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2006年09月22日

郵便配達は二度ベルを鳴らす 1943年/イタリア【DVD#114】

ossessione.jpg

”Ossessione”

監督:ルキノ・ヴィスコンティ/原作:ジェームズ・M・ケイン
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/マリオ・アリカータ/ジュゼッペ・デ・サンティス/ジャンニ・プッチーニ/アントニオ・ピエトランジェリ
撮影:アルド・トンティ/ドメニコ・スカラ
音楽:ジュゼッペ・デ・サンティス
 
出演:マッシモ・ジロッティ/クララ・カラマーイ/フアン・デ・ランダ/エリオ・マルクッツオ

   詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


ネタバレですよ

ヴィスコンティといえば、『夏の嵐』『ルードヴィヒ』など19世紀後半あたりの豪華絢爛コスチュームドラマを思い浮かべます。彼の出自がそもそもミラノの貴族家系ですから、こういう作品群は言ってみればホームグランドで勝負していると言うことになります。しかし、このデビュー作はそれらとは全く異なり、庶民階層の姦通・夫殺しなど生々しいものを題材としたネオリアリズムの先駆とも位置づけられるハードな作品でした。

放浪生活を続ける元整備工ジーノ(マッシモ・ジロッティ)がとあるカフェに流れ着き、若妻ジョヴァンナ(クララ・カラマーイ)と恋に落ちるところから物語りがはじまります。

ジョヴァンナは過去の悲惨な生活がトラウマとなっており、何よりも地に足の着いた堅実な生活が大切。カフェの主人である夫ブラガーノは年が離れている上に横暴ですが、彼女は不満が爆発しそうになりながらも生活のために我慢しています。一方のジーノは放浪の人。大体、放浪癖のある人間と言うのはロマンティストに見えますが、実はひとところに留まることによって生じる人間関係のしがらみや責任などに関わりたくないと考えていたりするもので、ジーノもそういう人間のように見えます。

この二人、愛し合ってしまったものの、惚れた腫れたの後にさてどうしようかと考えたときに答えがない。いったんは強引に駆け落ちに持ち込むジーノですが、結局ジョヴァンナは不安定で先の見えない生活に踏み切ることが出来ず、土壇場で今の生活にとどまります。

飛び出したジーノは、行商人スパニョールと出会います。このスパニョールは、原作には登場しないオリジナルキャラクターだそうですが、放浪の象徴でありジーノの分身。安定の象徴であるジョヴァンナと対になるキャラクターで、安定と放浪のいずれを選択するかというジーノの葛藤をより鮮明に映像化する役割を担っています。スパニョールは彼に放浪生活に戻るよう説得を重ねます。

しかし、偶然ジョヴァンナと再会したジーノは、やはり想いを断ちがたく、再び彼女への愛に突っ走ります。一度はジーノへの想いを捨ててしまったように振舞っていた彼女もそれに応えます。

さて、そうすると行き着く結論はひとつしかありませんね。ジョヴァンナにはどうしても今の生活が必要で、ジーノとも一緒に暮らしたい。ジーノもどうしてもジョバンナと一緒になりたい。そうすると邪魔になるのはブラガーノ。

かくして、哀れブラガーノは二人の手により自動車事故に見せかけて殺されることになります。酒に酔い、車を降りて夜道に休むブラガーノ。車のライトに照らされて闇の中にブラガーノだけが浮かび上がります。その闇の中で殺しの段取りを相談するジーノとジョヴァンナの声。怖いシーンですねぇ。

ジョヴァンナにとって、ブラガーノ殺しは”願望成就”。ついに邪魔者のいない安定生活を手に入れたと喜びます。警察での事情聴取の後、思わず刑事に握手の手を差し出してしまうジョヴァンナ。

一方、ジーノは思っても見なかったほど激しい罪悪感に見舞われ、店を売ってよその土地に移ろうと言い出します。しかし、せっかく理想の生活を手に入れたジョヴァンナにとってはもってのほか。彼女はジーノを説き伏せ、店の再開を宣伝するためにバンドを雇いパーティを開きます。このパーティは彼女の願望成就の祝いの宴でもあります。しかしパーティが盛り上がる中、ジーノは部屋にこもって罪悪感にもだえ苦しみます。そして、ふと外を見るとそこには噂を聞いて訪ねてきたスパニョールの姿が。

