新ブログ『川越名画座』に引っ越しました。さらに充実した内容で運営していますので、ぜひご訪問ください。

2007年03月23日

#157『暗黒街の弾痕』フリッツ・ラング監督 1937年アメリカ

youonlyliveonce.jpg
”YOU ONLY LIVE ONCE”

監督:フリッツ・ラング
製作:ウォルター・ウェンジャー
原作・脚本:ジーン・タウン/グレアム・ベイカー
撮影:レオン・シャムロイ
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:ヘンリー・フォンダ/シルヴィア・シドニー
   ウィリアム・ガーガン/バートン・マクレーン
   ジーン・ディクソン/ジェローム・コーワン
   マーガレット・ハミルトン/ウォード・ボンド
   グイン・ウィリアムズ/ジャック・カーソン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレ注意!ラストまで語ってますので、知りたくない人は読まないでください。

フリッツ・ラングがナチスの台頭を嫌って渡米したのは1934年。『激怒』に続くハリウッド二本目の作品がこの『暗黒外の弾痕』。戦前戦後の暗い世相をヨーロッパ出身の監督がハリウッドに持ち込んだことがフィルム・ノワールというジャンルが生まれたきっかけと言われていますが、フリッツ・ラングはまさにその中心人物。それなのに、これまであんまり面白い作品観てなかったんですよ!

これまでこのブログでは、『復讐は俺に任せろ』('53)『仕組まれた罠』('54)という二本のラング作品について感想をアップしましたが、どちらも★3つ。可もなく不可もなし。『仕組まれた罠』では、グロリア・グレアムという今まで知らなかった魅力的な女優を発見し、ブロデリック・クロフォードの駄目になっていく人間の演技も良かったのですが、映画全体としてはこじんまりとした感じ。『復讐は俺に任せろ』も同様でした。なんかこう、キューってくる感動とか、おお!という驚きとか、感情の振幅を広げてくれないんですよね。整ってるけど。さて、この作品はどうでしょう。

強盗常習犯で服役中のエディ(暗いぞ!ヘンリー・フォンダ)は、晴れて釈放となり弁護士事務所で働く婚約者ジョー(シルヴィア・シドニー)と結婚。意気揚々と新婚旅行に向かうが、前科者であるという理由で旅先の宿から追い出されてしまう。その後、彼は運送屋でトラック運転手として働き始めるが、二人で新居を物色していて仕事が遅れ、一方的に解雇される。何度も謝罪するが許されず、逆上した彼は上司を殴り倒して出ていく。そうと知らないジョーは、まだ前金しか払っていない新居に移り住み、いそいそと新婚生活の準備を始める。週末までに残金を払わなければいけないエディは、またしても悪の道に誘惑されはじめる。やがて起きた凶悪な銀行強盗、ジョーのもとに逃れてきたエディは、犯人は自分ではないと主張する。ジョーは、無実ならば自首するべきだと説得し、彼は裁判を受けるのだが、ここでも前科のあることが災いし死刑を宣告されてしまう。。。

物語後半は刑務所を脱走したエディとジョーの逃避行になるのですが、二人の姿に目頭が熱くなるんだなぁ。前科者エディに対する世間の目はどこまでも冷たくて、疑心暗鬼から助かるチャンスもフイにし、逃避行を続けるうちにやってもいない罪まで彼らのせいにされ、もうどこにもエディの行くべき道はない。彼らに押し入られたガソリンスタンドの店員が盗られてもいない現金を被害申告するときのうすら笑い。エディに対する世間の冷たさが凝縮されています。ワン・ショットを実にたくみに語らせます。ヘンリー・フォンダの異様に暗い表情(目線が特に暗い)、登場シーンからいきなり暗いオーラを放っていましたが、後半になるとその異常なくらいの暗さがまさにぴったりのストーリー展開になってきます。

そして、ジョー。シルヴィア・シドニー。一度は彼女のせいでどん底に落ちてしまったエディを二度と見捨てないと誓った彼女は、とことん彼と一緒にいようとします。身重なのに、車の中には雨風が吹き込む・・・泣。どことも知れない朽ち果てた炭焼き小屋で子どもを生み、ボロ毛布に包まって・・・。エディが彼女にできることは野に咲く花を摘んで小さな花束を作ることくらいしかない。それでも、ジョーはエディに微笑みかけます。生まれたばかりの赤ん坊にも微笑みかけます。なんてやさしくて、幸せそうで、いい笑顔なんだ・・・大泣。幸せだった頃の屈託のない笑顔も良いが、後半の彼女の笑顔は女神の笑顔ですな。もう人のものではない。

