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2007年03月15日

#154『探偵物語』ウィリアム・ワイラー監督 1951年アメリカ

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”Detective Story”

監督・製作:ウィリアム・ワイラー
原作:シドニー・キングスレー
脚本:フィリップ・ヨーダン/ロバート・ワイラー
撮影:リー・ガームス
出演:カーク・ダグラス/エリノア・パーカー
    リー・グラント/ウィリアム・ベンディックス
    キャシー・オドネル/バート・フリード
    ジョージ・マクレディ/ジョセフ・ワイズマン
    グラディス・ジョージ/フランク・フェイレン
    ルイス・ヴァン・ルーテン/クレイグ・ヒル
    ホレイス・マクマホン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒探偵物語(1951) - goo 映画
    ⇒IMDb(英語)

ネタバレ!内容を知りたくない人は読まないほうが無難です。

シドニー・キングスレー原作による舞台劇の映画化。舞台劇の映画化といえば、最近観たものでは”カルト〜”の方に感想を載せた『デストラップ・死の罠』などがありましたが、場所が限定されているため、うまく作ると非常に密度の濃い面白い作品になるようです。

今回の『探偵物語』もその一例で、ニューヨーク21分署の刑事部屋を舞台とした刑事と犯罪者たちの一日の出来事。カメラはほとんどそこから出ることはありません。刑事部屋には万引き女や会社の金を横領した青年、強盗コンビなどさまざまな面々が連行されてきて、それを捌く刑事たちも実に個性的。それぞれの犯人と刑事たちにドラマがあって、同時並行するわけですが、カンヌ映画祭女優賞を獲得した万引き女役のリー・グラントや、クレイジーな強盗役ジョセフ・ワイズマン(個人的にはチャーリー&ルイスの強盗コンビがイタク気に入りました)、息子を戦争でなくしたベテラン刑事役ウィリアム・ベンディックスなどの演技が秀逸。しかも、彼らの演技が狭い刑事部屋の中でもつれ合うように進行するので観ていて面白いことこの上ない。それぞれの犯人たちがわざとらしく絡んだりすることはありませんが、あっちの犯人がこっちのやり取りを眺めていたり、そういうちょっとしたところの工夫が刑事部屋のリアリティを高めています。

その中に主人公の刑事ジョージ・マクラウド(カーク・ダグラス)がいるわけですが、彼は妻を愛し子どもを望む良き夫でありながら、一切の罪を頑なに許さない鬼刑事。マクラウドが現在追っているのは、もぐりの堕胎医カール・シュナイダー。彼は自分の農場で密かに堕胎手術を行っており、手術の失敗が原因で患者を死なせてしまっています。犯罪者に対する憎悪をみなぎらせて執拗に追求するマクラウドですが、シュナイダーはなかなか尻尾を出さず、ついマクラウドはシュナイダーに暴行を加え病院送りにしてしまいます。

マクラウドが罪を許せないのは、自分の父が犯罪者でありそれが原因でやさしかった母親が死んでしまったから。「犯罪者は臭いがする」と言います。同時に扱っている横領犯の青年に対しても、同僚刑事(ベンディックス)が良かれと思って口をきき、被害者が告訴を取り下げることに同意し、駆けつけた幼馴染(キャシー・オドネル)が泣いてすがってもマクラウドは許しません。

そういう、マクラウドの性格をうまく見せながら、物語の後半でその矛先が愛する妻(エリノア・パーカー)に向かっていく様は観ていて思わず嘆息してしまいます。この映画は、犯罪者と刑事でごったがえす刑事部屋の一日を描きながら、実はジョージ・マクラウドという一人の男の心の葛藤とその決着をテーマにしてるんですね。

