖を転がり落ちる映像はシュールで異常で◎。

全体的に小粒で地味な作品であることは間違いないが、かなり上位のB級フィルム・ノワール。満足できる作品でした。

★★★★☆
にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

深夜復讐便
深夜復讐便リチャード・コンテ ジュールス・ダッシン ヴァレンティナ・コルテーゼ

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2006-08-18
売り上げランキング : 50448
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 04:41| 埼玉 ☁| Comment(3) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月10日

#152『復讐は俺に任せろ』フリッツ・ラング監督 1953年アメリカ

big heat.jpg
”THE BIG HEAT”

監督:フリッツ・ラング
製作:ロバート・アーサー
原作:ウィリアム・マッギヴァーン
脚本:シドニー・ボーム
撮影:チャールズ・ラング
音楽:ミッシャ・バカライニコフ
出演:グレン・フォード/リー・マーヴィン
   グロリア・グレアム/ジョスリン・ブランド
   キャロリン・ジョーンズ /ジャネット・ノーラン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒復讐は俺に任せろ(1953) - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)


フリッツ・ラング監督による1953年のフィルム・ノワール作品。明るく優しい妻とかわいい娘を持つ正義漢バニオン刑事(グレン・フォード)は、同僚刑事の自殺事件の真相を追い、大物ギャングラガーナを追うが、ラガーナに先手を打たれて。。。。

グレン・フォードとグロリア・グレアムのコンビは、『仕組まれた罠』に続いて2度目。どの作品でも演技にあまり変化のないフォードに比べて、今回のグロリア・グレアムはちょっと尻軽女風の前半の風情が良いですねぇ。『仕組まれた罠』では業の深い暗い女、ハンフリー・ボガートと競演した『孤独な場所で』では、聡明で機転の利く女、と色々な魅力を見せてくれます。お気に入りの女優さんです。ただ、この作品ではあまりグッとくるシーンはなく、鼻歌歌いながらステップ踏む場面くらいでしょうか。

後半の、怒りをみなぎらせてがむしゃらに敵を追うバニオンは、今まで見た中で一番グレン・フォードの魅力が出ているかなとは思いました。が、この作品、正義は正義、悪は悪、それぞれの範疇できちんと役割をこなしているあたり、フィルム・ノワールというよりも刑事ドラマといった感じか。

主人公バニオン一家の描写が、”これぞアメリカ人の幸せな家庭”と言う感じであまりノワールチックではないのですが、その幸福を無くしたバニオンが、結局最後まで刑事としての倫理の範疇で行動するあたり、フィルム・ノワール特有のアブノーマル感が匂ってきません。

グロリア・グレアムの役どころはラガーナの凶悪な用心棒ヴィンス(リー・マーヴィン)の情婦デヴィー。バニオンにちょっとなびいたために、ヴィンスに熱湯を浴びせられ、顔の左半分に大きな絆創膏を貼った状態で登場します。クライマックスには焼け爛れた顔を見せますが、当時の映画事情からすると結構思い切った演出だったのではないでしょうかね。グロリア・グレアムはアカデミー女優ですし。

全体的には、可もなく不可もなくという感じでグレン・フォードファンにとってはなかなかの作品かもしれません。

ところで、バニオンとヴィンスが顔を会わせるバーで流れている曲は、どこかで聞いたことがあると思えば、『ギルダ』に使われていた曲でした。★★★☆☆
にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

COLUMBIA TRISTAR FILM NOIR COLLECTION VOL.2
COLUMBIA TRISTAR FILM NOIR COLLECTION VOL.2リタ・ヘイワース オーソン・ウェルズ チャールズ・ヴィダー

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2004-02-25
売り上げランキング : 55715

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析

posted by FROST at 14:10| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月05日

#151『黒い罠』オーソン・ウェルズ監督 1958年アメリカ

touvh of evil.jpg
”TOUCH OF EVIL”

監督:オーソン・ウェルズ
製作:アルバート・ザグスミス
原作:ホイット・マスターソン
脚本:オーソン・ウェルズ
撮影:ラッセル・メティ
音楽:ヘンリー・マンシーニ/ジョセフ・ガーシェンソン
出演:オーソン・ウェルズ/チャールトン・ヘストン/ジャネット・リー
    ジョセフ・カレイア/エイキム・タミロフ/マレーネ・ディートリッヒ
    デニス・ウィーヴァー/ヴァレンティン・デ・ヴァルガス/モート・ミルズ
    ヴィクター・ミリアン/ジョアンナ・ムーア/ザ・ザ・ガボール
    ジョセフ・コットン

オーソン・ウェルズ1958年の監督作品にして、フィルム・ノワール最後を飾ると言われる『黒い罠』。アメリカとメキシコの国境で起きた爆殺事件をめぐり、メキシコの麻薬調査官バーガス(チャールトン・ヘストン)とアメリカの刑事ハンク・クインラン(オーソン・ウェルズ)の暗闘を描くサスペンス。

前々回、『上海から来た女』でウェルズのノワールと一線を画す映像について云々とコメントしましたが、ついにここにいたってノワールだとかなんだとか言うのもはばかられるような作品になってきましたね。もはや、”ウェルズ作品”というひとつのジャンルで語るべきなんじゃないかと言うくらい独特の世界観が漂います。

開巻するといきなり時限爆弾のクローズアップ。爆殺犯はタイマーをセットすると標的の笑い声が聞こえてくる。男は車に爆弾を仕掛けます。車に駆け寄る男の影がワンテンポ遅れて壁を伝う・・・ウェルズ的だぁ。そこから車が爆発するまでの約5分ほどは圧巻の長回し。

そうと知らず車に乗り込んだ町の顔役リネカー。愛人と楽しそうに車を流します。角を曲がり、信号で交通警官の止まれの合図。車のすぐ近くを行きかう人々(爆弾が・・)。そこを主人公バーガスと妻のスージー(ジャネット・リー)が横切ります。ゆっくり流す車と早足の二人が近づいたり遠のいたり・・・。ああ、爆発するかも、また近づいてきた!今度はダメかも!。。。はじめっからえらいスリリングですわ。しかも、場面の緊張感とは全くそぐわない明るいラテン音楽。参りましたな。