シルヴィア・シドニーはヒッチコックの『サボタージュ』(前年の'36)で観かけて以来。その時は「え?子ども?」って感じでユニークな(変な)女優という印象だったのですが、この作品では、無邪気で世間知らずなお嬢さんから一人の男をとことん愛し抜く女神のような女への変貌を見事に演じています。ファンになってしまいましたあ。こっち向いて笑ってほしい!(ちなみに、前半の舌足らずなしゃべり方もマニアックに良いが・・。)

映画の後半になると、もう二人の運命は容易に想像することが出来ます。この流れは『俺たちに明日はない』につながっていくんだろうなぁ・・・と思っていたら、このストーリー自体がボニー&クライドの事件を下敷きにしてるんですか?ほんとに?うーん、さもありなん。うまく逃げおおせたかに見えた二人は、ジョーの何気ない行動(ああ、またしても運命が・・・)が元で一気に破滅へと向かいます。この時のタバコ屋の看板の見せ方が面白い。バリケードを突破して、二人とも警官にマシンガンで撃たれているのに、お互い相手を心配させまいと撃たれたことを言わない・・・・。ここに来て、ついに涙あふれましたよ。このラストシーンは、『俺たちに明日はない』のショッキングなラストよりもジーンと内側から響いてきますね。神父の声もまた良い。

フィルム・ノワールは、1941年の『マルタの鷹』が始まりと言われているので、37年のこの作品は含めないのかもしれませんが、まあ、そんな細かい話はどうでも良い。刑務所の霧とサーチライトのイメージやヘンリー・フォンダの暗さとどんどん追い詰められていく閉塞感、ラストシーンのむなしさなどは間違いなくノワールの香り。その後の作品に大きく影響していることはまちがいないでしょう。しかも、これまで観てきた中でも1・2を争う素晴らしさでありました。

前回、『消された証人』がコケたおかげで思わず良い作品にめぐり合って良かった。ありがとうジンジャー・ロジャース!大満足しましたので1940・50年代フィルム・ノワール特集はいったん終了にしたいと思います。まだまだ未見の傑作はたくさんあるのですが(特に40年代のラング作品を一つもラインナップしていないのはあまりにも間抜け・・・)、それはまた今後のお楽しみということにいたしましょう。★★★★★

で、次回からですが・・・・サイレント映画・・?

にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

暗黒街の弾痕(トールケース仕様)暗黒街の弾痕(トールケース仕様)
アルフレッド・ニューマン レオン・シャムロイ ヘンリー・フォンダ

アイ・ヴィー・シー 2003-04-25
売り上げランキング : 99397

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


アクセス解析
posted by FROST at 16:50| 埼玉 ☀| Comment(6) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 FROSTさん・・・今日は。
うーーーん。最後に良い作品に出逢えてよかったですね・・・。五つ星ですか。
 フリッツ・ラングの作品の中でも傑作の呼び声高いこの「暗黒外の弾痕」(37) You Only Rive Once を邦題も上手に付けるものですね。
 まず、こうした作品を居ながらにして鑑賞できる世の中に感謝したい・・・。
また、こうした機会をを与えてくれたFROSTさんにも感謝です。(笑)
さて、この作品はFROSTさんもご指摘の通り、後のフイルム・ノワール作品に多大な影響を与えましたね・・・。この作品の成功の一つにキャステングをあげることが出来る。
ヘンリー・フオンダ・・・農民から大統領まで演ってのける・・・演技力の確かさ。
 彼から受けるイメージと云えば・・・正義の人・誠実・頼れる男と云った言葉が似合う・・・「荒野の決闘」(46)を思い出している・・・。
まさにこの作品の主人公・・・務所帰りの差別を受け・・・犯人に仕立てられ・・・今度、殺人が現実となり・・・逃亡・・・と云う暗い惨めな役柄を演じきっている。
相手役のシルヴイア・シドニー嬢・・・何か弱弱しく・・・手を差し伸べたくなるような雰囲気・・・この作品では健気にフオンダの支えとなりつつ・・・身を共にする・・・逃亡先でのの痛ましい出産・・・可愛そう!・・・ここまでやるかと云う感じ・・・そして二人の残酷なラストを迎える・・・。フリッツ・ラングの凄さを感じる作品である。でも、この監督の作品には
不思議に認め難い凡作もあるんですよね・・・。(笑)
Posted by グリーンベイ at 2007年03月24日 11:29
う〜む…ヘンリー・フォンダは役者のなかの役者ですねぇ。どんな役を演じても説得力がある。悪役(『ウェスタン』ですね)も出来る。
この映画では、犯罪者という設定ですね。その過去が邪魔をして仕事がもらえない。頑張っても頑張っても“前科”が邪魔をする。なんて不憫なの…。
そして、シルヴィア・シドニーは容貌で得をしていますね。もう顔も体からも“不幸”な香りがするんですよね。徹底的に夫に尽くす女性…。あの涙目が良いんですよ。
彼女は、「なにがサミイを走らせるのか」を書いたバット・シュールバーグのお父様、ハリウッドの大立物B・P・シュールバーグの愛人でもあったんですね。私生活までは“良妻賢母”とはいかなかったようですな。
Posted by オショーネシー at 2007年03月24日 21:10
FROSTさん、おばんでございます。

