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2006年10月27日

必死の逃亡者 1955年/アメリカ【DVD#129】

the desperate hours.jpg
”THE DESPERATE HOURS”

監督/製作:ウィリアム・ワイラー
原作/脚本:ジョゼフ・ヘイズ
撮影:リー・ガームス
音楽:ゲイル・クビク
出演:フレデリック・マーチ/ハンフリー・ボガート
   マーサ・スコット/メアリー・マーフィ
   デューイ・マーティン/アーサー・ケネディ
   ロバート・ミドルトン/ギグ・ヤング
   ビヴァリー・ガーランド

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)



悪役。ですねぇ。今回のボギーは堂々たる悪役です。沈着冷静な脱獄囚グリフィン。弟のハルと巨漢コルビッシュを従えてヒリアード(フレデリック・マーチ)邸に押し入ります。決して過剰な演技をするわけでも表情豊かなわけでもないのに、徐々に追い詰められていく様の演技はひきつけられるものがありますねぇ。

ヒリアード邸に目をつけるシーンはちょっと気に入っています。ゆっくりと走る車の窓から見える家並み。車に乗っているグリフィンの腕だけが見えています。やがて窓の中にヒリアード邸が現れ、子供用の自転車が窓越しにフォーカスされ車が停車します。

グリフィンがヒリアード邸を選んだのは、”小さな子供のいる家は危険を冒さない”から。その目印になってしまった自転車は、長男ラルフィが母親の注意をなおざりにしてほったらかしにしてあったものです。そのほんのちょっとしたことが原因でヒリアード一家は恐怖の体験をするんですねぇ。車窓に自転車をとらえて、ぐるーっと車が庭に乗り入れゆっくり停車するところにそういう運命的な偶然が良く表現されています。

その後は、家族を必死に守ろうとするヒリアードと居座るするグリフィン、それにグリフィンを必死で追う刑事ジェス・バード(アーサー・ケネディ)の三人をポイントに緊迫したドラマが展開されます。

一番の見所は、ヒリアードとグリフィンの”死闘”。この作品は男二人の対決のドラマ。序盤、暴力で圧倒的優位に立つグリフィン。ヒリアードはなす術もなく、ひたすら家族の無事を心配しグリフィンの言いなりになっています。

息子ラルフィがいい感じで絡んでますね。生意気盛りのラルフィは、ヒリアードを強盗なんか簡単にやっつけちゃう強い父親だと信じているのに、父親はグリフィンの言いなりになっている。その姿にショックを受け、自分には勇気があるとばかりに、助けを求めるメモを家庭訪問に来た先生に渡そうとしたり、二階の窓から飛び降りて逃げようとしたりします。当然そのたびに状況は悪くなるのですが、ヒリアードはそんな息子からのプレッシャーと家族を守る責任の板ばさみになります。父親の辛い立場がひしひしと・・・・。

しかし、グリフィンに届くはずの金が届かず、いらつくハルやコルビッシュのコントロールが効かなくなってくると共に、ヒリアードも覚悟を決て反撃に転じます。余裕しゃくしゃくだったグリフィンがじわじわ追い詰められて狼狽しだし、ヒリアードは決意をにじませてグリフィンに迫る。二人の立場が徐々に逆転していく様子は見ごたえ十分。

”籠城”というシチュエーションのサスペンスもよく描かれていましたね。長女シンディのボーイフレンドがドアのところで彼女に話しかける。そのドアの裏側には拳銃を握り締めたコルヴィッシュが身を潜めている。両側から二人ともの手がドアにかかる。すごいサスペンス描写。こういうドア一枚隔てた内と外のギャップや、建物内の1階と2階で強盗たちと人質たちの動きを同時に見せる構成などすばらしい工夫が数多く見られます。

悪役ボギーは拳銃片手に葉巻をふかします。相変わらずかっこいい。でも、そんなに葉巻すうなよ、ボギー・・・。ハンフリー・ボガードはこの映画を撮った翌々年には過度の喫煙による咽頭癌で死んでしまうのですよ。

動作の微妙なところがちょっと年寄りっぽくなってたりして、身体の不調も感じてたかもしれないのに。。。そんなことも考えて観ていると、ラストシーンにチラッとうつるボギーの横顔にものすごくショックを受けてしまうのです。
★★★★☆

