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2006年07月11日

#0080『フレンジー』アルフレッドヒッチコック監督 1972年アメリカ

frenzy.bmp
”FRENZY”

監督: アルフレッド・ヒッチコック
製作: アルフレッド・ヒッチコック
原作: アーサー・ラバーン
脚本: アンソニー・シェイファー
撮影: ギル・テイラー
音楽: ロン・グッドウィン
 
出演: ジョン・フィンチ/バリー・フォスター/ビリー・ホワイトロー/バーナード・クリビンス/ジーン・マーシュ/アンナ・マッセイ/アレック・マッコーエン/バーバラ・リー=ハント


詳しい作品情報はこちら
allcinemaIMDb(英語)(予告編あり)



「父はこの映画で復活を果たしました。」

DVD特典映像の冒頭でパトリシア・ヒッチコック(娘)が語っている。 間違いなくヒッチコックは復活した。 1963年の「鳥」をピークに下降していたヒッチコック の評価は、この作品で最後の頂点を迎える。

「フレンジー」はヒッチコックの伝家の宝刀、”巻込まれ型”サスペンスである。 前作「トパーズ」で、脚本に恵まれなかったヒッチコックはもっとも得意な分野で名誉回復を図ったのだろう。 しかも、1960年の名作「サイコ」を思わせるようなサイコスリラー仕立てでもある。 3年をかけて周到に準備を重ねたヒッチコックは最強のシナリオで今作に臨んだ。

この作品の見所は、なんといっても圧倒的なリアリティで描かれる殺しのシーン。主人公の元妻ブレンダ(バーバラ・リー・ハント)と恋人バーバラ(アンナ・マッセイ)、この二人の殺害シーンは実に対照的で印象に残る。

主人公ブレイニー(ジョン・フィンチ)が”巻き込まれる原因となるブレンダ殺害は実にリアルに描かれている。

1930年代から1960年代のアメリカ映画界には、”ヘイズ・コード”と呼ばれる倫理規定があり、殺人シーンやセックスシーンなどはきびしく制限されていた。 ヘイズ・コード健在の間は、もちろんこのような過激なシーンはご法度だった。 しかし、ヒッチコックはかなり以前から、殺人シーンをリアルに映像化することを望んでいたにちがいない。1968年のヘイズ・コード廃止後、表現の自由を得たヒッチコックは長年切望してきたイメージを大胆に映像化した。積もり積もった欲求をすべてぶつけ、「サイコ」では実現できなかった圧倒的なリアリティで殺人シーンを描き出した。

一方、バーバラ殺害シーンは一切現場を見せない 。

カメラは犯人とバーバラの後を追うように階段上の犯人の部屋に向かう。二人が部屋に入りドアが閉まるとあきらめたように上ってきた階段を戻り始める。そして、カメラがアパートの入り口を出ると、街の生活音が聞こえ始める。 さらにカメラは引き、街角の日常の様子と殺人が行われて いるはずの二階の窓を同じフレームに映し出す。 アパートの小さな入り口が、平穏な日常空間にぽっかりと開いた異常世界への入り口に見えてゾクリとする。

まさに、鳥肌モノのシーンである。

バーバラ殺しのシーンは、観客のイマジネーションを最大限に引っ張りだす。このシーンだけでもすごいのに、きわめてリアルに描かれたブレンダ殺しのシーンの記憶があるため、我々のイマジネーションは爆発寸前まで膨張する。あれだけ完成度の高いブレンダ殺しのシーンが、実はバーバラ殺しのイマジネーションを高めるための”前ふり”だったのかもしれない 。やはりヒッチコック恐るべし。

殺し殺しとばかり書き連ねるといかにもおどろおどろしいが、 この作品はヒッチコック的な洒落っ気にも富んでいる。ゾッとするような体験の中にも、どこかちょっとユーモアがある。 ヒッチコックが目指した映画体験に一番近いのはこの作品なのかもしれない。

ラブリー!★★★★★

次回はヒッチコック最後の作品「ファミリー・プロット」

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posted by FROST at 10:34| 埼玉 ☀| Comment(8) | TrackBack(4) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
「ラブリー!」と言いながらの殺人シーンは生々しかったです。

この作品で、ヒッチコック復活を感じましたが、準備に3年もかかっていたのですね。

刑事と奥さんのやりとりが面白かったです。
Posted by shake at 2006年07月11日 16:41
shakeさん、いつもありがとうございます。

刑事と奥さんよかったですねぇ。あのフランス料理は実在する料理なんでしょうね。一度食べてみたいものです。奥さんが推理だけは妙に鋭いのもおかしかったです。
Posted by FROST at 2006年07月12日 01:24
TB有難うございました。
私は指摘しませんでしたが、最初の殺人をリアルに撮ることにより、確かに二度目の暗示が効いて来ていますね。
まして大先生は二度同じような場面を撮るような愚はしませんね。
「晩年のヒッチコックはそれなり」と書いたどこかの氏は実際にこれと「ファミリー・プロット」を観たのか、と言いたい。
仰るように、ヒッチが最も撮りたいように撮れた作品かもしれませんね。ニューシネマの台頭で、スター・システムの呪縛も過去のものになっていましたし。
Posted by オカピー at 2006年07月12日 03:36
トラックバックありがとうございました。

警部夫人の作る料理の色には、ある意味殺人より恐怖を感じました。
どうやったらあんなになるんでしょうね。
Posted by カカト at 2006年07月12日 21:55
>オカピーさん
この2作を観ていれば「それなり」とは言えないでしょうね・笑 

スター・システムやヘイズ・コードなどの制約は昔の映画制作上かなりの影響を与えていたみたいですね。制約あればこその工夫が昔の映画の味わいにつながっているとも思いますが、当の監督にすれば相当つらかっただろうと苦労がしのばれます。
Posted by FROST at 2006年07月13日 00:46
>カカトさん、お早うございます。

>警部夫人の作る料理の色には、ある意味殺人より恐怖を感じました。
かなり笑ってしまいました。昨年から料理をはじめましたが、家族が警部と同じような思いをしていないか心配になってきました・笑
Posted by FROST at 2006年07月13日 07:35
ヒッチコックの底力を見せてくれた作品。
変質者の殺人と、刑事の奥さんの料理とか、怖さとユーモアがヒッチコックらしく
表現されていました。
バーバラの殺害シーンの描写を読ませていただき、ありありと眼前に思い出す事ができました。たしかにゾッとするシーンでした。我々はこのヒッチコックの復活を心から喜んだのでした。
もっとも「トパーズ」も、失敗作とか言われていましたが私はそれなりに面白く
見ましたが。
Posted by sesiria at 2006年09月14日 20:31
>sesiriaさん、コメントありがとうございます。ホントにヒッチコックらしい絶品でしたね。階段でガンガン響くトランクの音も好きなんですよね。トパーズは、ちょっと私は入り込めませんでしたね。とはいってもそこらの並の映画と比べれば全然優れてますが。
Posted by FROST at 2006年09月15日 00:45
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