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2006年11月30日

日曜日には鼠を殺せ 1964年/アメリカ【DVD#137】

BEHOLD A PALE HORSE.jpg
”BEHOLD A PALE HORSE”

監督:フレッド・ジンネマン
製作:フレッド・ジンネマン
原作:エメリック・プレスバーガー
脚本:J・P・ミラー
撮影:ジャン・バダル
音楽:モーリス・ジャール
出演:グレゴリー・ペック
   アンソニー・クイン/オマー・シャリフ
   パオロ・ストッパ/レイモン・ペルグラン
   ミルドレッド・ダンノック/ペレット・プラディエ
   クリスチャン・マルカン/ミシェル・ロンズデール
   ダニエラ・ロッカ/ロザリー・クラッチェリー
   ロランス・バディ/マーティン・ベンソン


詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


少しネタバレ

『真昼の決闘』がとても気に入ったフレッド・ジンネマン監督の作品。『真昼〜』の何が良かったかと言えば、それはもうゲイリー・クーパーが誰の助けも得られず徐々に一人ぼっちに追いつめられていく姿。時間の経過をリアルに織り交ぜながら、実に見事なストーリー運びでした。

この作品でも同じく、ぐぐっと迫りこんでくるようなストーリーが良いですねぇ。グレゴリー・ペックとアンソニー・クィンの演技もかなり重厚で名演。夜や日の射さない室内のシーンが多く、スクリーンには重苦しい雰囲気が立ち込めていますが、これはまちがいなく良い映画です。

スペイン内戦が終結し、人民戦線側で戦った英雄マヌエル・アルティゲス(グレゴリー・ペック)は終戦後フランスに亡命。ゲリラ活動を続けていたが、終戦後20年を経た現在ではその情熱もなくしてしまい日々衰えていくのみ。ある日彼のもとに母が入院したと言う知らせが届く。故郷サン・マルティンの病院では内戦以来の宿敵警察署長ヴィニョラス(アンソニー・クィン)がマヌエルを捕らえるために万全の包囲網を敷いていた。

一度見て、マヌエルの行動が今ひとつ良くわからなかったのでスペイン内戦の情報を少し調べて再度鑑賞。キーポイントはオマー・シャリフの演じる神父でした。フランシスコ神父は、死の床にある母親から警察の罠を警告する伝言を頼まれてマヌエルのもとにやってきます。スペイン内戦ではローマ教皇庁がフランコ政権を認めたことがとどめとなった経緯もあり、人民戦線の闘士であったマヌエルからするとカトリック教会と神父は悪の権化。母が死の間際に神父と接したことも信じたくないし、神父が告げる母の死も信じられない。

はじめは神父に対して憎悪をあらわにするマヌエル。分け与えたパンを取り上げて、「このパンを与えたのは神ではない、俺だ。」とすごみますが、神父は無言でパンをつき返します。しかし、神父の伝言が決め手となって密告者を暴き出せたことで二人の距離は縮まり、実は同郷であったことからスペイン内戦での神父の悲惨な体験を知ることになります。それは人民側がしたことではないというマヌエルに、そんなことにどんな違いがあるのかと神父は聞き返します。

マヌエルは、人民のためにファシストと戦った正義の戦士という自分の存在意義を神父に否定されたのでした。そして、彼自身もそのことを自己否定するのですが、その心の葛藤がこの映画のテーマであるようです。神父と別れた後、暗い部屋の中で歩き周り思い悩むマヌエル。窓からボールを投げ落とします。窓外の石畳を転々とボールが転がっていくショットはまるでよくできたフランス映画のようなすばらしさですが、このボールはマヌエルが大事にしてきた自尊心の象徴でしょうねぇ。それを窓から投げ捨てたわけです。

ラストで「ビニョラスに一泡吹かせてやるのさ」と言いながらマヌエルがとる行動は自殺行為のようにめちゃくちゃですが、すでに自分の存在を否定してしまったマヌエルにとってはそんなことはどうでも良かったのかもしれません。

グレゴリー・ペックは、今ひとつ入りこめない俳優なんですが、この作品のペックは良いと思います。品行方正なヒーローのイメージがありますが、今回の落ちぶれた英雄や『白昼の決闘』のときのような悪役のほうが味が出ていて個人的には好きですね。

