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2006年08月19日

にんじん 1932年/フランス【Video#9】

Poil_de_carotte.jpg”Poil de carotte ”

  監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ/原作:ジュール・ルナール/
  脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ/
  撮影:アルマン・ティラール/ティラール・モンニオ/
  音楽:アレクサンドル・タシスマン
  出演:ロベール・リナン/アリ・ボール/カトリーヌ・フォントネ/
     コレット・セガル

  詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)

例のごとく暗転していくにんじん(ロベール・リナン)の運命は実に丁寧に描かれている(今回は初めからかなり暗めだが)。

前回レビューした「望郷」と同じく、さまざまな出来事が積み重なってにんじん少年を自殺へと駆り立てていくくだりは、デュヴィヴィエ監督さすがの演出。特に、一度父(アリ・ボール)との交流が芽生えて立ち直ったかに見えたにんじんが父の選挙パティーで再び孤独感を深めていくシーン。にんじんの身なりを見て笑う子供、飴をくれないおばさん、パーティーの混雑でにんじんをドンと突き飛ばさしていく男、忙しいから少し待っていろと言う父親などひとつひとつはどうということもないきっかけが積もり積もっていく様子が計算されつくしたように描かれる。このあたりはやはりたいしたものだ。

開巻15分くらいでルピック家の様子が説明されるが、にんじんの家庭がうまくいっていないことはこの時点から明らか。少年は「家族とは、共感しあえないものが同じ屋根の下で暮らすところ」と言ってはばからない。にんじんは父のことをルピック氏、母(カトリーヌ・フォントネ)のことを奥さんと呼ぶ。

父は全く無口で無関心。母はそんな夫の様子にいつもわめきちらし、特ににんじん少年に対してだけ辛く当たる、長男長女は自分のことしか考えず、末のにんじんはそんな家族の中で顔色を伺いながら生活している。

唯一の理解者は、家族ではなく、新しく雇われた女中アネット。何くれとなくにんじん少年を気にかけ、勇気付けてくれるが、これはにんじん少年をめぐる環境改善には全く役立たない。逆に彼女の存在が母親の意地悪さの引き立て役という感じ。加えて、叔父さんの娘マチルド(コレット・セガル)の可憐さと彼女との結婚ごっこが微笑ましいが、これもやはりにんじんの不幸な家庭環境を強烈に引き立てており、デュヴィヴィエ監督の執拗さに思わず感心してしまう。

にんじんをいじめる母親も、実は愛情に飢えている。夫から愛されなくなった腹いせがにんじんに向かっているというところらしい。馬車のシーンでにんじんの方に手をかけようとする母親とそれを払いのけて馬車を暴走させるにんじん。母親もにんじんに優しくしたい(しなければいけない?)という思いはゼロではないらしい。が、すでにそんな思いも通じないほどにんじんとの間の溝は大きい。

父と息子が家族について語り合うシーンで、父はにんじん少年に「家族には和合と理解が必要だ」と諭す。にんじん少年の「家族は愛し合うべきではないのか?」という質問にも「もちろんだ」と答えるが、だからといって母親ともう一度理解しあうよう努力しようとはさらさら考えていない。「かあさんもかわいそうな女だ」というのみで、母親に関してはなんの解決も与えられず、父と息子の相互理解と息子の救済(一時の?)のみが描かれている。

現実問題で考えても、一度切れてしまった家族の絆がそう簡単に元通りになるわけではなし、そういう意味ではきわめて現実的なシーンだと言えるが、「家族とは、共感しあえないものが同じ屋根の下で暮らすところ」という状況は、少なくとも母親に関する限り何も変わらない。一人ぼっちだったにんじんに父親と言う理解者ができたが、結局母親とは対立していくだけで問題はその後も続くにちがいない。

これが”リアル”ということなのだろうなぁと納得してみるのだが、見かけハッピーエンドのようで全く心が晴れ晴れとしない。その辺監督の狙い通りなのだろうか。

★★★★☆

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posted by FROST at 00:04| 埼玉 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | OLD:フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TB有難うございます。私が見たのはTVドラマの方ですが、一応、同じ原作としてこちらにもTBさせて下さい。
そちらのは巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエですかー!「望郷」は良かったですねー。このデュヴィヴィエ版「にんじん」は未見ですが、是非とも見てみたいです。宿題リストに入れておかなくては…メモメモ。
Posted by ぶーすか at 2006年11月22日 19:59
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