ウェルズ流の上下からの人物ショットやクローズアップもふんだんですが、登場するオーソン・ウェルズ自身が”これが?”と言うくらいの変貌ぶり(これ、地?メイク?)。肥満体型に肉に埋もれた顔、生気のない眼。これまで観てきたウェルズとは全く別人かと言うくらいの奇怪さ。この存在感には誰もかないませんよ。チャールトン・へストンがどれだけ脂ぎった男の魅力を発散しようと、マレーネ・ディートリッヒがまたまた年齢不詳の妖しい魅力を振りまこうと、無理。ムリムリ。独特のリズム感で繰り出されるウェルズ流映像美の中をこの奇怪なウェルズ自身が徘徊するわけで・・・。これね、『上海から来た女』の時も痛感したんですが、いくら書いても素晴らしさが伝わらないんですよ。ああ、もどかしい。とにかく一回観ましょう。絶対に損はしませんて。

ちなみに、カメラはラッセル・メティ。ウェルズとは『ストレンジャー』でも一緒でした。『ストレンジャー』はシナリオがちょっとダメなんで今ひとつですが、時計塔のシーンをはじめ映像面では影を生かして素晴らしく、さすがと思わせていました。

この作品、1958年に公開されるとゴダールやトリュフォーなどにも絶賛されたそうで、翌年発表される彼らの処女作に大きく影響を与えたらしい。また、ヒッチコックの『サイコ』('60)に登場するモーテルの主人ノーマン・ベイツは、この作品でデニス・ウィーヴァーが演じたミラドール・ホテルの夜間責任者がモデルだという話があるそうです。

ちなみに、ストーリーは相変わらず良くわかりませんが、例のごとくウェルズの映画はストーリーと関係のないところで強烈な印象を残してくれるのでありました。★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

黒い罠
黒い罠オーソン・ウェルズ チャールトン・ヘストン ジャネット・リー

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2006-10-12
売り上げランキング : 46162

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 00:49| 埼玉 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月25日

#150『オール・ザ・キングスメン』ロバート・ロッセン監督 1949年アメリカ

ALL THE KING'S MEN.jpg
”ALL THE KING'S MEN”

監督:ロバート・ロッセン
製作:ロバート・ロッセン
原作:ロバート・ペン・ウォーレン
脚本:ロバート・ロッセン
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:モリス・W・ストロフ
出演:ブロデリック・クロフォード/ジョーン・ドルー
   ジョン・アイアランド/ジャック・バーデン
   ジョン・デレク/ポール・フォード
   アン・セイモア/マーセデス・マッケンブリッジ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒オール・ザ・キングスメン(1949) - goo 映画
    ⇒オール・ザ・キングスメン@映画生活
    ⇒IMDb(英語)


一介の役人ながら正義漢と理想にあふれるウィリー・スターク(ブロデリック・クロフォード)。かませ犬として出馬した州知事戦で、民衆に思いをぶつける術を学び、予想外の接戦まで持ち込むが惜しくも本命候補に敗れる。4年後の知事戦に再出馬した彼は、明確な政策アピールと巧みな裏工作でついに知事に当選する。知事となった彼は、次々と公共事業を行い州の近代化を進めて絶大な権力を手中にする。しかし、権力を握るほどに彼は当初の理想を忘れ、贈賄・恐喝で政敵を排除する独裁者へと堕落していく・・・。

と言うことで、ドラマ内容としては結構いやーな感じ。ピューリッツァ賞を獲得した原作『すべては王の臣』を、共産党活動もしていたロッセン監督が演出したかなりハードな作品。政治の裏側をリアルに描いているため、日本への輸入にストップがかかり、初公開されたのは27年後の1976年といういわく付き。

どんどん権力の虜になっていくスタークもいやですが、彼の周りにいる人間たちは敵か僕(しもべ)のみという、その人間関係がすごくいやですね。スタークの人間性が変わっていくと共に心が離れていく妻ルーシーや息子トムさえも、反発しつつも決別することができない。『すべて王の臣』とは良く言ったものですな。

これだけいやなドラマをきちんと見せてくれるロッセンの演出とブロデリック・クロフォード(アカデミー主演男優賞獲得)の演技力は素晴らしい。ブロデリック・クロフォードは以前記事アップした『仕組まれた罠』で、妻グロリア・グレアムへの嫉妬に狂って人殺しまでする男を演じていました。両方の作品に共通して、人が変貌していく様を演じるのが実に達者ですね。特に、やつれてボロボロの男を演じると天下一品。

マーセデス・マッケンブリッジ(女秘書役)と元新聞記者ジャック役ジョン・アイアランドもそれぞれアカデミー助演賞にノミネートされて、マッケンブリッジが助演女優賞を受賞していますね。ほー、彼女はこれがデビュー作ですか。しかし、個人的にはジョーン・ドルーも含めてブロデリック以外の役者さんたちにあまりピンとくるものはなし。

ジョーン・ドルーはハワード・ホークス監督の『赤い河』で、肩に矢が刺さりながらも、モンゴメリー・クリフトにビンタ食らわせてから気を失うという勝気な女を演じて大ファンなのです。が、今回のクロフォードと不倫の仲となるアンの実に女らしい姿は今ひとつ魅力を感じませんでした。男っぽい方が似合いかな。

ロバート・ロッセン監督は、アカデミー監督賞と脚本賞にノミネートされていながら、授賞式直前に赤狩りの告発にあってオスカー獲得ならず。その後の彼の苦悩は深く、ハリウッドでは二度と映画を作らなかったらしい。残念なことです。

★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

オール・ザ・キングスメン
オール・ザ・キングスメンブロドリック・クロフォード ジョン・アイアランド ジョーン・ドリュー

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2007-01-24
売り上げランキング : 31233

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 01:07| 埼玉 ☀| Comment(3) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月20日

#149『上海から来た女』オーソン・ウェルズ監督 1947年アメリカ

LadyfromSh.jpg
”THE LADY FROM SHANGHAI”

監督:オーソン・ウェルズ
製作:オーソン・ウェルズ
原作:シャーウッド・キング
脚本:オーソン・ウェルズ
撮影:チャールズ・ロートン・Jr
音楽:ハインツ・ロームヘルド
出演:リタ・ヘイワース/オーソン・ウェルズ/エヴェレット・スローン/
    テッド・デ・コルシア/グレン・アンダース

詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)
    ⇒上海から来た女(1947) - goo 映画
    ⇒上海から来た女@映画生活

ネタバレですよ

厄介な作品ですねぇ。なにがって、レビューネタが多すぎる。フィルム・ノワールの中でも一風変わった(というかかなり変わった)雰囲気の作品で、作品自体はもちろん、60分もカットされてしまったという製作にまつわるエピソード、『市民ケーン』『ストレンジャー』『上海から来た女』『第三の男』そして『黒い罠』と続くオーソン・ウェルズのキャリアの変遷。リタ・ヘイワースとの仲と本作の関係など実にネタ沢山。

