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2007年03月30日

#0158『戦艦ポチョムキン』セルゲイ・エイゼンシュテイン監督 1925年ソ連

potemkin ridotta.jpg
”BRONENOSETS POTYOMKIN”

監督:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
原作:ニーナ=アガジャーノ・シュトコ
脚本:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
撮影:エドゥアルド・ティッセ
音楽:ウラディミール・クリュコフ
出演:アレクサンドル・アントノーフ
   グリゴリー・アレクサンドロフ
   ウラジミール・バルスキー

詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレあり

さて、とにもかくにもサイレント映画を観ようという気分になり、最初に取り上げるのはやはりこの作品『戦艦ポチョムキン』。不朽の名作にして映画の教科書ですねぇ。「映画って何?」という探究心を持った人は必ず一度は観ている名作ではないでしょうか。(って私は今回はじめてですけど・o・)。

いまさら解説なんかする余地ありません。★★★★★です。モンタージュがどうのとか、オデッサの階段のシークェンスがどうのとか、私ごときの受け売りよりも、巷に優れた記事がたくさんありますのでご参考にしてください。以上。。。。

とはいえ、それだけでは終われないので、まだ観ていない方向けにちょっとだけご紹介すると、、、、

革命前夜のロシア、戦艦ポチョムキン号の乗組員たちは劣悪な食事をきっかけに不満が爆発。暴動を起こし士官を制圧して艦を占拠する。しかし、暴動の主導者ワクリンチュクは銃撃にあって死亡。その亡骸はオデッサの港に安置され、その志と勇気をたたえる市民たちの長い列が出来る。やがて、ワクリンチュクの勇気は葬送にやってきた市民たちにも伝播。市民たちは革命に立ち上がり、艦と街は固い絆で結ばれる。集まったオデッサ市民が艦を歓迎する中、突然政府軍兵士の一団が群衆の鎮圧に乗り出し、オデッサの階段は阿鼻叫喚の地獄と化す。それに対し、ポチョムキンの主砲が轟然と火を噴き政府施設を崩壊させる・・・。

この作品はロシア革命の宣伝のために作られた映画なんですねぇ。1905年の第一次ロシア革命20周年記念映画。実際の歴史では、1905年に起きたポチョムキン号の反乱は政府艦隊によって制圧され成功しませんでした。しかし、作られたのが1917年の革命の後と言うことで、大々的なプロパガンダのために史実とは正反対のストーリーが作られたようです。

そういうことなので、水兵と市民たちの雄姿、押さえつけようとする政府軍の悪逆非道ぶりを徹底的に印象付けることが重要らしく、そのためにエイゼンシュテインは”モンタージュ”という技法を駆使した。そういうことでいいのかな。

で、問題はこの大傑作を前にして私は何を感じたのかということですが、とにかく映像の力というものを感じましたよ。テッテー的に感じました。

作品は全5章立てですが、ウジの湧いた肉をめぐって膨らんでいく乗組員たちの不満と怒りが爆発する”瞬間”を詳細に見せる第二章と、革命のお祭りムードから一転して政府軍兵士による大虐殺が起きる第4章(オデッサの階段)の映像は、特に腹に響いてくるものがあります。

艦上の士官と水兵たちの対立は、現実の政府と民衆の対立を模しているわけですが、尊大な表情のクローズアップが多い士官たちに対して、水兵たちはほとんどの場面で”群れ”で写されています。白い水兵帽をかぶっていますが、これが群れて動き回る姿が妙に印象的なんですよね。なんか、肉にたかって蠢いていた白い蛆虫にも重なるものがあって、いかにも”地を這う群衆”という感じ。

蛆の湧いた肉でつくったスープを拒否した水兵たちは甲板に集められて、司令官ゴリコフの登場。支配階級の権化がスープに満足したものは前に出ろと言います。すかさず前に出る士官たち、拒否する水兵たち。怒りを増していく司令官。にやにや笑う士官のアップ。業を煮やした司令官が衛兵を呼ぶ。武力を前にしてうなだれ言うことを聞くしかない水兵たち。それでも一部の者は頑なに拒否。このあたりどんどんカットが短くなっていきますよね。士官たち・水兵の群れ・甲板の全景がどんどん切り替わって、キリキリと緊張が高まってちょっと胸が苦しくなってきます・・・そして、ついに銃殺命令を発するゴリコフ。帆布を頭からかぶせられた反乱水兵たち。