>シルヴィア・シドニー
ほんとに天使のような役柄でしたね。わたしがエディなら、彼女の幸せのために二人の関係を断ち切って、逃亡者に徹しますよ。決して不幸にしてはならない女性です。でも、お互いが心底愛し合って、死ぬまで一緒だったことは、ある意味幸福な二人だったのかも知れません。
うらやましいですね。
>1940・50年代フィルム・ノワール特集はいったん終了・・・
フィルム・ノワールの記事は、意識的なシリーズだったのですね。わたしはてっきり、FROSTさんがフィルム・ノワールにしか、関心のない方だと思っていました(笑)。
少し残念です。過去記事にもコメントさせていただくかもしれませんが、またよろしくお願いします。
では、では。
Posted by トム(Tom5k) at 2007年03月26日 00:57
グリーンベイさん、こんばんは。
本当ですね、昔映画といえば映画館に出かけるか、テレビでたまたまやってる映画を見るしかなかったのが嘘のようです。
本作はエディとジョー、二人のドラマにつきますねぇ。演じたヘンリー・フォンダとシルヴィア・シドニーも二人とも素晴らしかったのですが、シルヴィア・シドニーが思いのほかスタイルが良いのにもちょっと驚きました・笑。前年の『サボタージュ』を見たときは本当に子供だと思ってましたから。

オショさん、こんばんは。
ヘンリー・フォンダは『黄昏』のような爺さん役が記憶に残ってますが、この作品でも表情の基本的なところが同じだなぁと妙に感心。シルヴィア・シドニーは美人というよりもユニークな部類に入ると思いますが、今回は役どころにぴったりはまりましたね。確かにあのなみだ目が。。。いやー、良かった^^。もうこれだけ見せてくれれば、プライベートが愛人でもなんでも結構でございます。

トムさん、こんばんは。
エディが関係を断って逃亡者に徹していたら・・・映画になりませんよ〜・笑。トムさんのおっしゃる”死ぬまで一緒”。これですねぇ。あまりにも壮絶ではありますけれど。
うちのブログではあんまり明確に特集化してないんですけど、まだまだビギナーなものですから、漫然といろいろ見るより何かテーマを決めて見ていこうとは思っています。で、ここしばらくフィルム・ノワールに集中していたわけです。
トムさんのように、アラン・ドロンという1人の俳優についてあれだけの記事を書ききる力量は到底ありませんが、一つ一つテーマを置いていくといろいろなことがわかってきて面白い盛りですね。基本的にはサスペンス映画が好きですから、今後もこういう作品はたくさん感想アップすることになると思いますので、よろしくお願いしますね^^
Posted by FROST at 2007年03月29日 00:18
ハリウッドへ行くと鋳型にはめられて優秀な作品を作れなくなる欧州名監督が多く、フリッツ・ラングもそうではないとは言い切れませんが、本作は秀作でしたね。「007は二度死ぬ」You Only Live Twiceの原題は本作原題のパロディーでした。

スパイ・サスペンス「死刑執行人もまた死す」「恐怖省」もヒッチコック・タッチでかなり面白かった記憶があります。
Posted by オカピー at 2007年04月02日 14:59
オカピーさん、こんばんは。フリッツ・ラング作品は一挙にDVDで出たみたいですね。『恐怖省』などはぜひ見たいと思っています。50年代の作品はすっかり力がなくなってしまっているようなので30年〜40年代のに期待ですね。
そういえば、007 ”You Only Live Twice"、ありましたねぇ。この作品のパロディでしたか。
Posted by FROST at 2007年04月03日 00:25
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

『ブーメランのように』@〜貧困・犯罪・差別からの逃亡と挫折〜
Excerpt:  『ブーメランのように』は、アラン・ドロン主演の作品としても、ジョゼ・ジョヴァンニ監督の作品としても地味で話題の少なかった作品であるかもしれません。  しかしこの作品は、数え切れないほど過去の多くの..
Weblog: 時代の情景
Tracked: 2007-03-26 00:44
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。