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2005年11月23日

#0022『女吸血鬼』/#0023『東海道四谷怪談』中山信夫監督 1959年日本

filmcenter.jpgfilmcenter_2.jpg昨日は本業のきりがよく時間がとれたので京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターに行ってきました。話には聞いていたフィルムセンターに足を運ぶのは初めてです。東京メトロ銀座線の京橋駅1番出口を出てすぐ。かなりきれいな施設ですね。1Fのロビーは誰でも入いれて、椅子とテーブルがあってお食事中の方やお昼寝中の方もちらほら。2Fの映写用大ホールは通常の映画館と比べても遜色ありません。


ukigumo_set.jpg7Fの展示スペースも見学。成瀬巳喜男監督の代表作”浮雲(1955年)”のセットが再現されています。この映画はまだ観ていないので感慨ひとしおと言うところまでは行きませんが、それでも直に見るセットは興味深く、しげしげと観察してきました。200円払って常設展示場へ。”展覧会映画遺産”。我が国のシネマ黎明期から戦後の黄金期までの映画の歴史や撮影機材、フィルムの視聴など。「ほう、日活ができたのは1912年か」などと妙にもっともらしく納得したりしながら眺めます。各時代を代表する俳優や監督のゆかりの品なども展示されており、本物ならではの存在感をしばし満喫。結構興奮しますね。それぞれに詳細な説明が添えられているので、とても1時間や2時間では総てを見ることはできません。


映画は1本800円。ただいまの特別上映はエノケンからウルトラマンレオまで手がけた中川信夫監督の生誕100周年記念上映。幅広いジャンルに及ぶ監督の作品の中から本日は怪談特集で、”亡霊怪猫屋敷(1958)””女吸血鬼(1959)””東海道四谷怪談(1959)”の三本。いずれも新東宝です。13時からの”亡霊怪猫屋敷(1958)”は時間の都合がつかずにやむなくパス。15時からの女吸血鬼と19時からの東海道四谷怪談を観ました。

onnakyuketsuki_2.jpg”女吸血鬼”は、ストーリーも演出もメイクもなにもかも昔風というかなんというかで笑っちゃうんですが常設展示で日本映画の歴史を見た後なので、自分自身の目で歴史を検証しているような妙にいい感じ。”うーん、活動写真だなぁ”などと感慨深く鑑賞しました。

ちなみにストーリはというと。。。結婚を控えた伊都子(池内淳子)の誕生パーティーの夜、20年間行方不明だった母美和子(三原葉子)が戻って来ます。しかもその容姿は失踪時のままの若く美しい姿。驚きながらも母の帰還を喜ぶ伊都子ですが、母親は何かに怯えている様子。聞けば彼女は20年にわたって竹中(天地茂)と名乗る男に監禁されていたといいます。時を同じくして町では若い女性が惨殺される事件が続発。実は美和子を誘拐した竹中は、天草司郎に仕えた吸血鬼で、天草の末裔である美和子を取り戻すべく東京まで追ってきているのでした・・。

狙われる美しいヒロイン(池内淳子)、彼女の恋人にして勇敢な主人公(和田桂之助)、不気味な怪人(天地茂)とその手下(和久井勉 他)、余計なことをして状況をややこしくする小悪党まできっちり役者がそろってオールスターですよ。で、お約束の逃げ惑うヒロインや主人公と怪人の一騎打ち、隠れ家もちゃんと爆発。おかしいような懐かしいようないかにもの展開に意外と心地よくニコニコと映画を観ている自分がいました(笑)。

yotsuyakaidan_3.jpg19時からは”東海道四谷怪談”。いまさらストーリーを紹介するまでもないですね。鶴屋南北の名作です。四谷怪談は約10年ごとに映画化されていますが、数ある四谷怪談の中でも最高峰といわれている作品です。こちらは、会社帰りの時間帯ということもありかなりの客入りです。

子供の頃、もう寝なくてはいけない深夜時間帯にこっそりつけたテレビでたまたま怪談を観てしまったこととかありますよね。四谷怪談とか、怪談累が渕 とか、凍りつくほど怖かった記憶があります。その記憶だけでディテールは覚えていないのでかなり楽しみにしていました。まあ、さすがに今はこちらもすれた大人になってますから、昔ほどの恐怖感を感じることはありませんでしたが、その分じっくり中身を観ることができました。


yotsuyakaidan_2.jpg岩が服毒して顔が崩れていくシーンは、そうと知っていても息を飲みます。容貌の変化もそうですが、内気でうじうじしていた岩が伊右衛門の仕打ちを知って見る見る怨念の権化に変身していく様が壮絶です。利欲のあげく妻を謀殺する伊右衛門も、怨念のあげく化けて出るお岩も業が深いです。このドロドロとウェットな人の業の深さが海外のホラーにはない日本の怪談の特徴ですよね。英語字幕が入っていることもあって外人さんが結構多かったのですが、彼らはこのあたりどう感じるんでしょうね。昨今の和製ホラーばやりを観ると案外相通ずるところがあるのかもしれません。


怪談と言えば「ヒュードロドロ」ですが、効果音もすばらしく効いてます。妙にテンポの早い花火のドンドンという音やイラつくような鳥の鳴き声、かちかちかちと何かが鳴る音なんかがなんとも言えない居心地の悪さを増幅します。伊右衛門が悪事を働く場面では特に念入りに効果音が入りますが、直助ほど根っからの悪党ではない伊右衛門の心理的葛藤を浮き彫りにするようで絶妙です。また、伊右衛門がお梅と祝言を挙げた夜、お岩の亡霊に惑わされて梅を切り殺してしまった後、物音にいぶかった舅の喜兵衛が寝室の外から「伊右衛門どの?」と声をかけますが、この声だけ中川監督自身の声なんだそうです。あらかじめ知っていればずいぶん楽しめたのにと思うと残念。また観る機会があればじっくり聞いてみたいと思います。


