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2006年10月17日

雨に唄えば 1952年/アメリカ【DVD#126】

singin in the rain.jpg
”SINGIN' IN THE RAIN”↑この時、ジーン・ケリー39度の発熱中↑

監督:ジーン・ケリー/スタンリー・ドーネン
製作:アーサー・フリード
脚本:アドルフ・グリーン/ベティ・コムデン
撮影:ハロルド・ロッソン
作詞:アーサー・フリード
作曲:ナシオ・ハーブ・ブラウン
音楽:レニー・ヘイトン
出演:ジーン・ケリー/デビー・レイノルズ/ドナルド・オコナー
   シド・チャリシー /ジーン・ヘイゲン/ミラード・ミッチェル
   ダグラス・フォーリー/リタ・モレノ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


好きで良く見た映画の感想を意外とアップしてないんですよね。誰でも名前を知っている有名な作品ばかりですが、ボツボツとアップしていこうかと思います。ということで今回は『雨に唄えば』。

この映画は、個人的に非常にツボにはまっていて、DVDを買ったときは3回連続で見ました。歌もダンスもストーリーも素晴らしいですよね。2年ぶりくらいの鑑賞になりますが、その間にこのブログをはじめて古い映画に親しみが深まっているため、今回はストーリーも大変興味深く見直しました。

『雨に唄えば』は、第一級のミュージカル作品ですが、同時にトーキー誕生時のハリウッドの様子を垣間見ることができる貴重な映画でもあります。

この作品は初のトーキー作品『ジャズ・シンガー』が公開された年の話ですから1927年ということになります。冒頭、サイレント映画のスター、ドン・ロックウッド(ジーン・ケリー)が、聴衆に嘘八百の経歴を披露する場面がありますが、当時の映画作りはスターの人気に依存していたため(現在でも変わりませんが)、スターのイメージは映画スタジオの収入に直結。映画スタジオは大事なスターを専属化し公私に渡ってイメージコントロールしていたそうです(本格的なスター・システムはもう少し後からになりますが。。)。ドンの演説も映画スタジオの宣伝部がすべてシナリオを考え、作り上げられたイメージを世の中に伝えていたわけですね。

ドンは、その演説で語られる華々しいエリートイメージとは正反対で、もともとは貧しい家に育ったボードヴィル芸人。しかし、子供のころから鍛え上げられて歌も踊りも抜群です。それに対して、モニュメンタル映画社の二枚看板のもう一人リナ・ラモント(ジーン・ヘイゲン)はサイレントの大仰な芝居と見た目の美しさ以外は、演技も台詞も歌もだめな "Triple Thread"。

映画がトーキーになった時に、”しゃべれない、歌えない”ためにイメージが崩れて姿を消した俳優もたくさんいたはずです。劇中、”ハリウッドでしゃべり方教室が大流行”というくだりがありますが、役者たちはキャリアをかけて必死に特訓したのでしょう。おかしいのと同時に当時の彼らの苦労がしのばれて大変興味深いシーンです。

物語の核になる”吹き替え”は、リナの悪声とひどいなまりを隠すために考えついた苦肉の策ということになっています。

実際のケースでも、イギリス初のトーキー映画「恐喝(ゆすり)」(ヒッチコック)では、主役のドイツ人女優アニー・オンドラが英語を全く話せなかったために、英語吹き替えが行われています。アフレコ技術がなかったため、アニーの演技と当時にイギリス女優に台詞をしゃべらせていたそうです。本作のリナの場合とは事情が違いますが、吹き替えが用いられるようになった経緯には、こういう”トーキーに出せない俳優をどうするんだ?”という問題が深く関わっていたのかもしれません。

モニュメンタル映画社のパーティー席上でトーキーの宣伝フィルムが披露された時の関係者の反応は冷ややかなもので、”子供だましの悪趣味なおもちゃだ”とバッサリ。ところが、”ジャズ・シンガー”が大ヒットすると映画界はなだれのようにトーキー化にまっしぐら。製作途中のサイレント映画までトーキーに変更となり、トーキー化が予想外の急激な変化だったために関係者が右往左往した様子が良くわかり、ここも大変面白いシーンです。

