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2005年12月03日

#0028『お茶漬の味』小津安二郎監督 1952年日本【Video#5】

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監督: 小津安二郎
製作: 山本武
脚本: 野田高梧
    小津安二郎
撮影: 厚田雄春
美術: 浜田辰雄
衣裳: 斎藤耐三
編集: 浜村義康
音楽: 斎藤一郎
 
出演: 佐分利信   (佐竹茂吉)
    木暮実千代  (妙子)
    鶴田浩二   (岡田登)
    笠智衆    (平山定郎)
    淡島千景   (雨宮アヤ)
    津島恵子   (山内節子)
    三宅邦子   (山内千鶴)
    小園蓉子   (女中ふみ)


「この味なんだ。夫婦はお茶漬の味なんだよ」

佐竹茂吉と妙子夫婦は見合い結婚して7〜8年、女中を雇う裕福な暮らし。取り立てて不仲というわけではないものの微妙なすれ違いをお互い感じながら過ごしている。資産家の娘で物事にはっきりし、行動も洗練された妙子から見ると田舎育ちののんびりした茂吉の鈍感さが気に入らないらしい。ある日、姪の節子に見合い話が持ち上がるが、二人の夫婦仲を間近に見ている節子は見合い結婚に夢を持つことができず、当日見合いをすっぽかしてしまう。このことがきっかけで、佐竹夫婦の感情のすれ違いが表面化し、妙子は家を出てしまうのだが、その間に茂吉の海外赴任の話が持ち上がり・・・。

「週に一本小津安二郎」、三本目は”お茶漬の味”。前回レビューした”東京物語(1953)””麦秋(1951)”の間に入ってくる1952年の作品で、音楽以外同じスタッフですね。三本目にしてなんとなく小津映画のパターンがわかってきた様な気がします。今回の”微妙な不協和音”は夫婦仲。相手のやることがどうも気に入らないという例のあれですね。

生まれ育ちも生活環境も全く異なる他人が結婚して一緒に暮らしていればこういう不満があるほうが当たり前ではあります。が、やっぱり人間は都合良くできているもので自分のやり方や考え方を相手にも求めてしまうわけで、そこに不幸と言えば不幸な状態が生じてしまうことになります。

本作の主人公佐竹茂吉のキャラクターが絶品。会社では社長の覚えもめでたい有能な管理職ですが、長野出身の朴訥でのんびりとした性格で万事につけ”気にしない”タイプ。佐分利信のとぼけた感じの演技に加えて鶴田浩二(こっちもかなりのんびり屋)との掛け合いもあってそのあたりの性格付けが鮮明です。

こういう性格が、妻妙子から見ると”鈍感”と写ってしまうのですが、実は妙子がうそをついて出かけた友人との修善寺旅行などもちゃんと見抜いている。気がついていないのではなく、気がついているけれどそのことで相手に何かを求めない、そういうタイプですね。

上流階級出身の妙子は、友人雨宮アヤが称して”何からなにまで自分の思い通りに行かないと我慢できない”ということなので、「犬食い」の一件で象徴されるとおり「突っ込む妻と受ける(受け流す)夫」という構図になりますね。

序盤我儘ぶりが目立つ妙子ですが、ラストシーンを見ると本来愛情豊かな女性なのではないかと思います。茂吉はパチンコを評して「一人になれるのがいい」と言っていますが、人間関係の中にも一人の時間を求める少し壁のあるタイプでその裏返しが人にも何かを求めないということなのかもしれません。とすると妙子はそんな夫への不満もあるのでしょうね。もっとこっちを向かせたいというかそういう思いが事細かな突っ込みになってしまうのかもしれません(読みすぎ?)