彼の妻には重大な過去の過ちがあり、それが現在の事件に関係しているわけですが、妻を深く愛しながらもやはり過ち(犯罪ではないものの)を頑なに許せないマクラウドが哀れです。しかも、彼は父をめぐるトラウマが原因で、その過酷さが理不尽だと自覚していながらどうしてもそこから脱することが出来ない、心の地獄を味わっているわけです。自分が最も憎み消して許さないと思ってきた父親と同じ、人としての寛容さのかけらもない人間だと、こともあろうに一番愛していた妻から指摘されて心の地獄にどっぶりと頭まで浸かってしまった彼がその後とった行動は・・・。覚悟の上だったんでしょうね。★★★★☆
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探偵物語探偵物語
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posted by FROST at 19:54| 埼玉 ☔| Comment(4) | TrackBack(2) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「探偵物語」と堂々とタイトルを出しておきながら、探偵は現れないという不思議な映画タイトルの作品ですね。
どう考えても「刑事物語」ですよね。
カーク・ダグラスの奥様役のエリノア・パーカーが不憫でねぇ…。
自分の知らなかった過去にショックを受けながらも妻を許して欲しかったなぁ…。
エリノア・パーカーはこの作品では、不憫な人妻ですが、シナトラの「黄金の腕」では、悪女なんですよね。当時の女性スターで、あれほど長い髪の毛の人がいなかったので、印象に残っています。
Posted by オショーネシー at 2007年03月15日 23:51
 FROSTさん・・・今晩は。
うーーーん。これは巨匠ウイリアム・ワイラー監督の傑作ですから・・・偉い先生諸氏が色々な角度から高い評価を与え解説している・・・。それらについてド素人が指摘しようと思うなら枚挙の暇がない・・・。既にFROSTさんが良い解説をなさっているので・・・ここでは触れないでおきます。(笑)
 映画少年がこの作品から受ける印象としては・・・理由があるにせよ心に傷を持ち家庭も顧みない仕事一途な人間の悲劇を見る思いです・・・自業自得と云うかこの結末は仕方が無い。美しい恋人や妻の忌まわしい過去を許せない男の作品は他にも少なくない。他方鬼刑事でも寛容と優しい心根を持った話は幾らでも見てきている・・・。
エリナ・パーカー嬢はこの作品が初めてでしたが、くせのない正統派美人ですね。このとき29歳でした。その後、西部劇「ブラボー砦の脱出」(53)でも美しさは失っていなかったが・・・後の「サウンド・オブ・ミュージック」(61)では、ややクズレかけていた・・・。(笑)
 演技に印象を残したリー・グラント嬢のカンヌ映画祭女優演技賞は嬉しい・・・「夜の大捜査線」(67)でも味な脇役を演じていた・・・。
 オショーネシーさんは・・・エリナ・パカー嬢を不憫でならないと強調していましたが・・・映画少年もそこの所よーく分かります・・・。(笑)
Posted by グリーンベイ at 2007年03月16日 01:47
TB致しました。
演劇的に見えながら映画の特徴を遺憾なく発揮した傑作ですね。
原作の文学的なテーマも奥が深いですし、ワイラーのテクニック! 映画を勉強するにうってつけの好教材です。

題名は、映画を見る前に題名を付けてしまった映画配給会社担当者のちょんぼです。detectiveに探偵と同時に刑事の意味があることを知らなかったんですね。
Posted by オカピー at 2007年03月18日 14:15
>オショさん、こんばんは。エリノア・パーカーは、『サウンド・オブ・ミュージック』の伯爵(?)夫人のイメージしかない(ややクズレかけている・笑)ので、”意外”に魅力的なのに驚きましたね、タクシーの中のキスの途中でちょっと外を気にして視線をはずす仕草がよかったなぁ。
カーク・ダグラスの融通の効かなさがいかにもでまた良かったです。

>グリーンベイさん、こんばんは。
名作ですねぇ。エリノア・パーカーについてはおっしゃる通りだと思います。リー・グラントが演じた万引き女って、登場人物で唯一くらいカーク・ダグラスに絡んでませんでしたね。その彼女がカンヌ受賞と言うのは面白いなと。『夜の大捜査線』もぜ感想アップしたいと思います。

>オカピーさん、こんばんは。演劇を基にした作品て、映画の技術で舞台の表現力をどれだけ超えられるかが勝負どころなんですね。この作品での工夫された人物配置とドラマの運び方が素晴らしいなと思いました。オカピーさん、10点満点なんですね。私の方は、感想ですからオカピーサンのように客観的に採点しているわけではありませんが、これは5つにするか4つにするか本当に迷ったんですよ。最近、”カーッと燃えるような思い”をさせてくれた映画だけ★5つにしよう(ものすごく主観的かつアバウトですが)と思い、ぎりぎりで4つに・・・。でも、5つでも良かったなぁ(優柔不断だ・・)
Posted by FROST at 2007年03月19日 00:12
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映画評「探偵物語」
Excerpt: ☆☆☆☆☆(10点/10点満点中) 1951年アメリカ映画 監督ウィリアム・ワイラー ネタバレあり
Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
Tracked: 2007-03-18 14:07

探偵物語
Excerpt: 1951年 アメリカ 監督 ウィリアム・ワイラー 出演 カーク・ダグラス   
Weblog: ブリジット・オショーネシーの日記 U
Tracked: 2007-04-24 02:29
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