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2006年06月19日

#0074『サイコ』アルフレッド・ヒッチコック監督 1960年アメリカ

Psycho.jpg
”PSYCHO”

監督: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
製作: アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock
原作: ロバート・ブロック Robert Bloch
脚本: ジョセフ・ステファノ Joseph Stefano
撮影: ジョン・L・ラッセル John L. Russel
音楽: バーナード・ハーマン Bernard Herrmann
タイトルデザイン: ソウル・バス Saul Bass
 
出演: アンソニー・パーキンス Anthony Perkins
ジャネット・リー Janet Leigh
ジョン・ギャヴィン John Gavin
ヴェラ・マイルズ Vera Miles
マーティン・バルサム Martin Balsam
サイモン・オークランド Simon Oakland
ジョン・マッキンタイア John McIntire
ジョン・アンダーソン John Anderson
パトリシア・ヒッチコック Patricia Hitchcock


ネタバレです
”めまい”と”サイコ”と”鳥”三作平行で記事を書く羽目になっておりまして、”めまい”より先にこちらが出来てしまったのでアップします。”めまい”は次回かならず。

あらすじ
会社の金を持ち逃げしたマリオン(ジャネット・リー)は、逃亡の途中、偶然通りかかったベイツ・モーテルに宿泊する。モーテルの管理人はノーマン青年(アンソニー・パーキンス)。年老いた母親の世話をしながらモーテルを経営しているらしいのだが・・・

みどころ
この映画は怖い。この映画の怖さは、有名なバスルームシーンや階段シーンの直接表現(必ずしも直接ではないが、これまでのヒッチコックにするとかなり直接的)ではなく、完璧な狂気の存在に対する不安なのではなかろうか。

たまたま、通りかかったモーテルに男がいる。その男は一見まともに見えるが、何かが”完璧に”おかしい。それは、こちらから関わらなければ災いをもたらさないのかもしれない。しかし、実に運悪く彼らはそこに関わってしまう。

何も知らないマリオンは、彼と出会ったことがきっかけとなって自分の犯した罪を償おうと思う。横領した女の逃避行は穏便な方向に向かう気配を見せる。観ているものの注意もマリオン事件の成り行きにひきつけられるが、一方でベイツモーテルの様子はなにかがおかしいということにも気がついている。姿を見せない母親や、ノーマンの挙動が不安を掻き立てる。

その不安は的中するどころではない。バスルームのシーンで観るものの不安をはるかに凌駕する形で炸裂する。

私立探偵アーボガストは鋭い。有能である。それゆえにベイツモーテルの狂気の世界にどんどん刺さりこんでいく。観ている我々は、すでにそこで恐怖の惨劇が起きたことを知っている。そんなに迫るんじゃない、アーボガスト!おまえの身にもとんでもないことが起きるぞ・・・とハラハラする。

彼がベイツ館の階段を一段づつ上っていく。一段一段核心に近づくアーボガスト。このシーンを真上から撮るヒッチコックの感性はすさまじい。アーボガストが階段を上る間に、真上から観る我々の不安は一気に頂点に。そしてまた、今度は半ば予想したとおり、半ばは予想以上にその不安ははじけるのである。


個人的には
文句なし。ヒッチコック=恐怖で語られるが、これより前のヒッチコック作品の恐怖は、日常生活の中で身に覚えのない事件に巻き込まれる恐怖のような、”事と次第の怖さ”が中心だった。”見知らぬ乗客”のロバート・ウォーカーが完璧な狂人ではあるが、それでもその怖さはロバート・ウォーカーとファーリー・グレンジャーの掛け合いの怖さであり、ウォーカーはグレンジャーに交換殺人をさせるという目的を持って行動している。

”サイコ”のアンソニー・パーキンスにはそのような他者に働きかける目的が何もない。唯一の目的は、自分(と母親)の世界を守ることだけであり、その世界は他人には想像もつかない異常な世界である。その異常な世界がベイツモーテルという形で具現化しているところがまたすごい。観ているものはその異常な世界に対してえもいわれぬ不安を感じてしまう。感じた不安は極めて鮮明に惨劇となり、その鮮明さが恐怖を増幅する。

映画制作35年、ここにいたってヒッチコックが繰り出す、ストーリーと映像の限りを尽くした恐怖はまさに極致。ぜひ味わうべきでありましょう。(アンソニー・パーキンスも怖いよ!)


