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2006年11月26日

アパートの鍵貸します 1960年/アメリカ【DVD#136】

appartment.jpg
”THE APARTMENT”

監督:ビリー・ワイルダー
製作:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド
撮影:ジョセフ・ラシェル
音楽:アドルフ・ドイッチ
出演:ジャック・レモン
   シャーリー・マクレーン
   フレッド・マクマレイ
   レイ・ウォルストン
   デヴィッド・ルイス
   ジャック・クラスチェン

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ビリー・ワイルダーの傑作コメディということで有名な作品。開巻から一度も笑えなかったので自分にはコメディセンスがないのかといささか心配になりました。が、ワイルダーはこの作品をコメディではないと言っているらしく一安心。

主人公のバクスター(ジャック・レモン)はあまりにもプライドがないため見ていて痛々しい。自分の部屋を複数の上司の情事に提供しながら、その見返りを昇進という形で期待している、そのあたりがなにかこう、とっても皮肉にフンとさげすんでやりたい気分になります。

部長が”顧客”になったとたんにそれまで部屋を利用していた4人の課長たちには手のひらを返したように冷たくなります。いそいそと部長のために部屋の段取りをとる姿は、組織人のものすごくいやな部分をあまりにも見事に見せつけられているようで、見事すぎていたたまれない。バクスターが係長になったときのあの帽子、本人はエグゼクティブの帽子と言っていますがどう見ても道化の帽子にしか見えません(チャップリンの帽子に似てますね)。

かたやフラン(シャーリー・マクレーン)の方も、自分勝手で遊び人の部長に遊ばれているとわかっていながら離れられない、そのあたりの優柔不断さが全くじれったい。シャーリー・マクレーン独特のあの表情が余計にじれったさを掻き立てます。彼女がバクスターに「今まで何人と付き合ってきたのか?」と聞かれて「3人」と答えたときに、指は4本立てていましたね。現在の部長との交際を無意識に拒否したいが、それでも別れることができない、どうしようもない気持ちが現れているのかもしれません。

隣の医者がバクスターにいみじくも「人間らしくなれ」と言います。医者は「人でなしの女たらしをやめてまっとうになれ」という意味で忠告するのですが、観客が受け取るのは”自分をせこく切り売りしてわずかな昇進を喜ぶようなむなしいことはやめろ”というメッセージであり、一つのメッセージに二重の意味を持たせているところは面白いですね。

そういう風に見るとこの映画、どんよりとした曇り空のように実に不愉快極まりない。物語のラスト5分までその不愉快さが付きまといます。ところが、ため息つきつきラストを迎えると、そこで一気にさーっと雲が晴れます。そこにのぞいた青空はあまりに気持ちよくて、それまでの不快感が吹き飛んでしまいました。ああやっぱりビリー・ワイルダーはうまいなと感心することしきり。一度もキスすることもない二人ですが、まことに見事なラブストーリーでした。

