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2006年09月23日

巴里の屋根の下 1930年/フランス【DVD#115】

SOUS LES TOITS DE PARIS 2.jpg

”SOUS LES TOITS DE PARIS ”

監督:ルネ・クレール
脚本:ルネ・クレール
撮影:ジョルジュ・ペリナール/ジョルジュ・ローレ
音楽:ラウル・モレッティ/アルマン・ベルナール
 
出演:アルベール・プレジャン/ポーラ・イルリ/ガストン・モド/エドモン・T・グレヴィル

詳しい作品情報はこちら
    ⇒allcinema
    ⇒IMDb(英語)


1930年代フランス映画黄金時代の幕開けとなった記念すべき作品。フランス初のトーキー作品でもあります。

30年代のフランス映画の特徴に”リアリズム”というキーワードがあります。同じリアリズムでも、戦後のイタリア映画などでは、ロケを多用した大変現実的な映像が見られますが、いわゆるリアリズム=現実描写という言葉から連想されるのとはちがい、この作品の舞台となるパリの町並みはすべてセットで作られています。美術監督ラザール・メールソンは、この作品で目に映る限りのすべての風景をセットで作り上げました。彼はクレールの「巴里祭」やジャック・フェデー「外人部隊」「女だけの都」など歴史に残る名作の美術も担当しています。

そのメールソンが作ったパリの町並みは実に魅力的です。冒頭のパリの遠景からアルベール(アルベール・プレジャン)が歌う街角にクローズアップされる間、画面に映る街の風情が実に素敵です。よーく見ると建物のサイズが少し小さかったり、壁のラインがちょっと傾いていたりするのですが、不思議とそこになんとも言えない説得力があり、物語の舞台として独特の味わいを生み出しています。

歌う人々の姿越しに向こうのアパートの窓で洗濯ものをパタパタと干している人がいたり、カメラがクレーンにのって上昇していく間に、アパート各階の部屋の奥まで覗けたり。また、天井の煙突から炊事の煙が立ち昇っていたりもします。こういうディテールまで丁寧に作りこまれ、いかにも当時のパリらしい雰囲気が漂います(いや、実物は見たことはないですけどね)。

この時代の映画作りとして、実際に存在する風景・場面でもわざわざセットを組んで撮るということが頻繁に行われたそうです。ほんの少しの建物の線の出し方とか、ロケでは撮影不可能な角度からカメラに絵を収めることで、客観的なリアリティというよりも、監督や脚本家の美的感覚をリアルに表現する、そういう意味でのリアリティを追求した結果の工夫でした。

1930年という時代にこれだけの映画技術が尽くされていたということを考えると、このセットを見るだけでもこの作品を見る価値は十分にあるのではないかと思います。

フランス初のトーキーとしてこの作品を演出するときに、ルネ・クレールは会話・音声をすべてのシーンに盛り込まず、6割方に音声ををつけず音楽などをバックに演技をさせたのですが、その演出が成功していることは疑う余地がありません。このあたり、キネマじゅんぽうさんの記事がとてもわかりやすいのでぜひご参照ください。

「音声なし演出」で特に気に入ったのは、アルベールとルイ(エドモン・T・グレヴィル)にちょっかいを出してきたチンピラの相手をどちらがするかでけんかになってしまうシーン。サイレントのコメディそのものの楽しいシーンです。こういう場面でも舞台となる酒場のセットの精巧さや小道具のしゃれた使い方が、ちょっと奇抜な”サイレント的なトーキー演出”をしっかりとサポートしています。

もうひとつ印象的なのは、アルベールが歌うシャンソンもとても素敵なこと。登場人物の一人が”耳にこびりついて離れん!”と言うとおり、見終わってから1ヶ月たっても忘れられないメロディです。

今まで見たフランス映画でははじめて楽しく見終わった一本でした。(ん?ラストがかわいそう?アルベールにとっては間違いなくあれが一番いい決着でしょう。)

★★★★☆

世界名作映画全集102 巴里の屋根の下
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posted by FROST at 00:08| 埼玉 ☁| Comment(4) | TrackBack(2) | OLD:フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBとコメントをいただいた上,うちの記事のご紹介までいただきまして,どうも恐縮です。こちらからもTBさせていただきました。
トーキー初期には,アメリカ映画など,音の使い方にずいぶん戸惑ったようですが,クレールが一つの範を示したということのようですね。
また,30年代のフランス映画は,メールソンやらトローネルやら装置家に人材がいて,こういう人たちがいてこその「詩的レアリズム」だったのだと思います。
Posted by ジューベ at 2006年09月23日 12:25
>ジューベさん
最近、イタリア映画もぼつぼつ見始めているのですが、リアリズムといっても図イブのも向きが違うので面白いなあと思います。フランスの詩的レアリズムというのは舞台劇に近い感じですね。もっとたくさん良い作品を観たいともいます。
Posted by FROST at 2006年09月24日 20:21
楽譜売りというのもなかなか実感が湧かないし、ヒロインも何している人か分かりにくいので、なんとなく印象は薄くなっちゃいました。

クレールの初トーキーとのことでしたが、フランス映画の初トーキーでもあったんですか。
Posted by 十瑠 at 2006年09月27日 07:55
十瑠さん

コメントありがとうございます。確かに楽譜売りって言う商売は初めて見ましたね、フランスとかラテン系の国でないと成り立たないような気がする・・。
フランス初トーキーの件は、一年前の1929年に「夜はぼくたちのもの」という作品があって、厳密にはそれがフランス第一号らしいのですが、「巴里の屋根の下」の大ヒットでかすんでしまい、この映画が最初ということになったということです(フランス映画史の誘惑:中条省平著)。ちなみに「夜はぼくたちのもの」って検索してもなにもでませんね・・・・
Posted by FROST at 2006年09月27日 10:51
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『巴里の屋根の下』 ??表現技法の見本市??
Excerpt: 1930年 フランス 監督・脚本:ルネ・クレール 撮影:ジョルジュ・ペリナール,ジョルジュ・ローレ 出演: アルベール・
Weblog: キネマじゅんぽお
Tracked: 2006-09-23 12:00

巴里の屋根の下
Excerpt: (1930/監督・脚本:ルネ・クレール/アルベール・プレジャン、ポーラ・イルリ、ガストン・モド、エドモン・T・グレヴィル/75分)
Weblog: ::: SCREEN :::
Tracked: 2006-09-27 07:29
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