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2006年07月04日

#0079『トパーズ』アルフレッド・ヒッチコック監督 1969年アメリカ

TOPAZ.bmp

”TOPAZ"

監督/製作:アルフレッド・ヒッチコック
原作:レオン・ユリス/脚本:サミュエル・テイラー
撮影:ジャック・ヒルデヤード/特殊効果:アルバート・ホイットロック
美術:ヘンリー・バムステッド/音楽:モーリス・ジャール
 
出演:フレデリック・スタフォード/ダニー・ロバン/カリン・ドール
ジョン・ヴァーノン/ミシェル・ピッコリ/フィリップ・ノワレ
ジョン・フォーサイス/クロード・ジャド/ロスコー・リー・ブラウン  

詳しい作品解説はこちら
    ⇒allcinema IMDb(英語)




この作品は、よくわからない。大体ストーリーが複雑すぎる。
ヒッチコックはこの作品で何かをしようとしたのか。それとも何もしなかったのだろうか。

まったくの駄作というわけではない。
他のヒッチコック作品と同じように、「ほう」と思わせるシーンはいくつかある。

特に、ファニータ(カリン・ドール)が倒れるときに、市松模様の床に彼女の紺のドレスがパッと広がる映像は息を呑むほどすばらしい。

スパイ夫婦が丘の上から港の様子を探っている。はじめのショットで二人の足だけをとらえているこのシーンもヒッチコックらしい(「ハリーの災難」をちょっと思い出させる感じ)。その後、この二人が捕らえられ拷問の末に自白するシーンの描写はピカソかなにかの絵画を見るようだ。これまたすばらしい。

しかし、ヒッチコックらしく楽しませてくれる熟練の細工は他の作品と比べるとずいぶん少ない。細工として不十分なものも見受けられる。

たとえば、秘書ユリベを抱き込むシーン。黒人スパイが彼を説得する場面を会話無しで見せている。我々は主人公と共に道路の反対側に立ち、スパイ工作を遠目から観ている。聞こえてくるのは街の騒音だけである。

果たしてこの細工はヒッチコックらしいのか?

「北北西に進路を取れ」に同じような会話を消したシーンがあった。確かにこのシーンではヒッチコックの手腕が賞賛された。「北北西〜」では、会話を消すことにより時間を短縮し、作品のテンポを損なわずに観客に状況を理解させることに成功している。だからこそ”会話を消す”という細工は効いたのだ。

翻って、「トパーズ」では時間は短縮されない。あるべき会話が必要とする時間だけ、会話のないシーンが続く。そうであるなら、我々は単に聞こえるべき会話が聞こえないというもどかしさしか感じられないのではないだろうか。

一般的に知られている有名スターが一人も出演していないのも気になる。それも含めてこの作品、あまりにも中途半端すぎる。いくつかのすばらしい細工も全体の魅力につながっていない。半端な細工も散見される。必死につくろったような感じがするのだ。過去、失敗といわれた作品もいくつかあるが、少なくとも何をしたかったのかという意図は想像ができた。

ヒッチコックがこの作品で描きたかったものはなんだったのだ?なにか大きなスタイルチェンジでも目論んでいたのだろうか。しかし、それにしても・・・。

ああ、わからない。「ヒッチコックの意図はなんだったのか?」これが、この作品最大の謎かもしれない。

(と、ここまでは文献等を調べずに自分が作品を観て感じたことを書いたのですが、さすがに気になったので「映画術」でチェックしてみました。追記参照)

星はみっつ★★★☆☆
次回は「フレンジー」

トパーズ
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以下、「定本 映画術(フランソワ・トリュフォー著 山田宏一他訳 晶文社)」を元に追記

この時期(1968年)、ハリウッドは大変な不況だったらしい。メジャーの合併が相次ぎ、天下のMGMが映画製作を中止する、いわば非常事態であった。

「金の稼げる監督」として、ヒッチコックの下に作品依頼が相次いだであろうことは想像に難くない。あのセルズニックに対してでさえ、納得できない作品には首を縦に振らなかったヒッチコックである。それがこの状況の中でついに作品のを引き受けざるを得なくなった。それが本作「トパーズ」であった。

「トパーズ」は、レオン・ユリウスの手による実話に基づいたスパイ小説。原作自体が複雑な上に、ユリウス自身が映画用台本を書くということが条件であったらしい。

映画製作に先立って、ヒッチコックはこう語っている。「わたしにとって、一本の作品は、撮影前に、書かれた段階で99%出来上がっている。時として撮らないほうがいいと思うことがあるくらいだ。」

ヒッチコックは本作の不出来を十分に予感していたらしい。

つまるところ、

ユニヴァーサルの窮状を救うために、自分の信条を曲げてまでつまらない原作で映画を撮った。映画のできはヒッチコック自身が予想したとおり失敗であった。巨匠としてできうる限りの細工を映画に盛り込み、シナリオの不出来を挽回しようとした。が、さすがのヒッチコックでもやはり限界はあった。

というあたりが、トパーズをめぐる事の真相であるらしい。
posted by FROST at 18:16| 埼玉 ☀| Comment(6) | TrackBack(2) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TB有難うございました。
煩雑なお話で、この原作者は冗長なので有名らしいですが、最終的には彼自身は脚色を担当せずに、ベテランのサミュエル・テイラーになったのですが、どうしようもなかったというところですか。
私はない知恵を絞り、<人間を小道具にしようとした映画>とこの作品を位置づけたのですが、正確には分りません。
役者は実はそれなりに豪華なんですけどね、フランス映画ファンにとっては。
Posted by オカピー at 2006年07月05日 00:49
オカピーさん、TBありがとうございます。
”失敗した料理はどう味を足してもまずくなるだけ”と言いますが、まさにそういうことだったようですね。しかし、企画から編集までオール駄作というのも珍しくない最近の映画と比べれば、これだけの作品に仕上げたヒッチコックの手腕に感心するべきなのかもしれません。

ちなみに、ヒッチコックを後二本アップしたら、ヨーロッパ映画にシフトしようと思ってますので、フランスの役者さんも勉強します^^;
Posted by FROST at 2006年07月06日 01:33
他の作品でトラックバックをいつもありがとうございます。
トパーズ、何度か見たのですがレビューとして書きようがないです...。
キューバ危機とかなんとか、わたしの知識不足かなとちょっと悩んだくらいです・笑。
#失敗した料理はどう味を足してもまずくなるだけ
↑これよくやります。
Posted by かよちーの at 2006年07月09日 21:59
かよちーのさん、こんにちは。
知識不足というよりも、話がややこしすぎですよね。いろいろな経緯があったようですが。

ちなみに私も料理やりますが、思いつき重視のため常に後フォローが必要になります。(が、やっぱりまずいものはまずいです・笑)
Posted by FROST at 2006年07月11日 13:53
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映画評「トパーズ」
Excerpt: ☆☆☆★(7点/10点満点中) 1969年アメリカ映画 監督アルフレッド・ヒッチコック ネタバレあり
Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
Tracked: 2006-07-05 00:39

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