もちろん、★★★★★



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posted by FROST at 03:23| 埼玉 ☁| Comment(12) | TrackBack(3) | OLD:アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アンソニー・パーキンスは「かわいそうな悪役」でしたよね。
「見知らぬ乗客」の時も思ったのですが、母親が子に与える影響力ってすごいものがあるんだとたびたび感じます。
そう考えると私自身、育児に不安を覚えてしまいます・・。
Posted by カカト at 2006年06月19日 14:46
カカトさん今晩は。
「かわいそうな悪役」という指摘をいただいて、うーむと考えていたのですが、ラストのアンソニー・パーキンスのショット覚えてます?独房で毛布をもらったあとの顔のショットですね。あれから観るとヒッチコックはベイツを純粋に邪悪な狂人と描いているのではないかと思うんですが、どうなんでしょうね。

>母親が子供に与える影響力
確かに大きいですよね。うちのカミさんと子供たちの結びつきを見ても、とてもかなわないなと思うこともたびたびです。ブログを拝見するだけでも、カカトさんのお子さんたちへの愛情はよーく伝わってきますよ。自信もってどーんといきましょうね^^
Posted by FROST at 2006年06月20日 01:05
TB及びコメント有難うございました。
おや、文章のタッチが変りましたね。
もしかして私の影響(なわけない)?
それともノーマン・ベイツの影響(なわけもない)?

最後の最後、ノーマンの顔が母親の顔とオーヴァーラップするショットが怖いですよね。
Posted by オカピー at 2006年06月20日 02:49
オカピーさん、どうも。
こういう文体の方が性格的には楽なんですけどね。オカピーさんの影響も少なからずありですよ・笑
Posted by FROST at 2006年06月20日 20:46
ノーマン・ベイツのモーテルの管理人室(と言うんでしょうか?)の大量の剥製が怖かったですね。お母さんも剥製状態だし…。

さわやかな青年として売り出したアンソニー・パーキンスがその後、変人の役しか来なくなったの分かります…。
Posted by オショーネシー at 2006年06月20日 21:47
オショーネシーさんこんにちは
「母親の死体を墓地から盗み出して念入りに保管した」というようなことを言っていたので、本当に剥製にしようとしたのかも知れませんね。こわ〜
Posted by FROST at 2006年06月22日 19:15
はじめまして。
何度かお邪魔させてもらっていましたが、初コメントです。『サイコ』の記事を書いたのでTBさせてもらいました。
またお邪魔いたします。
Posted by Yama at 2006年08月18日 19:08
>Yamaさん
はじめまして。コメントありがとうございました。せっかくコメント&TBをいただいていたのに、間抜けなほど遅くなってしまい申し訳ありません。こちらからもお邪魔しますのでぜひよろしくお願いします。
Posted by FROST at 2006年08月28日 23:08
これは本当に怖かったですねえ。バーナード・ハーマンの音楽、とても良かった。
好きです。母親の影響は度々出てくるようですが自分の体験も反映されているのかな?
私はヒッチコック大好きなんで、たいていの作品が好きです。この映画も後の人に
かなりな影響を与えていますね。
Posted by sesiria at 2006年09月12日 19:10
>sesiriaさん
サイコより”怖い”映画って、何本もありませんよね。一度もナイフが刺さった場面が出てこないのに、あのシャワールームシーンの恐怖。剥製をバックに普通っぽく話すアンソニー・パーキンスの不気味さなど、ヒッチコックの神がかり的な切れ味を観ることが出来る絶品でした。私もヒッチコック好きなんですよイギリス時代の作品でまだ見ていないものがあるのでぜひ観て全長編レビューをめざしたいところです。
Posted by FROST at 2006年09月13日 01:47
お返事ありがとうございます。
そう、そうなんですよねえ。ナイフが
刺さった場面がないんですよね!なのに
そうとう怖かったですね。
ああいう演出は凄いですねえ。
今の映画と比べると余計にそう思いますね。ヒッチコックと比べるのは酷なのかもしれませんが・・・。
あえて見せない、とか直接的な表現ではなく怖さを感じさせる、その方がずっと
怖いです。
Posted by sesiria at 2006年09月13日 10:01
>sesiriaさん
今みたいに何でも映像にできてしまうと、”見せない”ことの価値観って"見せる”ことの誘惑の前に飛んでっちゃうんでしょうかね。技術も良し悪しだなぁなんて。
Posted by FROST at 2006年09月13日 15:51
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映画評「サイコ」
Excerpt: ☆☆☆☆★(9点/10点満点中) 1960年アメリカ映画 監督アルフレッド・ヒッチコック ネタバレあり
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