余談ですけど、”頭から布をかぶせられた複数の人間”の画って、妙にビザールなものがありませんか。その存在は間違いなく人間なのに、その人間性を完全に無視されて単なる肉の塊のように扱われてる、そんな感じ。布から出てる足がまたそう感じさせるんですかね。この前に見たジョニー・トー監督の『ブレイキング・ニュース』でもアパートから逃がされてくる人質たちが5〜6人まとめてシーツかなんかかぶせられていて、それを観たときもおんなじような奇妙な見え方がしたんですよね・・・余談終わり。

射殺命令を出す士官のアップ、うなだれる水兵たち、恐怖のあまりひざから崩れる反乱水兵、そのとき神父が現れますが、これがまたいかにも俗悪な風貌で水兵たちの見方になど金輪際なりそうにない。神父役はエイゼンシュテイン監督本人らしいですね。神父の俗な顔のアップと手に持っている俗な十字架がギラギラ光るカットも追加、さらにサーベルをコツコツたたく士官の手、船首に彫られたライオンのレリーフ、、、そんな映像がどんどん切り替わって一触即発の雰囲気の中、徐々に顔を上げるワクリンチュクが叫びます「兄弟!誰を撃つ気だ!!!」

サイレントなんで音楽と字幕だけなんですけど、ここまでドキドキしましたねぇ。思わず姿勢が前のめりになりました。どんな画をどうつなぐと観客にどんなイメージをもたらすことが出来るのか。エイゼンシュテインは当然計算してやってるんでしょ?すごいですよね。驚きですよね。映画監督というのは本当にすごい人たちだ。

第4章のオデッサの階段はもっとすごい。もう、あんまり長々書きません(エッ?十分長いって?もうちょっと・・・^^;)。ものすごく有名なシーンなので(映画史上もっとも有名な6分間!)カットの内容には詳しく触れませんけど、この第4章って前半は艦と街が友好を築くシーンが実に平和的に描かれてるんですよね。市民が小さなヨットでポチョムキンの周りに集まって。手を振る姿、笑いかける姿。岸にいる市民もみんな楽しそうで、天気も良くて、手を振って。。。メガネをかけた教師風のおばさんとか、マルコメ君みたいな男の子と一緒に手を振るお母さんとか・・・。

「すると突然」・・・。字幕。


次の瞬間、あたりは地獄となります。何の前触れも予感もなしにいきなり。この落差で観客はまず何がなんだかわからなくなりますよね。その後も、説明が与えられるような画は一つもありません。襲い掛かる兵士は決して顔が映ることがない。個人なんてどうでもいいんですね。非人間的な圧倒的暴力。襲撃する兵士たちと撃たれ逃げ惑う市民たちが同じカットに映る事もありません。唯一の例外は死にかけた子どもを抱えて抗議する母親だけ。みんなが逃げ降りる階段を逆行し、兵士たちの前にたどり着いた次の瞬間に射殺されてしまいます。倒れる彼女の上に兵士たちの影が映ってます。倒れる人、逃げる人、隠れる人、血だらけの男の子、乳母車、撃ち抜かれたメガネ。さらに整然と横一列で前進する兵士たち。。。。臨場感ですねぇ。臨場感。まるでその場にいるみたいな臨場感。映画館で観たいよ。

さすがに映画の歴史を作った作品だけのことはありました。前に見た『裁かるるジャンヌ』もクローズアップを駆使した心理描写が良かったけど、戦艦ポチョムキンも良かった。確かに見えないモノが見えた。映像だけでここまで出来るんだなぁ。ちょっとだけ書こうと思ったらえらい書いてしまいました。未見の方ぜひどうぞ。

次回は、『黄金狂時代』(黄金狂時代と戦艦ポチョムキンは淀川長治氏が生涯で一番好きだった映画だそうな)

