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2006年12月05日

仕組まれた罠 1954年/アメリカ【DVD#138】

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 ”HUMAN DESIRE”

 監督:フリッツ・ラング
 製作:ルイス・J・ラックミル
 原作:エミール・ゾラ
 脚本:アルフレッド・ヘイズ
 撮影:バーネット・ガフィ
 音楽:ダニエル・アンフィシアトロフ
 出演:グレン・フォード
    グロリア・グレアム
    ブロデリック・クロフォード
    エドガー・ブキャナン



詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

ドイツの名監督フリッツ・ラングがハリウッドで製作したサスペンス映画で、日本未公開作品。フリッツ・ラング監督の作品は今回が初めてです。

主人公のジェフ・ウォーレン(グレン・フォード)は、朝鮮戦争から帰還し鉄道機関士に復職します。映画の冒頭にジェフが電気機関車を走らせますが、このシーンがなんともいえず良いですねえ。運転席から見える景色の臨場感と、ジェフのプロフェッショナルな風情や、ジェフと同僚が手振りだけでタバコの火のやり取りをする様がリアル。また音楽がシーンにとても良く合っています。冒頭からちょっと目を見張りました。

ストーリーは、”仕組まれた罠”というより、原題のHuman Desire(人間の欲望)の方がピンとくる内容。

ジェフは、昔の同僚カール(ブロデリック・クロフォード)と再会します。カールは副操車場長に出世し美しい妻ヴィッキー(グロリア・グレアム)と結婚したばかり。ところが再会直後にカールは上司と揉め事を起こしてクビを言い渡されてしまいます。困りきったカールはヴィッキーが昔”世話になった”という大荷主オーウェンズに仲裁してもらうことを思いつき、嫌がる妻を説得してオーウェンズのもとに頼みに行かせるんですねぇ。

さあ、ところがヴィッキーはオーウェンズのもとに向かったまま5時間たっても帰ってきません。ようやく戻ってきたヴィッキーを問い詰めたカールは、妻の様子からオーウェンズとの関係を疑い嫉妬に我を忘れて狂います。町に戻るオーウェンズと同じ汽車に乗り込んだカールは、妻を伴ってオーウェンズの個室に乗り込み、ついに彼を刺し殺してしまうのです。二人は自分たちの客車に戻ろうとしますが、デッキに同乗していたジェフがタバコをふかしているのに気づきます。カールはヴィッキーにジェフを誘い出すように命じますが・・・。

さて、本題はここからです。主役の三人はそれぞれ”人間の欲望”に取り付かれてしまうんですね。カールはすでに嫉妬に狂いオーウェンズを殺害していますが、それでもまだヴィッキーを愛しており、彼女を脅して自分のもとに縛りつけようとします。デッキでヴィッキーと出会ったジェフは怪しいと思いつつも美しい彼女を愛してしまい、次第に友人カールが疎ましくなってきます。そして、ヴィッキーは・・。三人の中で一番”業”に取り付かれているのは、実はヴィッキーなのでしょうか。美しさを武器に男に取り入り自分のために利用しようとします。

次第に酒におぼれていくカールと、夫に見切りをつけて冷たく接するヴィッキーの夫婦が壊れていく様子はかなり悲惨ですねぇ。そして、ヴィッキーは愛するジェフをも、自分のために利用しようとします。カールを殺すようにジェフをそそのかすヴィッキー。ついに意を決して酔ったカールの後をつけるジェフ・・・。

ドロドロですわ。三つ巴ですね。三人の俳優はそれぞれ素晴らしい演技。ブロデリック・クロフォードの鬼気迫る狂い方も、美しく涙をこぼしながら夫殺しをそそのかすグロリア・グレアムも、まっとうな理性を持ちながら愛した女のために殺しを決意するグレン・フォードも良いと思います。

ラストに向けて展開が少し簡単になりすぎたところが玉にキズなんですよね。そのために全体的にもこじんまりした作品になってしまっているのが残念です。それでもラストで三人が乗り合せる汽車のシーンは実に皮肉で印象的。欲望に取り付かれたものは、欲望に殺されるというまっとうなエンディング。

そういえば、ジェフが居候している家に娘(キャサリン・ケース)がいるんですが、ヴィッキーへの恋に盲目になっているジェフに、涙をポロポロ流しながら訴えかけるんですよ。ドロドロの中にすごく清らかなものを見たようで感動いたしました。