DVD特典映像には、ピーター・ボグダノビッチの詳細な解説が入っており、へぇぇっと身を乗り出すような話が満載なので、裏話的な部分はそれを観てもらうとして、ここでは作品を観た感想中心にしましょうかね、やっぱり。

ストーリーは裕福な人妻エルザ・バニスター(リタ・ヘイワース)に一目惚れした船乗りマイケル(オーソン・ウェルズ)の話。マイケルは、彼女とその夫の敏腕弁護士アーサー・バニスター(エヴェレット・スローン)に乞われて、彼らの豪華ヨットに船員として雇われる。ヨットにはアーサーの共同経営者グリズビーも同乗しているが、ある日彼はマイケルに自分を殺すように依頼してくる。。。

ストーリーが良くわからないんですよね。もともと複雑な話ではありますが細部がかなり矛盾だらけ。これは編集段階でのウェルズの意図に反する大幅なカットによる改悪の可能性も多々あると思われるのでなんとも評価しようがありませんが。

しかし、よくわからんストーリーにも関わらずかなりこの作品の印象は良かっですそれはひとえにこの作品のなんともいえない雰囲気がかもし出す満足感ですねぇ。。ボグダノビッチも”奇怪”という言葉を使っていますが、まさに奇怪。映像の端々までウェルズの非凡なセンスが光っています。

『燃えよドラゴン』にも引用されたと言うラストのクレイジーハウスのシーンはもちろんのこと、水族館のグロテスクな魚をバックにしたキスシーンもインパクト抜群。蛸やウツボを怪物みたいに大写しにして、その前でリタ・ヘイワースに芝居させるなんて、異常ですな。

うさんくさいグリズビーの汗だくクローズアップや素っ頓狂なしゃべり方、両足が不自由なアーサーがひょこひょこと歩き回る姿、至近距離で会話しているのにかみ合わない登場人物の視線、ストーリーと関係なく入るくしゃみやくすくす笑い、かぶりまくる台詞など、とても普通の感覚とは思えない演出の数々。そういうものが積み重なってひとつの”ワールド”を作り上げており、同時代のノワール作品とは間違いなく一線を画しています。

コロムビア映画のボス、ハリー・コーンもこれを観て驚いたのでしょう。あまりに独創的な内容に試写会では散々な評判だったこともあり、コーンはばっさりとこの作品に手を入れてしまいます。でも、1時間もカットされたにも関わらずこの奇怪さですからねぇ、オリジナルはどれだけ不気味だったんでしょう。現在はもうオリジナルを観ることは出来ないそうですが、全く残念至極。

ウェルズのことですから、主人公はあくまで自分。リタ・ヘイワースの魅力だけで客を呼ぼうなどとはさらさら考えていなかったらしく、彼女もこの奇怪な世界の登場人物の一人として位置づいており、そういう意味では、彼女のセクシーな魅力を真っ先にアピールしようとしたらしい『ギルダ』よりも、私にとっては好ましい。逆に、リタの魅力だけを比較すると『ギルダ』の圧勝ですけどね。ウェルズは、リタの赤毛の長い髪をショートに切らせてなおかつブロンドにしてしまったわけですが、顔立ちがちょっと老けて見えるような気がします。

この作品、ユニークさでは抜群ですが、結局当時の一般大衆には受け入れられず興行的には大失敗。オーソン・ウェルズは、監督業をやめてヨーロッパに渡って俳優に専念するわけですが、その結果、大傑作『第三の男』が生まれたと思えば、結果オーライということなんでしょうかね。
★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

上海から来た女
上海から来た女オーソン・ウェルズ リタ・ヘイワース

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2005-09-28
売り上げランキング : 64968
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 16:24| 埼玉 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月13日

#148『郵便配達は二度ベルを鳴らす』テイ・ガーネット監督 1946年アメリカ

the-postman-always-rings-twice.jpg
”THE POSTMAN ALWAYS RINGS TWICE"

監督:テイ・ガーネット
製作:ケイリー・ウィルソン
原作:ジェームズ・M・ケイン
脚本:ハリー・ラスキン/ニーヴェン・ブッシュ
撮影:シドニー・ワグナー
音楽:ジョージ・バスマン 
出演:ジョン・ガーフィールド/ラナ・ターナー
セシル・ケラウェイ/ヒューム・クローニン
レオン・エイムズ/オードリー・トッター
アラン・リード/ジェフ・ヨーク

以前、ルキノ・ヴィスコンティ監督による『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1942年)の感想をアップしましたが、今回は1946年のテイ・ガーネット版。ジェームズ・M・ケインの原作本を巻頭と巻末に映して見せるあたり、かなり原作に入れ込んで忠実につくったんじゃないかと思わせます。ヴィスコンティ版では省略されていた、ニック(ヴィスコンティ版ではブラガーノ)の一度目の殺人未遂や、フランク(同じくジーノ)が最後に裁かれるシーンもきちんと盛り込まれてるし。これまたヴィスコンティが無視した『二度ベルを鳴らす』ことの意味についても触れています。

しかーし!なんか深みがない。そう思いませんか?悪くはない。けど今ひとつという感じ。当時のフィルム・ノワールの流儀にのっとって、ジョン・ガーフィールドのモノローグも渋いし、ラナ・ターナーも悪女として魅力はあります。犯罪と主人公の破滅に力点を置いているように思われ、その軸で観る限り決して悪くない作品だとは思いますが、”悪くない”というレベル止まり。うーん、残念。

ところで深みって何を言っているのだと。”登場人物がしっかりと描きこまれていて、彼らの言動が引き起こす現象に説得力がある”。当然これで全てとは言いませんが、こういう要素も大事だと思います。そして、まさにこの点において、テイ・ガーネット版はヴィスコンティ版に及ばんのですよね。ということは、登場人物たちのやることに首尾一貫したリアリティがなく、ややもするとご都合主義的に見えるということになりますか。

例えば、フランクとコーラがはじめて出会う時のコーラの衣装はいかにも変・・・ていうか、ドライブインの女房がそんな格好してるはずないだろ!って感じだし。ヴィスコンティ版では、最後まで二人の間に影を落とす、『安定と放浪』という価値観の違いがかなり表面的に描かれていると感じます。コーラのフランクに対する感情の変化もわかりにくいし、最後の事故もおいおいって感じだし・・・・。いちいち目に付くんですよね。。。