さらに興味深いのは、映画に音声が入ったことでサイレントの演技が全く通用しなくなってしまったことです。プレミア試写でドン&リナの『闘う騎士』が大コケした理由は。。。

・サイレントの大仰な演技に音声がついたときに、あまりに日常的な動作からかけ離れた芝居になってしまったこと。
・セリフ自体にも自然さがなく、大時代でこっけいな台詞回しになってしまったこと。
・録音機材や技術が未熟で、均質な録音が出来なかったこと。
・映写機と蓄音機の同期が取れず、映像と音がずれてしまったこと。

などなど。映画ですからかなり誇張されているとは思いますが、実際にもこのようなことは十分起こりえたでしょう。サイレントとトーキーは完全に異なる芸術だというようなことを言っていたのは誰だか忘れてしまいましたが、演技の方法論から根本的に変わってしまったということのようです。

とりとめなくだらだらと書いてしまいましたが、この作品、当然歌とダンスも名作ぞろい。ミュージカルとしても記録映画としても楽しめる一粒で二度おいしい(古)素晴らしい作品でした。★★★★★

(参考:ヒッチコック/トリュフォー 定本映画術)

雨に唄えば - goo 映画
雨に唄えば@映画生活

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posted by FROST at 01:19| 埼玉 ☁| Comment(10) | TrackBack(5) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ミュージカルは苦手な部類なのですが、本作は別です。
ジーン・ケリーのダンスは、やっぱり最高ですね。雨にうたれながら傘を使った見事なダンスでしたが、このとき39度も熱があったのですか?
このシーンが一番印象的でした。
Posted by shake at 2006年10月17日 22:25
 Frostさん・・・今晩は。
うーーーん。映画少年もミュージカル映画はダメなんです。ハハハ・・・(笑)
ジーン・ケリーもフレッド・アステアも好きでも嫌いでもない。本格的オペラをこよなく愛する映画少年が・・・ミュージカルとオペラを比較すること自体おかしな話ですが・・・。
でも、ミュージカルを違和感無く見ることが出来た作品がある・・・マドンナの「エビータ」です。ストーリー性がありバンデラスのナレーションが内容をより分かりやすくしていた。主題曲が良かったね・・・「アルゼンチンよ泣かないで」・・・この曲は将来、古典の名曲になるに違いない・・・。ピアソラとかが近年騒がれているが・・・CDを何枚も買って何度も聞いてはいるが、どうも馴染めません。(笑)
Posted by グリーンベイ at 2006年10月17日 23:45
>サイレントとトーキーは完全に異なる芸術だ

この映画を観ると本当にそれを実感できますね。『サンセット大通り』のノーマ・デズモンドも、この変化に対応できず消えていった女優なのでしょう。トーキーの時代になっても、チャップリンがサイレント映画にこだわり続けた訳もよくわかります。
Posted by まいじょ at 2006年10月18日 09:03
実を言うと、私はジーン・ケリーが大の苦手なんですよ。あの“押しの強さ”がダメ。フレッド・アステアと並び称されるなんてとんでもない、怖気が走る…と思っております。
もちろん彼が主演のDVDはもっておりますよ。だってフランク・シナトラが出ているんだもの。
しかし『雨に歌えば』はストーリーが愉快なこと、そして相棒のドナルド・オコナーが素晴らしいことでなんとか鑑賞にたえる作品です。
しかし、シド・チャリシーは悪女っぽい役・ダンスを躍らせたら天下一品ですね。『バンド・ワゴン』でも素敵だったなぁ…。
Posted by オショーネシー at 2006年10月18日 11:30
>shakeさん、こんばんは。
熱あったらしいですよ(By IMDb)。そう思ってみると上の写真の見え方もちょっと変わってきますよね・笑。