ここがジーノにとって二度目の選択にして最後のチャンスでした。ジョヴァンナ(安定)をとるか、スパニョール(放浪)をとるか。スパニョールの口からジョヴァンナに対する非難を聞いて、思わず彼を殴り倒してしまったジーノはついにスパニョールと訣別。思い返して呼び止めるジーノの声を無視してスパニョールは去ってしまいます。こうして、ジーノの最終選択(=悲劇の選択)は半ば勢いでえなされてしまうのでした。

パーティが終わって散らかった店内。まだ罪悪感や迷いを払拭できないジーノ。暗がりの中一人ぼっちで一口食事をとり、テーブルに突っ伏してしまうジョヴァンナの姿。彼女が夢見て、夫を殺してまで手に入れたものは、早くもほころびを見せはじめています。このシーンは、胸にぐっときます。
ジーノは心の平和を得られないまま仕事もせず酒を飲み他の女に走ります。以前の着の身着のままではなく、仕立てのいいスーツを着ていますが、身なりのよさが心中のむなしさを逆に強調するようでジーノの姿はピエロのように見えてしまいます。ジョヴァンナにとってジーノは今や理想の伴侶ではなく、殺したブラガーノと同じような悩みの種になってしまいました。ジーノをなじるジョヴァンナ。「私を裏切れば警察にブラガーノ殺しの真相を話す」と口走るジョヴァンナ。しかし、実はこの時点ですでに警察は二人に不審の目を向けて捜査を行っています。

捜査の手が間近に迫っていることに気付いた二人は、ジョヴァンナがジーノの子供を身篭ったこともあり再び心を交わせます。ついに店を捨てる決心をして自動車で逃亡を図りますが・・・・・・。「郵便配達は二度ベルを鳴らす」。大事なことは二度目で決定的になる。二度目の自動車事故で二人は決定的な運命を迎えるのでした。

この映画はかなり予想通りに展開するなという印象で、物語としてはわかりやすいですね。その分、私の中では最近見た映画の中でインパクトが少ないほうかもしれません(ただし最近インパクト強烈な映画ばっかり見ているので比較対象のレベルが高すぎる感あり)。

しかし、ヴィスコンティが由緒正しい貴族の出身であることを考えると、自分には全く無縁の庶民層を舞台としてこ、れだけリアルな映画をつくりあげたことは驚くべきことだと言えます。初期作品におけるリアリズムの追求が、後のコスチューム劇のクオリティを支えていることは良く知られていますが、そういう見方からするとやはり十分に評価すべき作品だと思います。

郵便配達は二度ベルを鳴らす デジタル・リマスター 完全版
郵便配達は二度ベルを鳴らす デジタル・リマスター 完全版ジェームズ・M・ケイン ルキーノ・ヴィスコンティ ジュゼッペ・デ・サンティス

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<500円VD情報>
コズミック版のDVDは後半のコントラストがきつくなった映像がかなり辛い。俳優の顔が白抜けしています。
オリジナルフィルムもあまり状態が良くなさそうなので上記デジタル・リマスター版はかなり気になりますね。

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ご存知の方も多いと思いますが、私は今回始めて知りましたので一応メモしておきましょうか。(サイト:「あの映画のココがわからない」より、編集引用しました)

答えは映画の中にはなくて、ジェームズ・M・ケインの原作のあとがきに書かれているそうです。

いわく、

「アメリカの郵便配達夫は一般訪問者と区別するためにドアベルを二回鳴らすのが慣例となっている。
また、郵便配達夫はどこに誰が住んでいるのか熟知しているので居留守は通用しないことから、二度目のベルは決定的な報せを意味する。
それにならい、この小説では重要な事件は必ず二度起きる。旦那殺しは二度目で成功する。法廷での争いも二回、自動車事故も二回・・・そしていつも、二回目の事件が決定打になる・・・・
この題名はこの小説が献呈されたヴィンセント・ローレンスの示唆により名づけられた」