私にしては珍しく文句ばっかり言ってますが、星はとりあえず三つ★★★☆☆にしておきます。というのも、この作品だけを見たときには”ごく普通”と言う判断になりそうだから。さっきから、くどくどと文句言っているのは、全てヴィスコンティ版と比較してと言うことなんですよ。ということに気がつきました。

ラナ・ターナーも決して悪くないですよ。でも、クララ・カラマーイが演じた人生に疲れきったジョヴァンナの方が、このドラマのヒロインとしては断然魅力的です。日常を生きることにぼろぼろに疲れきった彼女が、駆け落ちにも踏み切れずついに旦那を殺すという大勝負に出るでしょ。事を遂げて盛大なパーティを開く。でも、結局彼女の価値観と行動が彼を怖気づかせてしまう。その結果、殺しまでしてようやく手に入れたと思った愛と安定が、早くも幻のように自分の手から逃げていくことに気づくんですよ。その時にね、ジョヴァンナは一人っきりで、パーティの残り物で食事をして、テーブルに突っ伏すじゃないですか。ね、これが深みってもんですよ。

ということで、他の作品と比較してどうのこうの言いたおすのもどうかと思いますが、今回だけはヴィスコンティ版があるがために、テイ・ガーネット版は影薄し。この作品を気に入っている皆様、悪意はございませんのでごめんなさい。
にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946年版)特別版
郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946年版)特別版ジョン・ガーフィールド ジェームズ・M・ケイン テイ・ガーネット

ワーナー・ホーム・ビデオ 2006-11-03
売り上げランキング : 13798

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 23:13| 埼玉 ☀| Comment(7) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月30日

#147『ギルダ』チャールズ・ヴィダー監督 1946年アメリカ

gilda.jpg
”GILDA"

監督:チャールズ・ヴィダー
製作:ヴァージニア・ヴァン・アップ
原作:E・A・エリントン/ジョー・アイシンガー
脚本:マリオン・パーソネット
撮影:ルドルフ・マテ
音楽:モリス・W・ストロフ
音楽監督:マーリン・スカイルズ
 
出演:リタ・ヘイワース
    グレン・フォード
    ジョージ・マクレディ
    ジョセフ・カレイア
    ジョー・ソーヤー
    ルース・ローマン


コロムビア映画の”愛の女神”リタ・ヘイワースをヒロインに据えたフィルム・ノワール作品・・・というか、個人的にはノワールというより、ちょっと屈折したラブ・ロマンスかなと思いましたが、この映画の一番の売り物は間違いなくリタ・ヘイワースその人のようですから、フィルム・ノワール的な特徴がどうとか、そのあたりは大した問題ではありません。ちなみに、『ショーシャンクの空に』の刑務所慰問で上映されたのはこの作品なのだそうです(刑務所のリタ・ヘイワースね)。

ブエノスアイレスの賭博場。トラブルが縁でオーナー・バリンに見込まれたジョニー(グレン・フォード)。バリンの右腕として頭角を現していきます。ある日、バリンに妻ギルダ(リタ・ヘイワース)を紹介されますが、初対面から二人の間にはなぜかギクシャクした空気が流れます。実はギルダとジョニーは過去に愛し合った仲。ギルダはジョニーに捨てられた寂しさを紛らわせるためにバリンと結婚しています。

リタ・ヘイワースの本格的なダンスは見れないものの、歌のシーンは3回。ステージで歌うシーンが二回あり、二回目のステージは黒いドレスにロングの手袋。その手袋を脱ぎながら歌うシーンはフェロモン大量炸裂でまことに素晴らしいのですが、個人的には下僕のピオを相手にギターの弾き語りをするシーンの情感のこもった歌声にぐっと来ました。

アメリカ人はこういう大ぶりでつくりのはっきりしたセックスシンボルな女性好きなんでしょうねぇ。日本人的には好みの分かれるところかもしれませんけど。1939年の『コンドル』(ハワード・ホークス監督)で、敵役の妻として端役出演していましたが、そのころはまだ清純さも残るお人形さんのようなイメージだったんじゃないかと記憶しています。その後7年間でこの成長・・と言うか変身。すごいですねぇ。。。

ストーリーの方は、ちょっと良くわかりにくいのですがね。主役の三人(ギルダ、ジョニー、バリン)を含めて登場人物がどう関わって、その関係がどう変わっていくのか不明確。心理的な経緯も含めて連続性がないため説得力に欠けるようです。主人公のグレン・フォードも、ピシッとしたタキシード姿はいいのですが今ひとつ乗り切れていないような・・。前回見た『仕組まれた罠』の労働者風な役柄の方があっているのではないかと感じます。(顔が若手芸人みたいじゃない・・・?)。

ドラマのキレが今ひとつで、男優の冴えも今ひとつということになると女神リタ・ヘイワースの一人舞台と言う感じでしょうか。彼女に対する思い入れがストレートに作品の評価になりそうですが、私の場合は可もなく不可もなく。それでも、一人で一作品を支えるだけの華やかさがある大した女優だと思いました。★★★☆☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

ギルダ
ギルダリタ・ヘイワース

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2006-12-20
売り上げランキング : 16052
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 18:53| 埼玉 ☁| Comment(5) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月21日

#146『ローラ殺人事件』オットー・プレミンジャー監督 1944年アメリカ

Laura.JPG
”Laura”

監督・製作:オットー・プレミンジャー
原作:ヴェラ・キャスパリー
脚本:サム・ホッフェンスタイン/ジェイ・ドラットラー/ベティ・ラインハート
撮影:ジョセフ・ラシェル
音楽:デヴィッド・ラクシン
音楽監督:エミール・ニューマン
出演:ジーン・ティアニー
   ダナ・アンドリュース
   ヴィンセント・プライス
   クリフトン・ウェッブ
   ジュディス・アンダーソン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)
    ⇒ローラ殺人事件(1944) - goo 映画
    ⇒ローラ殺人事件@映画生活

これもフィルム・ノワールの傑作中の傑作。監督のオットー・プレミンジャーはビリー・ワイルダーと同じく1906年オーストリアのウィーン生まれ。正統なフィルム・ノワールの担い手ですね。

映画は、高名な評論家ウォルド・ライデッカー(クリフトン・ウェッブ)とマーク・マクファーソン刑事(ダナ・アンドリュース)が、ローラ(ジーン・ティアニー)殺人事件の真相を追うストーリー。二転三転する複雑なストーリーが最大の売り物なので、詳しく触れるわけにはいきません。

広告会社のクリエイターであるローラは、万年筆の製品評を書いてもらうべく、ウォルドに飛び込みアプローチ。それが縁でウォルドに気に入られてメキメキと頭角を現します。すっかり有名クリエイターとなり、結婚も決まった彼女が週末の夜、自宅で何者かにショットガンで射殺されて。。。

