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2006年01月20日

#0046『サボタージュ』アルフレッド・ヒッチコック監督 1936年/イギリス

Sabotage_1.gif”Sabotage"

監督: アルフレッド・ヒッチコック
     Alfred Hitchcock
製作: マイケル・バルコン
     Michael Balcon
原作: ジョセフ・コンラッド
     Joseph Conrad
脚本: チャールズ・ベネット Charles Bennett
    イアン・ヘイ Ian Hay
撮影: バーナード・ノールズ Bernard Knowles
音楽: ルイス・レヴィ Louis Levy
 
出演: シルヴィア・シドニー Sylvia Sidney
    オスカー・ホモルカ Oskar Homolka
    ジョン・ローダー John Loder
    デズモンド・テスター
    ジョイス・バーバー



街のしがない映画館主ヴァーロックは、実は破壊工作員。同居している妻も義弟もその正体を知らない。うすうすその事実に感づいているスコットランド・ヤードは近所の青果店に店員として刑事を送り込み、何かと監視を続けている。ある日、ピカデリーサーカスでの爆弾テロを請け負ったヴァーロックだが、刑事の目が厳しく時限爆弾を運ぶことができない。年端も行かない義弟に爆弾を運ばせることを思いつくのだが・・・

この映画、テロリスト・ヴァーロックの造形がかなり好きです。ヴァーロックを演じたオスカー・ホモルカは、この作品が映画デビューですか?1898年生まれとありますから製作時は38歳ですね。後にはマリリン・モンローの”七年目の浮気”や”戦争と平和”などに出演しています。

こわもてながら意外と意気地なしで、後半に見せるいかにももっともらしいが責任逃れ以外の何ものでもない妻への言い訳が、小物のテロリストという感じをよく表現していていいですねぇ。

同時期の”三十九夜”や”バルカン超特急”などに比べると、ヒッチコックらしいシャレが少なくちょっと重い感じがします。毎度のことながら、このテロリスト集団が何者で、何を目的として活動しているのかなど背景は明らかにされていないので、観ている者は完全に”あれの成り行き”がどうなるのかに集中するのですが、その部分のストーリー作りにヒッチコックの大きな後悔の原因があったようです。・・・なんて書いても観ていない人には全然何のことかわかりませんよね。困ったな。

要は、この映画でヒッチコックは自分自身のサスペンス映画哲学のタブーを破ってしまい、そのことで当時の映画ファンからもかなりたたかれたらしいということなんですが、私の筆力ではネタバレしないと書けませんので、別ページに完全ネタバレで書かせていただきます(以下参照)。とはいっても、allcinemaの解説で全部ネタばらしちゃってますけど、しかも解釈がなんか変だし^^;。

ともかく、そこそこの佳作であることは間違いません。星は4つ★★★★☆
ヒッチコックが後々まで失敗を悔やんだ映画として興味のある方はぜひご覧ください・笑

次回は、年代順で・・・・・あれ?同じ1936年ですが、サボタージュより間諜最後の日の方が先だったんですね?失礼しました。

前後してしまいましたが、次回は”間諜最後の日”。またまたピーター・ローレの登場です^^


サボタージュ
B0009V1DM4シルヴィア・シドニー アルフレッド・ヒッチコック オスカー・ホモルカ

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ということで、この映画の最大のクライマックスは義弟スティービー少年(デズモンド・テスター)が、そうとは知らずに時限爆弾を持ち歩くシーンです。警察の目を恐れるヴァーロックは、黒幕からくれぐれもと念を押されたにもかかわらず自分で爆弾を持ち出すことができず、スティービーに映画のフィルムを届けさせるついでに時限爆弾も持たせて、ピカデリーサーカスの荷物置き場に13:30までに届けるよう指示します。実はこの時限爆弾13:45に爆発するようセットされており、ヴァーロックは15分の余裕を見て頼んでいるのですが、この余裕15分というあたりが慎重なようなそうでもないような、ヴァーロックの中途半端な悪人振りを象徴しているようにも見えます。

スティーヴィー少年は、めったに行けないレストランでステーキを食べさせてもらって有頂天になっている姿などもあり、愛嬌たっぷりの少年。その少年が爆弾を抱えて歩き回っているだけでも観ている方はハラハラしてくるのですが、途中いろいろ道草を食います。道草を食う姿もまた少年らしくて観客はだんだん少年をかわいく思えてくるわけです。それと平行してなんども時計の映像が映し出されます。ますます、「ああスティービー、早くしないと爆弾が・・・」と観客はドキドキ緊張してきます。

で、ヒッチコック監督はこの少年を満員のバスもろとも爆弾で吹っ飛ばして殺してしまうわけです。

何かのエッセイでヒッチコック監督はサスペンスについて、実は観客は本当の惨劇を望んでいないと語っています。ハラハラどきどきしながらも、観客は主人公が本当に死んでしまったりすることはないと”知っており”、最後には危機を脱することでアー良かったと満足する、それがサスペンスの醍醐味であるという意味のことを言っています。また、今回は観客が完全にかわいい少年に感情移入してしまっている状態で爆殺してしまったわけで、観客の心理を大きく裏切ることになってしまったようです。