必死の逃亡者(1955) - goo 映画
必死の逃亡者@映画生活

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posted by FROST at 14:38| 埼玉 ☔| Comment(9) | TrackBack(1) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ボギーって堂々たる<スター>なのに、多種多様な役を演じている珍しい<スター>ですよね。
この映画は初めは、フレドリック・マーチの役にスペンサー・トレイシーが決まっていたんですね。しかし、2人の間に配役順のトラブルがあって(どっちが一番に名前がでるのか、ですね)スペンサー・トレイシーが降りてしまったという経緯がありましたね。
しかし、代役のフレドリツク・マーチも素晴らしかったですね。誠実な父親という感じか良く出ていると思いました。
Posted by オショーネシー at 2006年10月27日 22:58
 Frostさん・・・今晩は。
うーーーん。「必死の逃亡者」(55)ですか・・・。先日、BSで「探偵物語」(51)を放映していますた。流石、ウイリアム・ワイラーですね。どちらも傑作だと思いますよ・・・。「探偵・・」はカーク・ダグラスとエリノア・パーカー嬢でした。この「必死の・・」の解説は文句の無い素晴らしいものです・・・ですが・・・もう一つ物足りません。(笑)
シンデイ役のメアリイ・マーフイ嬢についてご感想を今少しお聞きしたいのです・・・。
 映画少年が彼女に一目ぼれした作品は・・・「乱暴者」(53)マーロン・ブランドと共演・・・それからレイ・ミランドが初監督した西部劇「白昼の対決」(55)です。以来、映画少年のご贔屓女優さんの一人となっている・・・メジャーではないが・・・やはり「忘れられぬ銀幕の美女」の一人でしょうね・・・。人、夫々ですが・・・Frostさんのタイプはどんな女性なんでしょうね・・・?。(笑)
Posted by グリーンベイ at 2006年10月28日 00:23
オショさん、こんにちは。スペンサー・トレーシーとボギーの共演というのも見たかった気もしますが、このフレデリック・マーチははまり役でしたよね。結果的には正解だったと思います。父ちゃんがんばってるのに、あの息子が。。。笑

>グリーンベイさん、こんにちは。女優さんですね・笑。なかなか難しいんですが、”この女優さんはいいなぁ”と思うにはきっかけがいるんですよね。そのきっかけというのは、ハッとさせてくれる一シーン。なににハッとするかにパターンがあればそれがタイプということになると思うんですが、そうでもないのがややこしいところなんです。今までどんなシーンにハッとしたかちょっとあげてみると、

・この間のアンジー・ディキンソンはやっぱり、『リオ・ブラボー』で見せた脚線美。
・『赤い河』でジョーン・ドルーのビンタ
・『白昼の決闘』で瀕死のジェニファー・ジョーンズの表情が憎しみから愛情にすっと変わるところ
・『北北西に進路を取れ』キスシーンでケーリー・グラントの頭に回したエヴァ・マリー・セイントの手のなんともいえない妖艶さ
・『泥棒成金』、オープンカーをぶっ飛ばす時のグレース・ケリーのうれしそうな顔
・『カサブランカ』でサムのピアノに聞きほれるイングリッド・バーグマン
・『鳥』ボートでロッド・テイラーの家に向かうティッピ・ヘドレンのいたずらっぽい笑顔
・『逃走迷路』、旅芸人のワゴンの中でするプリシラ・レインのあくび
・『氷の微笑』デッキチェアに座ったシャロン・ストーンが振り返ったときに、風で髪が顔にかかっているところ
・『麦秋』北鎌倉駅での原節子のスッと決まった立ち姿
・そして、マレーネ・ディートリッヒ。初めてみた『間諜X27』の冒頭、ストッキングをたくし上げる脚からカメラが上がって顔が写ったときに例のけだるい表情で長いタバコを加えている
・・・このワンシーンからもーいちころ。