正確には四転するのかな。これだけでもネタバレになりそうですが、実は私絶対もう一転すると思ってたんですねぇ。この作品を見た方は多分後半の展開にずっと引っかかりを感じたんじゃないかと思うんですけど。そう、それですよそれ。

で、気になってIMDbなど調べてみるとやはりいわくつきでした。この作品途中で監督が変わっているそうです。もともとの監督は、『クレオパトラ』(63)でも監督交代の憂き目を見た(というより、莫大な予算オーバーで20世紀FOXをつぶしかかった)ルーベン・マムーリアン。元は製作に専念していたプレミンジャーは、監督を引き継いだときにマムーリアンが考えていたラストを書き換えてしまったらしいですね。マムーリアンが考えていたラストシーンの伏線となる、マクファーソン刑事のある行動が後半への入り口となるシーンにポツンと残ってるんですよ。これは意図的に残したんでしょうか。まあ、ラストシーンとしてはフィルム化されたものの方がずっといいと思いますが、どうも気になります。

しかし、そんなことがありながらも映画としての完成度は高いと思いますよ。ストーリがめまぐるしく変化するわりに、鼻につくようなわざとらしさはないし、強面切れ者・ゲーム好きの刑事ダナ・アンドリュースをはじめジーン・ティアニー、ヴィンセント・プライス(ローラのいい加減な婚約者役)などの俳優陣も良かったと思います。どれも一筋縄ではいかない男たちとローラの間の裏表ありありの人間関係が面白かったですね。

★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

ローラ殺人事件 <特別編>
ローラ殺人事件 <特別編>ジーン・ティアニー オットー・プレミンジャー ダナ・アンドリュース

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2006-08-18
売り上げランキング : 46302
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 22:24| 埼玉 ☔| Comment(4) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月19日

非情の罠 1955年/アメリカ【DVD#145】

killerskiss.jpg
”KILLER'S KISS”

監督:スタンリー・キューブリック
製作:モリス・ブーゼル
脚本:スタンリー・キューブリック/ハワード・O・サックラークレジットなし)
撮影:スタンリー・キューブリック
編集:スタンリー・キューブリック
音楽:ジェラルド・フリード
録音:スタンリー・キューブリック
出演:フランク・シルヴェラ
   ジャミー・スミス
   アイリーン・ケイン
   ジェリー・ジャレット
   ルース・ソボトゥカ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

実に不勉強にして、スタンリー・キューブリックが1950年代にこういうノワール作品を作っていたことを知りませんでした。alllcinemaによると、キューブリックの長編作品第二弾で商業映画ではデビュー作にあたるとか。27歳で撮った作品です。

ストーリーは、アパートの窓越しにすむ下り坂のボクサーと場末の劇場の踊り子のサスペンスがらみの恋愛劇。いくつかのレビューで述べられている通り取り立ててどうということもない脚本に思えます。クライマックスのマネキン工場での格闘シーンも、実に粘っこく丁寧に描いているがそれもそこそこと言う感じ。

キューブリックの作品の主だったものは観ていますが、一番好きなのは、画面から異常性を感じることでしょうか。異常な行動、異常な心理、異常なシチュエーション、そういったものが映像からにじみ出てくるようなところがお気に入りです。

この作品の前半部分は、あまりにも平凡に見えて「ふーん、キューブリックも若い頃はごく普通だったのね」と思っていました。まじかに向かい合ったアパートの窓を通して男の様子と向こうの部屋の女の様子を同時に見せたりするあたりちょっとおもしろいかなと思えた程度。

しかし、後半女が姉の思い出を語る、バレリーナをバックにした回想シーンあたりから、急に映像は凝り始めます。劇場の市松模様の階段を女が上っていくシーンや、男と間違えられたボクシングマネジャーが路地に追い詰められる場面の影の怖さ、道端でおどけるトルコ人の二人組みの違和感、隣の部屋をうかがう男の手の影がブラインドに映る不気味さ、それに極めつけは冒頭写真にもある物陰に隠れて様子を伺う男の頭上にぶら下がるマネキンの手首。観る側の感性にビンビン響いてくるような凝った映像が繰り出されてきます。しかも、どれも他のノワール作品にはないようなちょっと狂った感覚。これぞ、キューブリック。キューブリックは20代の頃からすでにキューブリックであったか。

何気ない映像にもなにか引っかかるものがあるなと思ってよく観てみると、最後の駅のシーンでストーリーに全然関係のないエキストラが主人公を凝視していたりして、こういうものもサブリミナル効果よろしく観る側に異常な雰囲気を感じ取らせるのかなとも思いましたが、考えすぎでしょうか。

絶品!とは言えませんが、後のキューブリックの名作にも思いをはせながら観ると実に興味深く楽しめる作品であることは間違いないと思います。

★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!


アクセス解析
posted by FROST at 11:03| 埼玉 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月14日

深夜の告白 1944年/アメリカ【DVD#144】

double.indemnity.jpg
”DOUBLE INDEMNITY”

監督:ビリー・ワイルダー
製作総指揮:バディ・G・デシルヴァ
原作:ジェームズ・M・ケイン
脚本:ビリー・ワイルダー/レイモンド・チャンドラー
撮影:ジョン・サイツ
音楽:ミクロス・ローザ
出演:フレッド・マクマレイ
   バーバラ・スタンウィック
   エドワード・G・ロビンソン
   ポーター・ホール
   ジーン・ヘザー
   トム・パワーズ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒深夜の告白(1944) - goo 映画
    ⇒深夜の告白@映画生活
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

ようやく今年第一号のレビューをアップすることが出来ました。何はともあれ今年もよろしくお願いいたします。

さて、スタートはフィルム・ノワールの名作『深夜の告白』。ビリー・ワイルダーはやっぱりすごかった。今までに見た『サンセット大通り』『失われた週末』を上回る凄みのある作品でした。昨年最後の『アスファルト・ジャングル』のレビューでも書きましたが、この作品も最初の一瞬から釘付け。白いバックに松葉杖をついた男のシルエット。男が杖をつきながらこちらに歩いてくる映像にのせてオープニングクレジット・・・ゾクっときました。

深夜のオフィスで瀕死の重症を負いながら主人公ネフ(フレッド・マクマレイ)が真相を告白する、回想形式のストーリー展開。見事なファム・ファタールぶりを見せるバーバラ・スタンウィックの魅力。緻密な犯行が成功したかと見えたところから一転してたどる破滅のプロセス。そして、何よりフレッド・マクマレイとスタンウィックに名優エドワード・G・ロビンソンが絡んだ3人をめぐって途切れることのないサスペンス。これが、フィルム・ノワールの真骨頂かと目を見張る一本でした。