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posted by FROST at 18:04| 埼玉 ☔| Comment(10) | TrackBack(0) | OLD:その他ヨーロッパ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この映画は私にとって懐かしい映画なんですよ〜。
昔、埼玉に住んでいた時期があって、今はもう無いんですが、三鷹の3本立ての映画館によく通っていました。そのとき観たものの一つがエイゼンシュテイン監督作品、「戦艦ポチョムキン」「ストライキ」「アレクサンドル・ネフスキー」だったんですよ。
「ポチョムキン」のウジが湧いたパンが…ホントに気持ち悪かったっす。
私もモンタージュがどうとか、オデッサの階段のシーンがどうとか(このシーンは「アンタッチャブル」で再演されてますね)よくは分からんのですが、“社会主義国”ならではの人海戦術が凄かった。よくあれだけのエキストラを集められたな〜と、変なところで感心してしまいました。
エイゼンシュテインの最高傑作に違いないですが、「イワン雷帝」の3部が作られていたらなぁ…。つくづく残念。
Posted by オショーネシー at 2007年03月30日 20:39
 FROSTさん・・・今日は。
レイアウト変わりましたね・・・中々ですよ。

うーーーん。セルゲイ・ミハイロビッチ・エイゼンシュタイン若干27歳で撮ったこの作品、彼を一躍世界的監督と認知させましたね。
格調高い映画ブログを運営するFROSTさんがこの映画を初見とは?・・・。
でもグリーンベイ名画鑑賞会の会員にも「望郷」(36)や「カサブランカ」(42)を初見という会員がいる・・・そうかと不思議でもないか・・・。(笑)
 この作品の特異性から数多くの論評がなされ、衝撃的な映像は至る所で引用されもしたが・・・その割りに果たしてこの映画の背景に潜む真相を本当に理解されたのか甚だ疑わしい。
ご指摘の様に、この作品は第一次ロシア革命の20周年を記念して制作され<圧制への怒りと革命礼賛>を謳い上げた。しかし、多くの国では作品内容に鑑み上映禁止された・・・。我国でも完全版が公開されたのは67年で制作されてから42年間も封印されていた・・・。
確かに作品そのものはエイゼンシュタイン監督の才能の凄さを認めない訳にはいかないが・・・当のロシアでは余り評価されない事実があることも確かの様です・・・その理由は先に述べた<映画の背景に潜む真相>を多くのロシア国民は体験しているからに他ならない。
「革命の夢」と「ペレストロイカが始まるまで」・・・またも一党独裁とスターリンの圧制による抑圧は余りにもギャップが大き過ぎたからですね・・・。
 この作品は圧制と抑圧を直に体験した人間でなければ、作品の持つ本当の意味を理解できないのではないかとも考えている。
今、静かにこの作品と向き合う時・・・当局が喜びそうな宣伝映画に表面上は整えてあるがエイゼンシュタイン監督は・・・内面に潜む崇高な精神性包含しながらドラマチックに描ききっていると思えてならないのです・・・。
興味ある事実を一つ・・・モスクワにある国立映画大学で監督は教壇にも立っていたが・・・入学式で冒頭にこの「戦艦ポチョムキン」を上映する慣わしになっていたとか・・・現在は取りやめになっていると云う・・・。
それでも彼が残したこの作品は、後の映画人に与えた影響の程の計り知れないことは言うを俟たない・・・。
Posted by グリーンベイ at 2007年03月31日 11:24
>オショさん、こんばんは。サイレントシリーズの方へもようこそ^^
埼玉にいたことがあるんですか。どの辺だろう。私は川越。良いところですよ。
しかし、その三鷹の名画座、ものすごい三本立てですね、驚き。あのエキストラ、地の果てまで続いてましたからね。そうか、あれは社会主義だから出来る業か(なるほど)。
オデッサの階段のシーンは目が画面に吸い付いてしまいました。これだけのシーンはめったに観れませんよね。
ちなみに、『イワン雷帝』も未見です。去年京橋のフィルムセンターで一挙にかかると言うので一ヶ月前から予定入れてたら、結婚記念日だったことを忘れておりまして。。。泣く泣くあきらめて以来縁がありません。

Posted by FROST at 2007年03月31日 23:57
グリーンベイさん、こんばんは。
か・・・格調高いっすかっ・・・@o@キンチョウ

映画は昔から結構いろんなもの観てるんですけど、実はこのブログをはじめるまで古い映画はほとんど観たことないんですよ。特に、サイレントはチャップリンくらいしか見たことないです。
1.今まで見てこなかった昔の名作を見る(今までハヤリの映画を適当に見てた)
2.考えながらみる(今まで表面的にボーっと見てた)
3.考えたことを書く(今まで見っぱなしだった)
この3つがこのブログでの私の挑戦でございます。

