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2007年03月05日

#151『黒い罠』オーソン・ウェルズ監督 1958年アメリカ

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”TOUCH OF EVIL”

監督:オーソン・ウェルズ
製作:アルバート・ザグスミス
原作:ホイット・マスターソン
脚本:オーソン・ウェルズ
撮影:ラッセル・メティ
音楽:ヘンリー・マンシーニ/ジョセフ・ガーシェンソン
出演:オーソン・ウェルズ/チャールトン・ヘストン/ジャネット・リー
    ジョセフ・カレイア/エイキム・タミロフ/マレーネ・ディートリッヒ
    デニス・ウィーヴァー/ヴァレンティン・デ・ヴァルガス/モート・ミルズ
    ヴィクター・ミリアン/ジョアンナ・ムーア/ザ・ザ・ガボール
    ジョセフ・コットン

オーソン・ウェルズ1958年の監督作品にして、フィルム・ノワール最後を飾ると言われる『黒い罠』。アメリカとメキシコの国境で起きた爆殺事件をめぐり、メキシコの麻薬調査官バーガス(チャールトン・ヘストン)とアメリカの刑事ハンク・クインラン(オーソン・ウェルズ)の暗闘を描くサスペンス。

前々回、『上海から来た女』でウェルズのノワールと一線を画す映像について云々とコメントしましたが、ついにここにいたってノワールだとかなんだとか言うのもはばかられるような作品になってきましたね。もはや、”ウェルズ作品”というひとつのジャンルで語るべきなんじゃないかと言うくらい独特の世界観が漂います。

開巻するといきなり時限爆弾のクローズアップ。爆殺犯はタイマーをセットすると標的の笑い声が聞こえてくる。男は車に爆弾を仕掛けます。車に駆け寄る男の影がワンテンポ遅れて壁を伝う・・・ウェルズ的だぁ。そこから車が爆発するまでの約5分ほどは圧巻の長回し。

そうと知らず車に乗り込んだ町の顔役リネカー。愛人と楽しそうに車を流します。角を曲がり、信号で交通警官の止まれの合図。車のすぐ近くを行きかう人々(爆弾が・・)。そこを主人公バーガスと妻のスージー(ジャネット・リー)が横切ります。ゆっくり流す車と早足の二人が近づいたり遠のいたり・・・。ああ、爆発するかも、また近づいてきた!今度はダメかも!。。。はじめっからえらいスリリングですわ。しかも、場面の緊張感とは全くそぐわない明るいラテン音楽。参りましたな。

ウェルズ流の上下からの人物ショットやクローズアップもふんだんですが、登場するオーソン・ウェルズ自身が”これが?”と言うくらいの変貌ぶり(これ、地?メイク?)。肥満体型に肉に埋もれた顔、生気のない眼。これまで観てきたウェルズとは全く別人かと言うくらいの奇怪さ。この存在感には誰もかないませんよ。チャールトン・へストンがどれだけ脂ぎった男の魅力を発散しようと、マレーネ・ディートリッヒがまたまた年齢不詳の妖しい魅力を振りまこうと、無理。ムリムリ。独特のリズム感で繰り出されるウェルズ流映像美の中をこの奇怪なウェルズ自身が徘徊するわけで・・・。これね、『上海から来た女』の時も痛感したんですが、いくら書いても素晴らしさが伝わらないんですよ。ああ、もどかしい。とにかく一回観ましょう。絶対に損はしませんて。

ちなみに、カメラはラッセル・メティ。ウェルズとは『ストレンジャー』でも一緒でした。『ストレンジャー』はシナリオがちょっとダメなんで今ひとつですが、時計塔のシーンをはじめ映像面では影を生かして素晴らしく、さすがと思わせていました。

この作品、1958年に公開されるとゴダールやトリュフォーなどにも絶賛されたそうで、翌年発表される彼らの処女作に大きく影響を与えたらしい。また、ヒッチコックの『サイコ』('60)に登場するモーテルの主人ノーマン・ベイツは、この作品でデニス・ウィーヴァーが演じたミラドール・ホテルの夜間責任者がモデルだという話があるそうです。

ちなみに、ストーリーは相変わらず良くわかりませんが、例のごとくウェルズの映画はストーリーと関係のないところで強烈な印象を残してくれるのでありました。★★★★☆にほんブログ村 映画ブログへよろしくお願いします!

