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2005年11月12日

ショートコメント:地獄/盲獣VS一寸法師

さて、念願の石井輝男監督追悼特集です。今日中にアップできて良かった(^^;)

昨日観た映画は

”地獄””盲獣VS一寸法師”

石井監督最晩年の作品ですね。

jigoku.jpg”地獄”は製作年度が1999年。オウム事件とその後の法手続きが遅々として進まないことに我慢できなかった石井監督が怒りを込めて自主制作した作品です。

登場するオウム真理教(作中では宇宙心理教)メンバーはほとんど実名。アサハラはカサハラだし、風貌もそっくり。弁護士一家殺害事件、公証役場事務長逮捕監禁致死事件、松本サリン事件、そして地下鉄サリン事件と出来事もほとんどそのまま再現されています。自主制作だからここまでできるのでしょうかね、そうでなければどこかからストップがかかっていそうなものです。

ストーリーは、元オウム信者である若い女性の精神的な救済という体裁ですが、実際は「オウム真理教の奴らは地獄に落ちて永遠の責め苦を負え」の一点集中。監督の怒りはオウム真理教弁護団にも向けられており、弁護士たちも同じく地獄の責め苦を味わうことになります。教団が悪事を働く場面とそのメンバーが地獄の鬼に責められる場面がほとんどで、舌抜きやのこぎり引きなどまあよくもこれだけ(笑)。よほど怒り心頭だったのでしょうね。

この映画で、特筆すべきはラスト前の丹波哲郎の登場でしょう。”亡八者(ぼうはちもの)”という役柄ですが、これ監督の代表作のひとつ”ポルノ時代劇 亡八武士道”の主役”明日死能”(なんという名前!)ですよね?。人が守るべき8つの大切なこと「孝、悌、忠、信、礼、義、廉、恥」を総て破った外道たちを亡八者と呼ぶらしいですが、この明日死能、とにかく脈略なく登場して地獄の鬼を切りまくります。また、 セリフが絶品で、「生きるも地獄、死ぬも地獄。されば地獄行きはしばらく延期だ。まだ切足りん。」  亡八武士道の冒頭、橋の上で捕り物方を切りまくりながら死能のいうセリフが「もう切り飽きた・・・」。このくだりで映画館の中はあちこちに笑い声が起きていました。このあたり石井監督らしいということでしょうね 。


mouju.jpgさて、もう一本の”盲獣VS一寸法師 ” 製作は2001年ですが、今はなき自由が丘の武蔵野館で一度プレミアオールナイト上映されて以来昨年まで公開されなかったといういわく付の作品ですね。そもそも、『盲獣』と『一寸法師』は乱歩のそれぞれ別の作品。いずれも過去に単独では映画化されているということですが、石井監督は独自のシナリオでその二つを融合。1969年の”恐怖奇形人間”以来30数年ぶりの乱歩原作の映画化です。

この作品のなんともいえない不気味な感じの中心は、間違いなく”地獄”にも出ていた猛獣役の平山久能ですね。黒尽くめに丸サングラス。くぐもったような嗄れ声に爬虫類のような目玉の盲人。もう一人の怪人一寸法師も十分怪しげですが、インパクトから行くと圧倒的に盲獣に軍配が上がります。

主人公の小説家にリリー・フランキー、その知人で事件を解決する明智小五郎役に塚本晋也。セリフ棒読みです(笑)。特に、リリー・フランキーは映画初出演にもかかわらず、石井監督からは演出も演技指導もなかったということです。演技はともかくリリーの風貌などはこの映画の不気味な雰囲気にぴったりなので、石井監督にとってはそれだけで十分だったのかもしれません。


今回の上映は、DVDによるビデオプロジェクター上映だでした(オリジナルフィルムどこにあるんでしょうね?)。そのせいかもしれませんが画質とが妙に新しくて少し違和感がありましたね。もう少し全体が”古い”感じの方が不気味な雰囲気とマッチしてよかったかもしれません。


今回、二作だけでも石井監督の作品が見れて本当に良かったです。石井監督は日本映画を代表するカルト監督であることは間違いありません。”石井ワールド”なんですよね。これなんなのでしょう。映画館の中に充満するようなこの感じを「こういうことです」とうまく説明できれば良いんですが・・・。

今回、二本の映画に共通して出演している平山久能。この人の演技が石井ワールドを体現していることは間違いないようです。”地獄”の宮島ツトム役(少女連続誘拐の宮崎勤がモデル)も”盲獣VS一寸法師”の盲獣役も登場するだけで、異常さがサーっと垂れ込めてくるような存在感。声も表情も演技も総てが不気味です。目をそむけるような異常な行動も不気味ですが、どこかにちょっとおかしな部分があるんですよね。盲獣の冒頭で女優に握手を求める手がなんか濡れてたり。そういうちょっとした部分がなぜか無性に不気味なのです。調べてみても平山久能のその後の出演は2〜3年前に少しあるだけですが、その後どうしてるんでしょうね。この二本のインパクトが強すぎたのかな。

普通映画レビューすると、ストーリーが良かったとか演技がどうのとか映像がとか言うわけですが(上でも言ってますけど・・笑)、石井監督の作品に限っては、監督自身の好きに作っている世界をひと時だけのぞかせてもらっている感じ。だから、文句言っちゃいけませんよね(笑) 。なんかよくわからない石井ワールドに、漬かりこんで、満喫して、脳のしわの間まで石井輝男でいっぱいになって、それで幸せって、そういうことです。

「自分の演技なんか関係ありません。誰が出ようともう石井さんの映画は石井さんのものでしかないですからね」とインタビューで答えていたリリー・フランキー。あなたは正しい。
ishii.jpg


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posted by FROST at 23:49| 埼玉 ☀| Comment(2) | TrackBack(2) | ショートコメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
石井監督追悼メモにTBどうもです。
過去に書いたレビューよりTB打たせていただきました。
「地獄」については、記事が古いのでTB受け付けてないのですが、よかったら見てみてください。
http://oldreview.seesaa.net/article/2460687.html

あれ、地獄もプロジェクター上映だったんですか?
以前、スクリーンで観ましたが…。フィルムどうなっちゃったんでしょうね?
Posted by bambi@のら猫の日記 at 2005年11月23日 20:05
コメントお返し遅くなりましたm(_ _)m
”薄っぺらいけどエンターテインメントとしては最高!”とのら猫さんのレビューまさにそのとおりの怪作でしたね(笑)プロジェクタは”盲獣・・”だけで、”地獄”はちゃんとフィルム上映でした。
Posted by FROST at 2005年11月26日 03:19
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