中でも記憶に残るのは、保険犯罪を絶対に見逃さない凄腕調査員キーズ(ロビンソン)がはじめて疑いを持つシーン。

フィリスの誘いに乗ってフィリスの夫を殺したネフは、切れ者キーズの疑いをかわせたと思い有頂天でアパートに戻ると、彼女からの電話で会いたいと言ってきます。危険を承知でネフは彼女をアパートに招じます。しかし、電話を切った直後にドアベルが鳴る。不安がよぎり一瞬ドアを見つめるネフ。現れたのはあろうことかキーズその人。ネフはやっとの思い出いつもの通り「ハロー、キーズ」と声をかけます。キーズは事故について誰も気づかないほどわずかな矛盾を嗅ぎつけてフィリスを疑い始めており、それをネフに話にきたのです。フィリスと鉢合わせになればそれですべて一巻の終わり。ネフのことは全く疑わず不可解な点を話すキーズ。そこにやってきたフィリスはかろうじてドアの外で二人の話し声を聞きつけ様子を伺います。帰ろうとするキーズ。ドアを開ける。とっさにフィリスはドアの後ろに身を隠す。廊下を歩み去るキーズ。ドアを背に見送るネフ。ドアの後ろに立つフィリスがそっとドアノブを引く。彼女に気づくネフ。その時、キーズは振り返る。必ずフィリスを白状させてやると宣言する。いつものように葉巻をくわえマッチを探しながら二人の方に戻ってくるキーズ。ネフはキーズの葉巻に火をつけてやり、キーズは帰っていきます。

気がつくときちんと座りなおして観てました。肩にパンパンに力が入っていて、思わず「ほぉぉぉ〜」っと声が漏れましたね。文章が巧くないんでこれを読んでもらっても1%も伝わらないと思いますが(いや、どんなにうまく書いても文字では伝わらないに違いない)。

ロビンソン演じるキーズがね、いいんですよ。ネフとキーズが会う時はかならず”Hello、Keyes”からはじまって、いつも火を持っていないキーズにネフがマッチで火をつけてやって終わる。実はそれは伏線になっていて、ラストシーンでは逆にキーズがネフに火をつけてやるんです。その行為と最後の二人の会話からキーズの心情が痛いほど伝わってくるんですね。キーズは最後の最後までネフを信じていた。

この作品を観る前はバーバラ・スタンウィックに注目していたのですが、すっかりエドワード・G・ロビンソンに魅せられてしまいました。ロビンソンはオーソン・ウェルズの『ストレンジャー』でもナチスの残党を追い詰める役をやっていましたが、こういう人を追う役で特に凄みをきかせますね。あの目と表情のせいかな。

スタンウィックも良かったんですよ。いや、十分にすばらしかった。全体に表情を押さえた演技でしたが、それが逆にフィリスの悪女ぶりをよく語っていましたねぇ。最後に見せる涙も引き立ちました。

2007年も素晴らしい映画でスタートすることが出来ましたね。ますますフィルム・ノワールの魅力に惹かれてきましたのでもうしばらくこの路線でいこうと思います。

★★★★★にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

深夜の告白
深夜の告白トム・パワーズ/ジーン・ヘザー/フレッド・マクマレイ/バーバラ・スタンウィック/エドワード・G・ロビンソン ビリー・ワイルダー

ファーストトレーディング 2006-12-14
売り上げランキング : 10684

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 01:03| 埼玉 ☁| Comment(9) | TrackBack(4) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月31日

アスファルト・ジャングル 1950年/アメリカ【DVD#143】

asphalt_jungle.jpg
”THE ASPHALT JUNGLE”

監督:ジョン・ヒューストン
原作:W・R・バーネット
脚本:ジョン・ヒューストン/ベン・マドー
撮影:ハロルド・ロッソン
音楽:ミクロス・ローザ
出演:サム・ジャッフェ
   スターリング・ヘイドン
   ルイス・カルハーン
   マリリン・モンロー
   ジーン・ヘイゲン
   ジェームズ・ホイットモア
   アンソニー・カルーソ
   ブラッド・デクスター

詳しい作品情報はこちら
    ⇒アスファルト・ジャングル(1950) - goo 映画
    ⇒アスファルト・ジャングル@映画生活
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

少しご無沙汰しておりました。年末バタバタと忙しいのはサラリーマンの宿命ですが、いやいや今年は大変でした。ようやく昨日仕事が終わってギリギリもう一本感想をアップできそうです。

さて、今年最後の記事はジョン・ヒューストン監督の『アスファルト・ジャングル』。最後にふさわしい傑作でした。

7年の刑期を終えて出所した希代の知能犯ドック(サム・ジャッフェ)。早々宝石店から100万ドルを強奪する計画を携えて悪徳弁護士エメリッヒ(ルイス・カルハーン)のもとを訪れます。エメリッヒの協力で金庫破りの名人ルイ(アンソニー・カルーソ)、カフェの店主ガス、強盗常習犯ディクス(スターリング・ヘイドン)と共に深夜宝石店に押し入り宝石を手にすることに成功しますが、予定外に警報が鳴ったことから次々に計画に狂いが生じていきます。

いい映画は開巻の一瞬からひきつけるものがありますが、この作品もしかり。画面いっぱいに写る石畳とゆっくり走ってくるパトカーの映像がぞくぞくするほどかっこいい。この場面から、パトカーをやり過ごしたディクスがガスの経営するカフェに入って犯行に使った拳銃を預けるところまで、これぞフィルム・ノワールというような犯罪映画のにおいがぷんぷんとする素晴らしいオープニング。

登場する人物描写がみんな実に生々しくて良い。子煩悩な金庫破りルイや破産した父親の牧場を買い戻すために競馬と強盗で金をつくろうとするディクス。クールな知能犯でありながら若い女に目がないドック、情婦に入れ込んで泥沼にはまるエメリッヒなど主役級はもちろん、ディクスの女友達ドール(ジーン・ヘイゲン、『雨に唄えば』のリナ・ラモント!)が警察に踏み込まれて泣き笑いしながらつけまつげをはがすシーンなんかも、とにかく人物設定と映像が抜群に奥深い。役者も良い。

それぞれの登場人物の裏側まで丁寧に描いているため、ジョン・ヒューストン独特のアンハッピー・エンディングが冴えわたることこの上ない。一人また一人と倒れていく様は、思わず深くため息をついてしまうような無常観がジーンと染み込んできました。