【作品情報】

onnakyuketsuki_1.jpg"女吸血鬼” 1959年/新東宝
監督: 中川信夫
製作: 大蔵貢
企画: 津田勝二
原作: 橘外男
脚本: 中沢信
     仲津勝義
撮影: 平野好美
美術: 黒沢治安
音楽: 井内久
助監督: 石川義寛
 
出演: 和田桂之助 (大木民夫)
     中村虎彦 (松村重勝)
     三原葉子 (松村美和子)
     池内淳子 (松村伊都子)
     天知茂 (竹中信敬)
     和久井勉 (小人)


yotsuyakaidan_4.jpg”東海道四谷怪談” 1959年/新東宝
監督: 中川信夫
製作: 大蔵貢
企画: 小野沢寛
原作: 鶴屋南北
脚本: 大貫正義
     石川義寛
撮影: 西本正
美術: 黒沢治安
編集: 永田紳
音楽: 渡辺宙明
殺陣: 坂田耕造
助監督: 石川義寛
 
出演: 天知茂 民谷伊右衛門
     若杉嘉津子 (お岩)
     江見俊太郎 (直助)
     北沢典子 (お袖)
     池内淳子 (お梅)
     大友純 (宅悦)
     中村竜三郎 (佐藤与茂七)



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posted by FROST at 11:23| 埼玉 ☀| Comment(7) | TrackBack(3) | OLD:日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントとTBありがとうございました。

私もそうなのですが,フィルムセンターはオールドムービーのファンにはホントにありがたい存在ですね。

中川信夫監督の『女吸血鬼』は,私もずっと観たいと思いながら,まだ観ていないのですが,ほかに『地獄』なんかも上映されるようで,今回の特集はかなりカルト系ですね。
土曜にでものぞいてこようかと思っています。
Posted by ジューベ at 2005年11月24日 00:25
またまたお邪魔します。
フィルムセンターの中川信夫特集、気になってました。
中川監督作品は「地獄」「四谷怪談」くらいしか観ていないのです…。
私も行ってこようかな。
Posted by bambi@のら猫の日記 at 2005年11月24日 20:24
ジューベさん
『女吸血鬼』は、昭和30年代〜40年代くらいの少年漫画を読んでるような感じでとっても楽しめます。フィルムセンターとともに新しい世界が開けてきました(笑)

bambiさん
どうも、コメント&TBありがとうございます。私は中川作品を(意識して)見たのははじめてなんですが、『地獄』も有名なんですね。金曜日(11月25日)が、地獄と四谷怪談と私刑(リンチ)の三本立て・・・ああ、もう一回行きたい!
Posted by FROST at 2005年11月25日 02:13
「地球で最後のふたり」へコメントを戴き、有難うございました。
四半世紀ほど前学生だった頃東京に暮らしていましたのでフィルムセンターには足繁く(年間50回くらいか)通いました。当時は衛星放送もビデオレンタルもない時代ですから、古い映画は観るのはここしかなかったわけです。その点今の若い人たちはうらやましいですが、反面貴重な映画を観たのだという感慨は薄いでしょうね。貧しいことは豊かなことかもしれません。
映画鑑賞本数が5桁にまで達した私ですが、中川信夫は「東海道四谷怪談」くらいしか観ていません。
Posted by オカピー at 2005年11月27日 02:21
たびたびお邪魔します。昨日,『女吸血鬼』観てきましたよ。
いや,モノクロながらシネマスコープで,割と立派な(?)作品なんですね。
これカルトファンの間では長らく幻の作品だったはずなんですが,数年前にDVDが出てますし,お客さんも少なくて楽に観られました。

今観るとけっこう笑えますね,やっぱり。^^
Posted by ジューベ at 2005年11月27日 21:23
>ジューベさん
観れましたか、それは良かったです^^ 中川監督については何も知らなかったので、へぇって感じで見たんですけど貴重な作品なんですね。笑っちゃいますけど、やっぱり雰囲気があっていい映画ですよね。
Posted by FROST at 2005年11月27日 21:42
>オカピーさん
コメントありがとうございます。週一回フィルムセンター通いとはうらやましい・笑 確かに最近は観たいと思えばすぐ観れますからね。逆にそういう時代だからこそ、昔の名作をたくさんの人にも見てもらいたいと思っています。ホントにいい映画がいっぱいありますもんね^^
Posted by FROST at 2005年11月27日 23:47
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『浮雲』 ??稀なるコンビネーション??
Excerpt: 1955年 日本/東宝 監督:成瀬巳喜男 原作:林芙美子 脚本:水木洋子 撮影:玉井正夫 美術:中古智 監督助手:岡本喜
Weblog: キネマじゅんぽお
Tracked: 2005-11-24 00:27

東海道四谷怪談(1959/日本/監督:中川信夫)
Excerpt: 数ある四谷怪談映画の中でも最高傑作と名高い、中川信夫監督版。 同監督の「地獄」(レビュー未掲載)は、どうもなんだかゴチャゴチャしていて私はあまり好きではないのだが、本作は凝った演出とメリハリの効いた脚..
Weblog: のら猫の日記
Tracked: 2005-11-24 20:20

『女吸血鬼』とチェ・ゲバラ
Excerpt: 先週末(土曜日)にフィルムセンターで開催されていた中川信夫生誕百年特集から,知る人ぞ知る和製カルトホラーの珍品『女吸血鬼
Weblog: キネマじゅんぽお
Tracked: 2005-11-30 01:17
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