★★★☆☆

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アクセス解析
posted by FROST at 00:46| 埼玉 ☀| Comment(7) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あら、この映画未見だわ…と思ったらウチにしっかりとあるし、ちゃんと観ていたのに気がつかないオバカな私でした。観たときは全然記憶に残らなかった映画でした。そして再見。

グロリア・グレアム扮するビッキーなる女性は、なんとなく『深夜の告白』のバーバラ・スタンウィックの延長上にいる女性…と最初は思ったんだけど、彼女は“哀しき悪女”なんですね、結局は。
気の進まないオーウェンズとの再会には夫のどうしてもと言う頼みに断りきれずに行くわけですな。しかし嫉妬深い夫はなかなかビッキーが帰ってこないことに、不倫の影を見る。そしてビッキーを暴力で説き伏せ、オーウェンズ殺害に走る。
そしてグレン・フォード扮するジェフと出会い、彼を利用しようと思い立つ…。
しかし、ビッキーが全ての悪の元凶という答えには今一納得がいかないんですよ。
もちろん夫は彼女にとって体に触れられるのも嫌な男に成り下がった殺人者ですよ。ビッキーとオーウェンズを結びつける手紙を肌身離さず持っていて、ビッキーに恐喝するようにネチネチ迫る男でビッキーが殺意を持っても仕方がないと思われると思うんですよ。
そしてジェフに近づき、彼に殺人を仕掛ける
悪女でもあるわけですが、ジェフはあっさり亭主殺しを諦める利口な男だったのが、彼女の運のつきだった。
最後の列車のシーンで、ビッキーが何もかも夫にぶちまけるところは、本当のことなのかそれと嘘なのか分からない。彼女は何もかも失って自暴自棄になっているので、もしかしてその告白はまた夫に殺意を持つ機会を自ら提供したとも思えないでもない。

ビッキー扮するグロリア・グレアムは良い女優ですね。私は彼女のファンであります。
あのツンと上に上がった鼻、ちょっと眠たげな目、そして男を誘うような少女っぽい唇…。彼女は究極の“フィルム・ノワール・ヒロイン”ですが、徹底した悪女でもなくハードボイルドな女でもないし、あまりにも人が良い悪女なんですね。
お世辞にも上品とは言えない、少し安っぽい悪女の雰囲気が彼女のキャラクター、そして魅力だと思いますが、FROSTさんは彼女をどう感じましたか?
Posted by オショーネシー at 2006年12月05日 23:51
オショさん、こんばんは。せっかく再見したなら、ブログの記事にすれば良いのに〜・笑。もったいない、と思ってしまうほど充実したコメントをありがとうございます。

で、”ヴィッキーをすべての悪の元凶とする答え”・・・・、に読めますね、この記事は・苦笑。
実は私の書きたかったことはそうではなくて、”欲望に取り付かれてしまう人間の姿って悲しいね”と言うことでした。この三人はそれぞれが、どうしようもなく欲望(はじめ”業”って書いてたんですけどね)に取り付かれ、そのうちの二人は破滅してしまう。

カールは嫉妬、ジェフは道ならぬ恋。で、問題のヴィッキーですが、彼女はきっと女として幸せになりたいんですよね。そのために男を利用しようとしてしまう。これは、計算づくの悪どさではないでしょう。でも結果としてそうしてしまうのですね。”一番欲望に取り付かれている”と書いたのは、それを本気で愛している男に対してもしてしまうということからです。彼女は間違いなくジェフを本気で愛していた。でも、そのジェフをそそのかして夫を殺させようとする。このあたりに”業”というか、いかんともしがたい人間の欲望の悲しさを感じてしまいました。なので、彼女が最後にカールに言った言葉は、私は本当のことだと思いました。言い方は自暴自棄で挑発的だったのかもしれませんが。

ということで、誰が一番悪人かということではなく、三人とも悲しい存在でその中でヴィッキーが一番悲しい存在だったねと、そういう意味では、オショさんがおっしゃる”哀しい悪女”とはまさに言いえて妙、そのとおりだと思います。

ちなみに、この作品を3つ星にしているのは、ジェフがカール殺しを思いとどまったいきさつに納得がいかないからです。この映画のテーマが”どうしようもない人間の欲望”ということならば、彼が落ちた盲目の恋はそんなに簡単に冷めるものであってはいけないと思います。簡単にあきらめられるものならそもそも大した欲望ではないし、彼女が夫殺しを言い出したときに冷めてもいいはずで、あのタイミングで我に返る必然性が良くわからない。そのあたりにご都合主義的なものが感じられてトーンダウンしてしまいました。