しかし、フィルム・ノワールは白黒映画の一つの極致ですね。夜の闇に浮かび上がる人間のシルエットなどため息が出ます。一つ一つ記憶に残る場面をメモしていきたいと思っていますが、この作品では上で書いた冒頭のシーンと、金庫を破るルイとディクス・ドックの縦並びのステージングや、ジュークボックスで踊る少女が窓に寄って離れた時に、カフェを覗き込んでいる警官の姿が写るシーンなどが印象的でした。

さて、最後になりましたが、今年一年ブログを訪れていただいた皆様、大変ありがとうございました。途中二ヶ月ほどの中断がありましたが、こうして続けてこれたのは皆様のおかげと感謝しております。

来年も、もっともっとオールド・ムービーの世界を極めていきたいと思いますので、これからも是非よろしくお願いします。

それでは皆様、良いお年をお迎えください(^^)/

★★★★★にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

アスファルト・ジャングル
アスファルト・ジャングルジョン・ヒューストン サム・ジャッフェ マリリン・モンロー

ワーナー・ホーム・ビデオ 2006-05-12
売り上げランキング : 45367
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 23:56| 埼玉 ☀| Comment(4) | TrackBack(3) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月20日

記憶の代償 1946年/アメリカ【DVD#142】

Somewhere in the Night.jpg
”SOMEWHERE IN THE NIGHT”

 監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
 脚本:マーヴィン・ボロウスキー
     ジョセフ・L・マンキウィッツ
 脚色:リー・ストラスバーグ
 撮影:ノーバート・ブロダイン
 音楽:デヴィッド・バトルフ
 出演:ジョン・ホディアク
     ナンシー・ギルド
     ロイド・ノーラン
     リチャード・コンテ
     ジョセフィン・ハッチンソン
     フリッツ・コルトナー


詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)



『イヴの総て』で圧倒的なドラマの面白さを見せてくれて好きになったジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の作品。

フィルム・ノワールらしい白黒感は存分にかもし出されており雰囲気は満点。戦傷で記憶を失ったジョージ・テイラー(ジョン・ホディアク)が、わずかな手がかりを手繰って自分の過去の秘密を握るラリー・クラバットという男を追います。悪漢に追われて逃げ込んだクラブ楽屋で出会った歌手クリスティ(ナンシー・ギルド)と愛し合うようになり、彼女の協力を得て真相に近づきますがそこには驚くべき真実が・・。

ということで、こじんまりしたキャストによる典型的なB級フィルム・ノワール。主演のジョン・ホディアクはどこかで見覚えがあるなと思って調べて見ると、ヒッチコックのしぶ〜い密室劇『救命艇』に出てました。救命ボートに乗り合わせたメンバーの中でも結構攻撃的な性格の男を演じていました。

病院で目覚めた主人公ジョージ・テイラーが故郷L.A.でわずかな手がかりを探りますが、ストーリーの組み立てとしては手に汗握ると言うほどでもありませんがまずまずの工夫でしょうか。終盤の桟橋に向かう頃には大体ラストは読めますけどね。ただ、話のつながり、要するにヒントを得て次のエピソードに移動するつなぎに若干無理があるんじゃないのと思わせるところが二箇所。ひとつはロスに戻った直後に受け取るカバンの出所。もうひとつは女占い師フィリスの家で「ヒントをくれ!」と言うというところ。ヒント探しが面白さの核なのに、おもむろに「ヒントをくれ」と頼むのもいかがなものでしょ・笑。

ミステリとかホラーなどの作品では、ご都合主義が透けて見えると、その後映画ががんばるほど逆に心は白々とさめていくという、”逆スパイラル症状”に陥ってしまうことがあるのですが、今回はそこまでになることはなく、まあラストまでそこそこ楽しむことはできました。

しかし、主演二人。あんまり好みじゃないですねぇ。ジョン・ホディアクは、とにかく最初から最後まで表情がまったく変わらないので感情移入しづらいことはなはだしい。必死で真剣のは良いのですが、ちょっとくらい笑うとか泣くとか・・・。『救命艇』ではもう少し動きのある表情をしていたと思うので、これは演出なのでしょうか・?

一方、クリスティを演じるナンシー・ギルドは逆に結構表情豊かなんですが、顔のつくりがなんていうんでしょ、B級アメコミに出てくるちょっと妖艶な悪女の感じ?多分自分でも意識してるんだと思いますが、眉を長くたれ気味に引いて、ちょっと上向き加減にしてニタッと笑うと頬骨が強調されて、なんかこう少し卑猥な笑顔になるんですねぇ。これ、結構印象に残る顔なので女優が作る表情として決して悪いとは思いませんが、個人的に好みじゃないです。はい。

しかし、なんですね、B級フィルム・ノワールっていうのは、前に感想をアップした『都会の牙』もそうですが、あんまりストーリーがとか役者がとかコムツカシイことを言わずに、スコンと心を開いて雰囲気を味わうものかもしれないなとそんなことを感じました。

★★★☆☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

記憶の代償
記憶の代償ロイド・ノーラン ノーバート・ブロダイン リチャード・コンテ

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2006-04-14
売り上げランキング : 72601

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 16:00| 埼玉 🌁| Comment(4) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月17日

孤独な場所で 1950年/アメリカ【DVD#141】

in a lonely place.jpg
”IN A LONELY PLACE”

監督:ニコラス・レイ
製作:ロバート・ロード
原作:ドロシー・B・ヒューズ
脚本:アンドリュー・ソルト
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:ジョージ・アンセイル
出演:グロリア・グレアム
   ハンフリー・ボガート
   アート・スミス

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

我がヒーローハンフリー・ボガートと、期待のグロリア・グレアムの共演。監督は当時、グロリアの夫であったニコラス・レイ。

今回のハンフリー・ボガートの役どころは、映画の脚本家ディクソン・スティール。腕は良いものの、激しやすい性格が災いし戦後はヒット作が出ていません。

ディクソンは、脚本執筆の手伝いという名目で、クラブウェイトレスを自宅に招じ入れます。しかし、彼女はディクソンの家を出た直後、絞殺されて車から投げ捨てられているところを発見され、ディクソンに嫌疑がかかります。警察に連行されたディクソンのアリバイを証言し助けるのが隣人の謎めいた美女ローレル(グロリア・グレアム)。

先日感想をアップした『仕組まれた罠』では、グロリア・グレアムの魅力に惹きこまれたものの、後一歩キャッチすることができませんでしたが、この作品では・・・きましたよ、すばらしい。