ともあれ、そんな二人が茂吉の海外赴任を機に理解しあうわけですが、普段女中任せで勝手のわからない台所で二人してお茶漬けを作るシーン。紆余曲折の末ようやくたどり着いた相互理解の世界で、お互いを気遣いながらなれない炊事をする場面に思わず涙ぐんでしまいました。

”東京物語”の妻との死別と子供夫婦との関係、”麦秋”の娘の結婚と家族の別れ、そして今回の”お茶漬の味”で、夫婦のすれ違いと相互理解と、小津作品を三本観てきたわけですが、個人的には本作が一番実感できるテーマでした。その分作品のいろんな部分で実生活と照らし合わせて考えさせられ、「なんかいい映画の見方してるなぁ」なんて一人まんぞくしているのでした(笑)


おまけ1
この作品でも結構若々しい笠智衆ですが、今回は戦争中の茂吉の部下で現在はパチンコ店経営者という脇役での出演。シンガポールのことを思い出してしきりに「よかったよかった」としつこいほど繰り返すくだりがほのぼのとしていてとってもいいです。

おまけ2
この映画で超お気に入りは店の看板。とんかつ屋「カロリー軒」とパチンコ屋「甘辛人生教室」。ネーミング最高です。


今回の評価も星5つ★★★★★


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posted by FROST at 04:28| 埼玉 ☁| Comment(6) | TrackBack(2) | OLD:日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
若い時の鶴田浩二を見てとってもびっくりしたのを憶えています。後半と全然イメージ違いすぎるんで・・。
佐分利信と淡島千景 が好きな私には大満足の映画でした(^^)
Posted by カカト at 2005年12月03日 16:45
>カカトさん
ああ、書き忘れた。鶴田浩二は衝撃でしたねぇ。どこから、右も左も真っ暗闇じゃござんせんかになったものかぜひ知りたいところです(笑)
淡島千景の”すみれのは〜な〜♪”とかも、結構遊びの多い映画で楽しかったです^^
Posted by FROST at 2005年12月03日 23:10
こんにちは。TB致しました。
小津は焼き直しが多い作家ですが、これは37年の傑作「淑女は何を忘れたか」の焼き直し(リメイクにあらず)と思います。「淑女」が余りに素晴らしいので、こちらは相対的に低く(と言っても8点。最近の映画はその8点すらなかなか付けてもらえないのです)なっております。
「淑女」がもし未見でしたら一見をお奨め致します。観て損はないと思いますよ。
Posted by オカピー at 2005年12月05日 00:39
オカピーさん、どうも^^。こちらにもオリジナル作品がありましたか。”お茶漬の味”がかすむ暗いの出来ということなので、とっても見たいです。探してみます。確かに最近の映画はあんまり感動しませんねぇ・・・-0-
Posted by FROST at 2005年12月06日 15:23
またまたお邪魔致します。注意点(言い訳とも言います^^;)を二つほど。
「淑女」は保存状態が悪く、音声が聞き取りにくいかもしれません。
それから技術派ですので映画を作る技術で評価を分けているところが相当ありますので、味としては文字通り「お茶漬の味」の味が勝っているかもしれないですね。
ただ「淑女」を成立させている彼の人間観察には本当に脱帽しましたね。お気に入られるかどうかは別にして、後日お話したいです。既に私の映画評はUPしてあります。
Posted by オカピー at 2005年12月06日 18:06
オカピーさん
どうもわざわざありがとうございます(笑)
古い映画の音声や画像が傷んでいるのは、”それも作品のうち”みたいな妙な納得をしていますのでたいがいのものは気にしませんので大丈夫かと^^。映画評も拝見いたしました。いつも小津作品を見ている近所の図書館にはストックが内容なんですよね。うーん、どうしよう。
Posted by FROST at 2005年12月07日 17:00
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映画評「お茶漬の味」
Excerpt: ☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1952年日本映画 監督・小津安二郎 ネタバレあり   久しぶりの再鑑賞。 ああ、これは自身の傑作「淑女は何を忘れたか」の焼き直しであったのか! かかあ天下の..
Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
Tracked: 2005-12-05 00:28

『お茶漬けの味』の脚本を読みました
Excerpt: JUGEMテーマ:邦画こんにちは、あざらしです。あいかわらず図書館で借りてきた『小津安二郎全集(下)』を読んでます。今の映画の雰囲気とはずいぶん違いますが、シナリオ雑誌などに掲載されてる最新映画のシナ..
Weblog: 脚本家になりたい!シナリオ研修生の映画・読書日記
Tracked: 2009-05-15 10:50
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