などなど、他にもいろいろあります(改めて見ても共通点がないなぁ)。はっとさせてくれた女優さんはその後大体贔屓しますね。上の11人の女優さんはみんな大好きです。逆に、まだハッとシーンを見せてくれない女優さんは、かなり有名でも個人的には今ひとつ。代表的なのはジョーン・フォンティン、エリザベス・テイラー、アン・バクスターなどでしょうか。テレサ・ライトなんかも良い女優さんだとは思うんですけどねぇ。。。
グリーンベイさんご贔屓のメアリー・マーフィーは残念ながらこの作品ではキャッチできませんでしたので、素通りしてしまいました(スミマセン・笑)。ただ、こういう事情ですから他の作品でそういうシーンを見せてくれたらそこから大ファンになってしまう可能性も当然大有りです。
Posted by FROST at 2006年10月28日 11:14
 Frostさん・・・今晩は。
うーーーん。Frostさんのタイプな女性は・・・作品の中でハットするシーンで選ばれているようですね。・・・面白い・・・人、夫々ですね。(笑)
しかし・・・<「麦秋」北鎌倉の駅で原節子のスツと決まった立ち姿>・・・。凄い!!・・・これで決まりですね。
Frostさんの美意識のセンスが理解できました。こうした感性が生き方とか、Frostさんのあらゆる意識の中に生きているのでしょう。映画は勿論・・・オシャレとか、お住まいの雰囲気やら、趣味にも通じているものと思います。もう・・・何も申すまい。失礼致しました。)(笑)
Posted by グリーンベイ at 2006年10月28日 20:17
グリーンベイさん、こんばんは。いやあ、そんな大層なことでもなく。いっつもジャージにドテラ着てブログ書いてますし・笑。しかし、こういう発見が出来るのは映画の楽しみの一つだと思います。
そうそう、先日お奨めいただいた『殺しのドレス』DVDが手元に来ましたので、近々感想アップしますね。
Posted by FROST at 2006年10月29日 01:58
 Frostさん・・・今晩は。
うーーーん。女優さんにハットしたシーン何本か挙げられましたが・・・映画少年もハットしたシーンうを挙げて見ます。人、夫々ですね。

「赤い河」(48)・・・ラストの方でモンテイがダンスンの追手が時間の問題と知り・・・焦燥と孤独を胸に秘めホテルの自室へ戻ると・・・ジョーン・ドルー嬢が盛装して待っていましたね・・・その時の彼女に表情・・・新鮮でしたね。
 「鳥」(63)・・・テッピイ・ヘドレン嬢が子供を迎えに学校(教会)に着くが・・・時間があったので・・・外の木の柵にもたれてタバコを吸うシーン。風になびく髪を撫上げる・・・いい顔をしていたね。セクシーでしたね。
 「間諜X27」(31)・・・デートリッヒ嬢がラストで銃殺されるシーン。若い衛兵のサーベルを抜いて鏡代わりにしてルージュを引きなおし身繕いをする貫禄にシビレました。
Posted by グリーンベイ at 2006年10月29日 22:34
グリーンベイさん、こんにちは。
さすがにいいところを見られてますねぇ。特に、『間諜X27』ラストのディートリッヒは素晴らしいですよ。ルージュひき直す時にちょっと微笑んでませんでしたっけ。その後、目隠し断って銃殺されるんですよね。1930年頃のディートリッヒだと『モロッコ』が有名ですが、個人的には『間諜X27』の方が気に入ってます。
ところで、『殺しのドレス』は製作年が1980年だったので、もうひとつのブログ”カルトでも、インディーズでも、アートでも。(C.I.A)”の方に感想アップしました。左サイドバーにリンクがありますので、よろしければ覗いてみてください。
Posted by FROST at 2006年10月30日 16:32
こんにちはーTBさせて下さい。
<息子ラルフィがいい感じで絡んでます
私もこのガキの生意気ぶりが一番印象に残りました。ボギーが悪役でもどこかで改心するのでは…という希望みたいのが常にあって、悪役でも酷い事はしないだろうという安心感が、作品をちょっと物足りないものにしているのでは…と思いますが、それでも最後までハラハラで面白かったです。
Posted by ぶーすか at 2006年11月05日 08:07
ぶーすかさん、こんばんは。
生意気でしたねぇ、このガキ・笑。しかし、この子がいたためにずいぶん話が面白くなっているのも確かですよね。ボギーの見方は面白いですね。確かにいろんな役をやる俳優さんの難しいところかもしれません。
Posted by FROST at 2006年11月06日 01:26
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