ので、今回無垢の少年スティービーを殺してしまうことで成り立つサスペンスドラマというのは、大きく自身の哲学に反してしまったわけですね。結果、世の中からの非難もかなりあったようで、「あのデブを爆弾の上に座らせろ!」などと過激な投書などもいただいたようです。この辺が、ヒッチコック自身この映画をあまり好ましく思っていない原因となっているようです。

主役クラスの登場人物を結構残酷に殺してしまって。。。なんてストーリーは今の映画ではさほど珍しくもないのかもしれませんが、当時の社会や人々の倫理観などからみても受け入れられるものではなかったのかもしれません。昔の映画はそういう多くの制約やタブーの中で知恵をしぼって脚本・演出を工夫しているから面白いのだとも言えるのでしょうか。

ともあれ、スティーヴィー少年の死はたしかに感情的にあまりいいものではありません。残酷すぎ。事件についてのヴァーロックの言い訳は自分勝手の極み、悪役も大物ならもう少しモノの言いようもあるだろうと思えるほど卑怯な言い逃れですね。ヴァーロックの小物振りをくっきりと表現するホモルカの演技がすばらしい。

まあ、弟を殺されてあの言い訳を聞かされたら、殺してやりたいと思う妻の気持ちもわからなくもありません。が、本当に殺してしまうのも少し復讐としてはダイレクトすぎて工夫にかける感じもしました。警察の捜査に対して夫に協力するそぶりを見せておいて土壇場で裏切って暴露するとか、そういう展開かなと思ったのですが。

ラストは、”恐喝(ゆすり)”と同じく、罪を告白して罰を受けたいヒロインをその恋人役の警官がかばってことはうやむやに・・。これって、ハッピーエンドじゃないですよね。ヒロインにとっては残酷な結末なのでした。
posted by FROST at 11:35| 埼玉 ☀| Comment(5) | TrackBack(2) | OLD:イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラックバックさせていただきました。
問題のシーンは私も「まさかね。そんなことにならないよね。」と、自分を安心させつつおろおろしながら観ていました。さすがにショックでしたが、「テロってこういう無差別で残酷なことなのだ」と一人で勝手に悟ってしんみりした事を憶えています(^^)
こんなにハラハラする映画ってなかなかないんじゃないかと思うので、私はわりとこの映画が好きなほうです。
Posted by カカト at 2006年01月20日 15:49
>テロってこういう無差別で残酷なことなのだ
そういう感じ方は大切だと思います。演技がどうだ技術がどうだという前に、映画からそういうことをきちんと感じ取るべきなのかもしれないなぁ、と改めて思いました。
Posted by FROST at 2006年01月23日 01:22
7月23日は私の誕生日なのに、伯父の葬式に出かけることになりました。そこでいつものヒッチ曜日に備えて急遽「サボタージュ」をアップしTB致しました。
サスペンスは強烈ですが、後味が余りに悪い。ヒッチコック・スリラーでは子供を殺してはいけません。あくまで映画の中の話ですのでそう感情的になる必要はありませんが、星一つがとこのマイナスは仕方がないでしょう。
サボタージュは「サボる」の語源のはずですが、随分イメージが違いますね。現代なら「テロリズム」なんて題名になったかもですね。
Posted by オカピー at 2006年07月23日 01:35
たしかにこれは後味が悪く重苦しい
仕上がりですね。
子供が死んでしまうのはやはり
やめてほしい。意外性を狙ったのでしょうか?本人も「ヒッチコック 映画術」の中で反省(後悔?)してましたね。
ほんとに可愛い少年でしたよね。
テロとは実際はこのように残酷なものだと言う事なんですけどね。
Posted by sesiria at 2006年09月13日 22:29
>sesiriaさん
毎度コメントありがとうございます。反省も反省、大反省してましたね・笑 実はヒッチコック先生、映像化したい過激なアイデアをいろいろ持ってたんだと思いますね。『フレンジー』の殺人描写なんか、コードがなくなってそれが噴出したみたいにも見れますし。そういう過激な嗜好を時々の社会的制約とか観客の成熟度に合わせてうまく見せていたものを、ちょっと勇み足でやっちまったのがこの作品の失敗なんじゃないでしょうかね。
Posted by FROST at 2006年09月13日 23:21
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「サボタージュ」を観ました
Excerpt: サボタージュ 1936年イギリス 監督 アルフレッド・ヒッチコック 出演 シルビア・シドニー    オスカー・ホモルカ あらすじ  何者かが発電所に細工し、夜のロンドンが停電にみまわ..
Weblog: 私が観た映画
Tracked: 2006-01-20 15:39

映画評「サボタージュ」
Excerpt: ☆☆☆(6点/10点満点中) 1936年イギリス映画 監督アルフレッド・ヒッチコック 完全ネタバレ、鑑賞前に読むのは避けられたし
Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
Tracked: 2006-07-23 01:27
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