★★★★☆

アパートの鍵貸しますアパートの鍵貸します
ビリー・ワイルダー ジャック・レモン I.A.L.ダイアモンド

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posted by FROST at 00:03| 埼玉 🌁| Comment(14) | TrackBack(4) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この映画はコメディの枠に入れちゃダメでしょう(笑)。だって面白くもおかしくもない映画ですもん。
この映画を観たとき、ビリー・ワイルダー監督、冒険しなくなったな〜なんて思いましたね。ちょっと衰えたか?なんてね思いました。
いや、ストーリーも出演者も文句のつけようがないんですが、40年代・50年代のワイルダーの作品と比べると、どうも今一歩なんですね。
ウチの旦那様はワイルダー作品のなかでこの映画が一番好きだと言ってましたが、素直な心で観ればそれが妥当な線かもしれないですけど…。ひねくれものにはちょっと文句をたれたくなる映画でもあります。
Posted by オショーネシー at 2006年11月27日 21:33
オショさん、こんばんは。改めて見てみると、IMDbは1.ロマンス2.コメディ3ドラマ、allcinemaでは1.コメディ2.ロマンス3.ドラマになってますね。まあ、allcinemaって結構いい加減なところもありますからねぇ。コメディ枠外というお話に賛成です。昔のアメリカのTVドラマ見たいな感じですね(特に部長が・・)。
私はひねくれていませんが(笑)、やっぱり絶賛というわけにはいきません。
Posted by FROST at 2006年11月27日 23:43
 Frostさん・・・今晩は。
うーーーん。「アパートの鍵貸します」(60)・・・映画少年の場合、劇場で初見以来再見はしていない・・・。記憶も遠い昔の話でコメントするにも自信が無いですね。(笑)
Frostさんとオショーネシーさんのコメントを足して二で割つたところが妥当な線ではないかな・・・。(笑)たしかに「サンセット大通り」(50)あたりから受ける作品のパワーが感じられないと思います。
グリーンベイ名画鑑賞会の例会で既に百本を超える映画を鑑賞していますが、この作品は取り上げていないのです。作品選定スタッフからもこの作品に手が挙がらなかった・・・。名監督の作品でありながら映画少年も例会でお薦めしなかったのは映画少年の個人的理由もありました(笑)・・・それはジャック・レモンもマックレーン嬢にも興味が湧かなかったからに他ならない・・・。
因みに、キネ旬ベスト・10では十七位と振るわなかった作品ですね・・・。
Posted by グリーンベイ at 2006年11月28日 23:28
グリーンベイさん、いつもありがとうございます。グリーンベイさんもやっぱり今ひとつのご様子ですね。”『サンセット大通り』と比較するとパワーが感じられない・・・”、確かにその通りだと思います。3年前の『情婦』にも及ばないですね。バクスターを含めて登場するキャラクタ全員魅力的じゃないんですよね。演出よりもシナリオレベルのキャラ設定が原因か。
ジャック・レモンは私もあまり興味がわかないのですが、シャーリー・マクレーンのあのちょっとポワンとした表情は結構好きです。
映画を見たときに「どこか褒めなきゃ」と思っているんですけど、今回は初めからずーっと褒められるところがなくて困りました。最後の最後、ニューイヤーパーティで部長が振り返ったときに今まで話していたマクレーンが消えてしまっているところと次のシーンで、ちょっと上向きに彼女が駈けていくシーンを買いました。ラストのマクレーンで★一つアップという感じですね。
Posted by FROST at 2006年11月29日 00:30
FROSTさんこんばんわ。
「あなただけ今晩は」も言えるんですが、公序良俗に反している(ホテル代わりに部屋貸すとか、売春婦からお金を取るとか)みたいなところで作品作っていいのかな〜?なんて思いました。
私ってば真面目ですかね?
Posted by かよちーの at 2006年11月29日 19:43
かよちーのさん、こんばんは。こないだ、麻薬王の映画(秀作!)に関するあるブログのレビューに「麻薬は社会的に良くない、したがってこの映画の評価は1(5段階)」というのがあってしばらく考え込んだことがありますね。やはり前半と後半が短絡しすぎかなと。まあ、かよちーのさんがおっしゃっていることと100%同じではないのですけどね。
個人的には、麻薬だろうが人殺しだろうが売春だろうがドラマがあれば見てみたいし、面白ければ★×5つけたい。ものごと真面目に考えなさすぎかしらん・笑
Posted by FROST at 2006年11月29日 22:34
私は好きなんですよ〜。どうも皆様と合わなくて心苦しいのですが・・・。たしかに昔初めて見たときはちょっとイマイチ感がありました。でも最近見直してみて
ああ良い作品だったんだなあと思ったんですよね。多分最近の映画と比べてしまっているんだと思うんです。こういう、小品ながらも粋な映画が意外と少ない気がします。ちゃんと伏線があってそれが最後に生きてくる。仰るように最後の最後でカタルシスがあるのです。やはり良く出来てるなあと感心したのですが・・・・。
「スター誕生」なんかもそんな感じでした。
Posted by sesiria at 2006年12月01日 17:51
sesiriaさん、この作品好きな人は皆さん絶賛しているみたいですね。そうですか、見直して良さがわかるということはありますもんね。私も時間をおいてもう一度見て見ることにします。
Posted by FROST at 2006年12月02日 00:11
どうもご無沙汰しています。いや,FROSTさんの記事や皆さんのコメント読ませていただいて,人それぞれ,とても面白いと思いました。