>グリーンベイさん、コメントありがとうございます。私もミュージカルはそんなに好きな方ではないんですが、『雨に唄えば』は相性がいいですねぇ。主役三人の中ではドナルド・オコナーが一番好きなんですが。
そうですか、『エビータ』良いんですね。ああ、ジョナサン・プライスも出てますね。俄然興味がわいてきました。近々見てみたいと思います。

>まいじょさん、どうもコメント&TBありがとうございます。
おお、『サンセット大通り』はこの関係のストーリーですね。ちょうど手元にDVDがあるので見てみます。
以前、レビューをアップしたバスター・キートンなんかもトーキーで活躍できずに消えてしまいましたね。確かに実感できます。

>オショさん、こんばんは。
フレッド・アステアは紳士的ですからね・笑。ドナルド・オコナーが撮影中にこっぴどくジーン・ケリーに怒られてずいぶんつらい思いをしたような話を見かけましたが、確かに尊大なところがあったようですね。
ドナルド・オコナーといえば、”Make 'em Laugh”のドアを開けたら壁で顔から激突するところがあるじゃないですか。その後の顔芸で鼻まで曲がってたのを見て、すごいコメディアンだなとたいそう驚きました。プロですねぇ。
Posted by FROST at 2006年10月19日 01:34
TB&コメント有難うございます。こちらにもTBさせて下さい。
<ジーン・ケリー39度の発熱中
それであんな名場面を収録したんですか?!すごい!さすがジーン・ケリーですね。私もジーン・ケリーよりはフレッド・アステアが好きなんですが、ちょっと見直しました^^;)。
Posted by ぶーすか at 2006年10月21日 16:56
ぶーすかさん、こんばんは。あの場面全身ずぶぬれになってますからね、本当にすごいですわ。尊大だったというのもイコール芸に厳しかったということなのかも。
Posted by FROST at 2006年10月22日 21:00
私もミュージカルはちょっと苦手です。が、この「雨に唄えば」と「サウンドオブミュージック」「ウエストサイド物語」は好きです。
「雨に唄えば」は当時のサイレントからトーキーはへの移り変わりの面白さ、混乱など楽しくまた、色んなとまどいもあっただろうと想像でき興味深く観ました。
曲もすべて好きですし、デビー・レイノルズもとても可愛くて、観た時は大好きになりました。私もフレッド・アステアの方が好きかなあ。フレッド・アステアは上品で羽根のように軽く踊り、ジーン・ケリーは
ダイナミックで力強いダンスでどちらも素晴らしいですけどね。
とにかくこの映画、大好きです。
Posted by sesiria at 2006年10月23日 18:04
TB&コメントありがとうございました。
「そんな難しいことはどうでもいい」と書いてしまいましたが、トーキー移行時の様子はほんとにわかりやすいですよね。
それにしても、『Make 'Em Laugh』は何度観ても凄すぎて言葉を失います。
『ザッツ・エンタテインメント』の中で、錚々たる顔ぶれの現在の姿が出てくるじゃないですか。ドナルド・オコナーもいいおじさんになっていて、なんか感慨深いものがありました(笑)
Posted by micchii at 2006年10月24日 12:53
>sesiriaさん
「ミュージカルは苦手だけど・・」というコメントも多いようですが、歌とダンスだけじゃなくて、役者の魅力、ストーリーの面白さ、美術装置の素晴らしさなど全部かみ合ったからこその魅力ですよね。ちなみに、私のベストは『サウンド・オブ・ミュージック』、3番が『雨に唄えば』です。(2番は『エクソシスト』・・・)

>micchiiさん、TBコメントありがとうございます。
同感です、同感です<『Make 'Em Laugh』!ここだけは、何回見たかわからないくらい見てます。実は他でオコナーを見たことがないのですが、ザッツ・エンタテインメントに出てるんですね?おじさんになって?見たいですねぇ、それは^^
Posted by FROST at 2006年10月25日 01:18
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