『仕組まれた罠』の感想を改めて読み返すと「泣き顔が似合う」と書いていました。確かに、そちらでは泣いてばかりいてそれも魅力的なのは間違いないのですが、彼女の一番の魅力は泣き顔ではありませんでした。ワケも事情もありそうな女のちょっと謎を含んだ笑み。これですねぇ。いっやー(大喜び)、この作品前半のグロリア・グレアムを見たことのない方はぜひご覧になったほうが良いです。お奨めします。抜群に魅力的です。

ハッとするシーンもたくさんありました。ロングスカートのポケットに両手を突っ込んでボギーと話すシーン、窓の外からのぞいている友人メル(アート・スミス)と窓辺に腰掛けて格子ごしに話すシーン、極めつけはバーのピアノカウンターで隣のボギーに送るながし目。

グロリア・グレアム、今度こそ完璧に惚れました。実に素晴らしい。


前半はね・・・。


この作品、後半に急速に入れ込み度がダウン。浜辺のピクニックで、ローレルが警部と話したことを知ったディクソンは怒り狂い、車で暴走した挙句接触事故を起こした相手の運転手を半殺しの目に合わせます。この後、ローレルはディクソンの激しやすい性格に恐怖し始めます。ウェイトレス殺しはやはりディクソンの仕業ではないのかという疑いも再び頭をもたげてきます。

ここでですね、ローレルの謎めいた部分が一気になくなってしまうんですよね。身の危険に恐怖するごく普通の女になってしまいました。。。で、泣くでしょ。『仕組まれた罠』のヴィッキーと同系統の表情・演技です。それでも十分魅力的なんですが、前半の飛びね抜けた魅力からすると今ひとつ(いや二つ)。

見終わってから知ったのですが、この作品は製作途中で大きくストーリーが変わったそうです。当初はシリアル・キラーチックなサイコ・サスペンスだったらしいですね。そう言われれば刑事にウェイトレス殺しの状況を推理して見せるボギーの表情はかなりアブノーマルな感じでさもありなんと思わせます。しかし、最終的にはボギーのアドリブにあわせてニコラス・レイがシナリオを書き直し、ボギーとグロリアの恋愛のいきさつを中心にすえたドラマになっています。

前半のグロリア・グレアムがかもし出しているなんともいえない妖艶な雰囲気はきっとなにかの複線になっていたんじゃないかと思うんですね。でもシナリオが変わってしまったので結局そのあたりは後半のストーリー展開に何にも関係なく素通りになってしまったのではないかと。ドラマの方も、あ、そういうことなのねという感じで終わってしまいました。これは観る人の好みにもよると思いますが、ロマンスよりサスペンス・スリラーな方が好みな私としてはちょっと拍子抜けの感が否めませんでした。

全体3つ+グロリア・グレアムに1つ★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!


COLUMBIA TRISTAR FILM NOIR COLLECTION VOL.1
COLUMBIA TRISTAR FILM NOIR COLLECTION VOL.1ジョン・クロムウェル スチュアート・ヘイスラー ニコラス・レイ

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2004-02-25
売り上げランキング : 59989

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

BOXしかないのかな・・・

アクセス解析
posted by FROST at 02:56| 埼玉 ☁| Comment(4) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月11日

パームビーチ・ストーリー 1942年/アメリカ【DVD#140】

PBS23.jpg
”THE PALM BEACH STORY ”

監督・脚本:プレストン・スタージェス
製作:ポール・ジョーンズ
撮影:ヴィクター・ミルナー
音楽:ヴィクター・ヤング
出演:ジョエル・マクリー
   クローデット・コルベール
   ルディ・ヴァリー
   メアリー・アスター
   シグ・アルノ
   ロバート・ダドリー
   ウィリアム・デマレスト
   ジャック・ノートン
   フランクリン・パングボーン
   ジミー・コンリン
   モンテ・ブルー
   チェスター・コンクリン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


40年代の名喜劇監督プレストン・スタージェス監督の作品。1948年日本公開時の邦題は『結婚五年目』。DVDもその題名で出ていますが、その後原題どおりに改められたそうです。

タイトルバックがすでにドラマになっていて、なにか大騒動の末に若いカップルが結婚式にこぎつけます。物語はその”結婚五年目”のお話。末永く幸せに暮らしているかと思えば、現実はそう甘くはなく、夫のトムは画期的な空港建設技術を持ちながらプライドの高さゆえビジネスがうまくいかず、アパートの家賃も払えない状態。妻ジェリー(この夫婦、トム&ジェリーですね)は、そんな夫に愛想を尽かし、「あなたはあなたで頑張って、あたしはあたしで金持ちの男でも捜すから・・」とばかりに家を飛び出してしまいます。妻を忘れられないトムは、彼女のあとを追いかけますが、追いついた先のパームビーチでは、ジェリーが、大富豪ハッケンサッカー3世と知り合い、恋に落ちようとしているところ。ハッケンサッカーの姉も絡んだ四角関係の果て、あっと驚く結末が・・・。

芝居では女優陣の演技が光りますね。ジェリー役クローデット・コルベールの後先あんまり考えていない脳天気ぶりもかわいいのですが、富豪の姉がメアリー・アスター(オショーネシーさん、メアリー・アスターですよ〜)。ジョン・ヒューストン監督の『マルタの鷹』ではハンフリー・ボガートを騙す悪女オショーネシー役が見事でした。この作品では、とっかえひっかえ男を渡り歩く自由気ままな金持ち夫人の役にぴったりフィット。いたずらっぽい笑みを湛えた目元が魅力的ですねえ。

ということで女優を中心に役者さんたちは気に入ったのですが、ちょっと個人的にこういうドタバタ喜劇(これってスクリューボールって言っていいんですかね?)カテゴリーにのめり込めないようです。面白いとは思うんですけど、忙しくてなんかこう・・・今ひとつ。単なる個人的な好みですから気にしないで下さい。おかしな奴らが山のように出てきてこれでもかと笑わせてくれるので、楽しい気持ちになれるのは間違いなし。ラストシーンがまあ強引。いつもなら”ご都合主義だ!”なんて吼えがちですが、「そんな野暮なこと言わなくても良いじゃないの」という気持ちにさせられてしまったのは意外でした・笑

★★★☆☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

結婚五年目
結婚五年目クローデット・コルベール ジョエル・マクリー ヴィクター・ミルナー

ビデオメーカー 2005-07-25
売り上げランキング : 60647

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 01:21| 埼玉 🌁| Comment(8) | TrackBack(2) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。