「ホンの人」という感じが先にたって,どうしても好きになれないワイルダーの作品群のうちでは,ホンの勝利ともいえる『情婦』とこの映画は,私はけっこう好きなんです。

白状しますと,子供のころテレビで観たこの映画のS・マクレーンに私は恋をしてしまって,それ以来,作品の出来はどうでもよくて,私にとっては今でも胸キュン映画なんです(いや書いてて恥ずかしい・・^^;)

あまりカテゴリーには拘らないんですが,そういう意味では,やっぱりこれはラブ・ロマンスだし,仰るとおりコメディという感じじゃないですよね。

まあ,映画の好みなんて味覚と同じで人それぞれ。本質的に正解も間違いもありませんから,素直に自分の感覚に従えばよいのではないでしょうか。ではでは。
Posted by ジューベ at 2006年12月03日 17:00
ジューベさん、こちらこそご無沙汰しております。
ワイルダー作品はやはりシナリオの面白さに期待してしまうのです。『情婦』では冒頭の法律事務所でのやり取りからストーリー運びと会話のテンポがすごく良くかみ合っていて面白かったと思います。一方本作はその辺のぴったり感が今ひとつ感じられないんですよね。まあ、それ以前に主人公のいやな面が見えすぎて今ひとつという生理的な部分があるんですが。
ジューベさんと同じく、シャーリー・マクレーンは良かったと思います。やっぱり笑顔が良いですよね。
「素直に自分の感覚に従う」その通りですね。どちらかというと人の意見を気にするということではなくて、自分が感じた通りを文章にするのが難しいという方があたってるのかもしれませんが。しかし、これは文章力の問題でもあるなぁ・・。
Posted by FROST at 2006年12月03日 21:31
FROSTさん、こんばんは。
作品自体は悪くないんですけどねー、2作品を連続した感じで見てしまったからかもしれません。
てか「あなただけ今晩は」がイマイチ、パンチがなかったもので、あは。
Posted by かよちーの at 2006年12月03日 22:47
かよちーのさん、いつもありがとう。作品としての見せ方っていうのもありますよね。切味よくすっきり見せてくれるとありがたいなぁ。
Posted by FROST at 2006年12月05日 08:52
ランキングから来ました!
ビリーワイルダーの作品は傑作・・・というより佳作が多いのですが、これは傑作ですよね。三谷幸喜もこの作品に大きく影響をうけたと言ってますし。設定は現代ではありえないかもしれませんが、ジャックレモンの心情というのが切なくって笑えて。
ランキング応援していきます!
Posted by comedy-night at 2007年05月01日 00:27
comedy-nightさんこんにちは。喜劇専門のブログってイカしてますね。素晴らしい。三谷幸喜は私も大好きです。そうですか、三谷幸喜が影響を受けたんですか。本作、確かに良く出来た作品だと思うんですけど、なんか笑えなかったんですよね・・・。個人的に喜劇よりもサスペンスちっくな映画のほうが好きだからかも知れません。ワイルダー作品も『サンセット大通り』などに擦り寄ってしまうのですよ。
comedy-nightさんのブログで喜劇についてももっと勉強させてもらいますね。これからもよろしくお願いします。
Posted by FROST at 2007年05月02日 09:47
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