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2006年10月01日

犯罪河岸 1947年/フランス【DVD#119】

Quai Des Orfeveres.jpg

”QUAI DES ORFEVRES”

監督:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
原作:S・A・ステーマン
脚本:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー/ジャン・フェリー
 
出演:シュジー・ドレール/ベルナール・ブリエ
シモーヌ・ルナン/シャルル・デュラン/ルイ・ジューヴェ

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


『恐怖の報酬』と『悪魔のような女』、二本の映画で大ファンになってしまったクルーゾー監督の刑事物。”刑事コロンボ”は、かなりこの映画の影響受けてますか?詳しくは知りませんが十分ありえそうです。

抜群の歌唱力とお色気で売り出し中の歌手ジェニー(シュジー・ドレール)。伴奏ピアノマンの夫モーリス(ベルナール・ブリエ)とは相思相愛だが困ったことにモーリスはたいそう嫉妬深い。

ただでさえ派手な芸能界で心配毎の多いモーリス。よりによって札付きの女好き・成金興行主ブリニョンが映画出演をエサにジェニーに近づいてくる。うまい話に興味津々のジェニーだが、モーリスはとにかく気に入らない。一度は怒鳴り込んで二人が会うのを阻止したが、ジェニーは実家に帰ると嘘をついて再びブリニョンの自宅へと向かう。ジェニーの残した走り書きから事の次第を感知したモーリスは拳銃を携えてブリニョンの住むアパートへ向かう。しかし彼が到着したとき、すでにブリニョンは頭から血を流して死んでいた。。。。モーリスとジェニーはそれぞれにブリニョン殺しの現場にいたが、お互いにだけは知られたくない。二人の住むアパートの1階で写真屋を営む幼馴染のドーラは二人からそれぞれ話しを聞き。互いに知られないように手助けをする。しかし捜査に動き出した警察は、モーリスとブリニョンがもめていたことを嗅ぎつけ、アントワーヌ刑事(ルイ・ジューヴェ)の執拗な捜査が始まる。

出演者が印象深くていいですね。ジェニー役のシュジー・ドレールはどこかで見たぞと思ったら、ルネ・クレマンの『居酒屋』でマリア・シェルと大乱闘を演じたヴィルジーヌ。ステージ歌手として宣伝用ポートレイトを撮るシーンなどもありますが、この人”20世紀フランスショービジネス”に一番似合う女の顔を描けと言われたら間違いなくこんな顔になるだろうと言うくらい雰囲気がドンピシャ。たれ目でおちょぼ口で長めのあごの感じが良いですねぇ。クルーゾーのお気に入りだったようで他にも出演作がありますね。

モーリスを演じるベルナール・ブリエは、こちらはこちらで風采の上がらない神経質そうな役柄がうますぎる。あんまり表情の変わらない方が嫉妬深い感じが良く伝わるんだなとちょっと発見。そのまんまの芸風でサイコキラーの役とかもいけそうですね。ジェニーとドーラ(シモーヌ・ルナン)という二人の美女に愛される様子が、「え?なんでよ」と思わせて、そのギャップもインパクト強し。

しかし、なんといっても一番は刑事アントワーヌを演じるルイ・ジューヴェ。相変わらずの鋭い顔立ちで刑事役にぴったりですが、『舞踏会の手帖』で見かけたころより多少太り気味。昔の古傷のため動きが多少不自由で、万年寝不足のちょっと疲れた感じがいい味だしてます。

のそっと容疑者のところに現れては質問を連発し、眠い眠いと連呼するあたりは確かにコロンボを連想させるものがありますが、後半モーリスを追い込んで自白を引き出すくだりでは拷問まがいの豪腕ぶりも発揮します。父一人子一人の息子は、占領地から連れ帰ってきた黒人との混血。息子を一人で寝させたくないから夜勤はいやだとぶつぶつ言ったり、子供への愛情たっぷりなヒューマンな部分も見せます。

ストーリー全体としては、あとに作られた例の二作(『恐怖の報酬』と『悪魔のような女』)ほどの切れ味は感じなかったものの、モーリスのアリバイ作りが車を盗まれたことでめちゃくちゃになるくだりなどは結構好きです。芝居が終わるまでに劇場内に戻るはずが、車泥棒のトラブルで計画が狂い、電車でようやく戻ってきたときにはもう芝居が終わる時間。帰る人たちの人ごみを見て一瞬呆然とするモーリスの表情(相変わらず乏しいけど)が良いです。

アントワーヌ刑事が着実に真相に近づいていくところもぐいぐいと引っ張ってくれます。真相に近づくほどアントワーヌが力強く切れ味鋭くなっていく様子は見事。ストーリーテラーとしての冴えは随所に見せてくれますねぇ。

面白い試みは、モーリスがジェニーを疑って詰め寄る場面。練習中のバイオリン奏者たちにアップテンポの曲を弾かせて、わざわざ音量を上げて二人の台詞にかぶせるということをやっていますね。夫婦喧嘩とうるさい音楽ってなんでこうもお互いをひきたてあうんでしょう。イライラ効果を狙っているのだとしたら効果満点。

全体的にかなり楽しめましたが、どちらかというと『恐怖の報酬』と『悪魔のような女』の前に観たかったかな。


情婦マノン探さなきゃ★★★★☆

犯罪河岸
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posted by FROST at 03:43| 埼玉 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | OLD:フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>FROSTさん、以前から観たい作品だったのですが、ようやく鑑賞できました。やっぱりルイ・ジューヴェの印象が強烈ですよね。登場場面での息子への愛情から、単なる官憲的な刑事ではないことが理解できて、嫌われ者の刑事という職業であっても、本質はヒューマニズム。自らもそんな矛盾を引き受けて職を全うしている刑事の役が誇らしげでした。
そういう刑事のキャラクターなどから、トリュフォーやゴダールの新世代に絶賛されているにもかかわらず、クラシックなフランス作品の伝統は守られているように思いました。
ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちには、『現金に手を出すな』や『穴』に先駆けたフランスはじめてのフィルム・ノワールと言われているようです(わたしには異論がありますが・・・)。
では、また。
Posted by トム(Tom5k) at 2007年04月29日 19:05
トムさん、毎度ありがとうございます。ルイ・ジューヴェの渋い魅力が良かったですね。どうも、クルーゾーというと『恐怖の報酬』『悪魔のような女』の鮮烈なイメージがあって、それと比べると地味に見えるのですが、アントワーヌ刑事やモーリスなどの登場人物の描写は天下一品だと思います。こういう人物描写の巧みさがあるからこそ、例の二作品のサスペンスも引立ってくるんですね。フレンチ・ノワールの先駆けと言うのはどうなんでしょう。この作品を観て”ノワール”という言葉は浮かびませんでした。
Posted by FROST at 2007年05月02日 09:54
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