最後に、グロリア・グレアム。彼女の顔立ちは破滅を予感させますね。これほど破滅が似合いそうな女はそうはいないんじゃないかと思います。そういう意味ではフィルム・ノワールにはまさにうってつけの女優で良いと思います。
ちなみに、今回の作品では彼女にまつわる”ハッとするシーン”はキャッチできませんでした。

読んでいただいた皆様
コメントで完全にネタバレしてしまいました。すみませんm(_ _)m
Posted by FROST at 2006年12月06日 18:43
うわぁ…、また私がネタバレしてしまったのね〜…。ごめんなさい。
ホント、自分のトコロでアップしときゃよかったわ〜。
重ね重ねすみません、FROSTさん。
Posted by オショーネシー at 2006年12月06日 20:17
 Frostさん・・・今晩は。
うーーーん。この作品は・・・未見です。
ですが・・・Frostさんの丁寧な解説とオショーネシーさんの補足によって作品の内容とか雰囲気を凡そ掴むことが出来ました。(笑)
「仕組まれた罠」と云うより原題の「人間の欲望」の方がピッタリくる感じですね・・・又、欲望というより「業」の方が作品に厚みを感じさせるんではないでしょうか。
女の色香で男を誑かす・・・こんな話は何度も見てきました。残念ながら悪女の魅力に男は弱いから・・・。
グローリア・ゲレイアム嬢・・・悪女振りには定評があった女優さんでしたね・・・悪女には何時も怪しい魅力が要求されます
・・・彼女もそんな女優さんでした。一時期、ニコラス・レイ監督の奥さんでもありました。                B級西部劇「渓谷の銃声」(48)に出演しています。西部劇の添え物であってもアベレージ以上の魅力が無ければキャステングされないのがこの世界ですから・・・中々チャーミングな女優さんでしたね・・・。
Posted by グリーンベイ at 2006年12月06日 21:34
>オショさん、そんなの全然平気ですよぉ。そもそも、ブログオーナーの私がダダもれで書いてますし・笑。
まあ、なんだかんだいって雰囲気のある映画ではありましたね。

>グリーンベイさん、こんばんは。
そうなんですよね、ただの欲求じゃなくて、避けがたくそうしてしまうような・・・やっぱり”業”か”性”か、そういう日本語の方がぴったりしそうです。
ニコラス・レイというと『理由なき反抗』の監督さんですよね。奥さんだったんですか。なるほど。泣き顔がね、どうも男心をくすぐるところがありますよね。確かにこんな女性に目の前で泣かれたら、道くらいいくらでも踏み外しそうですねぇ。
Posted by FROST at 2006年12月06日 22:12
 FROSTさん・・今晩は。
うーーーん。<こんな女性に目の前で泣かれたら、道くらいいくらでも踏み外しそうですねえ>・・・FROSTさんも男ですね・・・安心しました。(笑)
昨日・・・偶々、気の許せるグループで酒席をもちました。盛り上がった所で、今、話題の「品格」とか「武士道」の話に及んで・・・「仕組まれた罠」に似たような話となりました。いい加減な男の集まりですから・・・からっきしだらしないことと相成りました。(笑)
そこで「大菩薩峠」の話に及んで・・・<男の武士道と女の操はおなじもの・・・兄・家族の為とはいえ女の操を破っても良いと申されるか・・・と、龍之介はお浜に迫るシーンをめぐって。(お浜は奉納試合の相手の美しい奥方)・・・龍之介は毅然として非情な行動をとりましたね・・・見習いたいもの。(笑)
 ニコラス・レイ監督は・・・仰るとおり「理由なき反抗」(55)ですね。又、スターリング・ヘイドンとジョーン・クロフオード嬢と共演の異色西部劇「大砂塵」(54)がある・・・主題曲ジョニー・ギターはペギー・リー嬢が歌って大ヒットしました・・・。
Posted by グリーンベイ at 2006年12月07日 02:08
グリーンベイさん、こんばんは。
>FROSTさんも男ですね・・・安心しました。(笑)

全然男ですよ。しかも結構誘惑には弱い方です。blogではちょっとかっこつけてます・笑
大菩薩峠ですか、ずいぶん前に半分くらい読みましたが、そんなシーンもありましたか・・(最近記憶が・・)。しかし、グリーンベイさん、良いお付合いされてますねぇ。先日の名画上映会も含めてですが、うらやましい限りです。
Posted by FROST at 2006年12月07日 22:27
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