
”A CLOCKWORK ORANGE”
監督:スタンリー・キューブリック
製作:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ジョン・オルコット
音楽:ウォルター・カーロス
出演:マルコム・マクダウェル
パトリック・マギー
エイドリアン・コリ
オーブリー・スミス
マイケル・ベイツ
スティーヴン・バーコフ
詳しい作品情報はこちら
⇒allcinema
⇒IMDb(英語)
これも、よく見た作品。前回記事から”雨に唄えば”つながりで再鑑賞しました。
はじめて見た頃はずいぶん昔の平和な時代だったので過激な暴力描写に驚きましたが、最近ではこういうことも珍しくもなくなってしまいましたね。
主人公アレックス(マルコム・マクドウェル)をリーダーとする不良少年グループが仲間割れし、メンバーの裏切りにあったアレックスは過失致死で14年の刑に処されます。模範囚として早期出所を目指すアレックスは、犯罪者を更生させる”ルドヴィコ治療法”の実験に協力し2週間で出所しますが、犯罪者を精神的に矯正する非人間的な治療が問題となり。。。。
過激な暴力描写やルドヴィコ治療の洗脳シーンなどショッキングな場面が多く見られますが、この作品の殺伐とした雰囲気の根本原因は、登場人物の誰にも人を思いやる心がないということに尽きます。一人残らず徹底的に利己的な行動をとるということではこれほど首尾一貫した作品もありません。
浮浪者や行きずりの一般市民に暴力の限りを尽くす若者たちはもちろんですが、その仲間内でさえ信頼関係はなく、メンバーは常にアレックスの首を狙っています。
暴走する若者たちと対峙する体制側も「殴られたら殴り返すだろ。国家だって同じことだ。」と言い放ちます。政府高官は新任大臣の更生治療政策をやり方が甘いと批判していますが、大臣とて若い犯罪者の社会復帰などさらさら考えていません。犯罪率の低下とパンク寸前の刑務所問題だけが関心事項であって、それも公的使命感ではなく、重要なのは自分の手柄。したがって、アレックスの存在が不利になるとさっさと自己保身に走り、アレックスを元に戻してしまいます。
刑務所の神父だけは、「ルドヴィコ治療は自ら何の選択もできない壊れた精神の人間を作り出すだけだ」と主張します。しかし、こんな主張に賛同する人間は誰もおらす、神父の言葉はむなしく宙に消えてしまいます。
アレックスは、ルドヴィコ治療によって、暴力やレイプという衝動が起きると激しい嘔吐感に襲われるようになってしまいます。この物語に登場する唯一の善人が非人道的に作り出された被洗脳者だというブラックさは強烈。アレックスを「理想的なクリスチャン」だという大臣の言葉に、キューブリックの毒気紛々たる皮肉を感じますね。
大臣とアレックスがにこやかに握手し写真に納まる場面などを見ていると、表はきれいでも中身は得体の知れない仕掛けがきりきりと蠢いている、『時計じかけのオレンジ』とは良く名づけたものだと感心することしきり。オレンジが時計じかけでも全く意味のないところがまた結構でした。★★★★☆
時計じかけのオレンジ | |
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時計じかけのオレンジ@映画生活
時計じかけのオレンジ(1971) - goo 映画
ジーン・ケリーのファンがこれを観て当時どう思ったのか気になるところですが、そもそも観客層が違いますか。
でも、FROSTさんはどちらもお好きなんですよね。素晴らしい映画ファン!
トラックバックさせてもらいます。
今観たら、どんな感想なのかなぁ…と考えますが、たぶんもう2度と観ない映画の1本になるかと思います…。
雨に唄えば、私は全く気にならなかったですね。曲の二拍入るところでちゃんと蹴り二発入れてたり、かなり喜んで見ました・笑。こちらからもTBさせていただきます。
>オショさん、こんにちは。
オショさんの嫌いなものばかりアップしてるみたいですね・大笑。消して悪意があるわけではありませんが(そりゃそうだ)。
結構面白いですよ、この作品。私も高校のころに始めてみたときは暴力シーンしか記憶に残りませんでしたけど。二度と見ないなんて寂しいことをおっしゃらず、ぜひもう一度!
わたしはこの作品、実は大好きです。
人間の汚いところをきれいに見せているところとまったく古びた感じがしないところとか。
女性の方がこの作品、好きなような気がします。
シャイニングは2番目に好きです。
これを見た当時は自分も若かったし、世の中も平和だったので、全くかけ離れた架空の物語として気楽に観られました。
でも今はちょっと観るのが怖いかも。
仰るようにこの映画も真っ青な事件が近頃現実に起こるようになって絵空事として
観られなくなってしまったのです。(私だけでしょうが)
でも映画としては面白かった印象が残ってます。衣装やセットのデザインとかSFチックな造詣が素敵でした。
(20年位前に見たきりなのですが)
ありゃ、逆ですねぇ・笑。うちにも両方ともDVDありますよ。ストック見てみたら『2001年〜』『博士の〜』『アイズ〜』と計5枚もキューブリックがあってちょっと驚き。ぜひ、感想のせねばいかんですね。
>sesiriaさん、こちらにもありがとうございます。確かに最近の事件の方が怖かったりしますね。そういう意味では、30年以上前にどんな社会になるかを予見していたということになるのかも知れませんね。恐るべし、キューブリック。
私もこの作品大好きです。
トラックバックさせていただきます。
宜しくお願い致します。
見終わった後はあまりの衝撃に消化不良を起こし、しばらくガリバー痛がしました・・。
あ〜!すみません、ずいぶんお返事が遅くなってしまいました。TB届いてないみたいですが、良かったらまたよってやってください^^
>カカトさん
ん? ナッドサッド語? 使いこなしてますね・笑。40代半ばになると結構普通に見れますよ^^;
<時計じかけのオレンジ>とは、コックニーで「何を考えているか解らない変人」を指します。
また、原作者が暮したことのあるマレーシアの言葉マライ語で、orangは「人」のことですから、clockwork orangeとは「管理・統制された人間」という二重の意味を合せ持つようです。
ラストのオチが「清々しい」映像ですね。
それにしても、囚人の制服が背広ネクタイなのに驚きました。イギリスの刑務所は自殺者が出ないのでしょうか? あるいは出てもそれは自殺者本人の「責任」で看守の管理責任は問われないお国柄なのでしょうか?