黒い罠
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posted by FROST at 00:49| 埼玉 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最初の5分間のワンショットの長回しは
素晴らしいものがありますね。
しかし、オーソン・ウェルズが…。
もう脂肪の塊なんですよね。あれは地なんですね。
もともと太りやすい体質だったようで、
彼自身も言っているように「体重との戦い」
だったようです。
でも、やっぱり意味不明のシーンが多いですね。
ジャネット・リーが何故不良の若者達に
拉致されるのか全く謎だし…。
ああ、やっぱり落ちていくだけのウェルズ映画…。
いいシーンも所々あるんですけどね。
Posted by オショーネシー at 2007年03月05日 21:42
 FROSTさん・・・今晩は。
うーーーん。ウエルズのテクニックと想像力で大胆不敵と云うか・・・フイルム・ノワールの金字塔との評価の高い作品ですね。
元々、チャールトン・ヘストンがユニバーサルに頼み込んで・・・オーソン・ウエルズに監督とキャスチングを任せて撮った作品でもありますね。ウエルズは大衆小説「黒い罠」を下敷にして脚本を書き、この偉大な魅力あるノワール作品に仕立てた才能はやはり只者ではない・・・。オショーネシーさんもご指摘のように冒頭の数分間・・・クレジッドの被る映像(カメラワーク)は正しく映画を知り尽くした者の創る芸術と云っても良い・・・。
又、興味を引くのは高潔?なヘストンのメキシコの麻薬捜査官、ウエルズ演じるいい加減なアメリカの刑事との対比が良く描けている・・・。又、誘惑したジャネット・リー嬢にヤクを射つレスビアンのマーセデス・マッケンブリッジ嬢なんかも・・・最も惹きつける人物像と云えば・・・ウエルズの取り巻きの一人ジョセフ・カレイアだが・・・こんな役にもさり気なく大いなる気配りを注ぐ監督の奇才ぶりが窺え・・・凄いの一語である。音楽を担当したヘンリー・マンシーニのリズムが又、この怪しげな作品にマッチしたものだった事も特筆に価する・・・。オーソン・ウエルズは数々の作品で稀有なキャラを発揮したが・・・多くの作品のナレーションも見逃してはならない・・・西部劇の傑作「白昼の決闘」(46)も彼がナレーターを務めている・・・ご存知でしたか?・・・。あの体躯から発する声が又良いのですね・・・。
Posted by グリーンベイ at 2007年03月06日 01:27
>オショさん、こんばんは。ちょっとこの頃お返事に時間がかかってしまってすみません。
やっぱり、あれは地でしたか。いつ頃からあんなになっちゃったんでしょうね。しかし、あの風貌がこの映画の雰囲気に決定的な影響を与えていることも確かです。ウェルズの主要な作品を観てきて、『ストレンジャー』は好きになれませんが、『上海から来た女』と『黒い罠』は、意味不明加減はどんどんエスカレートしていくものの、映画としてはかなり好みなんですよね、実は。映像の魅力については記事に記した通りですが、セリフや音楽などの”音”にも独特の感性を発揮しているように思えます(『黒い罠』の音楽については、グリーンベイさんが指摘されている通りだと思います)。ゲテモノ好きの部類かもしれませんが、ちょっとこの感覚が忘れられませんのです。

>グリーンベイさん、こんばんは。
『白昼の決闘』のナレーション?・・見直してみました。おお、これですかぁ。冒頭のナレーション実に渋いですよね。これがウェルズなんですね。なるほど。ところで、『白昼の決闘』というとどうしてもラストシーンを観たくなって、ラストも見直しましたが、いいですなぁ。セルズニックのエゴで出来た作品かもれませんが、間違いなく傑作ですよね。ラストのジェニファー・ジョーンズのあの表情の変化がジーンとくるんですよ。はいずってもはいずってもなかなか愛するルートの元にたどり着けない、」うーーん、やっぱり久しぶりに見直しても感動。
あれ、本題は『黒い罠』ですね。グリーンベイさんのコメント全部agreeです。冒頭のロングはまさに”映画っ!”と言う感じですよね、映像・リズムすべて完璧だと思いました。マーセデス・マッケンブリッジが出てたんですか?『オール・ザ・キングスメン』の時とずいぶん様子が違うような・・。ちょっと驚きました。
Posted by FROST at 2007年03月08日 01:15
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