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大体において感想は大甘になってしまうのです。前回の『アパートの鍵貸します』以来、「良いものは良い、良くないものは良くないとはっきり書こう、★も厳しくつけよう」と思っているのですが、思った矢先からこういう良い映画に当たってしまいます・笑。


日曜日には鼠を殺せ
日曜日には鼠を殺せグレゴリー・ペック フレッド・ジンネマン アンソニー・クイン

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posted by FROST at 16:08| 埼玉 ☔| Comment(6) | TrackBack(0) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
懐かしい映画です。かなり前に観たんですが、このタイトルがとにかく印象的でした。捕まるとわかっているのに死地に赴くとか、負けるとわかっているのに戦わねばならない、とかそういうぎりぎりの選択を強いられるというテーマの作品が結構ありますよね。昔は映画の中では卑怯や卑劣を許さないという考えが貫かれていました。
Posted by sesiria at 2006年12月01日 17:33
この作品は未見ですね〜。なぜかグレゴリー・ペック主演の作品って、避けて通っているような…。
あの完璧ともいえる顔、乱れることのない立ち振る舞い、どう見ても正義の人なんですよね。ロバート・レッドフォードの前身ともいえる俳優さんですね。だから共演者に食われることしばしば。
この作品は共演者が良いですね。アンソニー・クィンは好きですよ〜。オマー・シャリフもね。そして題名が良い。FROSTさんの解説を読んで、見てみようかなって思いました。
Posted by オショーネシー at 2006年12月01日 20:05
 Frostさん・・・今晩は。
うーーーん。映画少年もこの作品は未見です・・・が、俳優陣の顔ぶれを見ると筋立ては凡そ想像がつきますね・・・ペックはお説の通り・・・シェリフはアラブ系の顔・・・存在感のクイン・・・クセのあるペルグラン・・・不敵な面構えのマルカン・・・フランスの俳優さんが目に付く・・・。スペインの内戦を扱った作品にサム・ウッド監督のあの「誰が為に鐘はなる」(52)がある・・・。
ゲレゴリー・ペックは西部劇スターとして名を残している。「白昼の決闘」(46)では、悪役ではなく心根は悪くないヒネクレ者としての役柄でした・・・何せ主人公ですから・・・ジェニフアー・ジョンズ嬢に乱暴はするが受け入れられたでしょう。始めは真面目なジョセフ・コットンに惚れるが・・・野性的で人間味豊かなペックに夢中になってします・・・。
彼は西部劇でもワンパターンの役を振られたが・・・他の作品でも清く正しく美しく・・・そんな役が多いですね・・・。
決定的なのは色気が感じられないこと・・・。
Posted by グリーンベイ at 2006年12月01日 23:59
>sesiriaさん、こんばんは。原題は黙示録からの引用ですが、なぜ邦題は原作題名の翻訳にしたんでしょうね。「日曜日に鼠を殺せば、月曜日には猫が吊るされる」というお話があるそうです。詳細不明^^;

>オショさん、いつもありがとうございます。グレゴリー・ペックはねぇ、私も同感です。オショさん、仮面ライダーよりショッカーの怪人の方が好きだったでしょ。でも、この作品のペックはいいと思いますよ。アンソニー・クィンの”ぶあつい中年”ぶりもいいし、オマー・シャリフの頑固な神父もいい。ぜひご覧下さい。
Posted by FROST at 2006年12月02日 00:00
>FROSTさん
いや〜、私の少女時代のヒーローは『妖怪人間ベム』でしたよ(笑)
Posted by オショーネシー at 2006年12月02日 13:21
>グリーンベイさん、こんにちは。
グリーンベイさんも未見でしたか。オショさんとお二人そろって未見とは珍しい・笑
レイモン・ペルグランはペックの元にもぐりこんでいる密告者カルロス、クリスチャン・マルカンはクィンの右腕にして切れ者ザガナール。ご推察の通り二人とも要のキャスティングでいい演技でしたよ。
『白昼の決闘』のペックの”悪役”については言葉間違えてますね。おっしゃるとおりです。悪というより”ワル”ですね。ワル振りがぴったりはまっていたので意外に思ったものでした。”色気が感じられない”というコメントに納得です。

>オショさん、御見逸れ致しました・笑
Posted by FROST at 2006年12月02日 14:38
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