それはさておき、この映画は強烈でしたね。ちょうど、先ほどグリフィスの『國民の創生』を見終わったんですが、映画というものの解釈自体から違うんでしょうね。ともあれ、これだけの映像のインパクトを観客に伝えることが出来るというのは奇跡だと思います。当時他の国で上映禁止の憂き目を見たというのは当然理解できますが、当のロシアでも評価されていないというのは、言われてみればなるほどと感じます。共産主義の矛盾を前提とすれば、この作品は出来が良ければ良いほどそのギャップを鮮明に暴き出すことになるわけで、そういう宿命の作品にエイゼンシュテイン監督が革新的な映画技術を詰め込んだ意味と言うのをやはり考えてみる必要はあるようですね。
Posted by FROST at 2007年04月01日 00:14
 FROSTさん・・・今日は。
うーーーん。何を仰いますか・・・ご謙遜でしょう。(笑)
映画少年グリーンベイは忘れていませんよ。FROSTさんの映画鑑賞眼の確かさを。
以前に・・・「麦秋」の中で原節子嬢が北鎌倉の
ホームでの凛とした立ち姿をいたく感心されていましたね・・・こうした感性は映画フアンとして第一級のものですよ!!。
映画に学ぶものがあるとすれば・・・こうしたハットするシーンの積み重ねですね・・・これがご自身の持つ優しさとか寛容とか・・・人間性の豊かさに通じるものと思っているのですが。FROSTさんも今はお若いでしょうが、やがて中年・老年を迎えどんな素敵で雰囲気のあるご老人になるか楽しみなところです・・・。

さて、「国民の創世」(15)をご覧になったようですが・・・「戦艦ポチョムキン」(25)のアップとタイミングが良かったですね・・・。それはエイゼンシュテイン監督はこの「国民の創世」と一年後に撮った「イントラレンス」(16)に大いなる影響を受けているからです・・・。グリフイスのこの2作品は映画史上記念碑的作品として評価が高い・・・近い将来アップされることを期待します・・・。
Posted by グリーンベイ at 2007年04月01日 15:58
私は東所沢というところに住んでいましたよ〜。まだ開発途中といった頃に4年間棲んでりました。
ちなみに三鷹の映画館は3本で1000円(!)でした。ぴあの会員なら800円で観れたんですよ。
現在は札幌のベットタウン、北広島市に住んでいますが、ぴあの会員なんて何の意味もありません。もっぱら夜8時以降は1200円という制度を利用しています。
しかし、札幌も“名画座”なんてなくなってしまいましたね〜。小さい画面のTVで観る映画…もっとでかい画面で観たい!!!
目指すはビエラの103インチでてすかね←買えないって…
Posted by オショーネシー at 2007年04月01日 18:24
グリーンベイさん、恐縮でございます。最近、映画見るのが面白いんですよ。知識とか経験とかもっとあれば、もっと面白く観れるんでしょうね。もう逆立ちしても若いなんぞといってられる年ではなく立派な中年ですが、いろいろと精進していきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
Posted by FROST at 2007年04月03日 00:12
オショさん、こんばんは。もう十何年か前に3年ほど西所沢に住んでましたが。時期的にかぶってるかな。結構所沢のダイエーあたりで接近遭遇してたりして。
今は北広島にいらっしゃるんですか。昔仕事でそのあたりの大きなショッピングセンターに行った覚えがあるなぁ。
ちなみに、私の"名画座”は14インチ・・・寂。
Posted by FROST at 2007年04月03日 00:22
FROSTさん、せっかく当ブログにお越し頂きましたのに残業続きの毎日で、ご返信遅れてしまい、申しわけございませんでした。

わたしのお気に入りブログの方たちは、こういった作品にはまっておられる方が多いのですが、FROSTさんまで、このような凄い作品を取り上げられるとは・・・わたしは歓びを禁じ得ませんよ。
上記のグリーンベイさんのコメントにも動揺しております。みなさん素晴らしいですね。
そして、このような名作が安価に購入できる近代資本主義に感謝(笑)ですね。

当ブログへのまたのお越しをお待ちしています。
では、また。
Posted by トム(Tom5k) at 2007年04月03日 23:23
トムさん、ありがとうございます。コミュニケーション下手なもんで、コメントも頻繁にするほうではないのですが、トムさんも含めて素晴らしい方々にお越しいただいて幸せです^^。また、トムさんの記事に果敢なる挑戦をさせていただきます・笑。よろしくお願いします。
Posted by FROST at 2007年04月05日 14:50
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