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2007年04月06日

#0160『狂へる悪魔』ジョン・S・ロバートソン 監督 1920年アメリカ

jykillHyde.JPG
”DR. JEKYLL AND MR. HYDE”

監督:ジョン・S・ロバートソン
製作:アドルフ・ズーカー
原作:ロバート・ルイス・スティーヴンソン
脚本:クララ・S・ベレンジャー
撮影:ロイ・オーヴァーボウ
出演:ジョン・バリモア/ニタ・ナルディ
    ブランドン・ハースト/ルイス・ウォルハイム
    チャールズ・レイン/ジョージ・スティーヴンス
    マーサ・マンスフィールド

詳しい作品情報はこちら
    ⇒狂へる悪魔 - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)

有名な「ジキル博士とハイド氏」の映画化。この作品、IMDbで引くとTV版を含めて20作品出てきますね。1920年にはこれを含めて3本作られています。一番たくさん映画化された小説?

”ジャーン”とか”ビャーン”とかの効果音がなくても立派にホラー映画は成り立ちますね。ちなみに血まみれの残酷シーンもありませんが、それでも十分成り立ちます。

お話はよく知られていますが、ざっとご紹介すると。。。
研究熱心でまじめ一徹なジキル博士(ジョン・バリモア)は、愛するミリセントの父カルウ卿(ブランドン・ハースト)からその生真面目な性格をからかわれて動揺する。カルウ卿に連れられて訪れたミュージックホールのダンサージーナ(ニタ・ナルディ)への欲望から、彼は自分の中に潜む別の性格に気づきます。思い余ったジキルは二つの精神を分離して別の身体に移す研究を始めます。やがて研究は実を結びますが、薬を自らの身体で試したジキル博士は、醜く変身してしまいます。元に戻るための薬も無事発明したジキル博士は、醜く変貌した自分をハイドと名づけて友人と称し、自らの欲望を満たすための二重生活を始めます。しかし、徐々にジキルはハイドをコントロールできなくなっていき、カルウ卿にハイドとの関係を揶揄されたことからついにハイドは暴走を始めます。

変身のシーンは二重露出やメイクもありますが、基本的にはジョン・バリモアの表情と演技の変化。知的で端整なジキルから、醜く悪魔的な表情のハイドへ。これが怖いですねぇ。

怖いといってもヴィジュアル的には大した事はないんです。なにが怖いのかと言うと、人間の二面性とそれが本人の意図に逆らってコントロールできなくなっていく、このことが怖いんですね。初めて自分の悪の性質に気づいたジキルはそれを分離して安全に(って言い方も変ですが)扱おうとするわけですが、結局自らが悪魔のようなハイドに変身してしまいます。しかし、ジキルは最初この状況をうまく利用して自分の欲望を果たそうとします。ジキルとして果たせなかった酒場の女ジーナ(艶然と笑うニタ・ナルディの色っぽいこと)への欲望を果たし、だんだん自信満々の悪党に変貌していくところが見事です。しかし、やがてその自信にもかかわらずコントロールが効かなくなってきて薬がなくても変身してしまうようになり、ついには逆に薬がないと善良な心を保てなくなります。これほど人間の愚かで哀しい本質を端的に寓話化した作品もないかもしれません。

そしてジキルはとうとう、愛するミリセントさえ手にかけようとしますよね。ドア越しに、中に入ろうとするミリセントと入れまいとするジキル。徐々にジキルはハイドに変身していきます。このままではハイドとして彼女に危害を加えてしまう。わずかな正気が残っているうちにジキルは毒薬をあおります。指輪に隠した毒を飲んで、髪を振り乱して、もう一度顔を上げたときに・・・、彼は完全にハイドになってますね。これが怖いんですよ。嬉々としてドアを開けに行きます。そして何も知らないミリセントが入ってくる。ドアの陰に隠れていたハイドが彼女の後ろでドアを閉める。そのときのハイドの表情が冒頭の写真です。

もうそこには、ミリセントを愛する善良なジキルの姿はかけらもありません。これ、残酷でしょ?恐ろしいじゃないですか。これほどまでに人間性が否定された救いのない表情はないと思うんですね。これが”怖い”と言うことじゃないかと思うんですよ。ジョン・バリモアはそれを表現するだけの過不足のない見事な演技でした。

思えば、私が映画好きになるきっかけとなった『エクソシスト』にもこういう意味の怖さがありましたね。そりゃ、首が回転したり緑色の嘔吐する画もコワイんですが、あの映画には神と悪魔の戦いのすさまじさと、そこに巻き込まれてしまった人間の無力さという怖さがありましたね。

その後、山ほど出てきたスプラッターやショッキングホラーを、私は見ましたよ。かなり見ました。中学高校くらいの恐いもの見たさの盛りでしたしね。で、そういう映画も確かにコワかった。でもすぐ飽きた。そういう見た目コワイレベルのものは飽きるんです。もう一生見なくても平気です。

だから、最近の見た目コワイだけのホラー映画(全部否定しているわけではありませんよ、当然)よりも、この『狂へる悪魔』の方がよっぼど恐ろしい。こういうホラー映画は何度でもいくつでも見たいと思いますな。
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posted by FROST at 00:00| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この作品は未見なんですが、フレドリック・マーチの32年版と、スペンサー・トレイシーの41年度版は観ているんですが、この作品はハンサムな男が悪意に満ちた顔に変身する…というのが話をより盛り上げるんだと思うのですね。
だから、ジョン・バリモアはそれで成功した。ジョン・バリモア版が「ジキルとハイド」の最高峰と言われるのも納得です。
32年度版では、フレドリック・マーチがアカデミー主演男優賞を獲得しています。
41年度版は失敗作として有名ですね。
だってスペンサー・トレイシーがハイドになっても、衝撃度がないんですよ。そして婚約者にはラナ・ターナー。酒場の女にはイングリッド・バーグマン…って、どう見てもミスキャスト。製作したほうはそのミスマッチが良いと思ったんでしょうが、やっぱりダメでしたね。トレイシーのハイドより、バーグマンの酒場の女のほうが怖かった…。
Posted by オショーネシー at 2007年04月06日 01:53
オショさんこんばんは。フレデリック・マーチというと、『必死の逃亡者』のご主人でしょ?ちょっとジキル&ハイドのイメージと違うかなぁ。確かにジョン・バリモアはハマってましたねぇ。屈託なくはつらつとしていた姿も、自分の本性に気づいてしまった悄然とした姿もハイドの凶悪な姿も全部良かったと思います。
スペンサー・トレイシー版のラナ・ターナー@婚約者は、やっぱりあれですか、白のパンツ姿?(失礼)
Posted by FROST at 2007年04月06日 20:37
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