・・・ほー、なるほど。
映画は、小説と異なるストーリー構成になっているのですべて当てはまるわけではないようですが、約束事にしたがってストーリーを組み立てているということで興味深いですね。
posted by FROST at 15:34| 埼玉 ☔| Comment(6) | TrackBack(1) | OLD:イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ぬおっ!!持っていながらまだ観ていない映画のうちの一本ですな…。
ハリウッド版(ラナ・ターナー主演)は観ているんですがねぇ…。まぁストーリーはそれとあまり変わらないようですね。
今作が入っているビスコンティ監督のDVDーBOXを買ったまま放置です。BOXは全部で3つあるんですが、他の2つもそう。(情け容赦のない女ですな…)
このビスコンティ作品は、紀伊国屋さんから発売されているので、画質は良いのはもちろん、リーフレットも充実していますよ。値段は高いですがそれだけの価値はあると思っています。
しかし『山猫』の6300円にはまいりましたが(そりゃいくらなんでも高すぎるって…)
Posted by オショーネシー at 2006年09月22日 20:00
>オショーネシーさん
ヴィスコンティの処女作として見る価値はあると思いますよ(個人的には豪華絢爛な方が好きかも)。
しかし、オショさん豪快な放置プレイですな・笑。どうも、ここのところ500円DVDは粗製濫造になってきたのかろくでもない品質のものが多くて困ります。”買ってはいけない500円DVD特集”って記事でも作ってやろうかな。やっぱり、高いものは高いなりの価値がありますねぇ。でも、こないだ”裁かるるジャンヌ”に5000円出しただけで泣きそうになりました(良かったけど・・・)。
Posted by FROST at 2006年09月22日 20:18
実は私も豪華絢爛なヴィスコンティ作品のほうが好きなのですが、『若者のすべて』も好きなんですね(アラン・ドロンが素晴らしい演技を見せてくれます。)
でも一番好きなのは、遺作の『イノセント』なんですよ。あの官能的な、それでいて静けさが支配する…。良いですなぁ…。
ホントにウチには放置プレイされているDVDがごまんとありますよ。

ジェームズ・M・ケインといえば、ビリー・ワイルダー監督の傑作フィルム・ノワール『深夜の告白』も彼の原作ではなかったかな?

500円のDVDもなかなか魅力的なんですよね。日本じゃ正規で出してくれないようなラインナップにどうしても目がいってしまいますね。でも画質が他のメディアに比べて良いというのがDVDの売りですからねぇ…。是非“買ってはいけない500円DVD特集”やってくださいな。
Posted by オショーネシー at 2006年09月22日 23:07
ああ、イノセント観てませんねえ。”観たいリスト”に入れておきます。J・Mケインは確かに深夜の告白の原作も書いてるみたいですね。オショさん(この呼び方が気に入ったので、しばらくこちらで失礼します。”オショーさん”ていうのもなんですし・・)、フィルム・ノワールに特に詳しいんですか?うちにも観ていないDVDが新旧あわせて100枚以上はありそうな・・・。フィルム・ノワールはあんまりないんですけどね。このblogやってると新しい映画を観る時間がないのがジレンマです。
500DVDの件の特集はそのうちやりましょう。情報集めとかなきゃ。
Posted by FROST at 2006年09月23日 01:27
豪奢で貴族的な作品も好きですが、『若者のすべて』のような、こういう庶民の貧困を描いた共産主義的なヴィスコンティの思想を伺える作品も好きです。映画にはさっぱり出てこないタイトルの意味を私も調べてみちゃいましたよ^^;)。どうやら「2度ある」というのがキーのようでしたね。ブラガーノが唄うオペラ(というか地元の歌謡曲がみなオペラという感じでしたが)が上手くて印象に残ってます。
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
Posted by ぶーすか at 2007年01月08日 15:07
ぶーすかさん、明けましておめでとうございます。ブラガーノのキャラはちょっと粗暴だけど釣りに目がなかったり、オペラが巧かったりで結構好きです。殺される前に道端に座ってヘッドライトの中でなにやら独り言言ってる場面が記憶に残ります。タイトルの意味はちょっと興味深かったですね。
こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
Posted by FROST at 2007年01月08日 23:44
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Tracked: 2007-01-08 15:00
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