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2007年03月19日

#155『白熱』ラオール・ウォルシュ監督 1949年アメリカ

White Heat.jpg
”WHITE HEAT”

監督:ラオール・ウォルシュ
製作:ルイス・F・エデルマン
原案:ヴァージニア・ケロッグ
脚本:アイヴァン・ゴッフ/ベン・ロバーツ
撮影:シド・ヒコックス
作曲:マックス・スタイナー
出演:ジェームズ・キャグニー/ヴァージニア・メイヨ
   スティーヴ・コクラン/エドモンド・オブライエン
   マーガレット・ワイチャーリイ/フレッド・クラーク

詳しい作品情報はこちら
    ⇒白熱(1949)(1949) - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)

ネタバレです。

ジェームズ・キャグニー扮するギャングのボス、コーディ・ジャレットの常軌を逸したキャラクターは、もう、なんと表現すればいいんでしょう・・・。特典映像を見ると、キャグニー自身、このキャラクターにはかなりのこだわりと思い入れがあったらしく、「完璧な性格異常者を演じる」と言っていたらしい。

この映画ビリっと映像が緊張してるでしょ。いや、本当は映像を見ている自分が緊張しているんですけどね。その緊張感がどこから来るかというと、この”性格異常者”ジャレットの類まれなキャラに尽きますね。冒頭の列車強盗からラストシーンの化学工場までアブノーマルな魅力十分。コーディ・ジャレットが映画の中心で、彼を取り巻くものは全て緊張しています。

とにかく邪魔者は全て殺す。ジャレットの服役中に裏切ろうとしたビッグ・エドをためらいなく射殺し、階段から転がり落ちた死体を見下ろして自慢げな満足顔。ビッグ・エドの命令でジャレットを殺そうとした男を、わざわざ一緒に脱獄させておいて車のトランクに詰め込んで、出かけるついでに思い出したように射殺。鳥の肢を食いながら眉一つ動かしません。列車強盗で自分の名前を知られた機関士も躊躇なく射殺。列車強盗で機関車の蒸気を浴びて包帯グルグルになり、医者の助けを請う仲間にも射殺命令。ラストの化学工場で警官隊に追い詰められても最後の一人になるまで暴れまくり、撃ちまくる。何人警官が死んだことか。おまけに最期のなんと派手なこと。

妻バーナ(ヴァージニア・メイヨ)のことも信頼していません。ちなみに、バーナは下品で姑息で、エドと結託してジャレットを裏切るも、彼が戻ったと知るやさっさとエドを見捨ててジャレットに尻尾を振るという現金さ。別の意味でジャレットとの関係は緊張がみなぎっています。

彼が信頼していたのは二人だけで、一人は母親(マーガレット・ワイチャーリイ)。信じる母との関係は多少まともかと思いきや、今度は典型的なマザコンときました。“子どものころに母親の気を引こうとして頭痛のまねをしていたら、本当に頭痛の発作を起こすようになった”らしく(ホントですか??)、突然ぶっ倒れて七転八倒する姿もますますアブナイ。血も涙もなく敵を撃ち殺す冷血漢のくせに母親のひざに乗って抱きしめられて安心する息子も息子ならば、そんな悪鬼のような息子に「いいかい、世界一になるんだよ」と言い聞かせる母も母。ゆがんでる。

そしてもう一人は、刑務所内で知り合ったパード、実は警察の潜入捜査官ファロン(エドモンド・オブライエン)。腹心のビッグ・エドすら信用しなかったジャレットですが、命を救われたパードには次第に心を許し、まさに全幅の信頼をおきますね。それはもう仲の良い兄弟のようで髪の毛一筋ほどの疑いも抱きません。この落差がまたまた狂気を匂いたたせるんですよね。

結局、母親は死に、ファロンの正体も知ることになりますが、この信頼していた二人との決別シーンは秀逸。刑務所の昼食時に母の死を知ったジャレットは気が狂ったように泣き喚き、暴れます。撮影時には詳しい演技内容を知らなかった囚人役のエキストラ数十名が思わずすさまじさに凍りついたそうです。そして、ファロンの正体を知ったとき、ジャレットは泣き笑いしながら裏切られた悔しさをぶつけます。これがまた・・・キャグニー、取り付かれたような名演技でした。

この映画、フィルム・ノワール作品にぜひ香っていて欲しい狂った匂いをキャグニーが思う存分に発散させていて迫力満点。ウォルシュもよく演出しており、ドラマも面白いし映像も迫力ありますよ。でも、今回はキャグニー一点買いでしょう。40年代フィルム・ノワールの最後を飾るにふさわしい、“狂気の名作”でありました。満足です。

★★★★☆
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posted by FROST at 18:57| 埼玉 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おお、きましたね『白熱』。キャグニーの映画の中では一番好きな作品であります。
とにかくキャグニーが“狂い咲き”なんですよね。マザコンだし(母親のほうも息子が一番って感じで、中年になった息子を甘やかしてますが…)思考回路がぶっ飛んでるんですよね。頭のネジが十何本も切れてる感じが良いですね。
そして、妻役のバージニア・メイヨもこういうはすっぱな妻が似合う。ダニー・ケイの映画でおとなしくしおらしい女性なんて全く似合ってませんでした。こっちのほうが俄然輝いてます。
母親が死んだ…と教えられて食堂のテーブルを這いつくばるシーンも凄かったな。
最も良いのは、最後ですね。「やった!!ママ、世界の中心だぁ〜〜!!!」と叫ぶキャグニーと大爆発。あ〜、お腹いっぱいの映画ですね。
Posted by オショーネシー at 2007年03月20日 02:22
きましたよ、オショさん。これ、すごい映画ですね。一気にキャグニーファンになりました。ずいぶん昔に『汚れた顔の天使』を観たことがあったんですけど、あんまり印象残ってなかったんでしょね。これほど、悪役(ワイチャーリーとメイヨも含めて)が魅力的な映画も少ないんじゃないかと思いました。ヒロイン(メイヨ)がいきなり大いびきで登場したのもぶったまげました・笑。
Posted by FROST at 2007年03月20日 17:33
 FROSTさん・・・今晩は。
うーーーん。「白熱」(49)ではジェームス・ギャグニーの凄さの観客に与えた衝撃の程は計りしれない・・・。共演のヴァージニア・メイヨ嬢も、ラオール・ウオルシュ監督が同年に撮った西部劇「死の谷」でも野生味溢れる性悪女を演じていたが・・・この「白熱」でも味な演技が光っていた・・・。監督は彼女の潜在的なキャラをひきだしたんですね・・・流石です。
FROSTさん・・・この「死の谷」はフランス映画を思わせるストーリー展開で・・・西部劇マニアの中では、必ずフアンの西部劇ベスト・10に入る傑作です。ご覧になっていますか?・・・未だでしたら是非!!。
ジェームス・ギャグニーと云えば・・・戦後間もなく再公開された西部劇の傑作「オクラホマ・キッド」(39)が印象に残っている。
Posted by グリーンベイ at 2007年03月21日 00:25
グリーンベイさん、こんばんは。『死の谷』も観てませんねぇ。『ハイ・シエラ』の西部劇版セルフリメイク・・。かなり思いを込めて作った作品のようですね。TSUTAYAで予約しました。在庫数が少ないようで少し時間がかかるかもしれませんが、必ず。
そういえば、前に一回西部劇特集しようとしたことがあったんですが、平行していたヒッチコックの方に夢中になって中途で終わってしまってます。フィルム・ノワールにも一段落したので、西部劇の有名どころも抑えておきたいと思います。
Posted by FROST at 2007年03月24日 03:04
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